イナイレ*最強姉弟参上?!*

作者/ 伊莉寿



第54話 天空の使徒・魔界軍団Z



瑠「ありがとうございました、夏未さん。」

瑠璃花が深深とお辞儀をする。伝説について、彼女はとてもよく知っていた。

夏「でも、何故伝説の話を…?」

魁「その内話す!」

魁渡が満面の笑みで答える。夏未も頷いた。

ロ「決勝で会おう。」

ロココが手を差し出した。瑠璃花は自分の右手を重ねる。

瑠(決勝までには、絶対に…!)

空は夕焼け色。

瑠璃花は、真相を知る。

―あれは、伝承では無い。



決勝トーナメントまで、あと4日。

空には雲がかかり、昼間とは思えない暗さ。

瑠璃花と魁渡は歩みを止めず、険しい山道を登る。2人の頭の中には、あの日が蘇っていた。

瑠「一本道で良かったぁ…」

魁「迷う心配が無いからな。」

星の使徒研究所を目指している時は大変だったな、と。

瑠「でもまあ迷ったから雷門の皆さんに…!?」

不気味な老人が2人、行く手を遮っていた。

魁渡が警戒する。明らかに怪しすぎる。

と、場に似合わないレースが見え隠れする。

愛「ぴったりだね、瑠璃花ちゃん。」

2「!」

老人の後ろから現れた蜜柑。ゴスロリの格好で、2人を見つめて微笑む。

愛「さっき花嫁さんと生贄さんを迎えに行った所だよ、ジャパンエリアに☆」

瑠「なっ…!!」

―天空の使徒と、魔界軍団が儀式を始める…

愛「早く行かないと、連れ去っちゃうよ。だってあの2人本気だから!」

瑠(…また…)

魁渡が唇を噛み、瑠璃花の手を引いて山を下り始める。

蜜柑が身をひるがえし、マグニード山の中へ入って行った。


時、既に遅し。

イナズマジャパンと海外の選手数名が集まっていた。伝承の鍵を持つ物は、居ない。

秋「一体何が起きて…」

悔しそうに、魁渡がフェンスを叩いた。

瑠(?!)

瑠璃花は、今気付いた。

話に行けば、少なからず注目を集める事になる。彼女はその一瞬が何よりも嫌いだ。

しかし、それは呆気なくやって来る。

全「!!?」

魁「…あ、瑠璃姉わりぃ…」

全員の視線が、2人に集まった。

円「!!!?魁渡、瑠璃花…??!」

鬼「!」

2人はアタフタしていてはしょうがない、という事で…

瑠「み、皆さんお久しぶりです…^^;」

魁「一部の方、初めまして…」

冷や汗をかきながら、挨拶した。


ざわつきを無視する事には慣れている。

イナズマジャパンの選手達は、突然失踪し、突然現れた2人に戸惑っていた。

フ「マモル、彼女達は予選までジャパンに居た…」

円「今でも仲間さ。」

フィディオ達は2人を見た。瑠璃花は深呼吸をして、全員に向かって話し始めようとしている。

瑠「皆さん、落ち着いて聞いて下さい。」

ピタ、と声が全く聞こえなくなった。注目なんて気にしている場合では無い。瑠璃花も必死だ。

瑠「伝承については、皆さん御存知かと思います。先程来たあの2人は、1人が天空の使徒、もう1人が魔界軍団Zの者です。」

綱「じゃあ、さっきの奴らは本物?!」

魁「あの伝説は、本当なんだ。」

全員が、息を飲んだ。

瑠「連れ去られたのは、誰ですか?」

夏「リカさんと音無さんよ。」

円「リカが、多分天空の使徒の方…」

瑠璃花が視線をマグニード山へ移す。

瑠(音無さんが生贄、リカさんが花嫁…。)

瑠璃花がもう一度視線を戻し、そして、再び口を開く。

瑠「天空の使徒も、魔界軍団Zも、マグニード山に居ます。2人も、其処に連れ去られたと考えられます。」

円堂が拳を握りしめる。そんな話を聞いた後、するべき事は決まっている。

円「皆!行くぞ!!」

オオ、と全員が返事をする。

マネージャーは帰りを待つ事になった。

秋「瑠璃花さんは、行くの?」

瑠「私にも、別の目的があるから…。」

冬「何で、チームを離れてたんですか?」

瑠璃花が振り返る。微笑して答えた。

―愛しき者の復活を、防ぐため。

―仲間の死を、防ぐため…。

と。



マグニード山の入り口。

先頭を走っていた瑠璃花が足を止める。また、気味の悪い2人の老人が立っていた。

老「ほぉ、なかなか速かったの。」

塔「あーっ!!お前らっ!!!」

塔子が指を指す。そしてこの2人が伝承の鍵を押しつけたのだと説明した。興奮して殴りかかろうとする彼女を、円堂が止めた。

円「塔子、落ち着け!」

塔「うっ…ー!!」

魁渡が老人を睨んで、一歩前へ出る。

魁「2人を、連れ戻すのが先だ。リカと音無は何処に居る。」

マ(魁渡ってこんな真剣な態度も取るんだ…)

老人がふぉっふぉふぉ、と笑う。その態度が気に食わないのか、土方が苛立ち始める。

鬼「春奈は必ず連れ戻す…!」

佐「鬼道、その意気だ。天使よりも、悪魔よりも強い物は人間の絆だって事を、証明してやろう!」

老人が微笑を顔に焼き付けたまま、それぞれの進路を指さした。

二手に分かれ、白組は魔界へ、赤組は天界へ行く事に。

円「瑠璃花と魁渡は…」

魁「話し合って瑠璃姉は下、俺は上に行く事にしたぜ☆」

マ(さっきと全然態度が違う様な気が…)

瑠璃花→魔界
魁渡 →天界


瑠「キャプテン、メテオが暴走しない様に見てて下さい★」

円「え、ああ…分かった。」

黒いオーラが見えたのか、円堂は若干引きながら答える。が、瑠璃花は直後、何時もの顔へ戻り、白組の方に駆け出す。

円(…瑠璃花は伝承の細かい所まで知っていた。来たタイミングも、まるでこうなっている事が分かっていたみたいだ…)

彼女達は何を知ったのか、何のために戻って来たのか、円堂には分からない。それでも、彼女を再び迎え入れた。

瑠「鬼道さん、よろしくお願いします。」

鬼「!…ああ。」

聞きたい事は沢山ある、そんな表情。それでも彼女は知った上で、鬼道の白組へ入る事を選択した。

鬼「行くぞ!!」

鬼道の声が響く。

2つのチームが、マグニード山へ入って行った。