ダーク・ファンタジー小説

ただ、日常を綴る。
日時: 2019/03/14 22:03
名前: 立花 ◆FaxflHSkao



 可愛くて、可愛すぎて、あの頃天使だったショタくんは、
 成長した姿で言うのです。「もう、俺は子供じゃない!」と。










「 お客様 」


 すーぱーうるとらすぺしゃるさんくす!!!!!!!!!!!!!!(意味不明)
 コメントありがとうございます。励みになります。
 読んでくださる皆様もありがとうございます。もしよろしければ、もう暫くお付き合いくださいませ。

■電波 様
□小夜 鳴子 様






藍色の宝石 【中編集】/5作品目

(1作品目)優しい蝉が死んだ夏 >>003
(2作品目) 深青ちゃんは憂鬱だ。 >>029

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Re: ショタくんの反撃!「その10」 ( No.73 )
日時: 2019/03/19 16:10
名前: 立花 ◆FaxflHSkao

「え、待ってこの語りあと何時間続く感じ?」
「ショタくん、いまいいところなのにめっちゃ普通にぶった切ってくるね」
「だって過去編って長くなったら飽きるじゃん。俺そろそろ飽きてきた」

 早いよ、というツッコミをぐっと飲みこんで私は大きなため息をついた。隣で菩薩顔をしていた潮見が私のじとっとした視線に気づいて、はあと同じような深いため息をついたあとショタくんにぐんっと近づいた。
 顔の距離が、鼻と鼻がかすれあうくらいまで一気に近づいて、ショタくんが思わず仰け反る。

「ちょっ、あんた何急に」
「ほら、ショタくん見てみろ」

 潮見が私の顔を思いっきり指さす。潮見とショタくんの視線が一気に私に集まって、私は動揺していた。

「見ろ、純菜のあの嬉しそうな顔を。あいつの今の脳内を教えてやろうか。「やばい美形と美形があっあっつキスしろキースキース!!!」って思ってる」
「うそ、潮見エスパーじゃん。ほらちゅーして」
「しねーわ」

 潮見が私に遠慮なしにチョップをかます。ショタくんは呆気にとられたのか、言葉をなくしてこちらをじっと見ている。

「俺は女を女って意識できない人間なわけ。別に男が好きなわけでもないけど、女を抱きたいとかそういう感情を抱かない。純菜とおんなじなんだ、無理やり「人を好きにならなきゃおかしい世界」にはめられて逃げ道を絶たれて苦しんでた。そんなこんなで俺たちはすぐに仲良くなった、だってお互い楽だから。好きにならないって関係がすっげえ楽だったから」

 潮見が連ねる言葉は私の救いの言葉だった。ショタくんはよくわかんないって顔をしているけれど、それが普通なんだとも私たちはちゃんとわかっている。
 私たちは「楽」がしたかった。面倒ごとを避けて、逃げてただけだった。自分を守ることに必死で自分を好いてくれる人の気持ちを考えることができなくて、きっと今までにたくさんの人を傷つけてきた。それでも、それを「仕方ない」ことだと無理に割り切って前に進んで、そうしなきゃどうしようもなかったから。
 言葉を失ったショタくんが、伏せていた顔をゆっくり上げた。私と視線がようやく交差して、申し訳なさそうに顔をゆがませた私に優しく笑いかけてくれる。


「苦しかったんだね。お姉ちゃんは。何も知らなくてごめんね」




 もう、好きって言わないよ。と、ショタくんはそう言って、私の前から姿を消した。
 ほんとのほんとに短い短い、ショタくんとの再会の物語。

Re: ショタくんの反撃!「その11」 ( No.74 )
日時: 2019/01/01 21:59
名前: 立花 ◆FaxflHSkao

「そんなにショックだったのか、じゃあそれは恋じゃないのか」

 潮見が溜息交じりにそう言って、自動販売機で買った珈琲の缶を私の頬にあてた。

「恋だったら、そしたら潮見は私ともう一緒にいてくれないでしょ」
「……純菜はまださ、恋愛イコール幸せって信じてるんじゃないの」

 被せるように言葉を紡いだ潮見が私の顔をじいっと見つめて、その顔がとても綺麗で、私は思わず赤面してしまった。あつあつの珈琲を口に含んで、一気に飲み込む。

「潮見はイケメンだよね。乙女ゲーにいたら即攻略狙いたくなるタイプ」
「褒められてる気がしないんだけど」
「ほんと顔はイケメンだし、行動はイケメンだし、ちょっとヘタレかツンデレだったらもろ推せる」
「お前はほんとオタクだな。平和だよ」

