コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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偽家族コンプレックス
日時: 2013/09/26 08:06
名前: 葉月 ◆S/72wRvvfc (ID: cm34dabg)

†登場人物†



御崎 佳音 MISAKI KANON

朝香 陸 ASAKA RIKU

椎名 星夜 SIINA SEIYA

朝香 空 ASAKA SORA

藤宮 堅都 HUZIMIYA KENTO

柏倉 瑠璃 KASIKURA RURI



†プロローグ†



紅一点の少女は幼なじみが一番大切で

双子の片割れは少女の笑顔が大好きで

冷たくても優しい少年は自分を知らなくて

双子の片割れはずっとこの関係が続いて欲しくて

ポジティブ少年は死んだ少女を忘れられなくて

天使になった女の子の面影はいつまでも残っていて


偽の家族の少年少女は何を想って育つのだろう————



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Re: 偽家族コンプレックス ( No.22 )
日時: 2013/12/14 19:36
名前: 葉月 ◆S/72wRvvfc (ID: cm34dabg)

【第二話~歯車が消えて止まった時計~】


■021■


「んじゃあ、行ってくるー」

 佳音と瑠璃の約束した土曜日の朝。女子二人組より少し早く出かける人達がいた。少年サッカー県予選決勝に向かう陸と、その他応援団である星夜&空&堅都である。
 ライトブルーの生地に白地で名前入りのユニフォームにジャージの上を着た陸が玄関で言う。見送りは佳音と瑠璃、それに玲子だ。慎太郎は昨晩から両親の住む家に泊まりがけで遊びに行っている。どうやら、慎太郎の姉夫婦とも集まるらしい。

「頑張ってね」
「見に行けなくてごめんねー」
「怪我しないようにするんだよ」

 各々が見送りの言葉を軽く届けると、陸達四人は手を振って最寄り駅に歩いて行った。

「佳音ちゃんと瑠璃ちゃんは、何時頃に出かけるのかしら?」
「うんとねぇー、三十分後くらいかな? すぐ出るよ」

 玲子おばあちゃんの質問に佳音が答えて、瑠璃も肯定の意味で頷いた。

「そう。じゃあ、帰って来たら焼きりんご作りましょう」
「あ、そう言えば、紅玉もらったんだ!」
「陸の好物じゃん! 勝っても負けてもプレゼントだね」

 三人は、顔を見合わせて嬉しそうに笑った。
 毎年慎太郎が焼きりんご用のりんごである紅玉を買ってきて、佳音と瑠璃が作るのだが、今年はご近所さんに瑠璃がもらったためにそれで作ろうということだ。

「焼きりんご大好き〜」

 甘酸っぱい感じと暖かいのが良い、と思わずよだれが出てきそうになる佳音。

「佳音、そういうことなら急いで行ってこよ」

 瑠璃の言葉に、佳音はまだ部屋着姿の自分を見て、苦笑した。そして、二人して着替えるために自室に戻る。
 女子部屋に戻った佳音は何を着ようかと思案している。右手には花模様のついたブラウスに赤いチェックのミニスカート、左手には裾の長いベージュのドルマンスリーブに黒いタイツ。

「どっちも何かしっくりこないんだよなぁー」
「あ、そうだ。佳音、これいる?」

 悩む佳音に瑠璃が差し出したのは、薄いレースが襟元に小さく付く白いワンピース。

「え、うそ、くれるの?!」
「私もう着れないんだよね」

 残念そうに言う瑠璃に佳音がじとーっとした目を向ける。そして「へ?」と言う反応の瑠璃の、スタイルの良さ、身長の高さを羨ましそうに見つめて、ため息をもらした。

「背が高いって良いなぁ。ありがたくもらうよ」
「ありがたそうじゃ無いんですけどー」
「うそうそ。じゃあ早速、今日はこれを着ていくことにしました!」

Re: 偽家族コンプレックス ( No.23 )
日時: 2013/12/12 07:48
名前: あんず ◆zaJDvpDzf6 (ID: WqZH6bso)

はじめまして!

