コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 偽家族コンプレックス
- 日時: 2013/09/26 08:06
- 名前: 葉月 ◆S/72wRvvfc (ID: cm34dabg)
†登場人物†
御崎 佳音 MISAKI KANON
朝香 陸 ASAKA RIKU
椎名 星夜 SIINA SEIYA
朝香 空 ASAKA SORA
藤宮 堅都 HUZIMIYA KENTO
柏倉 瑠璃 KASIKURA RURI
†プロローグ†
紅一点の少女は幼なじみが一番大切で
双子の片割れは少女の笑顔が大好きで
冷たくても優しい少年は自分を知らなくて
双子の片割れはずっとこの関係が続いて欲しくて
ポジティブ少年は死んだ少女を忘れられなくて
天使になった女の子の面影はいつまでも残っていて
偽の家族の少年少女は何を想って育つのだろう————
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- Re: 偽家族コンプレックス ( No.32 )
- 日時: 2014/01/22 18:14
- 名前: 葉月 ◆S/72wRvvfc (ID: VI3Pf7.x)
あんず様
ありがとうございます。
実は受験生でして更新が……何て言い訳に近いですが。
もうすぐで受験勉強生活も終わるので更新したいと思います!
- Re: 偽家族コンプレックス ( No.33 )
- 日時: 2014/02/01 17:30
- 名前: あんず ◆zaJDvpDzf6 (ID: Ib5HX0ru)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode=view&no=35963
受験ですか…。
頑張ってください!
いつでも待ってます(`・ω・´)キリッ
- Re: 偽家族コンプレックス ( No.34 )
- 日時: 2014/02/01 11:18
- 名前: 葉月 ◆S/72wRvvfc (ID: VI3Pf7.x)
■026■
それから更に三時間経った。日は暮れているというのに、瑠璃の病室には大勢の人が集まっている。
目を覚ましてはにかむ瑠璃、ベッドに寄り添う涙目の佳音、佳音の斜め後ろに立つ彩菜、女子とは逆側に並ぶ陸、空、堅都、少し離れたところに居る星夜、それに玲子と慎太郎。
「心配かけたみたいだね、ごめん」
そう言う瑠璃の瞳は黒く光っていて、佳音には生きている感じが伝わってきて嬉しかった。
何よりも無くしたくない命が存在することが、どれだけ幸せなことか、今回の事故で詩園の人々は知ったのだ。だから、瑠璃、それに佳音も今ここで会話できる時間がずっと続いて欲しいと思っている。
「ったく、寿命縮まったけど。どーしてくれんの」
「陸……瑠璃の命と陸の寿命どっちが大切だと思ってる?」
陸の発言に堅都が低い声で訊いた。というより、もう答えに選択肢はないことは明白であり、空の「瑠璃の命だよね」という言葉に、皆がどっと笑った。
わやわやと和やかな雰囲気の中で、ただ一人浮かない顔の少年がいた。
「……慎太郎、ちょっといい?」
少なくとも明るくはない星夜が神妙な様子で、病室を出た所、どうしても品薬くさい廊下に誘った。
「あの医者に何を言われたんだ」
はぐらかすことは不可能、と言っているような威圧感。
「星夜、答えたとしてどうする。他の奴らにも話すのか?」
「場合によっては」
慎太郎が、ふぅ、と息を吐いて小さく肩をすくめた。
星夜は、じっと慎太郎と目をそらさないでいる。
「瑠璃がまだ危険ってこと。数時間後、あるいは、数日後に死ぬかもしれないってこと」
話していることが、さも日常的な普通のもののような淡々とした口ぶりだが、内心の動揺は波みたいに激しくうごめいている。大人の慎太郎でもそうなのだから、星夜なんかは鳥肌がたつ思いだ。
「……んで」
「家の下敷きになった時とか一命をとりとめたとしても、じわじわと脳内出血していることがある。それと同様なパターンなのさ。瑠璃の手術内容は、腹部の打撲によるものであって脳には異常が認められてない。でも、事故を見た人によると頭から地面に落ちたって話。お前なら分かるはずだ」
早口になったりゆったり口調になったり、慎太郎のしゃべる速さが一定じゃない。そんなことを気にもせず星夜は呆然と立ちすくんでいた。
「おい……」
病室に戻ろうとした星夜を呼び止めた。
「佳音には」
途中まで言っただけで、星夜は顔を曇らせてふっと笑った。そして「そんな馬鹿に見えるのか」と囁いた。
その日は瑠璃は入院、佳音は自宅に戻ることになった。
安心して気が緩んだ佳音を始めとする詩園の子供達はニコニコと帰路についた。もちろん、一応大人である慎太郎は別として、星夜の様子は相変わらずだ。
