ダーク・ファンタジー小説

ショタくんの反撃!
日時: 2018/09/04 23:27
名前: 立花 ◆FaxflHSkao





 可愛くて、可愛すぎて、あの頃天使だったショタくんは、
 成長した姿で言うのです。「もう、俺は子供じゃない!」と。










「 お客様 」


 すーぱーうるとらすぺしゃるさんくす!!!!!!!!!!!!!!(意味不明)
 コメントありがとうございます。励みになります。
 読んでくださる皆様もありがとうございます。もしよろしければ、もう暫くお付き合いくださいませ。

■電波 様
□小夜 鳴子 様






藍色の宝石 【中編集】/5作品目

(1作品目)優しい蝉が死んだ夏 >>003
(2作品目) 深青ちゃんは憂鬱だ。 >>029

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Re: ショタくんの反撃!「その6」 ( No.67 )
日時: 2018/10/04 23:23
名前: 立花 ◆FaxflHSkao

「高校の文化祭?」

 休憩室でコーヒーを飲みながら、潮見が私の言葉を繰り返し呟いた。

「そう、ショタくんがねえ仕事でイベントするんだって。で、私に来てほしいんだって」
「ふうん。じゃあ、行ってやればいいじゃん」
「潮見はそう思うんだ」
「なに、俺に止めてほしかったの、おまえ?」

 潮見が紙コップに入ったコーヒーを一気に飲み干して、ごみ箱に緩い曲線を描いて放り捨てた。どや顔をして見せた潮見に少しだけイラっとして、私はごほんと大きな咳ばらいを一つしてみせた。

「そうじゃなくて、潮見についてきてほしかったんですぅ」
「それって、そのショタくんが出るっていう文化祭のイベントの話?」
「そう。潮見が私の彼氏役で、もうショタくんには可能性がないって、ちゃんと教えてあげないと」
「ショタくんにはお前が俺のこと好きじゃないって言ってるんだろ。なら矛盾するんじゃねえの」
「それでも、どうしようもないじゃん。私はきっと、早くショタくんの記憶から消えないといけない」


 泣きそうになる私の頭をぐしゃぐしゃと撫でた潮見は、少し切なそうな表情で「わかった」と呟いた。潮見は全部知ってるから、きっと私の味方でいてくれるのだ。だから、私はそれに甘えてしまう。甘えちゃいけないって分かってるのに、それなのに。

「可愛い可愛いショタくんなら、純菜は愛せただろうにな」


 潮見はスマートフォンを少しだけいじって、ポケットにしまうとすぐに休憩室から出て行った。きっと煙草でも吸いに行ったのだろう。私もコーヒーを飲み終えると席を立って、オフィスのほうに戻った。パソコンの前に戻ると、なぜか心が落ち着く。仕事をしている時だけ忘れられるこの感情を、ショタくんが来るまでは私は胸の奥深くに隠していた。でも、もうどうしようもない。ショタくんがゆっくり開けてしまう。無理やりこじ開けられていくこの感情の正体を私は知っていた。思い出したくなかったのに。

「そうだよ、私は可愛いショタくんなら愛せたんだよ」





 ■


「どうしよう、潮見、このジャンル沼だったよ」
「お前、擬人化系すぐに沼落ちするよな」
「やっばい、このキャラめちゃんこ可愛くない? これ天使だよ」
「ああ、でも可愛いな。うん、アリかも」
「これはメイトいかなきゃだよ、メディア系でドラマCD発売中だって、買うからちょっと帰りATM寄っていい?」
「ご利用は計画的に、な」


 はーい、と右手を大きく上げて、会社を出た。近くのコンビニによってキャッシュカードで数万円を下ろす。このお金がたった一日で泡となって消えていくのは、オタクならば仕方がないことだ。これが私たちの平和。私たちの推しへの貢ぎが世界を救うのだ。

「そうだ、来週の日曜日の待ち合わせって、お前んちまで迎えに行っていいの?」
「え、もしかして潮見が車で送ってくれる感じ?」
「そのつもりだった」
「まじかよ神じゃん。潮見君大好き」
「嘘つけ。お前が好きなのは――」

