イナイレ*最強姉弟参上?!*

作者/ 伊莉寿



第51話 世界の舞台へ―



1日だけ、休みがあった。

荷物をまとめた瑠璃花は、窓の外を見て、雲と月の絵を眺める。

何処か落ち着かない。荷物が一つにまとめた彼女は、部屋を出た。


~瑠璃花side

気が付けば、鬼道家のピアノの前に来ていました。

音を消して、鍵盤に両手を置いたその時、扉が開く。

瑠「鬼道さん…」

鬼「瑠璃花?」

ハッとして鍵盤から手を離す。うっかりしてた…ダメだな、頭の中、お父さんの事でいっぱい。

鬼「ピアノ、弾けるのか?」

瑠「少し、だけ…」

弾いてみろ、と鬼道さんが言う。何を弾こうか迷って、私はお気に入りの曲を選んだ。

何処までも続く海を思わせるメロディー。私が大好きな曲。

―あの海の向こうには―

最後の和音が綺麗に揃う。ゆっくりと鍵盤から手を離して安堵する。指が鈍ってなくて、良かった…。

鬼「なかなか弾けるじゃないか。文化祭の合唱コンクールは、伴奏で決定だな。」

瑠「伴奏…」

って何?

後で辞書ひこう…

すると、鬼道さんが本棚から一冊の本を取り出しページをめくる。拍子を見ると、楽譜だった。

鬼「こんな曲、どうだ?」

ワルツレント。

あ…お母さんが練習してた曲でした。すごく綺麗な曲で、私もいつか弾きたいって思ってた…。

瑠「練習します!」

鬼道さんが微笑む。

鬼「今日は寝ろ、明日は朝が早いからな。」

はい、と返事をしてからもう一度ワルツレントの楽譜に目を通す。

ピアノって、好き。

自分の好きなメロディーを、自分が好きなように弾ける、それに音色が綺麗で落ち着く。

暗い場面も、明るい場面も、儚い音で、和音で、しっかり何かを掴む様に…

そう、今日はもう寝ないと。楽譜をコピーして荷物の中に入れておこう。

こうして過ぎていく夜。

明日、何が起こるのだろう…?

ワルツレント、早く、譜読みを終わらせて弾けるようになりたい…。

あれ、ぐちゃぐちゃだな。


―月の明かりが彼女を照らす。

現れた影は、彼女の部屋の中を見た。

そしてぼそりと呟く。

?「見つけた…ルナとジャスティーの……」

すると、影は月明かりに消される様に、消滅した。



瑠「怪我、治して復帰して下さいね…」

翌朝。イナズマジェットでライオコット島へ行く事になったイナズマジャパンのメンバー。

吹雪と緑川が抜け、佐久間と染岡が入る事に。瑠璃花は抜けた2人に声をかけた。

魁「世界大会でも選手の入れ替えは出来るから。」

魁渡がイナズマジャパンのジャージを着ている姿。何処か微笑ましい。

監督が集合をかける。

さあ、出発だ―。



見事に熟睡。

飛行機の中での瑠璃花の様子は、5文字であらわせる。

魁「昨日、夜更かしでもしたのか?」

後ろの席の鬼道に聞くと、そんなに夜遅くでは無かったと返事が返って来た。

窓際の魁渡は、この良い景色の感動を分かち合える人が居なくて寂しいらしい。瑠璃花を突っつく。

瑠「す~…Zzz」

魁(…ちえっ…)

余り、楽しくない…



瑠璃花は、イナズマキャラバンでライオコット島内を回る頃には、完全に目が覚めていた。

イタリアエリア、イギリスエリアを通り、ジャパンエリアに着いた。彼女は子供の頃、親に付いて回った事がある国のエリアがある事をマップで発見して、行ってみようと心を躍らせる。

夕方。宿で荷物を置いたり整理をしたり…

瑠「!」

窓の向こう。手を振る少女…

瑠(!!!こ、怖い…誰?)

手招きをする少女は、グレーのパーカーを羽織っている。恐怖心を覚えながらも、少女の元へ行くしかなかった。


?「くすっ、来てくれたぁ…」

瑠「!その声…」

少女がフードを外す。

愛姫蜜柑―

瑠「えっ、どうして…」

愛「ある人からの伝言です!」

宿泊施設の外、建物の影になる芝生の上。

愛「貴女は手紙の一部を解読できる。早く解読し我の元に現れよ。」

瑠「…解読すれば、場所も期限も分かるって事?」

蜜柑が薄ら笑いを浮かべる。何時もの彼女らしくない。

瑠「お父さんとどんな繋がりが?」

愛「内緒ッ☆」

瑠「~!」

愛「でもね、早くした方が良いよ?」

帰ろうとした蜜柑が立ち止まり、言う。

ゆっくり振り返り、キョトンとする瑠璃花の顔を見て。

愛「遅いと、貴女の仲間が死ぬかも…」

瑠「ッ??!」

驚き目を見開く瑠璃花。

その彼女をその場に残し、伝達者は去る。


俯く彼女は、決意した。


監督の部屋に行き、ノックすをする。

入れ、の声と同時に扉を開ける。手が震えた。今から、自分は過去の自分を裏切る―

瑠「―っ、監督。」

声も震える。鼻がつん、とした。


―蜜柑が敵側に居る。

父親が人を殺すかもしれない。

だから、自分は…

瑠「私を……」

監督が瑠璃花の目を見据えて、話を聞こうとする。

その視線に負けて、涙がこぼれた。

瑠「わたしっ、を…、」


「イナズマジャパンから、外して下さい…」


監督が目を見開く。

―ドアの外で聞いていた彼女の弟も、同じ様に…