ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 双翼は哭かずに叫ぶ
- 日時: 2010/06/05 01:43
- 名前: SHAKUSYA ◆fnwGhcGHos (ID: NvOMCXyZ)
ども、挨拶略してSHAKUSYAです。
この度カキコに電撃復活、ずっと構想を練り続けてきた現代ファンタジーを展開していきたいと思います。
……ただ、時代背景が現代なだけで普通の魔法ファンタジーとあんま変わらないんですがね。
てなわけで、ファンタジー全開のこの小説の大雑把なジャンルパーセンテージは
ファンタジー30%
戦闘25%
シリアス20%
グロ20%
恋愛3%
その他2%
(全ておよその数値也)
となっております。特に戦闘とグロの出現率は初っ端からヤバいので、十分心してください。
〜勧告〜
荒らし、誹謗中傷、喧嘩、雑談、無闇な宣伝、ギャル文字、小文字乱用等々、スレヌシ及び読者様に迷惑の掛かる行為はお止めください。
アドバイス(特に難解な漢字や表現について)・感想は大歓迎です。
やたらめったら一話の長さが長いので、更新はかたつむりの移動より遅いと思ってください。またスレヌシは受験生なので、時折勉強等でも遅れる場合が在ります。
それでは、我の盟約の許、汝等を文字の乱舞せしめる世界へ誘わん。
汝等に加護あれ、双翼に祝いあれ。
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- Re: 双翼は哭かずに叫ぶ ( No.36 )
- 日時: 2010/07/13 22:11
- 名前: SHAKUSYA ◆fnwGhcGHos (ID: zz2UUpI4)
- 参照: 頭痛が止まない。これだから受験の梅雨は嫌いなんだ。
>空様
鑑定ありがとうございました!
今までやったことの無い手法ですが、頑張ってみたいと思います!
——————————————————————此処から小説に入りまする。
第三話 「酔いの騒ぎは、崩されて。」
深夜のギャード地区八番街、五画区、二番地。
サロメと八咫剣の二人が同居する平凡なアパートから数メートル言った先の一角に、周りの建造物に押し潰されるような格好で起っている小さな西洋酒場(バー)がある。
如何にも一世紀ほど前の香りが溢れる、落ち着いてはいるが非凡な外装・内装に『紅の蝶』と言う非凡な店名の掲げられた非凡な酒場に集うは常連客ばかり。一見御断りの穴場である。
その非凡な穴場の一角には、仕事着のままのサロメがいた。
飲み干されたグラスの乱立するカウンターの左端で、本日十八杯目のカクテルグラス片手に拳銃の模様をドライバーとピックで彫りなおしていく。
その隣では三杯目の水割りをほんの少しずつ舐めながら弓に刻まれた漢字を彫刻刀で彫りなおす八咫剣の姿。双方共に酔いが回っている様子も酔い潰れる気配も無い。
適度に酔いが廻り、控えめに掛けられた音楽に合わせて盛大に歌い騒ぐ皆とは違い、黙々と作業をする二人の間だけが静けさと濃密な集中力に満ちている。最初は二人に絡もうとしていたほかの客も、二人が作業を始めてから早三分で誰も絡まなくなった。それだけ二人が放つ雰囲気はこの空気に対して異質なのである。不気味とも形容するだろう。
騒がしい声と控えめな女声曲をバックミュージックにしつつ、交差した西洋剣の模様にピックで蔦薔薇と翼竜の模様を絡ませていくサロメは、銃から目を話さないまま十九杯目のカクテルを注文。「好い加減にしろ」と言う八咫剣の冷たい抑制は誰にも顧みられず、乱立するグラスが漸く片付けられて本日十九杯目のグラスが目の前に置かれる。
「いいじゃない、コレくらい呑まないと足りないんだよ」