 潮見が開いた口を私が勢いよく掌でふさいだ。何も言わないでほしい、何も思い出させないでほしい、きっと私の気持ちが伝わったのだろう。潮見はごめん、と短く呟いて私の前をスタスタと歩いて行った。

 メイトで二人で合計○万円使ったことは、きっと二人でお酒を飲んでるころにはもうすっかり忘れているのだろう。うん、仕方がない。そして二人して新ジャンルの沼に浸かって、挙句次の日にはそのジャンルの話しかしなくなってることは、もう最初の段階で分かり切っていたことだった。

Re: ショタくんの反撃!「その7」 ( No.68 )
日時: 2018/10/18 23:28
名前: 立花 ◆FaxflHSkao

 チャイムが鳴って、玄関の扉を開けると、いつものスーツ姿からは想像できないちょっと気崩したチャラ潮見が出てきて、何気にお洒落をした私をじろじろ見た後軽く鼻で笑った彼は「行くか」と短く呟いて振り返った。
 ちょっとは可愛いとか、似合ってるとか言えよ、というツッコミをごくんと飲み込んで私は鍵をかけて彼の背中を追った。車内に流れるアニメソングはもちろん人気アニメのものばかりで、二人で大合唱しながら文化祭へ向かった。と、同時にまだ潮見には彼女はできないのだなと私は悟ったのだった。

「昨日さ、例のショタくんの載ってる雑誌みたんだわ」
「へえ。潮見意外とミーハーだね」
「で、雑誌のインタビュー欄で「初恋の人は?」ってのがあったわけ」
「え、めっちゃ嫌な予感するこわい」
「初恋は近所に住んでたお姉ちゃんです。いつも優しく頭を撫でてくれた記憶があります。だってさ。愛されてんな、現在形で」
「やめてよ、笑わないでよ。だってショタくんのショタ当時は本当にショタだったんだもん」
「やめろお前の脳内の言語化が下手すぎる」

 校舎の近くまで来ると案内の生徒がこちらに近づいてきて「このまままっすぐで〜」と駐車場になる運動場の場所を教えてくれた。無事到着して潮見がゆっくりブレーキを踏む。不意に見えた煙草の箱を見て「吸うんだ」と私が聞くと、「禁煙中」とそっと潮見は目を逸らして車から先に出た。私もドアをして彼を追いかける。女の子をおいていくとは、モテないな、と心の中で潮見を査定しながら一人盛り上がってるとそれに気づいた潮見が溜息交じりに「お前もな」と口パクで言ってきた。さすが潮見、わかってる。

「ショタくんのトークショーは十四時からだって。それまでどうする?」
「は、デートするだろ?」
「やめて真顔で言わないで。面白いから」
「今日は俺車出したから模擬店の買い食いはお前持ちかなあ。俺、たこ焼きと焼きそばと、フランクフルト食べてえ。腹減ったわ」

 潮見が文化祭のしおりを見ながら嬉しそうに模擬店に心を躍らせてる。私もこんな楽しそうな若者のイベントなんて何年ぶりだろう。今の年齢から巻き戻そうといちにーと指で数えてると心がとても虚しくなったので途中で中断してかぶりを振った。

「あ、潮見これ見て」
「なに?」
「お化け屋敷だって。面白そうじゃん、潮見行きたいよね。うん私も行きたい。よし行こう」
「おい待て。それは数か月映画鑑賞会でお前がホラー映画を借りてきて俺が絶叫したのを覚えていての悪行か」
「あの時の潮見は史上最高に可愛かったよ。あれでショタだったら私潮見抱けるわ」
「……純菜はもっといい子だと思ってた。そしてお前はとうとう自分の性別もわからなくなったか。とりあえず一回どぶ沼に落ちて来い」


