ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 双翼は哭かずに叫ぶ
- 日時: 2010/06/05 01:43
- 名前: SHAKUSYA ◆fnwGhcGHos (ID: NvOMCXyZ)
ども、挨拶略してSHAKUSYAです。
この度カキコに電撃復活、ずっと構想を練り続けてきた現代ファンタジーを展開していきたいと思います。
……ただ、時代背景が現代なだけで普通の魔法ファンタジーとあんま変わらないんですがね。
てなわけで、ファンタジー全開のこの小説の大雑把なジャンルパーセンテージは
ファンタジー30%
戦闘25%
シリアス20%
グロ20%
恋愛3%
その他2%
(全ておよその数値也)
となっております。特に戦闘とグロの出現率は初っ端からヤバいので、十分心してください。
〜勧告〜
荒らし、誹謗中傷、喧嘩、雑談、無闇な宣伝、ギャル文字、小文字乱用等々、スレヌシ及び読者様に迷惑の掛かる行為はお止めください。
アドバイス(特に難解な漢字や表現について)・感想は大歓迎です。
やたらめったら一話の長さが長いので、更新はかたつむりの移動より遅いと思ってください。またスレヌシは受験生なので、時折勉強等でも遅れる場合が在ります。
それでは、我の盟約の許、汝等を文字の乱舞せしめる世界へ誘わん。
汝等に加護あれ、双翼に祝いあれ。
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- Re: 双翼は哭かずに叫ぶ ( No.41 )
- 日時: 2010/07/25 17:54
- 名前: SHAKUSYA ◆fnwGhcGHos (ID: zz2UUpI4)
- 参照: 第三話 続き
刹那、ジェイブルの姿が視界から掻き消える。サロメが反射的に上を見るが、木の天井と攪拌機(かくはんき)があるだけで目立つ白抜きの姿は無い。
八咫剣は気配ごと掻き消えた少年を眼と耳と勘で探しながら客をカウンターの奥まで下がらせ、テーブルの上に置きっ放しにしてある弓を掴み、口で何事か呟きながら矢筈に手を掛けた。サロメも乱暴にホルスターから銃を引き抜き、弾倉へ銃弾を叩き込む。
……燦。
「! やっちゃん、後ろッ!」
微かな鈴の音を聞き取ったサロメが叫び、ほぼ同時に八咫剣が大きく横に跳躍。しかし、次の瞬間八咫剣は悲鳴を漏らして突如テーブル席側へ——空中で直角に進路を変え、盛大にテーブルとコップと酒瓶を引っ繰り返しながら床に激突、そのまま背中から壁へ叩きつけられ、床に崩れ落ちた。豪快に壊れたテーブルの下敷きになったまま、うつ伏せに倒れた八咫剣は起き上がろうとしない。否、どうやら壁に叩きつけられた時点で気絶しているらしく、起き上がれなくなっている。
敢えて気絶した彼を見捨て、サロメは八咫剣が突如テーブル席へ飛ばされた付近を見る。そこにジェイブルは飄々とした様子で立っていた。それなりに体の重い彼を気絶するほどの力で弾き飛ばしたにも拘らず、華奢な少年は疲れた様子もダメージを受けた様子も無い。それ以前に、少年はどうやって姿を消し、人の目を欺いたのだ。
ジェイブルは顔を俯かせて「嘘」と空虚な声を上げるサロメに対して無邪気な笑みを浮かべ、明るく話し始めた。
「ウフフ、僕、風のヨーウェなんダァ。あんな風に羅象を駆使すればまるで消えたみたいに高速で移動することも出来るシィ、さっきみたいな高速で突っ込めば非力でも扉打っ壊す位の力が出せるしネ。アノ人東方系デショ? 東方系の人は勘が鋭いって言うシ、最初に動けなくなってもらったヨ。キミはゴリゴリの前衛で、後衛の援護に任せっきりみたいだしネ。戦術さ戦術」
無邪気な少年の声で陰鬱な大人の考える言葉を述べていくジェイブル。サロメは愚弄し嘲笑するような言葉に僅かな声で反論したが、腰の鈴の音でそれは遮られた。
俯いていたサロメの顔が上がる。強い色を讃える瞳は真っ直ぐ彼に翡翠色の視線を送り、その口元には——不敵な笑み。いつの間にか両の手には拳銃が握られている。ジェイブルの顔に初めて動揺と驚きの色が浮かんだ。
「キミは……」
「アンタさ、人が何でこの時勢まで生き残ってこれたのか、分かる?」
