コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 偽家族コンプレックス
- 日時: 2013/09/26 08:06
- 名前: 葉月 ◆S/72wRvvfc (ID: cm34dabg)
†登場人物†
御崎 佳音 MISAKI KANON
朝香 陸 ASAKA RIKU
椎名 星夜 SIINA SEIYA
朝香 空 ASAKA SORA
藤宮 堅都 HUZIMIYA KENTO
柏倉 瑠璃 KASIKURA RURI
†プロローグ†
紅一点の少女は幼なじみが一番大切で
双子の片割れは少女の笑顔が大好きで
冷たくても優しい少年は自分を知らなくて
双子の片割れはずっとこの関係が続いて欲しくて
ポジティブ少年は死んだ少女を忘れられなくて
天使になった女の子の面影はいつまでも残っていて
偽の家族の少年少女は何を想って育つのだろう————
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- Re: 偽家族コンプレックス ( No.17 )
- 日時: 2013/11/25 11:21
- 名前: 葉月 ◆S/72wRvvfc (ID: cm34dabg)
■016■
佳音は自動で開くガラスの戸を抜けて受付ホールを見回していると、後ろに太い声が聞こえたので振り向く。一つにまとめた髪の毛がふわっと揺れて、白いうなじが一瞬見えた。
声の主は上下ともジャージ姿に身を包む五〜六十歳の男。
「お久しぶりです、田原さん」
「いやぁ、大きくなりよって……うん? そちらは彼女さん?」
どうやら星夜の知り合いのようだが、現役中学生の椎名星夜におじさんの知人とはレアだな、と思う佳音であった。『彼女』という言葉に目をぱちくりさせたが、すぐに意味を理解して誤解を解く。
「詩園の、御崎佳音です」
(八神さんのところの星夜君はしっていても私は知らないんだ……?)
詩園の、とあえて強調したのだが、格の差があるのかと気付いて若干落ち込む。陸によくレベルが違うと言われるが、その通りだと実感した。そして、知名度という問題まで出てくるのか、とか深く思考が回っていきそうだったのに、初老の男が声を上げた。
「ああ、佳音ちゃん! いやいや、皆すくすく育つもんだ」
「え、私のこと知ってるんですか……?!」
「もちろん。瑠璃ちゃんは元気かい? 昔よく君達と遊んだんだが、瑠璃ちゃんには怖がられていてねぇ。懐かしい懐かしい。多分、佳音ちゃんのように美人になってるだろうなぁ。今日は麦フェスに来たのか?」
「はい。色々とありまして……」
歩き出しながら星夜は応える。
突如饒舌になり始めたおじさんに佳音は驚いたが、全く覚えていなかった自分が少し恥ずかしかった。それに加えて美人とはお世辞と承知の上でも嬉しくて顔が火照る。そんな佳音の心情を察せない男が一人、この場に現れた。
「佳音、いつから美人になったんだよ」
嫌味な雰囲気の漂ってくる人物の顔が、振り向かずとも分かった。
「表では本性を明かさない万引き野郎さんは遅い到着ですねー」
昨日あった出来事を一言にひっくるめて棒読み。最近棒読みが特技となってきているような気がしなくもない佳音。言い返されて小さく笑った陸。
ポカンとする星夜の隣の田原さん。
「おや、今度は双子の一人だな。どっちだろうか……」
「はい? あ、陸ですけど。えっと……失礼ですが、お名前を」
佳音は適当に陸への殺気を消して黙る。陸はすぐさま仮面を被って訊ねる。
「なんだぁ、陸君にも忘れられちゃったか。田原大蔵、八神さんの旧友とでも言っておこう」
「慎太郎?」
とぼけた陸にすかさず佳音の声。