 潮見の腕を引っ張って私は階段を上る。まるでカップルのように周りからは見えるだろう。残念、私たちは友達以上にはならないんだよ、と言い訳してお化け屋敷の長蛇の列の最後尾に並んだ。ぎゃああああああああと聞こえてきた悲鳴に潮見はがたがたと体を震わせて、それを見てると最高に気分が昂った。お化け屋敷から出てきて涙目になってる潮見を連写して、USBにちゃんと保存して家宝にせねばと、考えてるだけで私の口角は上に大きく引っ張られた。

Re: ショタくんの反撃! ( No.69 )
日時: 2018/10/22 08:32
名前: 爆走魔王ナオキ ◆UuU8VWSBGw

まさに私のすきなジャンルドンピシャです
応援いていますのでこれからもがんばって執筆お願いいたします

Re: ショタくんの反撃! ( No.70 )
日時: 2018/11/08 22:01
名前: 立花 ◆FaxflHSkao



 爆走魔王ナオキ様


 コメントありがとうございます。
 私自身もこういうジャンルのお話が大好きなので、楽しんで書かせていただいてます。
 年内には完結する予定ですので、もうしばらくお付き合いいただけると嬉しいです。ありがとうございました。

Re: ショタくんの反撃!「その8」 ( No.71 )
日時: 2018/11/10 15:14
名前: 立花 ◆FaxflHSkao

「お前は悪魔か」
「何言ってんの、潮見。はい、チーズ」
「って何写真撮ってんだよ、このあほんだらっ」

 私のスマートフォンを取り上げた潮見は大きなため息をついて、ゴミ箱に向かっていく。全力で潮見のお尻に蹴りを入れてスマートフォンをとり返した私は、不意に見えたショタくんのトークショーのチラシに少しだけ心を揺さぶられる。ショタくんに見に来てほしいとは言われたけれど、別に私がこの場所に来る必要はなかったのかもしれない。私がこの先ショタくんに関わっても彼の幸せにはならない。わかっていて、わざと傷つけるために潮見とこの場所に来たなんてほんと非道だと思った。後の祭りだけど。

「ショタくんはさ、この前まで普通の高校生だったんだよ」
「らしいな。芸能活動始めたのは高校卒業してからって雑誌に書いてたわ」
「待って、潮見はどうしてそんなにショタくんに詳しいの? ホモなの?」
「おい、同僚を勝手にホモにすんなこの腐女子が」

 潮見に唐揚げを奢らせて食べながら歩いていると、ショタくんのトークショーの会場になる体育館にたくさん人が集まっているのが見えた。ほら、もう人気者じゃん、ショタくんは。
 芸能人になったOBが来ると知って見に来たミーハーな女子生徒。ショタくんのファンだろう彼がデザインした公式Tシャツを着た女性。私が見に来る必要性なんて本当はない。私の応援なんかより、きっと彼女たちの「好き」がショタくんの力になるから。

 そう思うと、なんだか心はモヤモヤして残っていた唐揚げを全部口の中に突っ込んで飲み込んだ。

 「馬鹿みたいだ、わたし」




 □


 笑顔のショタくんが生徒のインタビューに答える。
 ちょっとでもかっこいい台詞を吐くと、私の周りを囲んだ女の子たちがキャーと黄色い声をあげる。

「お前はカッコいいショタくんは好きじゃないんだな」


 隣でじっとショタくんを見る潮見が、視線を動かすことなく私に声をかけてきた。私はうん、とうなづいて「私が好きなショタくんはもういないんだよ」と、言葉を返した。
 会場は人でいっぱいで、人数制限がかけられたらしい。二階の立ち見もいっぱいで、体育館に入れない生徒もたくさんいたとか。そんなに遠い存在になってしまったショタくんは、もう昔の彼とは違う人間だから。

 だから、私はさよならを言わなきゃいけない。
 かっこいいショタくんを望む世界に、私みたいな人間は必要ない。
 これからのショタくんに、私はきっと必要ない。

 ショタくんのトークショーが終わった。私のスマートフォンに入った「会いたい」というショタくんのメッセージ。潮見の腕を引っ張って、私は彼の楽屋の教室に行く。別れの言葉を何度も心の中で繰り返して、にっこり笑ってさよならを言う練習はもう完ぺきだった。

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