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色無〜禁じられた遊戯〜
日時: 2010/05/27 21:02
名前: しのぶ (ID: VMvMkRLZ)

タイトルは「しきむ〜きんじられたゲーム〜」って読みます。物語に対するコメント待ってます。

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Re: 色無〜禁じられた遊戯〜 ( No.47 )
日時: 2010/12/16 20:31
名前: しのぶ (ID: JD5DDSYn)

「なにがいいー?」
「んー……。洋風。」
「相変わらずざっくりとした注文だね……。」
しばらくそのへんでごろごろとしていると、キッチンから香ばしい匂いが漂ってきた。
「もうそろそろか?」
さすがに完成した食事を運んでもらうのまで瑠夏に任せていては、いよいよ、俺の家といえなくなってしまうので、俺はテレビを消し、のそのそとキッチンに向かう。
「おーい?瑠夏?」
「なにー?今出来たところなんだけどー。」
「どれとどれが運んでいいやつ?」
「んーと……。とりあえずこれとこれと、これ。」
そう言って、綺麗に盛りつけられた皿を指す瑠夏。
「よいしょ……と。」
俺はわざわざもう一度キッチンを往復するのが面倒だった為、複数の皿を手やら頭やらにバランスを崩さない様に乗っける。
すると瑠夏がこっちを一瞥した後、呆れたように、
「その力、もっと他の所にむけなさいよ。」
「うるせー。」
「どうせ、もう一回来ることになんのに。私の料理はそんな量じゃないもの。」
「知ってるから、こうやって少しでも負担を減らそうとしているんだろーが。」
「はいはい。………………。」
特に何かを意識するという事もせず、てきとーに口先だけで瑠夏を雑談を交わしていると、不意に瑠夏が押し黙ってしまった。
「ん?どうした?」
こちらが声をかけても何も言わず黙ったままだ。
彼女の手元を見ると、さっきまでトントンと小気味よい音を立てて食材を切っていた手が止まっている。
仕方なく、俺はキッチンにさっきまでバランスゲームよろしく持っていた皿を置き、瑠夏を真剣な表情で見つめた。

Re: 色無〜禁じられた遊戯〜 ( No.48 )
日時: 2010/12/21 18:48
名前: しのぶ (ID: 6afFI3FF)

「槙人は……、なんで私の事を怒らないの?」
やがて、瑠夏がポツリといった。
「は?」
「私、敵の術に掛かった挙句、パートナーである槙人にけがさせちゃったんだよ!!」
「……。」
「なんで司令に言わないの!?なんで家になんか招待するの!?槙人はなんでっ!!」
「……。」
「……なんで、私に冷たくしないの……?」
苦しく、切なく、哀しみに満ちた声で、彼女は言葉を紡いだ。
その表情は、見ているこっちが痛々しくなるほど辛そうだった。
「……。そうか……。」
そんな事思っていたのか。瑠夏は。どうりでさっきから妙によそよそしいと思っていた。
「はぁー……。」
「え?」
俺の突然の長い溜息に、瑠夏が驚いたように顔を上げる。
「あのさ、瑠夏。お前、んな事で悩んでたのか?」
「なっ!!……んな事って槙人、あんたねぇ……!!」
さっきの雰囲気から一転、俺のあまりな態度に不快感を露わにする瑠夏に、俺は台詞の続きを言い放った。
「俺がなんでお前を怒らないか分かるか?なんで家に招待したか分かるか?答えは簡単だ。

—お前がパートナーだからだよ。」

「……!!」
「何があっても俺は瑠夏を信じる。瑠夏に疑いの眼差しなんて向けない。それは、俺の生きる上での絶対的な誓約(ルール)だ。」
「……。」
「瑠夏のいない世界に意味なんてない。パートナーのいない世界は、俺が生きる価値なんてない。」

Re: 色無〜禁じられた遊戯〜 ( No.49 )
日時: 2010/12/24 14:30
名前: しのぶ (ID: VMvMkRLZ)

「……槙人……。」
瑠夏がこちらを見上げる。
「瑠夏に、俺は今までたくさん迷惑かけちまったからな。恩返しってわけじゃねぇけど。」
今までの台詞が急に恥ずかしく思えてきた俺は、最後にちゃかしたように笑ってこの話を終わらせた。
「早く夕食運ぼうぜ?腹減った。」
「分かったわよ。じゃ、その皿とそこの皿運んで。」
「はいはい。」
カチャカチャと皿がぶつかり合う音に、復活した瑠夏の軽快な包丁の音がキッチンに響く。
「あと少ししたら呼ぶから、先にお箸とかやっといてー。」
「おっけい。」
今は午後の七時。
夕食には丁度いい時間だろう。
俺は、フラフラしながら長い廊下を大量の皿と共に歩いていった。

****************

「「いっただっきまーす。」」
二人でテーブルを挟んで向かい合い、声をそろえて食事のあいさつをする。

Re: 色無〜禁じられた遊戯〜 ( No.50 )
日時: 2010/12/25 16:53
名前: しのぶ (ID: 6C/2QBw5)

