ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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ロンリー・ジャッジーロ 4−2
日時: 2011/07/31 16:02
名前: こたつとみかん (ID: DNzgYQrN)
参照: ココに来て一年経った、かな?

起きている間はずっと寝ていたい。だけど書き続ける。それがなによりも好きだから。

こんにちは。新年明けましておめでとうございます。


最近ポケモンの白を購入しました。ミジュマル超可愛い^^

ではでは、この小説が貴方の享楽となりますように。
こたつとみかんでした。

序章 前>>3  後>>4
第一章 ①>>8  ②>>10  ③>>12  ④>>16 >>17
第二章 ①>>21 >>22  ②>>25  ③>>26  ④>>33 >>34  ⑤>>40 >>41  ⑥>>44 >>45  ⑦>>46 >>47  ⑧>>51 >>52 ⑨>>62 >>63 >>64
第三章 ①>>73 >>74 ②>>77 >>78 ③>>82 >>83 ④>>84 >>85 ⑤>>86 >>87 ⑥>>90 >>91 ⑦>>94 >>95 ⑧>>96 >>97 ⑨>>100 >>101 >>102 ⑩>>103 >>104 ⑪>>105 ⑫>>106 ⑬>>107
第四章 ①>>112 ②>>113

キャラ名鑑 その一>>18 その二>>68 その三>>72

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Re: ロンリー・ジャッジーロ 序章前・後 ( No.4 )
日時: 2010/03/31 16:20
名前: こたつとみかん (ID: RQUZU0jv)
参照: 牛乳プリンはプレーンで!

序章・後

 視界が、赤く揺らめいている。
 喉がひりつくように渇く。緊張からくるものではなく、この洞窟の常軌を逸した暑さのせいだろう。
 足場の両側を、赤熱した溶岩が粘つく流れとなって這い進んでいく。噴き上がる熱気が陽炎となって見えるもの全てを歪め、赤々と照らし上げられた岩肌を、まるで巨大な生き物の腸壁のようにうごめかせる。
その洞窟の中には似合わない、雪景色を切り取ったような銀色が見える。それは、鮮やかな銀髪の少女——。
 銀髪の少女は、深い翡翠色の目でしっかりと前を見据え、凛とした態度でその銀髪をなびかせながら洞窟の奥へと歩いていく。銀髪の少女の右腰からぶら提げている黒いホルダーには、持ち手の部分が自動二輪車の加速装置のような形をした、鈍重そうな金属斧が取り付けられていて、それが銀髪の少女の腰についているポーチの金具とぶつかり合い、乾いた音が幾度も聞こえる。
 その後ろを、薄い緑色の髪の、気弱そうな少女がよたよたとした足どりでついていく。淡い青色の目が、心配そうに銀髪の少女の背中に向けられる。気弱そうな少女の手には、何かの樹を削り出して造られた杖が握られてある。
 地獄があるとすれば、このような眺めなのだろうかと思いながら、銀髪の少女は周りを見渡すと、この洞窟内の異変に気が付いた。
 本来、神々の残留魔力にあてられた生物である怪物——魔物はこのような人間やその他の生物が生活するのに適していない環境を好んで住処とするはずなのに、鳴き声すら聞こえてこない。これには銀髪の少女も、気弱そうな少女も不審に思った。
 ——何かがおかしい。そんな考えが銀髪の少女の頭をかすめた瞬間、地の底から凄まじい咆哮がとどろいた。大地をも揺るがすその叫びに大気は鳴動し、吹き付ける熱風がちりちりと肌にあたる。眼前の火口から、空間自体が融け出す程の熱をまとったものが、少女達の前に姿を現す。
 それはまさに、炎の化身というべき姿だった。赤銅色の巨体に、獰猛な獣の顔の怪物。洞窟に巣食う魔物共とは一線を画す、神々の残留魔力の一部が自律したエネルギー体とも呼ばれる強力な精霊の一種、『スルト』だ。
 熱波が圧力となって叩きつけられる。気を抜いたら吹き飛ばされそうな程の強さだ。だが、銀髪の少女は怯まなかった。
 ——自分以外に、負けるものか。幼かったあの日、銀髪の少女はそう誓ったのだから。
 猛り狂う炎の精霊に向かい、銀髪の少女は右腰のホルダーから金属斧、特注の高周波斧(ハイ・バイブレードアクス)を抜き、重そうに引きずりながらも突進する。銀髪の少女に恐怖はなかった。それとも、銀髪の少女の中で何かが麻痺しているのか。
 銀髪の少女より少し後ろにいた、気弱そうな少女が詠唱を唱え、冷気魔導を放つ。冷気属性特有の銀色の光が一瞬、赤色の世界を包んだ。
 その冷気魔導が、わずかに炎の精霊が放つ熱を減衰させる。獰猛な獣の顔が苦痛に歪んだ刹那、銀髪の少女は煌めく刃を振り下ろし、持ち手の自動二輪車の加速装置のような部分を、ぐっと引き絞った。
 斧の刃は振動により紅く光り、その切れ味を格段に上げる。
 特有の強烈な手応えが、銀髪の少女を戦いにのみ埋没させていく——。