サロメの静かな問い。少年は答えに窮し、様々な答えを行き来した末に結局「知らない」と簡潔な答えを返す。サロメは「だろうね」とさも当たり前のように言い切り、笑みを湛えたまま銃口をジェイブルへ向ける。しかし、金縛りにあったように彼は動けない。沈黙する女討伐屋の視線は倒れたままの八咫剣に暫し向けられた後、動かない少年へ再び戻された。
答えは返ってきた。
「人ってね、見捨てるんだよ。百戦を乗り越え千戦を戦ってきた戦友だろうが、二十年一緒に居る鴛鴦(おしどり)夫婦だろうが、犬猿の仲の莫迦だろうが、傷付いて足手纏いになってる奴は遠慮なく切り捨てて見捨てる。人間って自己愛が強い性質(たち)なんだよ、自分が死にたくないって思ったら地獄の底の底の底に居る鬼より冷徹。だから、他のどんな動物より生存競争に強いのさ、人間は」
「僕には分からないネ」
ジェイブルは気圧されたような声で、しかし一瞬で切り捨てた。
「人間の残酷さなんて知るもんじゃないわよ」
サロメもあっという間に切り伏せる。
殺気と力が鬩ぎあい、僅かにサロメの長い茶髪を揺らした。
- Re: 双翼は哭かずに叫ぶ ( No.42 )
- 日時: 2010/07/25 18:31
- 名前: ともこ ◆/0eN/quXXQ (ID: nWEjYf1F)
漫画の原作とかに使えそうな物語設定ですね。
すごく面白いです。
そこらに売っている文庫本よりかは秀麗なつくりになっている。
応援しています。それでは。
- Re: 双翼は哭かずに叫ぶ ( No.43 )
- 日時: 2010/07/25 18:57
- 名前: right ◆TVSoYACRC2 (ID: zuIQnuvt)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.cgi?mode=view&no=14873
>>6のみるくちょこれーとことrightですー^^
(°Д°)
あなた神ですか。
いやはやこんなにもストーリーが進んでいるとは…今からちょっと二日三日かけてじっくり読んできます。SHAKUSHYAさんの物語に潜入したいn(ry…じゃなくキャラクターに感情移入しながら読みたいので。それと世界観がどのようなものだったかもう一度確認したいんです。
私はラノベ系小説を二度読みすることが好きなので←
最初はさらっと世界観を理解する。
二回目はキャラクターに注目し且つ感情移入しながら世界観に入り浸る…という感じなのでw
あ、すみませぬ・ω・
本編も読まずにこんなコメントして…^^;
しかしジェイブルが某ラノベの変態キャラクターと思ってしまいましたww
失礼致しました。
第2話は戦闘シーン満載…だと…?
戦闘シーンを読むの大好物ですw
期待してます^^
ではではすべてを読み終わったらまた来ますー
ではーノシ
- Re: 双翼は哭かずに叫ぶ ( No.44 )
- 日時: 2010/07/25 21:26
- 名前: SHAKUSYA ◆fnwGhcGHos (ID: zz2UUpI4)
姉にPCのっとられて返信遅くなってしまいました。
更新早々コメントありがとうございます!!
>ともこ様
そんなもったいない言葉を使っていただけるとは、光栄と恐縮の限りです……!
文庫本より秀麗とは、もー私の小説にはもったいなさ過ぎます。
応援に沿えられるよう頑張ります!
>right様
おお、あの『機械騎士-knight-』の神作者さま。
いつも楽しみにさせてもらっています。
(´゜ω゜)
いえ、私は紙です。後光もご恩も無い紙ですっ!(自慢気)
一度思いついたら止まらない性質ですが、その分構成もメチャクチャになって止まりません。そんな、潜入(笑)されたら困るくらい。
二、三日もじっくり読まれたら恥ずかしいですッ……! 流し読みしちゃってホントに構いません。
ジェイブルの概要は以下の式で成り立ってます。
人+(しつこさ+粘っこさ+強烈さ+白さ(笑)+私の妄想)×2−(萌え+大人気)
てな感じで。
某変態キャラ(多分私の考える変態とは違いますが)に似るのも無理ないかもです。
第二話は戦闘シーンモリモリですが、未公開の第四話はもっと戦闘シーンモリモリです。
第四話は今のところ本作最長の話であり、本作で尤も戦闘シーンと破壊シーンを多く含む話となっております。
貴方様の期待に沿うよう努力いたします!
お二方、改めてコメントありがとうございました!
重ねて感謝申し上げます!