 潮見が溜息をつく。珈琲の苦みはいつまでたっても好きにはなれない。大人になったらきっとおいしく感じるんだろうな、好きになるんだろうなって、そう思ってたけど、そんな未来はこなかった。
 私が描いた理想は、現実にはならないから。




「そうやって、冗談言って、笑いあって。そんな楽しい時間が永遠続いたらそれがハッピーエンドでいいんじゃないかって、私はそう思った。ただそれだけなのに、全部否定されて、お前は不良品だって言われて、もう何が正解なのかわからないんだもん」


 飲み終わったコーヒーの缶をごみ箱をめがけて投げた。ふわっと弧を描いてごみ箱の縁に当たって地面にぽとっと落ちる。雨上がりの湿った砂がへばりついて、拾いに行った私の手が少し汚れた。まるで私みたいだなとふとそんなことを考えて缶をぎゅっと強く握りしめた。
 ぐちゃぐちゃになった珈琲の缶を今度は力強くごみ箱に投げつけて私は大きな声で叫んだ。馬鹿みたいだ。こんなどうでもいいことで悩んで。結論は出てた。それなのに、グダグダ悩んで、大人なのに子供みたい。

「でもね、それでもいいと思えたんだっ。だって」

 ベンチに腰掛けたまま、私をじっと見つめる潮見の顔が、夕日の影で少し暗くて、どんな表情をしているのかあんまりわからなかった。

「私には潮見がいるから」

 ずっと友達でいてね、と私が手を伸ばすと潮見は小さく笑って私の手を握ってくれた。
 瞬間、激痛が走った。

「いやあああああああああああああっ、痛っ」

 握りつぶされるのかと思った。思いっきり突き放して私は潮見の顔を見た。その目はとても冷酷な、まるで私を軽蔑してるかのような目だった。

「お前はやっぱり残酷だよな」



 ほら、世界はやっぱり私を否定するんじゃないか。
 夕日が沈んだのか暗くなった公園で、私の同僚は少しだけ悲しそうに笑って、言った。


「俺もずっとお前と友達でいたかったよ」

Re: ショタくんの反撃!「その12」(完) ( No.75 )
日時: 2019/01/05 23:13
名前: 立花 ◆FaxflHSkao

 潮見が私を捨てて、いつかいなくなるなんて、そんな悲しい未来を私は予想にもしてなかったから、とにかくショックだった。まるで振られた女みたいに家に帰って泣きじゃくって、その日一番辛かったはずのショタくんのことなんて忘れてひたすらに後悔した。
 潮見が私のことを友達と思えないといったのは、私がどうでもいいことで悩んでしまったせいだと思う。ショタくんへの感情が「恋」であるわけがないのに、わたしはグダグダ悩んで、きっとそれが潮見が嫌いな恋愛脳の馬鹿女と重なったんだんだ。
 ああ、本当に馬鹿だ、私は。一番大事だったものは、脆いって、簡単に壊れちゃうって分かってたはずなのに。私から手放したも同然だった。今の私は潮見の一番嫌いな私だから。


「まじつらい。しんどい。潮見の馬鹿ああっ」

 潮見と一緒に買いに行った同人誌をベッドに投げ込んで、イライラを発散させたけれど、すぐに本が破けてないか折れてないか気になってベッドに走りこむ。
 ショタがいちゃこらしてる幸せな表紙を見て、これを買いにコミケに行った日のことを思い出す。朝早くから潮見と一緒に電車を乗り継いで、長い行列に並んで、会場でスケブ書いてもらって感動したあの日のことを、昨日のことのように思い出せる。