「今日は結構簡単なんだけど……。」
「いや、今さっき急いで材料買ってきたんだからこのぐらいはむしろ上等なんじゃないか?」
「そう?」
わずかに眉尻を下げながら、自信のなさげな声で瑠夏が俺の方へ訊いてくる。
こんなにうまい飯なのに、何を不安になっているんだろう……?
俺としては不思議でならない。
「なぁ、テレビつけてもいいか?」
「いいよー。ハイ。リモコン。」
「おっ、サンキュー。」
瑠夏に礼を言いながら、親指の腹でリモコンのスイッチを押す。
すると、俺達が囲むテーブルのちょうど正面に設置されたテレビがパッとついた。

【なお、今日にも政府は……。】

たまたま公共放送でやっているニュースがうつり、真面目そうな男性のニュースキャスターがはっきりと滑舌の良い口調で喋っていた。
それをぼんやりと聞き流しながら、俺は瑠夏の食事を口に運ぶ。
「うわ、まだあがいてるの?この総理。」
「仮にも組織の資本者なんだからそういうこと言うなっての。」
「だってさー、槙人、裏金もばれちゃったってのに、ずっとシラ切りとおしてるんだよ?有り得ないし。」
「ラミットムーンの中の誰かに抹殺命令下りそうで怖ぇよ。」
「そっちの心配?」
「あったりまえだろ。命令来る事になっても俺達じゃないことを願うぜ。」
「無理でしょ。あたし達、実質組織の№1実力者じゃん。」
「希望的観測ぐらいさせろよ。」
二人、夕飯を口にしながら物騒な会話を続ける。
でもこれは俺たちの普通。
俺たちの日常。
「あ、灰崎のニュース流れてるよ。」
「本当だ。屋上から飛び降り自殺だってさ。はっ!俺達が殺した、れっきとした他殺死体だってのにな。」
「警察は馬鹿だよね。」
「今の警察じゃ無理だろ。あんな完璧な偽装は見抜けない。」
「御褒めに預かり、光栄です……って言った方がいい?」
スプーンを片手に持ったまま、いたずらっ子のような笑みで瑠夏がこちらを正面から射抜いてくる。
「勝手に言ってろ。」
「つれないなぁ〜。」
これからも変わることのない毎日に、これからも変わることのない日々。
俺たちは縛られるのだ。

組織に。

能力に。

壊れるまで。そこに感情を持ち込むことすら許されずに。
パートナー以外には、心を開くことすら許されずに。
何もかもを組織に捧げなくてはならない運命。

それが能力者である、俺たちの宿命なのだ。

Re: 色無〜禁じられた遊戯〜 ( No.51 )
日時: 2010/12/28 10:34
名前: しのぶ (ID: 0BucpTCd)


 二章 疑惑
「……おはよう……。」
「あっ!槙人!おはよう。」
「……朝っぱらから大声で騒ぐんじゃねぇよ……。」
「槙人、本当に朝、弱すぎだから。」
「……うるせぇ。」
翌日の朝。俺たちは今日が祝日だということもあり、のんびりと休日を満喫していた。
「瑠夏……コーヒー……。」
「はいはい。ブラック?」
「もちろん。」
寝起きでボーッとする頭を二、三回左右に振り、いつもの日課であるコーヒーを瑠夏に頼む。
普段は缶で済ますのだが、瑠夏のいる日は別だ。
はっきり言って、瑠夏は喫茶店に出てくるような料理を作るのがかなり上手い。
正直、そこにだけは瑠夏に敵わないな、と思うほど。
将来、喫茶店でも開いたら、確実に行列ができるだろう。
「瑠夏、並木司令からは……?」
「特になにも来てないよ?……コーヒー豆をっと……」
「じゃ、今日も休みって事でいいのか?」
「多分。」
すっかり普段着に着替えた瑠夏(部屋が余って困るため、俺の家には、瑠夏専用の部屋が二つほどある。その中に私服もしまわれているのだ。)と寝巻き代わりに着用しているスウェット姿の俺。
クリーム色のスリッパをパタパタ言わせてキッチン内をかけている瑠夏の近くで俺は大きく欠伸をした。
「はぁ……。今からどっか行くか?」
「そういう事は着替えてから言いなさいい。」
「ちぇっ……。こっちがせっかく誘ってやったってのに。」
「なによその恩着せがましい言い方は。」
「いいじゃねぇか。」
「そういうこと言うと、コーヒー……。」
「すみませんでした瑠夏様。」
一瞬で態度を翻す俺。
「その潔さ……いっそ清々しいわ……。」
「なんとでも。」
コーヒーがないと俺、マジで生きていけない。
しかも今日はそこらのコーヒーでは太刀打ちできないほどの旨さを誇る、瑠夏の入れてくれたコーヒー。
コーヒーのためなら死ねるぜ。俺。


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