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色無〜禁じられた遊戯〜
日時: 2010/05/27 21:02
名前: しのぶ (ID: VMvMkRLZ)

タイトルは「しきむ〜きんじられたゲーム〜」って読みます。物語に対するコメント待ってます。

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Re: 色無〜禁じられた遊戯〜 ( No.87 )
日時: 2011/04/28 16:04
名前: しのぶ (ID: nZ60vFmZ)

いきなりタメ語に戻った俺に司令を尊敬しているミズノが苦い顔をする。あんまり気にせず、そこら辺に散らばった書類を見ているアスクエとは雲泥の差だ。
……あんまりこういう事は思いたくないんだけど、ミズノ、その顔はちょっと女の子が浮かべちゃダメじゃないか?ちょっとヤバいんじゃねぇ?
「おい、ライ。それは考えていい事なのか?ま、わたしも思ってはいたが。」
「だから、勝手に思考を見るなっての!!」
「え?何考えてたの?」
「いっ、いや、なんでもないよ?ミズノ!」
「…………(にやにや)」
「おいっ!アスクエ!てめぇはニヤニヤしてんじゃねぇ!!」
さっきまでの緊張した雰囲気はどこへやら。あっという間にダラダラ〜とした空気にこの場が変わる。
そんな雰囲気に自然と変えてしまう自分の天性の才能を自覚していないライではあったが、皆の笑顔の裏に、まだ先ほどの話が消化しきれていない事を感じ取ってしまう。
ある意味、勘がいいというのは嫌なものだ……、なんて一人ごち、俺は再度キリリと顔を引き締める。

Re: 色無〜禁じられた遊戯〜 ( No.88 )
日時: 2011/05/02 20:27
名前: しのぶ (ID: eqvLcwt4)

「で、司令。この件について、ご検討の程、お願いできるか?」
「ライ、ところどころ、敬語とタメ語がごっちゃだぞ。」
「んな事はどうでもいい。で?どっちなんだ?早く答えやがれ。」
「ついにただの暴言になったな……。」
今はまだ確たる事は何も言えないが、俺には、アスクエを参加させてはならない理由があった。
ミズノはまだ、大丈夫。
だが、今ここでアスクエを離脱させなければ取り返しのつかない事になる。
それだけは、絶対に避けたい。
「もう、いいからっ!とにかく司令!お願いします!」
「うーむ……。」
司令が、俺の言葉を脳内で反芻する。顎に手を当て、真剣に考えをまとめている司令は、本当に誠実な人柄なのだろう。
カチコチと時計の針が動く音が響いている。ある種のマインドコントロールにかかりそうな空間で、

ミズノが突然倒れた。

「おいっ!?どうした!?何これ!!ライッ!どういう事だよ!」
「ミズノっ!?おいっ!」
最初に反応したアスクエに加えて、司令までもがあわてた声を上げる。

Re: 色無〜禁じられた遊戯〜 ( No.89 )
日時: 2011/05/05 20:56
名前: しのぶ (ID: eqvLcwt4)

「だから言ったのにっ……!!」
半ば予想していた事とは言え、想像以上にミズノの容体が深刻な事に気付く俺。
髪をガシガシと掻きむしりながら、俺は冷静にミズノの胸ポケットを探り、一つの小さな小瓶を取り出した。
耳元で小瓶を振ると、カラカラと乾いた無機質な音が響く。
音の大きさからして、もう残り少ないのだろう。俺は、その中身を手のひらに落とした。

Re: 色無〜禁じられた遊戯〜 ( No.90 )
日時: 2011/05/07 11:40
名前: しのぶ (ID: Hv9tLdWu)

「なっ……なんだソレ!?俺、きーてないんだけど!!」
俺の手のひらに落とされたものを見て、アスクエが焦った声を上げた。
流石、普段技術局で研究漬けの毎日を送っているだけの事はある。一瞬でコレがなんなのか分かったようだ。
俺の手のひらに落とされたものは、