「おばあちゃんに決まってるでしょ」
「わざとだ」
「はいはい」
星夜はやり取りを軽く受け流して置いて、少し大きめのホールへと入った。
中に入ると、しぃんとした空域に入って『しまった』ような、この静けさを壊すのがもったいないような、そんな気持ちにさせられた。
三十分くらい経つと、地元に住む子供からお年寄りまで沢山の人が集まってきた。演奏会がメインで十六時開演となっているため、まだ始まらないからと出店を回っている。
「あーあ、お金持ってくれば良かったなぁ」
田原さんとは別れ、星夜は年上の青年達に混ざってリハーサル行った。つまり、ホールから追い出された佳音は陸と二人でぶらぶら歩いているのだ。
丁度ポップコーン屋の前を歩いていた時、佳音が残念そうに言った。
「ポップコーン、食べたい訳?」
「お祭りだもん。食べたいよ」
ふぅん、と少し間が開いてから陸がポップコーンを売っていたおばさんに二百円を差し出した。その行動に佳音が驚いていると、何とも無いように一パック買って来た。
「言っとくけど、二人で一つだから」
「あ……ありがと」
意外だったけれど、二つ買わないところは陸らしい。
正面口に繋がるスロープの手すりに腰を掛けながら二人で食べていると、見慣れた姿が、二三、見とれた。空と堅都が普段着に着替えてしゃべりながら歩いて来た。と、思ったらその後ろに同じく普段着姿の瑠璃と、手を引かれている和香菜が。和香菜は瑠璃とお出かけでにこにこと微笑んでいる。
「佳音、陸、お待たせー」
「あぁ待った待った」
「安心してね、あんまり待ってないから」
「大丈夫、それくらい分かるよ」
いつも通りに軽く話した後、空が口を開く。
「星夜の演奏まで、あとどれくらい?」
「あー、もう入れるかな。それでは行こう!」
詩園組は全員で歩き出そうとしたのだが、小さな和香菜が立ち止まっている。
「和香菜、どうしたの?」
「……ううん。だれかにね、よばれたきがしたの」
「そう、行こ」
瑠璃は小さな小さな柔らかい手をぎゅっと握り、和香菜の歩くスピードに合わせて佳音達に続いて動き出した。
- Re: 偽家族コンプレックス ( No.18 )
- 日時: 2013/11/27 21:28
- 名前: 葉月 ◆S/72wRvvfc (ID: cm34dabg)
■017■
「すごい……」
「ヤベー。怖いな、これは」
「うわぁ。すごいんだねぇ、せーやにーに」
「曲のチョイスが意味深ー。佳音、知ってた?」
「ううん……」
「あ、今、間違えた」
五人は考えていることを——いや、感嘆と言うべきかもしれないが、それぞれ思わず漏らす。暗い会場の中で一点に視線を浴びるのは、もちろん星夜。スポットライトに照らされてソロを弾く。曲の名は『カノン』。
上手すぎとしか思えない人達に向かって、堅都が空気をぶち壊すようなことを呟いた。
「え、どこか違った?!」
「瑠璃、悪いがおれは分かんねーよ」
陸の肩を叩いて瑠璃は訊き、その答えに安堵の微笑み。
「堅都にしか分かる訳ないでしょ、ね、佳音」
空は佳音に同意を求める。が——。
「私も……微妙にずれたと思う」
と、当の佳音はあっさり言ってしまうのであった。しかも、そのまま真顔で星夜の方を見つめるのだ。訊いた空は驚きの表情を隠せずに続けた。
「佳音、分かるの?」
「う、ん……? よく分からないんだけど、ずれたっていうのは分かるかなぁ」
「意外な才能を発見した」
実際、佳音の音階感覚は成績に表れていた。ひとつを出すと、『音程をしっかりとることが出来る』という項目は5がついているのだ。隠れた佳音の才能である。
