ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- ロンリー・ジャッジーロ 4−2
- 日時: 2011/07/31 16:02
- 名前: こたつとみかん (ID: DNzgYQrN)
- 参照: ココに来て一年経った、かな?
起きている間はずっと寝ていたい。だけど書き続ける。それがなによりも好きだから。
こんにちは。新年明けましておめでとうございます。
最近ポケモンの白を購入しました。ミジュマル超可愛い^^
ではでは、この小説が貴方の享楽となりますように。
こたつとみかんでした。
序章 前>>3 後>>4
第一章 ①>>8 ②>>10 ③>>12 ④>>16 >>17
第二章 ①>>21 >>22 ②>>25 ③>>26 ④>>33 >>34 ⑤>>40 >>41 ⑥>>44 >>45 ⑦>>46 >>47 ⑧>>51 >>52 ⑨>>62 >>63 >>64
第三章 ①>>73 >>74 ②>>77 >>78 ③>>82 >>83 ④>>84 >>85 ⑤>>86 >>87 ⑥>>90 >>91 ⑦>>94 >>95 ⑧>>96 >>97 ⑨>>100 >>101 >>102 ⑩>>103 >>104 ⑪>>105 ⑫>>106 ⑬>>107
第四章 ①>>112 ②>>113
キャラ名鑑 その一>>18 その二>>68 その三>>72
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- Re: ロンリー・ジャッジーロ 第二章-9 ( No.74 )
- 日時: 2010/05/30 17:35
- 名前: こたつとみかん ◆KgP8oz7Dk2 (ID: J0KoWDkF)
- 参照: よーやくだー!
「ううぅぅぅ……」
ニーベルとディオーネによって身包みを剥がされて無理矢理服を着せられ、この世の終わりを見たような表情をするアイリスに対して、その服装はとても明るく、いかにも「年頃の女の娘」と言うに相応しいものだった。
オレンジ色のカットソーに、白色のフリルのついたスカート。靴もブーツではなく赤色のパンプスに代えている。髪は後頭部の高い位置でひとつにまとめ、見事なポニーテールを作り出していた。寒色の瞳と髪に対している暖色の服装は、それはもう反則的なほど似合っていた。
「すっごい似合ってるよ!」「お似合いです! 可愛いですよ!」と、ニーベルとディオーネが口々にアイリスを褒めるが、アイリス自身は全然嬉しくなかった。むしろ、馬鹿にされているようにも聞こえた。
ふと、ニーベルが時計を見て思い出したように口を開く。それも、何故か満面の笑みで。
「あ、そろそろ晩御飯の準備しなきゃ。アイリ、買い物に行ってきて。……その格好で」
「なッ……!」
怒りのせいか、照れのせいか、アイリスの顔は真っ赤に染まった。それから色々と文句を探しているようにあたふたしていたが、やがて諦めたようで、うなだれて消え失せりそうな声でアイリスは言った。
「わかったよ……」
アイリスは全身からどよんとした空気を周囲に撒き散らせながら居間を後にする。
アイリスがいなくなってから、ディオーネが心配そうに呟く。
「大丈夫ですかね、アイリスさん。あの格好じゃあ、強盗なんかに襲われたら大変ですよ」
「大丈夫、だよ……。アイリは、強いんだから……。どんな……強盗が、襲ってきても……、高周波斧で……やっつけちゃうよ」
その言葉にディオーネは一瞬硬直し、呆れたように苦笑した。
「で、でも、さっきアイリスさんは高周波斧持って行きませんでしたよね?」
「え?」
そんなことは。そうニーベルは言おうとしたが、丁度そのときに訪れた、もう一人の訪問者によってその言葉は撤回される。
律儀にドアをノックし、笑顔で家に入ってきたのはヴィルバー・ニック・デルブライトだ。それも、大きい棒状の物を抱えて。ヴィルバーは入ってくるなり笑って言った。
「フールいるっスか? やっと直ったっスよ。高周波斧!」
それを見て、ニーベルが声を漏らした。
「あ」
- Re: ロンリー・ジャッジーロ 第三章-1 ( No.75 )
- 日時: 2010/05/31 17:30
- 名前: ユエ (ID: Am5TIDZx)
ディオちゃん、出してくれてありがとうですっ^^
アイリスちゃんの「女の娘」姿見てみたい〜(><)
きっと可愛いんだろうな・・・(*´ェ`*)
- Re: ロンリー・ジャッジーロ 第三章-1 ( No.76 )
- 日時: 2010/06/02 16:21
- 名前: こたつとみかん ◆KgP8oz7Dk2 (ID: 8we7jWSg)
- 参照: 時間が欲しいなぁ…orz
>>75 ユエ様
コメントどうもです!
ディオーネはオリキャラの中で一番最初に姿を現していただきました。汎用性が高いキャラクターだったので^^
マリアちゃんはもう少し待っててくださいね〜。
アイリの『女の娘』は…、うん。ご想像の通りです!