Re: ロンリー・ジャッジーロ 序章前・後 ( No.5 )
日時: 2010/03/31 15:35
名前: 暗刻の導き手 ◆MCj.xXQAUE (ID: yL5wamFf)

うまいですね。
うますぎですよ、こたつとみかんさん。
これからもぜひぜひ、頑張ってくださいね!

Re: ロンリー・ジャッジーロ 序章前・後 ( No.6 )
日時: 2010/03/31 15:43
名前: 羽鳥 (ID: zTHJAdPC)

初めまして!
ファンタジーと剣と魔法、という言葉にひかれて
読んでみました!

面白そうです!とっても!!
頑張って下さい。

Re: ロンリー・ジャッジーロ 序章前・後 ( No.7 )
日時: 2010/04/07 16:58
名前: こたつとみかん (ID: ubqL4C4c)
参照: 牛乳プリンはプレーンで!

>>5 暗刻の導き手様
コメント有難う御座いますっ!
嬉しいです。感激です。泣いて・・・・・・はいませんが、嬉しいですっ! 嬉しいので二回言いました。
こんな駄文にこれからもお付き合いしていただけるという最高の言葉のを動力に、頑張らせていただきますっ!
こたつとみかんでしたっ!

>>6 羽鳥様
はじめまして。コメント有難う御座いますっ!
早くも二人目からもらえるとは・・・・・・。かつてない嬉しさのあまり、ちょっと今キーボードに突っ伏してます。
ちゃんとしたファンタジーに成り立つかどうかは判りませんが、期待にこたえられるように頑張ります。
こたつとみかんでしたっ!

Re: ロンリー・ジャッジーロ 序章前・後 ( No.8 )
日時: 2010/08/06 15:59
名前: こたつとみかん (ID: eMnrlUZ4)
参照: 牛乳プリンはプレーンで!

