コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 偽家族コンプレックス
- 日時: 2013/09/26 08:06
- 名前: 葉月 ◆S/72wRvvfc (ID: cm34dabg)
†登場人物†
御崎 佳音 MISAKI KANON
朝香 陸 ASAKA RIKU
椎名 星夜 SIINA SEIYA
朝香 空 ASAKA SORA
藤宮 堅都 HUZIMIYA KENTO
柏倉 瑠璃 KASIKURA RURI
†プロローグ†
紅一点の少女は幼なじみが一番大切で
双子の片割れは少女の笑顔が大好きで
冷たくても優しい少年は自分を知らなくて
双子の片割れはずっとこの関係が続いて欲しくて
ポジティブ少年は死んだ少女を忘れられなくて
天使になった女の子の面影はいつまでも残っていて
偽の家族の少年少女は何を想って育つのだろう————
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- Re: 偽家族コンプレックス ( No.37 )
- 日時: 2014/02/03 20:55
- 名前: あんず ◆zaJDvpDzf6 (ID: cC0Sf9h5)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode=view&no=35393
こんにちは♪
しょ、小説ですか…。
駄作ですよ?
えと、コメディ・ライトは
上のURLにある、
○今、あなたに声が届いたら。(亀更新)
○祈りの音〜記憶の幻想曲〜
シリアス・ダークは、
○琥珀姫之永久物語(更新停止中)
○祈りの音〜記憶の幻想曲〜
ですです。
そうなのです!
『祈りの音〜記憶の幻想曲〜』は、
コメライとシリアス、両方連載なのです。
しかし、プロローグが全く違います…((
四つですが、実質は二つ連載ですね。
(ひとつは重複、ひとつは停止中)
葉月さんの足元にも及ばないですが…w
る、瑠璃ちゃんっ…
ついに…
佳音がかわいそすぎる…!
頑張ってください!
これからの詩園の人々が気になります!
受験、お疲れさまです。
お互い頑張りましょう!
でわでわ。
長文コメ失礼しました☆
- Re: 偽家族コンプレックス ( No.38 )
- 日時: 2014/02/03 21:43
- 名前: 葉月 ◆S/72wRvvfc (ID: VI3Pf7.x)
あんず様
紹介ありがとうございます。
ぜひ見せさせてもらいます!!
いえいえ、駄作さでいえば負けませんよ。
でもこんなものを見てくれるあんず様に感謝ですね。
- Re: 偽家族コンプレックス ( No.39 )
- 日時: 2014/02/04 21:51
- 名前: 葉月 ◆S/72wRvvfc (ID: VI3Pf7.x)
■028■
佳音は、次の登校日から真面目に学校へ通い続けた。松本先生は詩園にわざわざ足を運んで休んで良いと言ったにも関わらず、誰よりも早く行こうとした。
「皆は学校行かないの?」
月曜日、ただでさえ面倒なのに爽やかな顔つきで制服を纏って降りてきた佳音に、男子四人は思わず口を丸くして唖然とした。玲子も目を細めており、慎太郎は「あ」を濁音にしたような声を漏らす。
最初は明らかに沈んでいたのに、今ではすっきり爽快といった感じ。
「だってお前……」
陸が朝ごはんであるお味噌汁を飲む手を止めて言おうとするが、頭上にハテナを浮かべる佳音に打つ手無し、とため息をつく始末。
「おれは行く。だから……早く食べろよ」
だが、この答えを出したのは陸だけで、他の三人は行かないということを沈黙で表した。
相変わらずの調子で女の子に毒つく陸に、空と星夜はいつの間に微笑むように口元を緩めた。玲子も今日は陸に何を言う訳でもなく、見守る姿が年長者らしい。
「もう食べ終わってるしー」
上手く眉を動かして、えっへん、という顔を作る佳音。
「うそっ」
「早起きして、掃除して、朝ごはん作って、食べて、着替えた! 凄いでしょ」
胸を張る佳音はやはりどう見てもたかをくくっているようにしか見えないのだが。
更に、セーラー服の焦げ茶色のリボンがいつもとは逆の結び方になっていて、一言で言い表せば今時に「ダサい」であろう。変に浮いているのだ。
「凄い凄い」
「棒読み許さんぞ!」
「はっ」
(泣いてない、よな)
元気パワフル佳音ちゃんに瑠璃存命時と大して変わらない様子で陸は答えながらも、瞳の奥を盗み見る。堅都のまぶたは少し腫れていて、空は静けさに満ちた表情だが、佳音には涙の跡が全く無いのだ。
(ん? 何か顔に付いてるのかな?)
