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トウカ
日時: 2010/01/30 13:05
名前: 朝倉疾風 (ID: ikrpTGuK)

□登場人物□

柏木トウカ───カシワギ_
17歳 幼い頃から嫉妬深く、過去の事件から特に大人を嫌う。 暴力的で疎まれがち。 かなりの美人。

桐谷リク───キリタニ_
17歳 目がいつもタヒんでいる。 何を考えているのかよく分からない。 トウカの家で居候している。

葦羅木ユマ───アシラギ_
17歳 超ド天然で何がしたいのか理解不能な言動をする転校生。 前にいた学校で問題があった。

柏木恵美───カシワギメグミ
30歳 トウカの叔母でリクの遠い親戚。 実家が会社を持っている為、暮らしには不自由していない。

峰岡ウタ───ミネオカ_
17歳 リクとは幼い頃友達だったが、ある事件で行方をくらます。 

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Re: トウカ ( No.14 )
日時: 2010/01/19 18:36
名前: 空雲 海 ◆EcQhESR1RM (ID: 7MCr7M6.)

本当にI♡リクなんだなぁートウカって。

Re: トウカ ( No.15 )
日時: 2010/01/20 17:11
名前: 朝倉疾風 (ID: ikrpTGuK)

トウカはリクしか見てません。

Re: トウカ ( No.16 )
日時: 2010/01/20 17:30
名前: 朝倉疾風 (ID: ikrpTGuK)

「おやすみなさいませー♪」

トウカは家に帰るなりいきなりそう言って、布団にゴロン。 そのまま熟睡タイムに入った。

「どうだったー?」

居間の方で声が聞こえた。 何を、と聞かなくても大体の質問の内容は分かるんで、

「別に、普通でした」
「んー、そっかぁ。 ならよし」

恵美さんの仕事を見に行く。
机に画材やらペンやらを散乱させて、チョコンと座っていた。
長い前髪をピンで止め、口にシャーペンを咥えている。

「本当に漫画家だったんですね」
「アホ。 嘘なんてつかないっつーの」
「なんていう漫画ですか?」

予想していた通りの漫画名が出てきた。

「やっぱり」 「何で分かったの?」 「いや、だって雰囲気が」 「すっげーねぇ読者の目は」 「読んでは無いですけど。 絵が」

あーそうかいと言う風に恵美さんが顔を紙に戻す。

「あの子、学校何年振りかしらねぇ」
「かなり多くの人が驚いていました」
「だろうねぇ。 街の中はうろついてても、学校なんて行く気力もなかったし・・・。 リーくんが現れるまでは、ね」
「言っときますけど。 トウカが学校に来てたらいつでも僕に会えました」
「随分再会に遠回りがかかっちゃったねー。 工事中だったのかも」

冗談はスルー。 
恵美さんも期待していなかったのか、あまりふれなかった。

「あの子、リーくんが来なかった5年間、廃人みたいでね。 反応はあるんだけど、何を考えているのか分からない。 私以外の人間には、目を合わせようともしない子だった」

トウカは基本的に、過去のトラウマから大人を嫌う。
恵美さんは大人だけど、その対象には分類されていないのだ。 何でか知らないけど。

「あの子の母親の話は聞いた?」
「少しは」
「そ。 あの子のリク依存症の元は母親のせい。 母親があの子に異常なまでの執着を見せたせい。 あの子の父親が暴力をふるっていたせい。 みーんなみんな、あの子のせい」

呪文みたいだ。
トウカの父親が母親に日々暴力をふるい、トウカを味方につけようと母親が彼女に執着した。
異常なほどの。


「あの子の母親が言っていたわ。 一度会ったの」
「そうなんですか」
「みーんなみんな、トウカのせいって呟いてた。 トウカの嫌な噂を流して、誰もトウカに近づく事ができないように。 そうすれば、トウカは一人になって自分だけのものになるからね」

そんな歪んだ執着心をもたれて、トウカもまた、歪んでいった。
そして、

「そして、キミを見つけた。 タヒんだような目をした、美形の男の子」
「褒めたって、何もでませんよ」
「キミも昔まぁ、そういう事があったんだろうけど」

頭をかする、近所のお兄さん。
名前はもう忘れた。 いや、思い出したくないだけかも知れない。
何かの花を名前だった。

「災難ね。 まあ私にとってそれはさほど重要な事じゃないけれど・・・・やっぱり心痛い。 トウカとキミの味方っていうわけじゃないけど・・・・・ね」

恵美さんが漫画をかいていた手を止める。
どこを見てるんだろう。

「キミは・・・・・、これからもトウカの傍で生きていくわけ?」
「・・・・・・分かりません」
「あの子と再会するって事を認識した上でここに来たんでしょう。 それぐらいの覚悟持ってもらわなきゃ困ります」
「・・・・・・・そうですか」

キッパリ言われてしまった。
これからどうしようか。
僕は、トウカを・・・・・・・・・・・・・・・・?