実は、こっちでアイリ(女の娘Ver.)の絵(着色前)を控えているのですが…。如何せん、ここに載せる手段が何一つないんですよ^^;
ああ、ペンタブ欲しいなぁ…orz
脱線しました。すいません。
これからも応援願いします!
こたみかでしたっ!
- Re: ロンリー・ジャッジーロ 第三章-1 ( No.77 )
- 日時: 2010/06/05 18:36
- 名前: こたつとみかん ◆KgP8oz7Dk2 (ID: bGx.lWqW)
- 参照: 時間が欲しいなぁ…orz
第三章『鐘の戯言、菖蒲の羞恥』②
ヴィ・シュヌール中央地区の西通り、食材を求め、人々が好んでここに通うこの時間帯にアイリスはいた。
普段のアイリスも、その容姿と今までの便利屋の実績で相当名が売れている方だが、今日は服装もあってか一段と人目を引いていた。
「おい、見ろよ」と誰かが呟いた。「あれって……」と誰かがアイリスに眼を向ける。「『菖蒲』の斧使いだな」と禿頭の男が思い出したように言う。「何? あのカッコ」と若い女が嫉妬混じりに睨む。「斧も持ってねェし」「やば、カワイイ……」「今日はいつもより目つきが悪いわね」「何してんだ?」「声でもかけるか」「止めなよ。殺されるよ?」「斧持ってねェから大丈夫だろ」「ポニーテールか……」「頭でも打ったンかァ?」「戦い難いだろ、あれじゃ」「阿保か。今は私用だろ」「若干顔が赤いな」「照れてるんでしょ。意外とシャイなのね」「今まで見たことないな、あれ」「心機一転でもしたンじゃね?」「ねぇ、あの娘ウチの店に入れない?」「馬鹿、あの娘は便利屋よ?」「もう一人いねェなあ……」「ニーベルだっけ?」「あの娘もカワイイよな」「なあ?」「俺的にはこっちだな」「やだやだ。男ってすぐ順位とかつけたがるんだから」
——五月蝿い。それらの言葉全てを一身に浴びるアイリスは苛立ちながら西通りを歩いていく。歩くたびに人々が振り向いてアイリスを見るため、目立たないように道の端を歩いても意味がなかった。いつもより肌を露出させているせいか、当たる風がやけに冷たく感じられた。
出来るだけ前は見ないようにと、足元に眼をやりながら歩いていると、靴の先に何か紙のようなものが当たるのをアイリスは見た。しかしそれは一枚の紙というには厚く、紙というよりカードに近かった。アイリスはそれを拾い上げてみる。赤いハートの形が幾つか描かれたものだった。いわゆる、トランプである。しかもそれは一枚だけではなく、アイリスの前に沢山散らばっていた。
見ると、黒いワンピースを身にまとっている、金髪で水色のパッチリとした大きい瞳の小柄な少女がせっせと散らばっているトランプを拾っていた。その少女を見下ろすように、頭の軽そうな、モヒカンヘアの男が怒鳴りつけていた。かろうじて聞き取れる内容としては、インチキだとか騙しだとかいう言葉が聞こえる。
気になって行ってみると、なにやらもめているようだった。怒鳴る男に対して、小柄な少女が半泣きで反論をしている。
「で、ですからぁ、インチキでもないですし、芸を見せたんですから許してくださいよぅ……」
「ハアアァァ? あんなモンで許されると思ってんのかァァ……? 芸が出来ねェなら金を置いてけっつってんだろォが……! 俺ン靴汚したンだからよ、それくらいはしやがれ!」
「そんなぁ……」
どうやら、男が小柄の少女に靴を汚されたと因縁をつけている所らしい。アイリスは別段知り合いでもない人間を助けるほどお人好しではないので、そのまま通り過ぎて買い物を済ませようとしたが、ふと、記憶の片隅に何かが引っかかった。最初は何か判らなかったが徐々に鮮明になっていく。——そうだ。四年前、ここでベルと会ったんだったな。
特に意味もないことを思い出しつつ、先を急ごうとした矢先、
「公衆の面前でよくそんな恥ずかしいコトが出来るな。鳥頭」
他の誰でもない、アイリスが男を嘲笑した。正直この行動はアイリス自身も驚いていたが。もう火は点いてしまったのだ。やるしかないと心に決めた。
「テメェ……。今なンつったァ?」
男が眼を剥いて振り向く。だが、アイリスはもう男を見ていなかった。——先手必勝。こっちを認識する間なんてくれてやるものか……! アイリスはその場で身体を後ろに反らせるように跳び、右足を振り上げ、振り向いた男の顎にスカートが翻るのも気にせずにサマーソルトキックを見舞った。乾いた、気持ちの良い音が男を見ていないアイリスの両の鼓膜に伝わる。——見なくても判る。これはクリーンヒットだ。
- Re: ロンリー・ジャッジーロ 第三章-1 ( No.78 )
- 日時: 2010/06/05 18:36
- 名前: こたつとみかん ◆KgP8oz7Dk2 (ID: bGx.lWqW)
- 参照: 時間が欲しいなぁ…orz