あまりに盗み見がガン見に変わったので、佳音も疑問に感じ始めたところで、陸が食べ終わった。
「っしゃー、行くか」
「りょーかい!」
朝から早起きして色々とやっていた佳音はお弁当もしっかり作っていた。もちろん、星夜や空、堅都の分も作ってあったのだが、中学校に持ってこられることはない。が、おそらく家で食べていることだろう。
秋の昼下がり。恒例の長い休み時間、佳音は屋上でお昼にしていた。
「彩ちゃん遅いなぁー」
周りの人に変人と思われない程度にボソッと言うが、それでも独り言とは不気味だ。
「友達いないの?」
やけに今日はよく声を聞く人物が隣になっている。朝香陸は目を細めて訝しげに囁いた。だが、わざわざ自分のところに足を運ぶ方こそ友達がいないのでは、と感じる佳音である。
さらりと乾燥した風が優しく吹いた。ふわっと髪を撫でるような風だ。
「いないんですー。お友達いっぱいのりっくんと違ってー」
「これまた懐かしい呼び名を出すな」
さらっと幼い頃の呼び名『りっくん』を用いたことに反応する。
「いやぁ、陸くんって言いにくくない? 必然的にりっくんになっちゃうんだよ」
「そう」
「…………」
「お前、大丈夫なの」
「何が?」
冗談っぽくとぼけて言ったつもりが、そこは空気読めよアピールで辺りが包まれたので真面目くさった顔で答えることにする。
「私ぐらい大丈夫じゃないとねぇ。案外星夜がヤバイっぽいし?」
「ああ……それは分かる」
普段ならクールな感じムンムンなのに、あの黙り用に二人とも感じるものはあるらしい。
「まぁ、あんま無理すんなよ」
「優しいね」
「うっせ。この世界はいつだって百八十度ひっくり返る可能性があるんだ」
「分度器?!」
「変なとこ突っ込むんじゃねーよ」
ほんわりと、気の緩む暖かさでその場が落ち着いた気がした。
笑い合う二人から後方約二メートル、タイミングが分からずに困惑していた彩菜の存在は気づかれずにいた。
- Re: 偽家族コンプレックス ( No.40 )
- 日時: 2014/02/08 08:04
- 名前: 葉月 ◆S/72wRvvfc (ID: VI3Pf7.x)
■029■
少し前とは変わり、吹く風が冷たくなってきた。並木道の木々も徐々に葉を落としてきて茶色い幹の肌が寒々しく感じる時期で、厚手のコートが目立つ。
「失礼しまーす」
朝のホームルームが始まる前の時間。陸が自分のクラスでも無いのに一年B組の扉をガラガラっと音をたてて開けた。別に声をひそめることもなく、ふざけたように大きな声を上げる訳でもなく、普通に声を発した
教室の中を覗くと、各々が自分の席に座って教科書とノートに向かっていた。集中している人もいれば突然の侵入者に好奇の目を向ける人もいる。そして、次に陸の言った言葉に教室内がざわっと動く。
「上杉さんはいますか」
呼ばれた上杉さん、彩菜はさっと席を立って陸の近くに寄る。『告白』や『どんな関係』という言葉がひそひそと囁かれるが、本人達は気にしない。
「ミサキが居ない理由を教えに来てくれたの?」
「そ。その御崎佳音さんがお休みです。あ、あと堅都も」
「まぁ、藤宮はここ最近ほとんど来てないしね。ミサキは何で?」
「堅都にはダメージが強すぎた。他の奴らはもう結構立ち直ってんだけどな。佳音はただの風邪」
比較的近くで聞いていた人達から大したことない会話だと言うことが次々と情報が回った。
そろそろホームルームが始まる、とB組の時計を見ながら言った陸は急ぎめで要件を伝える。
「で、担任に伝えて欲しいのと、良かったら見舞いに来てください」
「朝香クンって敬語使えるんだ?! ミサキにもそんぐらいカッコよくすれば良いのに」
(この人、何を言ってんの)
一瞬でもギクリとしたことは胸の奥にしまい、あえてつっけんどんに話の方向をずらす。
「おれを何だと思っている。いやー……瑠璃がいないくなっちゃったからさ、上杉頼るしかないんだよ」
後半は真面目な感じに慎重に言葉を選んだ雰囲気だったので、彩菜はしっかりとはぐらかさずに答えた。
「家族って言っても血が繋がってるかは分からないしね。何かあったら困るわけだ」
別に何もあるわけないけど、とボソッと陸はそっぽを向く。そして、そのまま自分の教室に戻るように彩菜に背を向けた。彩菜にはどんな表情をしているかは分からない。だが、寂しげな声が廊下に静かに響いた。
「繋がってたら、困るんだよ」
午後、彩菜は陸に言われた通りに詩園を訪れていた。
「お邪魔します」
たまたま一階に居た星夜に開けてもらい、中に入る。佳音とは仲は良いがあまり詩園に来ることはないので、記憶を頼りに階段を探した。そして、部屋の奥にある階段を見つけて上ろうとした時、ちょんちょんと足をつかれる感触に驚きの声を上げる。
「えっ?!」