小さなカプセルだった。

形や大きさに何の変哲も見られない、普通の医薬品のようにも思える。
だが、そのカプセルの最大の特徴といえばその色だろう。
このカプセル、

色が真っ黒なのだ。

まるで墨汁の中に長時間突っ込んでおいたかのように、カプセルは黒々としていた。光を吸収するかのように、その存在は異様だったのだ。
「これっ……!技術局で前に造っていた……!!」
「あぁ。アスクエ。そうだよ。コレは技術局が過去に開発して、そのあまりの効力に使用禁止にして造ることもやめた劇薬だ。」
「なんで、ミズノちゃんが持ってんだよ!!」
「……。」
激昂するアスクエを前になにも言葉が出ない俺。
そこへ、
「—そこから先は、私が説明しよう。」
「司令っ!!」
「アスクエ。落ち着け。私の話ぐらい冷静に聞いておけ。」
「……はい。」
司令からの助け船によって、俺はどうにかミズノにそのクスリを飲ませる準備を始められた。
ミズノの周りをアタフタと動き回る俺の前で、司令がアスクエに説明を始める。
「知っての通り、それは技術局内では絶対に造ってはいけない薬だ。一歩間違えれば人を死に至らしめる、凶悪な薬だからな。」
「はい。知っていますけど……。」
「アスクエ。その薬の効能を説明してみろ。」
「これは本来、鎮静剤としての役割を担うはずでした。能力者故に、アドレナリンが大量に分泌されてしまった時の救急薬。
だけど、この薬は鎮静剤として効果が強すぎた。服用した能力者たちは、アドレナリンの分泌をやめるどころか、必要最低限、生きていくための機能までを無意識のうちにストップさせてしまい、次々と死亡。
この事態に上層部は即座にその薬の製造を中止。以降、この薬は絶対に製造できなくなりました。」
「大方正解だ。」
「?まだあるっていうんですか!?」
「あぁ。ま、これは一部の権力者しか知らない事だからな。無理もない。
実はな、その劇薬にはもう一つの重大な効能があったんだ。その効能を承知の上で、上層部が製造を中止したのかは知らんが。
その効能とは、幻覚。」
「幻覚?」
「そうだ。たとえるなら麻薬か?いくら強力な鎮静剤でも心肺の機能を停止するなんて、普通はあり得ん。でも、能力者たちの死因は心肺停止。おかしいと思わないか?薬の効力にしては強すぎる。
そこでさっきのもう一つの効能だ。
人為的に沈静した脳内に、ある特定の幻覚が流れ込んでくる。すると、みんなそれに騙されて、知らず知らず、脳内から心臓やら肺を止める信号を送ってしまうんだ」
「なら余計にミズノには飲ませちゃだめじゃないですか!!それになんでミズノが持っている!?」
「簡単だ。裏でわたしが手をまわして造らせているんだよ。」
「っ!!」
「この薬は劇薬だが、これを飲まないとミズノは死ぬ。世界中の誰もが死ぬこの薬は、世界でだた一人、ミズノの生命をつなぎとめるんだ。」
「司令っ!!準備出来た!!」
「分かった、ライ。」
会話を中断して、司令がこちらへ歩いてきた。俺は左手に抱きかかえたミズノの口を僅かに開ける。
「飲み込めるか?」
「大丈夫だろ。いざとなったら、ライ。お前がキスでもなんでもして口うつしだ。」
「はぁ!?」
真っ赤になった俺を見て、司令が笑う。
「じゃ、いくぞ。」
「あぁ。」

Re: 色無〜禁じられた遊戯〜 ( No.91 )
日時: 2011/05/29 15:19
名前: しのぶ (ID: z0eXS2GZ)

司令が片手をミズノの口に当てた。
その場所が鮮烈な紅の光に彩られる。
ミズノの頬にまで伸びたその紅蓮の光は、やがて明確な形を持ってミズノの顔を覆う。
それは、マスクだった。
「は?」
事情を何にも知らないアスクエが間抜けな声を上げる。
だがその形がどんどん確かなものになるにつれ、アスクエの顔もどんどんと険しくなっていった。
「コレ……!俺らが前に開発してた強制的にクスリを打つタイプのマスク……!!」
「いや、少し違うな。それにアスクエが開発してた時はもっと黒かったろ?」
いや、そりゃあな。俺は一人心の中で突っ込んだ。
「これはその性能をもう少し劣化させて、装着者の負担にならない程度にクスリを打つタイプのものだ。その改良によって、マスクの形はだいぶ無骨になってしまったが。」
確かに今、ミズノがつけているマスクは、どちらかというと鉄でできたさるぐつわのようで、とても薬局などで市販されているあの薄い紙マスクには見えない。


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