Re: トウカ ( No.17 )
日時: 2010/01/20 17:33
名前: 朝倉疾風 (ID: ikrpTGuK)

          ♪


お兄さんはいつも飴をくれた。 

優しい優しいお兄さん。 

男の人だけど、キレイな名前だなと思った。

近所のアパートに住んでいて、一人暮らしで、大学生。

彼女はいるの? って聞いたら、困ったように笑って

いま、探し中なんだ。 可愛い子、いる?

そう聞かれたから、僕はクラスメイトの女の子の名前を言った。

この子も可愛い可愛い、歌うような名前。


           ♪

Re: トウカ ( No.18 )
日時: 2010/01/20 17:55
名前: 朝倉疾風 (ID: ikrpTGuK)

それは、夜中だった。

「う・・・・・あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

言葉の羅列がこんがらがった、不快なノイズ。
耳元で騒がれ、更に腹部に強烈な蹴りを入れられて軽く咳き込む。

目を開ける。 
トウカが、壊れていた。

「トウカッ!?」
「あ、ああああああ  あ? うああああああ」

白目になりながら、よだれを垂らし、首元を鋭い爪で引っかいて自傷行為をしている。
空中を足で蹴りながら、暴れまわる。

「落ち着けっ、大丈夫だから」
「ううううううううううううううう。 がっ、ああああああああああああああああああああああああっ」

長く長く絶叫が続く。
両手をタオルできつく縛り、上半身を起こして抱き寄せる。
拒否された。 でも、あばらが折れるほど強く抱きしめる。

「大丈夫、だから」

どこにそんな根拠があるのか分からなかったけど、トウカに言葉を投げかける。

「ああああああああ? ああああ、あっああああ」
「落ち着いて。 僕だよ、リクだから」
「り、りく? りくって? りくは・・・・・どこ?」
「ここだよ」

涙で濡れた頬に触れる。 思った以上に熱い。
まだ僕の存在を認識できないのか、トウカの体が小刻みに揺れ、嘔吐した。

胃液の感触が胸を伝ってくる。 吐きそうな匂いがした。
トウカが、居もしない相手に問いかける。

「みーんなみんな、トウカのせい・・・・?」





「どぉしましょ、どぉしましょ」
「・・・・・・・・うん」
「リクが居なかったら、どうしましょぉ」
「ちゃんと、いるよ」

華奢な体を抱き寄せ、呟き続けるトウカに答える。

「どぉしましょ、どぉしましょ・・・・・」
「トウカ、大丈夫だから」
「・・・・・・リクは、私のだから」
「うん、僕はトウカ専用だよ」

タオルを解いた両手で、僕の腕を爪が皮膚を突き破るほどの力で握る。

「リク・・・、リク、リク」
「大丈夫」
「リク、私何も悪くないよね?」
「うん」
「リクは私の味方で、私の専用で、私の大好きなリクだよね? そーなんだよねぇ?」
「うん」
「ダメだよ・・・絶対にダメ。 ダメ、ダメ、ダメ」

何かを否定しながら、トウカが大きく呼吸する。

「リクは絶対にトウカだけ。 トウカを裏切らないし、トウカも私を裏切らない。 トウカは私で、私はリクが大スキ。 トウカも悪くない」
「そうだよ。 トウカもキミも、悪くない」

人格が一時的に分裂しているのか、トウカは恐怖に怯えた目でどこかを見ている。

「私はトウカで、リクが大好き。 リクも私とトウカが好き。 どっちも好き。 裏切らないし一緒に居てくれるし味方だし旦那さんだしトウカの一部」
「はいはい」
「トウカは大好きだよ、リクは?」

そりゃあもちろん、

「だーい好きだよ」
「だよねそうだよねそうじゃなきゃおかしいよ」

震える声でトウカが断言する。

「おかしい。 みんな変だ。 消えちゃえばいいんだよ。 何で? トウカ何も悪くないもん。 嫌いだ、あんな奴ら・・・・嫌い、嫌い、タヒんじゃえ。 嘘ばっかり」
「トウカ、恵美さんを呼んでこようか?」
「今はリクと私の時間でしょう!!?」

怒られた。

「そうだね。 ゴメン。 でも、気持ち悪くない?」
「こんぐらいで、気持ち悪くない」

逞しいね、トウカちゃんは。
嘔吐物を気にも留めず、今のトウカは僕だけを求めてる。
それは重荷なのか、それとも渇望なのか分からないけれど・・・・・。


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