身体を一回転させ、右足、左足の順に地面に着地して男に眼を向ける。アイリスは男が大の字で地面に倒れ伏している光景を想像していたが、現実は違った。男は足が当たった顎を手で擦って顔をしかめて立っているだけだった。それもそのはずで、いつも履いているブーツの足先と踵の部分には鉄板が仕込まれており、それらは蹴りの威力を上げる役割を果たしている。今まで大の男たちを先程のような華麗な蹴りでノックアウトしてきたのは、鉄板仕込みのブーツがあってこそで、今履いているのはただのパンプスだ。その状態でどちらかと言われれば華奢な少女が放つ蹴りなど、高が知れている。
「痛てェな……」
男がお世辞にも上手とは言えない右フックでアイリスの左側の顔を狙った。大振りなこともあってか、間一髪で拳と顔の間に左腕を入り込ませて防御することが出来たが、体格が違うためにその場に止まるように踏ん張ることは出来ず、数メートル飛ばされた。すかさず男は、がら空きであるアイリスの左脇腹に左足で突き出すように前蹴りを放った。結構無理な体勢から放った故、直撃こそはしなかったものの、男は思いのほか力が強かった。踵が当たっただけで相当の衝撃と痛みを感じた。
「ぐぅ……!」
アイリスは顔を歪ませて地面に叩きつけられた。胸の辺りからとてつもない嘔吐感に襲われたが、何とか耐えた。男はアイリスに近づいていき、もう一度右手を後ろに引く。とっさにアイリスは両腕で自分の顔を覆った。それでも男は構わずに殴った。今度は左腕で。右腕、左腕と交互に殴り続ける。何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。拳はアイリスの顔を狙っているが、それらは一度も当たっていない。両腕で防御されているからだ。相当頭にきているのだろう。気にせずに殴り続けている。——くっ……。痛い、けど、耐えなければ。でも、このままだと、流石にヤバいか……?
アイリスは男に向かって苦し紛れに手を突き出し——たら、男は呆気なく倒れた。それも、アイリスの横に前のめりに。
男の陰からもう一人、精悍な顔つきの別の男が見えた。その男は硬そうな髪質の水色の髪と、目つきの悪い水色の眼が印象的で、ファーの付いた黒いコートを着ていた。男は安堵したように目を細め、アイリスに手を差し出した。
「大丈夫か、アイリス」
アイリスは精悍な顔つきの男を見て、拗ねたように顔を背け、差し出された手を掴まずに立ち上がった。その身体には、主に脚の辺りには擦り傷が出来ていた。
「……カイ……」
カイと呼ばれた精悍な顔つきの男は口の片端を上げて軽く笑い、行き場のない手を引っ込めた。彼はカイ・ゼルティース・アースクッド。古い知り合いで、アイリスをファーストネームで呼ぶ数少ない人間の一人である。彼は二十四という若さにも関わらず、ヴィ・シュヌールの国内でも指折りの便利屋だ。十三のときに便利屋となり、十五の若さで誰も倒すことが出来なかった『地底の魔窟』に巣食う、“死骸龍”アザ・ガウストと“粒子の黒蚊”ベルゼブブを同時に相手し、見事討伐を完了した伝説の三人組チーム“アース”の一人だった人間だ。その後アースは解散し、カイは他二人とも別れて今は独りで便利屋を営んでいる。
アイリスは十二歳の頃、カイから高周波斧の戦闘指南を受けていた。その他にも才能のある子供などに戦い方を教えているらしい。やけにこの国には「戦える」子供が多いが、カイがやっているその行為も理由のひとつだ。
「何か仕事で遠くに行ってると聞いていたけど……」
カイは拗ねたように上目遣いで見てくるアイリスの頭に手を置く。まるで兄と妹のような光景だった。
「……ああ、さっき報酬金をもらってきた」
そう言ってカイは親指で背中の袋を指差す。
そんな他愛のない会話の中、アイリスは何か忘れているような気がしたが、その疑問はすぐ解消された。
「あ、あのぅ……」
アイリスでも、カイでもない声が聞こえた。それは幼い少女の声で、その声の持ち主である先程の少女はアイリスに何か差し出すように箱を持った手を突き出していた。それは救急箱のようで、薬品のニオイが鼻腔をくすぐる。何故そのような物を持っているのか疑問に思ったが、特に深く考えずにアイリスは救急箱の中から消毒液と当て布と包帯を受け取り、少女に礼を言った。
「あ、ありがとう……。ええと……」
アイリスが困惑していると、何か察したのか少女は笑って言った。助けられたばかりでその相手にどう接していいのか判らないとでも言いたげで、その笑顔はぎこちない。
「リースと申します。……リース・エルナート・ペルーペス。それがウチの名前ですぅ」
——お礼がしたい。その少女、リースは続けてそう言った。
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