最後に全員でアンコールに応え『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』を弾き、礼をしてから会場に電気が点くと、ざわめきが起こった。観客は中学一年生という紹介だった星夜の腕前に感服していた。
「いやー、お疲れ。凄かったぜ、星夜」
皆の気持ちを代弁して陸が言った。昨夜の練習がほんの少しの『腕ならし』に使われたのだと改めて実感する。星夜は、そんなことない、と謙遜のようなことを言うが、本心なのだろう。
佳音はちらっと周りを見ると、ホールを出ていく担任の姿を見つけた。
「このまま帰れる?」
堅都が言う。一緒に演奏した人達と打ち上げみたいなものが無いのか、という意味。
「ああ」
「はぁい、どうもこんにちは!」
星夜が頷いた瞬間、和香菜を除いた全員が幻聴かと思った。その嫌な声は今朝、彩菜と冗談を交えながら聞いた声とそっくりそのまま同じだ。
「またかよ」
朝、校門にいたレインボーミュージックたる社の人間に、陸は吐き捨てた。心底嫌っているらしいその様子に、佳音、瑠璃、空は微笑する。
ニコニコと微笑みを浮かべる彼はどう見てもやっぱり怪しく感じる。
「椎名星夜君と言うんだねぇ。その顔でヴァイオリンがこんなに出来るなんてモテるでしょう、君。是非ともわが社に入ってくれないかな」
「何でここに?」
どこから来たのか分からないおじさんと話す少年は、にこりともせずに低い声で訊ねる。
「町内掲示板って言うの? 便利だね、アレ」
「はい?」
「あー……星夜、掲示板に小さい星夜の写真と名前が……載ってた、よ」
佳音の言葉は途中まででも威力が最大で、星夜のオーラから最後まで言い切るのが冷や汗ものだった。ボソッと「無断に」と「いい度胸」という呟きが聞こえる。
- Re: 偽家族コンプレックス ( No.19 )
- 日時: 2013/12/02 22:58
- 名前: 葉月 ◆S/72wRvvfc (ID: cm34dabg)
■018■
「是非是非ー、お願いしたいんだー」
「今朝……、お断りしますと言ったはずなんですけど、耳が遠いんですか? またしつこく現れたりしたら訴えますよ。こっちは迷惑なんです。では」
何かがブツッと弾けたようにしゃべりだした星夜に気圧されて、男は一瞬身を引いた。そして、何か言いかけたのだが口にするのを止め、無言で去って行った。
「か、帰ろう?」
瑠璃の言葉に、一同が何故かほっとした。
その日の晩、小さい子供は寝付いた頃、リビングの役割を果たす二階のテーブルに六人は集まっていた。理由は、エプロンを着けた佳音と瑠璃が四人を呼んだから。
「で、何で呼ばれたんだ?」
陸が口を切った。
「それはぁ」
「何と今日は……」
「お月見だからですっ!」
二人が嬉しそうに言った。最初は理解出来ていなかったことも分かってくる。二人がエプロンをしていたのは白玉をこしらえていたからなのだ。
空が空気をよんで大きめのベランダに繋がるガラス戸を開く。
「そう言えば、今日だったね」
「すっかり忘れてた」
「あ、去年は小学校の屋上で見たよな」
「あーうんうん、見た見た」
女子二人がお団子を配り終えると、目を合わせて微笑む。きっと星夜の活躍で忘れてしまっている、という予想は的中だった。
「お月様もきれいだけど、星もきれいだね」
瑠璃が椅子に腰をかけて囁く。そして、隣に座る堅都も、うん、と頷く。
「お、何だ。月見かー。きれいだなぁ……」
一階から上ってきた慎太郎が沁々と言ったためか、周りの笑いを生んだ。その後ろの階段からは、ゆっくりと玲子おばあちゃんも上がってきた。
「佳音ちゃん、私にもお団子一つ分けてちょうだい」
「うん、あ、お兄ちゃんのもあるよ」
「サンキュー」
佳音はテーブルに残っていた、ちょこんと白玉の座るお皿を二人にも渡す。
「空、やる」