 楽しかった。潮見と一緒にいる時間は、私の人生の全てだったんだ。

「ねぇ、潮見。私が潮見のこと、好きっていったら正解なのかなぁ」






 ■

「で、反省した?」

 翌日、出社するといつもより早く潮見が来ていて、びくびくしていた私を軽く鼻で笑った。そのあと騙されていたことに気づいた私がかーっと赤面したのを見て、今度は子供みたいに無邪気に笑って見せた。

「酷いよ、潮見。私めちゃくちゃショックだったんだから」
「でも、俺は嘘は言ってないし。俺は悪くないだろ、そういう約束だ」


 潮見はさらっとそう言って、私から離れていく。
 茶化して、誤魔化して、私を少しずつ傍から遠ざけていくのだ。

 パソコンの前に座って、深く深呼吸をする。キーボードに手を置くけれど、心は全然集中できない。山積みの資料を片づけても、いつものように終わった後に潮見と飲みに行けるとは限らないんだということを思うと、呼吸が苦しくなる。酸素はたくさんあるはずなのに、吸い込んでいるのは二酸化炭素だけな感じ。気持悪い。




 ぶるるとスマートフォンが振動して、画面を見ると通知には「ショタん」と出てきて私は衝撃のあまり声が漏れそうになった。休憩時間になって私がかけなおすと、何もなかったかのようにショタくんが「もしもし」と電話に出た。この前のことなんて全くなかったかのようだ。

『お姉ちゃん、なんか元気ない? とうとう潮見って奴に告られた?』
「待ってショタくん怖い。って、そもそも潮見は私のことなんか好きじゃないよ。だって、それが私たちの約束だもん」
『なに、お互い好きにならないっていう約束で友達やってんの。それって面倒くさくない、っていうか脆すぎるじゃん』
「もろい……?」

 ショタくんが呆れたようにため息をつく。
 
『最初からわかってたんでしょ』



 自分が恋ができないんじゃなくて、まだ知らないだけだって。
 好きって感情を知らないだけだって、わかってたくせに。


 
 ショタくんの言葉は図星で、私はもう何も誤魔化せなくなった自分の感情を全部吐き出して、すっきりしたいって思った。ずるをした私が全部悪かったって、やっと気づけたんだ。


「ショタくんごめんね」
『……やめてよ、虚しくなるじゃん』
「ショタくんがショタじゃなくても、私は永遠に君のことが、翔太くんのことが大切だよ」


 電話越しでショタくんの笑い声が聞こえて、うん、俺もだよってショタくんのささやく声が私の耳を擽った。どきどきする感情はやっぱりまだわかんないし、何かを変えたいともまだ思わない。
 だけど、ひとつだけわかったことがある。



 禁煙中だとか言ったくせに喫煙ルームにいる潮見を見つけて、私は彼の手を思いっきり引っ張った。驚いたように目を見開いた潮見が私を冷めた目で見てきても私はもう気にしない。

「好きなら好きって言え、馬鹿っ」

 ずっと友達でいるのは無理みたい。そんなの最初から分かっていたよ。
 何気なく一緒にいるあの日常はずっと続かないって分かってた。お互いに好きな人ができたら終わりなんてそんなの友達じゃないって。
 
 潮見の襟首を思いっきり引っ張って、彼の顔を覗いた。少しだけ困ったようにも見えるその表情に、私の胸はぎゅっと握りつぶされる。


「じゃあ好きだよ、ばあああああああかっ」


 子供みたいに、ようやく諦めてやりましたよと言わんばかりに私に思いっきりキスした潮見は、そういえば男だったんだなって、出会ってもう何年も経つのにようやく私はそんな一番大事なことに気づいた。
 
 私が潮見のことを手放したくないのは、好きだからとかそんな簡単な感情じゃなくて、ただ、一緒にいたいからだなんて、潮見に言ったら馬鹿にされるんだろうな。真っ赤になった私の同僚は、しゃがみこんで悔しそうに「降参だ」と呟く。ようやく、私たちの止まっていた関係が、歯車がかみ合っていく。なんだか、少しだけ面白そうだなって、そう思った。