- Re: 双翼は哭かずに叫ぶ ( No.45 )
- 日時: 2010/07/26 10:56
- 名前: SHAKUSYA ◆fnwGhcGHos (ID: zz2UUpI4)
- 参照: 第三話 続き
空気が古い木材のように軋(きし)り、撓(たわ)み、撓(しな)る。客は既に恐れを為して裏の勝手口から抜け出しており、店の中に残っているのは店主とバーテンダー、それに討伐屋二人とジェイブルだけ。しかしながら老店主もバーテンダーも気丈なもので、勝負の行く末を穴が開くほどに凝視している。サロメは「蹴球の試合を見る目付きじゃない」と苦笑しつつ左手で照れたように頭を掻き、そして再びジェイブルと向き合った。
サロメの涼やかな声が転がっていく。
「アンタさ、思ったけどどうしてアタシ達を殺そうとするわけ? 真逆とは思うけどさ、過日アタシ達が殺したカイってのと名前聞き忘れた校長センセの復讐? とりあえずそれに答えてよね、こっちも理由なき殺人は抵抗せざるを得ないし」
「決まってるじゃないカァ、この前キミ達が手を掛けたサタネル二人、アレは僕の兄貴と父上なんだヨ? 二人共キミ達二人に殺されて、僕は家族が一人も居なくなった。だからこんなことをしてるんダ。君にわかるのかイ、親と兄弟を殺されてサ、たった一人で生きてくって辛さ、募る恨みが。包帯なんかで眼隠してるのも、キミ達人間を眼に映したくないからなのサ」
やっぱりねえ——サロメは呆れたような溜息交じりの声を発して、言葉を力なく続けた。
「見上げた怨念ですこと! アタシ吃驚して呆れちゃったよ、幾ら親なし子なしの独り身でも光拒絶するほどの莫迦熾天使は居ないわよ。アンタ分かる? 人間の姿を拒絶するって事はね、サタネルの、アンタの兄貴とか親父、挙句自分の姿まで拒絶するって意味にも取れるんだよ。その上人間だけならまだしも、アンタは眼から光を奪い、全てを拒絶した。もう人間とサタネルの容姿が似てるなんて問題じゃない。アンタはこの世の全てを拒絶し、誉れ高き己が種族さえ穢したんだ。さぞ父上と兄上は嘆いているだろうね、人間であるアタシ達にその存在意義を尋ねてまで護りきろうとした己等の栄光を、息子が、弟が貶めたんだから」
「五月蠅いッ!——」
慟哭のように叫んでジェイブルは反論を紡ぎだそうとしたが、声は出なかった。サロメはただ辟易したような呆然としたような翡翠色の瞳で彼の眼を覆う包帯を見るばかり、口からは疲れた声が間延びして漏れた。
「アタシの父さんと母さんは、丁度今のアタシ達みたいにペア組んで、もう二十年も討伐屋してた。アタシは勇猛果敢(ゆうもうかかん)な父さんとそれを支える優しい母さんの背中を追って育ったからね、将来はこんな討伐屋になろうって小等学校に上がる前から決めてたんだ。でも、十五年位前——かな。父さんも母さんも擬龍の退治に行ったまま、以前の姿では帰って来なかった。帰ってきたのは父さんが使ってた二丁拳銃と母さんがいつも首に下げてたこのペンダント、それと何時でも二人が指に嵌めてたペアリングとほんの一寸(ちょっと)の髪の毛だけだったよ。ただ、アタシはそのころ何故か死ぬって概念が欠落しててね、遺品貰って施設で暮らすようになってから初めて死の概念知って、でも泣けなかった、泣かなかったよ」
その場に怪訝な沈黙が流れる。続きを促すジェイブルに、サロメは自嘲気味に笑って続けた。
「泣いても仕様が無いと思ったのさ。じゃんじゃん泣き喚いて施設の人困らせたり両親心配させたりするような莫迦な真似より、早く立派な討伐屋になって同じような心境味わう人間を少しでも減らしたいと思ったんだ。そっから五年は討伐屋になるべく羅象だの体術だのを猛勉強して、十年前に偶々この酒場で知り合って、そこで突っ伏してるアタシと同じような身の上の真面目人間と組んで討伐屋を始めたんだ」
アタシもアイツも、アンタと同じ人間なのさ——サロメは投げ遣りにそう引き結んで、左腰からも銃を引き抜いた。ジェイブルが慌てて構え、一拍遅れて双方から放たれた殺気と闘気と不穏な気に大気がギシギシと軋む。たじろぐ少年と対峙する、痛烈な過去を背負う女討伐屋の双眸には、ただ純粋な闘気だけが満ちていた。
「だけど」声が再び転がる。「だけど、アタシは何も拒絶しない。皆真実なんだ、真実は、全部受け止めてやる」
「僕は」反論するように少年の声。「全てを拒絶する。それが僕なんだから、ネ?」
少年の口角がニッと不気味に釣りあがる。女の口元にも不吉な笑みが浮かべられた。
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