「…………。好き嫌いはダメだよ、陸?」
「じゃ、星夜」
苦手なあんこが少しついたのを陸が空に渡そうとすると、空に優しく怒られたために今度は星夜にあげる。星夜は何も言わずに受け取って食べた。
静かな時が流れながらも、少年少女はぽつぽつと微笑みながら話す。
————何でずっと全部見えないのかな
————中学生としてその発言どうなんだ、堅都
————陸はロマンチストにはなれないなってつくづく思うよ、僕
————去年見た十五夜の月よりきれいな気がする
————星夜は意外になれるかもね、ロマンチスト
————おれはダメなのに星夜は良いって差別だ
————そういう時に使うんじゃないと思うけどなぁ
————兎がお餅つき、してたら良いね
————佳音は急にどうしたの
————みんなはその方が夢があると思わない
そう、夢。
この時は未来からするとまるで夢のような一時だったのだ——。
- Re: 偽家族コンプレックス ( No.20 )
- 日時: 2013/12/05 23:22
- 名前: 葉月 ◆S/72wRvvfc (ID: cm34dabg)
■019■
麦の子フェスタが終わり、年に一度のお月見が静かに終わり、アレが顔を覗かせ始めていた。
星夜&瑠璃は問題無し、陸と空もまず問題無し。佳音と堅都は、
「授業中に先生に睨まれてる気がする」
「もうヤだ。芸術の秋とスポーツの秋だけでいい」
この通り絶望を知った人の顔。
「おい、教えてやってるんだから真面目にやれ」
「国語の一つ目の範囲が終わったら休憩にしよう」
現在彼らが居るのは徒歩十分で来れる近所の県立図書館。白い机が並ぶフリースペースでは星夜と彩菜が、長続きしない佳音と堅都に辛抱強く勉強を教えてあげているのだ。
「分かったけどー、範囲ってまだ教えてもらってないじゃん?」
「ふふふふ……愚問ね。何のために私が居ると思ってるの」
机にもたれる佳音に怪しい笑いをする彩菜。
「助かる、上杉」
星夜の発言に彩菜が更に得意気に言う。
「ここからここ。一度やったのに何気に何度も振り返ってるの」
「うん……そう言えば、そうかも」
「九十パーセント、これは出る」
「彩ちゃんすごーい」
佳音は目を真ん丸に見開いて驚く。ところが本人は、同じ授業を同じ教室で受けてるのに、とため息をつく始末。おそらく誰にでも察せるレベルの話なのだ。
「すごいけど、瑠璃に教えてもらいたい……」
「堅都ッ!」
堅都の口からこぼれた言葉に反応した佳音が鬼のようにキッと睨み付けた。
「へぇ。藤宮、いい根性してるんだね」
「堅都、謝れ。口しか笑ってねぇ」
ここ最近は詩園のメンバーで共に居ることが多かったが、アレ、こと『定期テスト』の影が見え隠れし始めると話は別。瑠璃は今回、一人で自習したい単元があるとか。陸アンド空は、中間はまあ普通に勉強してるし、と言って秋シーズンの運動系大会に向けてトレーニングに専念するらしい。ちなみに陸にとっては、明日少年サッカーの全国大会の県予選を控えている。
「よし、出来た! 合ってる? 合ってるよね?!」
嬉しそうに笑いながら佳音は星夜にテスト対策ノートを見せる。
「ああ、合ってる。じゃあ十分休憩」
「えーっ?! 十分だけとか……」
やっと国語がほんの一部終わると、佳音はまた気だるけに机に頬を付けた。と、当然横に座る堅都のノートが見えるはずなのに、見えたのは堅都の寝顔。
「寝ーてーるー」
佳音が出した声は、顎を通して机に響いて可愛らしい。
「全然やろうとしないんですけど、お宅の藤宮」
彩菜は、疲れた、と言って立ち上がり、自動販売機に百円玉と五十円玉を一枚ずつ入れて缶コーヒーを買う。佳音は彩菜に渋いコールをした後「書架を見てくる」と席をたった。