結羽凛ゆうりんという名前でも活動してます、
あんずともうします!

結構前から読んでいたのですが、
コメントは迷惑なのだろうか…、と思い、
コメントをしてませんでした。

だけど、やっぱり面白すぎるので
コメントをさせていただきました!

個人的に陸好きですw

これからも応援してます(≧∇≦)

お気に入り登録と投票済みです(^^ゞ

では!

Re: 偽家族コンプレックス ( No.24 )
日時: 2013/12/13 07:57
名前: 葉月 ◆S/72wRvvfc (ID: cm34dabg)

あんず様


はじめまして、葉月です。
コメントありがとうございます。

拙い文章力ですが、それなりに更新も頑張るので
どうぞ応援よろしくお願い致します!

Re: 偽家族コンプレックス ( No.25 )
日時: 2013/12/14 19:35
名前: 葉月 ◆S/72wRvvfc (ID: cm34dabg)

■022■


 服選びから約一時間後、詩園の少女、御崎佳音と柏倉瑠璃は大手ショッピングモールの中で買い物という女子の楽しみにひたっていた。

「瑠璃ー! これ、このひよこちゃんの模様がすごい可愛い」
「佳音はこれにする? 私はこの香水柄かな」

 予定通りに和風のがま口小物入れを求めてやってきた、小物屋さん。
 ちょうど必需品入れほどのポーチサイズの物があり、柄をどうするか迷っているところだ。玲子へのプレゼント用のはすぐに桜と梅の気品の感じられる物と決まったのだが、自分達用がなかなか決まらない。

「え、でもね、でもね、この紅葉もキレイなのー!」

 どうやら西洋を取り入れた香水柄に決めたらしい瑠璃は、ひよこ柄と紅葉柄を交互に見てから呟いた。

「紅葉も良いけど、夏に使いにくくなぁい?」
「そっかぁー、うん、じゃあ、ひよこちゃんにする」
「オッケー。私、お会計してくるね」

 当たり前のように瑠璃は言い、三つの品を持ってレジに向かった。
 ここが少し普通の友達と違うところ。家族だから金銭も共通であり、佳音も何でも無いように自分の分も瑠璃に頼んだのだ。買う人が違うだけ、ぐらいということだ。

「はい、買ってきたよ」
「ありがとー。ね、お腹空いたから軽食とろうよ」

 佳音の案に瑠璃も賛成し、二人はフードコートへと行くこと
 が、しかし、行ってみるとそこは大変混雑状態。マックにも蕎麦屋にもパン屋にも、長い長い行列が店に沿って並んでいる。テーブル席も、普段から混んでいることと休日ということもあり、家族連れだらけでもう一杯。

「どうするー?」
「高島屋の前の大通りってファミレスとかあるから、そこらへんにしちゃう?」

 思い出すように言う瑠璃は一見どちらでも良いように見えるが、実は眉根を寄せている。人の密集するこの場所から早く去りたいと思っているのだ。いわゆる、閉所恐怖症。

「うん。そうしよう」

 言いながら佳音は笑っている。瑠璃はぷぅっと頬を膨らませて赤くなった。

「んー!」
「ふ、はは……あ、れ?」

 何か言いたげなのだが口に出来ていない。
 瑠璃に可愛らしく睨まれながらクスクスとまだ笑う佳音が、自分の右肩に下げたバッグに振動を感じた。低い音のようなブルブルとした震え、バイブ音だ。

「えーとぉ?」

 パチッとボタンをはずしてバッグを開け、iPhoneを取り出す。

空『ヤッホー
  楽しんでる?』

星夜『陸は好調、一対〇で前半終了』

堅都『瑠璃!退屈だよー
   サッカー観戦より一緒に付いていきたかった!』

 取り出して緑ランプによってLINEと分かり、開いた時点でもう二回バイブ音が鳴った。
 例により家族チームのものである。空の顔文字が付いたものはいつもと同じで。星夜の必要最低限さは際立っていて。堅都も相変わらずだった。

