[イナズマ]多分…私は、貴方を愛しています

作者/伊莉寿(元・西木桜)

*小説No.2 すまいるカノン~ずっとずっと響き続けるメロディーを~プロローグ


カリカリ、とシャーペンをひたすらに動かす音が部屋に響く。
タイマーが鳴った。ようやくか、と安堵して水色のタイマーに手を伸ばした。宿題の終わりを告げる。

少女にとって型にはまった生活は退屈でしかなかった。もう何年も周りに従って流れに乗ってと従順な優等生で来たが、飽き飽きとしていた。くるくる、とシルバーのシャーペンを回してみる。暇さえあればやって来たからか、なかなか落ちない。
何か刺激がほしい、そう思っていた矢先に祖母が送ってきた段ボールの荷物が目に入った。昨晩届いて開けるのを忘れていた物だ。

白い壁紙に薄水色のカーテン、木製のベッド。勉強机には小さなプラスチックのペンケース、隣に本棚、シックなクローゼット。目立つ物が大して無い部屋の中で、それは異様に目立っていた。椅子から降りて勢いのまま少女はビリビリ、と派手な音を立てさせながら開ける。

目を見開いた。

ウェーブのかかった長い金髪を揺らして、微笑する。
正しく、今の自分にぴったりの物――可愛らしいブラウンにレースの付いたリュックサックだった。…それを取り出して、呟く。



「少しくらい………、良いよね?」



~初めて、優等生の道をそれてみようと思った~




*小説No.2 すまいるカノン~ずっとずっと響き続けるメロディーを~1


 FFIアジア予選。おもしろそうだな、と呟いてみる。
 僕の祖国は実は韓国だったりして、だから日本一を決める大会に出ていた過去が少し笑える。でも別に気にされなかったな…。まあこの話はおいといて…強力なFWがほしいな、参謀役で!代表で選ばれた中にいる奴らより、もっと強い奴…って考えて思いついたのはかつての敵2人。
 エイリア学園のマスターランクチームキャプテン、ガゼルとバーンだ。2人ならアジア予選を絶対勝てる力を持ってるだろう。日本に居るんだろうな、早速連絡を取ってみよう!!

「pipipi...」
「!」

 今まさに取ろうとしていた携帯が震えた。液晶に現れた番号は、去年の正月に登録して以来一度も現れた事の無い番号だった。不思議に思ったけど、とにかく出てみる。

「こんにちは…」
『照美君、シレーナから連絡貰って無い?!』

 シレーナ。親戚のおばさんは、久しぶりな名前を口にした。因みに本名は詩麗奈でシレーナはあだ名に近い。
 聞いた瞬間に彼女の姿が思い出された。大して近くも無い血縁関係なのに、恐ろしい程僕に似ている彼女。ウェーブのかかった金髪に赤と金の目、そして美しく可愛らしい…何故か嫌われてるけど^^;

「声忘れそうな位、連絡とって無いですよ。」
『…そう、照美君の所でも無いのね…』
「どうかしたんですか?優等生の詩麗奈が…」
『家出。』

 …すごくびっくりした。
 優等生で周りに従順な彼女が?!家出なんて考えられない、何か問題でもあったのかと思ったけどおばさんが言うには突然消えてしまったらしい。彼女の祖母が贈った段ボールの中身が無くなっていたから中身を問い合わせるとリュックサックだったと言う。成程、家出だな。

『連絡があったら言ってね…』
「はい。」

 結構参った声だった。何だかおばさんが哀れに思えて来て…。電話を切ると、僕は考え込んだ。

 連絡してみるかな…でも出るかな^^;
 出たらガゼル達に会いに行ってもらおう!うん良い案だ!!よし電話しよう!(思考回路どうなってるんだby作者)

「詩麗奈の電話番号は…」