さすがに県立図書館だけあって本はかなり揃っている。佳音にとってはとても馴染み深い場所であり、幼い頃から何度も来ている。幼少時には六人で児童室で絵本を広げていた日々が思い出せる。
「りっちゃん先輩!」
「お、かのやん〜」
カウンターの前に見知った後ろ姿を見つけて、声をかけると明るく返された。
「試験勉強?」
りっちゃん先輩こと、大橋慄はいたずらっ子のような笑いを浮かべて佳音に訊ねた。訊ねた、と言うよりも確かめているようだった。
「はい。彩ちゃんと星夜に教えてもらってます」
「あいつら私より頭良さそうだよなぁ」
遠い目で慄は言った。大橋慄とは、星夜と彩菜は生徒会で、佳音は部活動である家政部で一緒なのだ。図書館によく来ている人で、中一と中二の差は保ちつつも仲良くしている。
- Re: 偽家族コンプレックス ( No.21 )
- 日時: 2013/12/07 22:14
- 名前: 葉月 ◆S/72wRvvfc (ID: cm34dabg)
■020■
「さすがにそれは無いですよ」
「どぅも。それよりさ、書庫に新しい本が沢山入ってたよ」
家が近いともう一つの図書館へ来る理由、佳音の本好きを知っての発言だ。
「うそ?! 見に行ってきますっ」
「行ってら〜」
一応公共の場だと言うことで、こそこそとした会話はそこで中断された。
佳音は慄に教えてもらった新しい本を求めて地下一階にある書庫へと向かう。
「あの、書庫に入りたいんですけど」
新書の入ったらしい書庫へは許可を取らなければ入れない。
「どうぞ」
カウンターに居た三十代と思われる女性に声をかけると、愛想が全く感じられない声で言われてしまった。目的は果たされたのだが、どうにも釈然としない。
ともかくカウンターの左隣に付いている厚い扉を開けてもらうと、薄暗い書庫に入る。
「そう言えばー、前に陸が読んでた本が読みたかったんだ! 単行本高いし図書館に無いしで読めてないんだったー。あるかなぁ? っと……」
声が反響するこの場所で、たったー人なのに考えていることを口に出してから、慌てて口を閉じた。そっと周りを見回して、誰も居ないことを確認してから安堵のため息をつく。まず、陸が居たら「独り言とかこわーい」と、絶対にからかわれるだろう。他人が居たら、と考えると自分が若干哀れに感じてくる。
(この子、大丈夫かなーって思われるよね)
書庫を歩いていると、地下室のような雰囲気には似合わない可愛らしい紙が貼ってあった。
『書庫では騒がないでね』
薄いピンクの紙に暖色でカラフルな文字。文字の端にはハートマークまで付いている。右下には黒いマジックペンで、杵島。貼り紙を作ったと思われる人の名前が書かれていた。
「これ……何て読むんだろう」
「キシマです」
「へ?」
疑問を解くようにして答えてくれた声が聞こえたのとほぼ同時に、佳音は自分の隣に人が立っていることに気づいた。そこに立っていたのは、先程の少しオーラの冷たいお方。
(お、え、あ……あれ〜。この人がこれ書いたのっ?!)
確かに、女性の名札には『杵島奏音』とある。杵島は読めなかったが、下の名前は脳内で二秒もかからずに、カナネだろうと推測出来た。
少しだけ頬を赤らめる杵島さんと貼り紙、それにプラスして自分の名前と一文字同じ『音』があったことが関係して、彼女へのイメージが少し変わった。
「ふふ……杵島さん、指輪物語ってありますか?」
「こちらに」
相変わらず口数が少ない杵島奏音と微笑む中学生、御崎佳音。
二人にはまだ見えていないことがある。だが、真実を知ることとなるのはまだ先の話——。
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