「あー。そう言えば、紅玉があるんだった〜」
家に帰り、キッチンに入った佳音が言う。
「焼きりんご作るの?」
堅都が目を煌めかせて佳音に訊いた。陸だけでなく、堅都も焼きりんごが好きなようだ。
「う〜ん。瑠璃が退院したら、かな」
その時は——訪れなかった。
簡潔に表すと、瑠璃は、死んだ。事故から三日後、皆でお見舞いに行った際の話である。
「な……んで、なの。瑠璃は凄いいい子だったのに。何にも悪いこと、して……」
涙は無くとも、嗚咽の止まらない佳音の手を空がぎゅっと握る。
誰も何も口にしない。霊安室に送られた瑠璃を見つめるかのように、堅都は薄暗い廊下の先に顔を向けていた。星夜は微動にせず、陸は静かに泣いていた。
- Re: 偽家族コンプレックス ( No.35 )
- 日時: 2014/07/12 12:10
- 名前: 葉月 ◆S/72wRvvfc (ID: quLGBrBH)
■027■
「慎太郎」
どうしようも無かったんだ、とでも言いたそうな慎太郎が腕を組む様子に、星夜がしびれを切らした。
「おれは、凄い後悔してる。佳音や堅都に言っておけばよかったって」
そう言うと、今いる受付前から、緑の繁るいつもと変わらない平和な、広い広い中庭へと去っていった。
星夜の声はそこにいた者達を凍りつかせ、いつまでも余韻が響いている。
周りの人々はわいわいとしていても、佳音達の周りだけはしぃんと暗く重い空気がのし掛かっており、どうやってもぬぐえないえぐさがずっと残っているのだ。
「どういうこと、慎太郎」
空が、真夜中の湖面を思わせる静かな口調で問う。
「星夜は、この最悪の結末を予想できていたんだ」
「そんな」
佳音の横で何も言えずにいた彩菜が手で口を覆う。息を飲む悲痛な声が皆の思いを合わせたものだろう。堅都はどこか遠いところを見ているようで、その他の子供はそれぞれ思いを馳せていた。
(何で数日で世界がこんなにも変わってしまうんだ)
(あぁ、瑠璃)
(一番面識のないわたしでもこんなに辛いのに。佳音は……)
長く辛い沈黙が流れた。
「外、出よう」
空がようやく口を開いた一番目。はりつめた緊張感を少しだけ緩めてくれたことに、不謹慎さは感じつつも彩菜は安堵の笑みをもらした。
病院の中はどうしても独特な空気が立ち込めている。生と死をさまよう人、未来に希望を願う人、たまたまここに居るだけで関係の薄い人、それぞれの思いが重なりあっている気がしてならない場所なのだ。
「中庭でご飯食べよっか。何か買ってくるけど」
知らぬうちに涙の消えた陸が抑揚のある声で言った。
慎太郎が一万円を取り出して、陸に渡した。これで全員の分を買ってこいということだ。素直に受け取って、一緒に行くと言った空と何処かへ買いに行った。
「おばあさん、来てないんだね」
玲子のことであろう。彩菜が誰ともなく呟いた。
「詩園には、ちっちゃい子もいるからね。留守番は出来ないような子も」
すると、ふっと微笑みながら答えたのは——意外な堅都であった。そうとう瑠璃の死にキていると思われていたが、口を開くと予想以上に軽い感じだ。
その堅都が気を取り直してきた雰囲気は、彼らにとって良いことであるのは間違いない。もう少し早く元気さを嘘でもアピールしてくれたら嬉しかったのに、と今はいない双子や星夜のことを思う彩菜である。
「彩ちゃん、行こっか」
見れば佳音の表情もいくらか緩んでいて、空の一言が大きな威力を為したと実感させられた。
葬式は厳かに行われ、大きなトラブルもなく静かに終わった。
「本日は御愁傷様です」
丁寧な口調で曇りのある表情を隠せずに言って頭を下げたのは、りんごをくれたお隣さん。黒いよそ行きの服を着て星夜の手をぎゅっと握る佳音と目が合うと、皆声をかけてくれる。
参列者の中には生徒会の人や見知った同級生、教師も含まれていた。途中から下唇を噛むようにして——涙は一度も漏らすことは無かったのだが——星夜のひとまわり大きな手を離さない佳音の様子は、誰の目にも印象深いものとして残った。
「そんなに暗い顔しないで。瑠璃が悲しんじゃうから、ね。お願いします」
そして、明らかに強がった口ぶりの少女は、誰かに話しかけられる度に笑んでいた。
- Re: 偽家族コンプレックス ( No.36 )
- 日時: 2014/02/03 18:47
- 名前: 葉月 ◆S/72wRvvfc (ID: VI3Pf7.x)
あんず様
受験終わりました!!
これからはバシバシ更新出来たら良いと思います。
良かったらあんず様の小説を教えて頂けますか?
こんな者でも良ければ見に行かせてもらいます!
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