咄嗟に足元を見ると、幼稚園児くらいの女の子とまだハイハイしか出来ないような男の子が自分をじっと見てくる。動けずにいると、星夜が軽々と男の子を抱き上げ、階段から降りてきた空が女の子の手を取って階段のそばから離してくれた。
「和香菜、あいさつは?」
空が微笑みながら優しく女の子に訊く。
「おーこうちわかなです。四さいです」
「良くできました」
「あ、えっと……う、上杉彩菜です。よろしくね」
突然の自己紹介に戸惑いながらも和香菜の頭を撫でる彩菜は、どこか癒された表情。星夜の抱く赤ちゃんが、清水遼太くんだと知り、頬をのぷにぷにとした感触にまた癒され後、四階に今度こそ上がっていった。
- Re: 偽家族コンプレックス ( No.41 )
- 日時: 2014/03/06 19:04
- 名前: 葉月 ◆S/72wRvvfc (ID: VI3Pf7.x)
■030■
階下での話を聞き、熱っぽい真っ赤な顔をした佳音は「ぷっ」と笑う。
「星夜がりょうちゃん抱っこしてるとなんか可愛いよね」
「ギャップが笑えるわ。……それより、良かった。朝香がわざわざ言いに来るからどんなに死にそうなのかと思ったよ」
「死」という言葉を使って何気なく言ってから彩菜はしまったと佳音を盗み見た。だが、彩菜の言葉に気付いているのかいないのか、ただ何も言わずにまた微笑んだ。
「佳音ー、氷変えるよー」
「あ、うん」
来客も気にせず堅都がきんきんに冷えた氷を持ってきた。
今では佳音一人には広すぎる部屋には、瑠璃の物がまだ残っている。あの日に瑠璃からもらったワンピースは、事故の時に鮮血で汚れてしまったが、きれいに洗ったのでただの真っ白のワンピースになった。しかし、佳音には何となく真っ白には見えない。
「どうしたの?」
「ううん、何でもない。それより、うつっちゃったらごめんね。もうすぐ中間でしょ?」
「よゆーよ。よゆー」
成績優秀な学級委員は鼻歌まじりに胸を張る。
「そっか。彩ちゃんは良いね。何でも出来て、私とは違うね……って、あっ」
変なニュアンスを知らず知らずのうちに交えてしまったことに気付き、慌てて手を振り回し訂正しようとしたがもう遅い。幸いセンチメンタル状態の堅都は既に居なかったが、彩菜が聞き逃さずにまくしたてる。
「馬鹿っ! ミサキには私が持ってないもの、沢山持ってるよ。勉強とかそういうのじゃなくて……っ。その反対で、ミサキがどんなに完璧でも、完璧でもね、か、柏倉さん、は」
ソプラノの声が部屋にこだまし、途中から涙としゃっくりで言葉が成り立たない。
佳音はそれを見て驚きのあまり声も出ない。知り合い、とある友人、そのぐらいの軽い小さな接点でしかなかった瑠璃についてここまで感情を表してくれている。親友彩菜はこんなにも良い人だった。自分の無力さを、庇ってくれる友達。
(彩ちゃんに頼ってばっかり。私が……もっと明るくいれば良いのかな。そしたら皆も……)
「彩ちゃん、ありがとう。私は、だいじょう、ぶ、だか……ら」
彩菜とは少し違う風に言葉を途切れ途切れにした病人は、起こしていた体をばたっと横に倒してしまった。
「うそ、ミサキ?! え、っちょってえぇー!! ど、どうしたら……の……」
意識の飛んだ佳音には、微かな彩菜の声の余韻が少しだけ響いていたのが聞こえた。
自分は、どこかをさまよっていた。
何もない真っ暗な空間なのに、たまにスポットライトがついたかのように一点が明るくなる。
(瑠璃……っ!)
光の元には懐かしい黒髪の少女が立っていて、思わず駆け出す。
なのに、たどり着く前にさっとかまいたちの様な鋭い何かが襲いかかり、彼女の身体は儚く散る。
(何でっ。どうし、て、なの!?)
うずくまり、声を上げて泣き叫ぼうとしても憚るものがあるかのように、声は出ない。
と、ある人達の存在を思い出して、はっと立ち上がってまた走る。
音の無い声を張り上げて、ただひたすら黒い世界を光を探すべく全速力で走り抜けて行く。
(空、星夜、堅都っ。おばあちゃん、慎太郎お兄ちゃん! 誰か……誰か——)
「……ッ、り、くぅ……」
そっと見ていた寝顔がふっと歪んだ気がすると、自分の名前を呼ばれてドキッとする。
街の境界線が夕焼けの茜によってぼやけている。日と逆の方向からは夜の影が顔を覗かせている。そんな夕暮れ、佳音の寝る女子部屋に陸が来て、布団の横に座っていた。
陸の呼んだ上杉彩菜は佳音が疲れて倒れるように寝てしまったことを空に話した後、習い事があるとかでいそいそと帰って行ったために今はもういない。
(バカめ。我慢するからだ)
苦しそうに時々うなされている佳音に冷たく心で言った陸だが、次の瞬間に重要なことに気付いた。そして、また心の内で、前言撤回だな、と呟くと、そっと部屋を出ていった。
一人まだ寝たままの佳音の頬には、瞳からつたる一筋の涙が光っていた。
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