第一章『愚かなる華』①

 ラグナロクから、二千十年後。新文明の年号では、古代共通語の「〜の後」と言う意味である単語の頭文字の「A」と、ラグナロクの古代共通語表記での頭文字の「R」で「AR・二千十」と表される。
 ここは無法国ヴィ・シュヌール。国であって国でない、世界六大国のひとつだ。
 この国は政治がない。故に、荒れている。もちろん法律のようなものなど存在しないから、強奪や恐喝は当たり前、殺人でも咎められない。警察だっていない。ただ、人々の良心で創られた暗黙のルールがあるだけだった。古代人が言ったと伝えられる「人民の人民による人民のための政治」と言う言葉もあるが、この国は度が過ぎている。
 この国で生きていくには大まかに五つの仕事がある。一つは「酒場経営」、一つは「武器製造師」、一つは「商人」、一つは「泥棒」、そして一つは、他人からの依頼を受注し、それを果たして報酬金を稼ぐ「便利屋」などがある。
 荒れ果てたビルが乱立し、路上には酔っ払いや薬物中毒者が平気で寝ている。一定間隔で建てられた電柱は、機能しているのか判らないような状況だった。露店は強盗が入った後なのか荒らされ、店の主もいないただのオブジェと化している。近くでは狂ったように新しく購入したらしい短刀を振り回している男がいる。一言でこの状況を言い表すなら、「最悪」だ。
 それでも一応整備されたヴィ・シュヌール中央地区の大通りを鮮やかな銀髪の少女こと、アイリス・フーリー・テンペスタがその長髪をなびかせながら歩く。その右腰には、いつも通り高周波斧がぶら下がっている。左の手には、防熱布にくるまれたスルトの頭角がある。
 その後ろからは気弱そうな少女こと、ニーベル・ティー・サンゴルドがよたよたした足どりでついていく。普段持っている何かの樹の杖には紐をつけ、肩に提げている。
 アイリスたちは暫く歩いた後、ひとつの小汚い建物の前で脚を止めた。そして身体の向きを変え、建物内に入っていく。
 建てつけの悪い木製の扉が、ぎ、ぎ、ぎ、と不気味な音を奏でながら開く。中は酒場だ。厳つい男たちがそれぞれの集団で酒を飲んでいる。見ると、全ての人間が武器を所有している。皆、ここの酒場に集まる便利屋だ。ここに来るということは、アイリスやニーベルも便利屋である。店内には煙草や酒、薬物などが入り混じった酷い匂いが充満している。その不快な空気にアイリスの顔が少し歪む。
 それからアイリスはため息をひとつつき、足早に酒場の主の下まで歩いた。
 カウンターにいた初老の男性バーテンダーに声をかけ、防熱布にくるまれたスルトの頭角をテーブルの上に置いた。
 「討伐完了だ」
 その一言とテーブルの上に置かれたスルトの頭角を見て、初老のバーテンダーである酒場の主は驚いて磨いていたグラスを落として割りそうになった。酒場の主は持っていたグラスを棚に戻し、心底驚いた表情でアイリスを見て言った。
「ほ、本当かい? 男の便利屋が五人出向いて返り討ちにされた依頼だよ。これは」
「嘘だと思うならその防熱布を取って中を見ればいい。ちゃんと頭角は入ってる」
 そう聞き、酒場の主は店の奥に入っていった。酒場の中では、今のやり取りを聞いていた便利屋たちがざわめきを起こしていた。その数分後、防熱布製の手袋をはめて酒場の主が戻って来た。
 酒場の主は器用にスルトの頭角が入っていると言った物体の防熱布を取る。その中には、スルトのものと見て間違いない赤黒い頭角が入っていた。頭角は今でも湯気を立てている。酒場の主はそれを確認すると、頷いて再び頭角に防熱布を巻いた。
「ああ、確かに討伐を確認したよ」
 そう言い、再び店の奥に頭角を持って入っていった。気が付くと、酒場内のざわめきはいつしか大きなどよめきに変わっていた。その数分後、酒場の主は中に何か入った袋を持って来た。中には硬貨や札束が入っていた。これは世界の共通通貨である。
「報酬金の十一万ダルズだ。受け取りな」
「ああ」
 アイリスたちが報酬を受け取り、出ようとすると、出入り口の前に三人の男たちが立ちはだかる。すでに三人とも、それぞれの武器を抜いている。
 三人のリーダーのような男が口を開いた。とても下卑た声だ。
「女のコがそンな大金持ってちゃいかンだろう。こっちに寄こしな。嬢ちゃンたち」
 ——あきれた。なんて単純なのだろうか。そうアイリスは思った。このような連中は相手にしないほうがいいと、アイリスは無視して店を出ようとした。
 無視されたのが癇に障ったのか、リーダーのような男が怒って肩を掴もうとしてきた。
「オイ、待てコラァ!」
 しかし、掴もうとしたその手は何も掴めなかった。
 紙一重、アイリスは身体を右回転に捻って、リーダーのような男の腹に強烈な後ろ蹴りを放った。カウンターだったので威力は強く。男の身体は近くのテーブルの上に叩きつけられた。グラスが割れる音が盛大に店内に響く。
 それからアイリスは、呆気に取られている左にいた男に右上段蹴りを放ち、かかとを高らかに振り上げ、それを正面にいた男の頭頂部に落とした。
「……触るな。下衆が」
 アイリスはそう言い、店の木製のドアを乱暴に開け、店を後にした。その後ろにニーベルがついていく。そのとき、ニーベルは一度店内に顔を向け、苦笑し、一礼して言った。
「えと……お騒がせして、すみません……」
 ニーベルも出た後、店内は何ともいえない雰囲気に包まれていた。

 店を出た後、ニーベルはアイリスに問いかける。店内にいたときとは違う、明るい声だ。
「ね、アイリ。もう夕方だし、そろそろ家に帰ろうか」
「そうだな、ベル。今日はもう疲れたし、ご飯食べてシャワー浴びて寝よう」
 アイリスは店内にいたときには一度も見せなかった笑顔で答える。
「今日の晩御飯は何を作ろうかな。アイリは何が食べたい?」
 アイリスは少し考える動作をした後、満面の笑みで言った。
「ベルの作る物なら何でもいいよ。任せる」
ニーベルも満面の笑顔をつくった。
「じゃあ、これから適当に食材買って行こう。お金も入ったし、今日はご馳走作るよ!」
 夕日が照らす大通り、夕暮れ鳥の鳴き声を聞きながら、少女たちは仲良くその道を歩いていった。


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