瑠璃『楽しんでるよ!!』

佳音『私達の分も応援よろしくね』

 佳音と瑠璃は返事をする。
 と、瑠璃が不思議そうに言った。

「あのさ、星夜は試合に出ないの?」
「勉強に集中するからって練習してないんだって」

 ちょうど、堅都がもう一つのせた。

堅都『スルーとかひどいよ?!何でだー』

 二人はその堅都の発言に目を丸くした。そして、嬉しそうに楽しそうに微笑む。瑠璃が「行こう」と言ったことを合図にショッピングモールから出るために出入り口へと歩き出した。

Re: 偽家族コンプレックス ( No.26 )
日時: 2013/12/17 17:58
名前: 葉月 ◆S/72wRvvfc (ID: cm34dabg)

■023■


 佳音と瑠璃の行った高島屋はこの辺りでは大きめで有名なショッピングモールだ。その出入り口前にある大通りは車の通りが多く、人の人数もかなり多い。

「あ、えっとねぇー、ジョナサンが……あそこ! 良いでしょ?」

 赤信号が青に変わるのを待っている間、佳音はiPhoneで地図を見てから大通りを挟んだ向かいを指差して言う。佳音が指差した、かのファミリーレストラン、ジョナサンの大きな看板を見て瑠璃は頷いた。
 もうそろそろで青信号へと変わりそうになった時、佳音が突飛な声をあげた。

「あぁーっ!」
「はえっ?」

 あまりにもいきなりだったので、瑠璃まで肩をビクッとさせて不思議な声を発する。

「どうしよ〜」
「何っ?」
「焼きりんご用にシナモン買ってかなきゃいけないんだった」
「さっと買ってくれば?」

 瑠璃は待ってるから、と言い足した。

 それから佳音はたったっと走って行って、数分後に走って帰ってきた。使いやすい小瓶のシナモンを買ってきたためにビニール袋には入っておらず、バッグの中に入れてある。

「はい、丁度」

 大通り沿いの信号機の横で立っていた瑠璃は、横断歩道を渡った反対側の信号機の青色を見て言う。佳音が戻って買ってきた時には三回ほど赤青交互に順番が回っていた。
 まだ充分に時間は残っている青信号だが、二人は何となく速歩きになって渡る。

「良いのが買えてよかったぁ」
「だねー。喜んでくれるかな?」
「気持ちだけで嬉しい、とか言いそう」
「うんうん」

 玲子おばあちゃんの喜ぶ顔を想像しながら、佳音と瑠璃はウキウキしている。
 そして、明るい気分で道路の真ん中ぐらいまで、歩いた瞬間だった——。辺りの空気がざわっと震える。

「佳音ッ!」

 名前を叫ぶようにして呼ばれた佳音には、一瞬、何が起こったのか全く分からなかった。ただ、自分の左手側から、自分の何倍もの大きさで灰色にくすんだトラックが突っ込んでくるのが視界の端に映った、と理解するや否や身体がどんっと押されて宙を飛んだ感覚。
 佳音を押し飛ばしたのはもちろん瑠璃で、長い黒髪に隠れて表情は読みとれなかった。

「…………っ?!」

 トラックの進む道からは外れた佳音の眼には、瑠璃がひかれる様子が、白黒の映像のスローモーションのように『映って』いた。何よりも大切な存在の一つがえぐれるように崩れていく、そんな感触に頭の中が空白になった。
 横断歩道を渡り途中だった人、渡り終えた人、歩道の通行人。群衆が息を止めて見つめる中、瑠璃の身体はその身から溢れた鮮血にまみれて力無く地面に倒れた。

「あ……うっ…………るり……瑠璃ぃーッ」

 佳音は地べたに座り込んで数メートル先にある家族の姿を追うように手を伸ばして叫んだが、ガクッと芯が折れたように気を失った。
 二人の少女が散る大通りには、人々の声を欠き消すように佳音の叫びだけが響く。


——佳音の微かな記憶の隅に、赤い光と人々のざわめきが残っていた。


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