 おわり。


Re: ショタくんの反撃!【完結】 ( No.76 )
日時: 2019/01/11 00:20
名前: 立花 ◆FaxflHSkao






 ショタくんの反撃!が完結しました。約半年という長い間、無事書き切れた事実に驚きを隠せません。うそ、途中であきらめなかったぞ、すごい。
 また時間ができた時にいろいろまとめ等しますね。次回は二月か三月くらいに更新始めたいなと考えております。しばらくはコメライで生息してますので、また機会があればこちらのほうの小説も読んでいただけると幸いです。


 ショタくんの反撃!は私の趣味と実益を兼ねた作品でございます。ショタっていいよね、でもショタ受けはNGなんだよね、っていう私のオタとしての感情と、恋愛って面倒くさいしハッピーエンドは本当に結婚なのであろうかという地味な悩みから派生した作品です。好きって絶対な感情じゃないし、いつか人を好きになれるまで、それまで自分の好きなように生きたっていいじゃないか。絶対に恋愛しなきゃいけない世界みたいなこの世界は本当に理不尽だなみたいな。
 お互い好きにならない契約だった二人が本当にゆっくりゆっくり進んでいくお話の序章みたいな、そんなお話です。個人的に書いてて楽しいお話でした。読んでくださった皆様、ありがとうございました。

Re: ただ、日常を綴る。 ( No.77 )
日時: 2019/03/14 22:39
名前: 立花 ◆FaxflHSkao

 世界は優しくないから私は今日も息をするたび咳き込んで、咽込んで、首の皮膚に触れた冷たい右手は、今日も私を苦しめるきっかけにしかならない。
 パソコンの前に座ってキーボードを軽くたたく。学校で習ったポジションとかはもう忘れた。どっかの部分にぽっちんがあって、そこに人差し指を置くといいんだよとか、そんなのはもうどうでもいい。打ちやすいように打てばいいじゃん。自己流のタイピングは他の人から見て歪だったみたいで、会社の人からは面白いねと笑われた。どうでもいい。

 親が離婚したのはちっちゃいころだって、もうあんまり覚えてない。お父さんがダメな人だったってことだけはしっかり覚えてる。たまに会うお父さんはよくお酒を飲む人で、陽気で馬鹿みたいな人だ。いや、馬鹿なんだけど。一緒にご飯を食べに行くと、どうでもいいことで店員にケチつけようとしたり、絡んだりする。私は飲食店で働いてるからそういうの見ると血反吐がでる。そういう人間は一回死んでほしい。





 □ いちぺーじめ






「花ちゃんは友達いないよね」

 うん、そうだよ。クラスメートが私のことをどう見ていたか、ちゃんとは知らない。クラスカーストの上位の人はみんな馬鹿そうだったからあんまり喋らなかった。ちょっと馬鹿な高校に進学したのは中学の同級生とおんなじ学校に行きたくなかったから。わざわざ船を使って高校に通ってた自分を今ではおかしな奴としか思えないけれど。
 友達はいなかった。誰かに依存するのがいやだったから。中学で一番仲の良かった友達とは高校三年間一回も連絡は取ってない。頭のいい学校に行って、きっと頭のいい大学にいったんだろうなと、もうブロックされたであろうラインのアカウントを見て地味にそんなことを考えてる。

 仕事終わりにはいつも死にたいと思う。今日も十時間働いて、明日も十時間働く。一日中職場で上司に媚びをうって、それでも罵声を浴びせられる。もういやだ、もういやだ。何回も何回もそう叫びながらパソコンの前に座る。人工の光は目にはよろしくないらしい。だから目が悪くなったのだろうか。コンタクトを外して、もう三年も使っている眼鏡をかけて、いつものホームページを開ける。
 

 明日は今日よりいい日になりますように。
 願わくば、明日ぽっくり死んでいますように。毎日決まった数の薬を飲んで、糞不味い漢方を口の中に放り込む。肺炎にかかってもう何日目だっけ。今日も仕事は休めなかった。
 パソコンを閉じて、ベッドに飛び込んだらすぐに瞼は力を失った。おはよう。あと六時間後、また地獄が始まるんだよ。

 

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