遅いサロメの弁解。流石の彼も彼女の上戸振りに呆れてしまい、再び二人の間から言葉が消える。バーの老年店主はヤマアラシの棘の雰囲気を放つ二人の様子に二柱の祟り神を重ね合わせたようで、「触らぬが吉か」と音楽的なハスキーボイスで呟き、眼を合わせないようにしながらグラス拭きに没頭し始めた。他のバーテンダーも他のカウンター客と話し込むことに決めたようだ。この不自然な取り繕いのお陰でカウンターの雰囲気は厭になるほど不自然である。
他の客はこの不自然な雰囲気に臆することも無く、テーブル席でやいやいと明るく騒いでいた。
サロメが二十二杯目の、八咫剣が五杯目のグラスを空にする頃、双方は共に満足気な顔で頷いた。
各人の手には修正と加飾の施された武器が載っており、殊に八咫剣の合成弓に施された漢字の追加は余りの多さに眼が痛くなるほど。『汝』や『縋』と言った言葉が随所に入っているため、どうやら東洋の羅象式をそのまま弓に書き写したらしい。
一方のサロメは銀の回転式拳銃二丁に元から施されていた秤と剣の模様、その内の交差した西洋剣のそれぞれに薔薇と翼竜(よくりゅう)が絡みついた図へ修正を加えている。それは人の手が入ったにも拘らず、元からその模様が入っていたように見事な左右対称。そして葉脈の一本一本や鱗の一片一片まで緻密に掘り込まれている。
どちらにしても作業の末の模様や文字は精巧。普通に芸術作品としても通用しそうなほどの秀麗さを誇っている。が、飽く迄この修正は観賞用でも自己満足用でもなく、武器の強化用なのだ。
「さて、威力を試してみますか」
- Re: 双翼は哭かずに叫ぶ ( No.37 )
- 日時: 2010/07/13 22:20
- 名前: 兎犬 (ID: zr1kEil0)
とても深い小説ですね。
人間が起こした禁忌が、業となって、また振りかかる。
羅象とはまったく恐ろしいものです(汗。
やはり理解できないものだからこそ、興味を惹かれるのでしょうかね。
- Re: 双翼は哭かずに叫ぶ ( No.38 )
- 日時: 2010/07/13 22:45
- 名前: SHAKUSYA ◆fnwGhcGHos (ID: zz2UUpI4)
>兎犬様
うう、そんなお言葉をもらえるとは思っても見ませんでした……(泣
この話自体は討伐屋とその周りを囲む化物・人との関わりや因果応報を念頭に置いて作っていますが、そのような深い意味を読み取ってもらえると本当に嬉しいです。
羅象は便利ながら、遣い方を誤れば自分の身の破滅をも招く危険な式ですからね。
理解しがたく、また理解していけないものが人間の生活を支えている。その小さな矛盾をも打ち消す人間の力強さなんかも感じ取ってもらえたら、それはそれで嬉しいです。
コメントありがとうございました。
これからもご愛読していただけると、嬉しいです。
- Re: 双翼は哭かずに叫ぶ ( No.39 )
- 日時: 2010/07/22 23:04
- 名前: SHAKUSYA ◆fnwGhcGHos (ID: zz2UUpI4)
- 参照: 第三話 続き
サロメの口からさりげなく放たれた一言に、老店主とバーテンダーの顔が愕然の色で凍りつく。八咫剣はどちらでもいいといった雰囲気で弓に彫った字が間違っていないか等を確認するばかりで、サロメの暴走を止めようともしない。双方とも作業中の疲労を紛らわせるために大量のアルコールを入れた為、どうやら酔って感情の抑制能力が全く利いていないらしい。
バーテンダーと老店主はサロメに直接手を加えてもどうにもならない事を悟り、石地蔵と化している八咫剣を動かすべくカウンターから必死に手を伸ばす。非礼を詫びながらもバーテンダーは縛り上げた黒髪を掴み、己の側へ強く引っ張って酔いを覚醒させた。頭皮から発せられる痛みで呆けていた視線に理性の光が戻り、彼は「止めろ!」と叫んで髪を引っ張る手の拘束を解く。そして、修羅の如き怒りの形相でバーテンダーを睨みつけた。
「何をするんだ、痛いだろう!」
「酔い覚ましの洗礼です! 反論は後で聞きますから先にサロメさんを止めてください!」
声は老店主のバリトンであっという間に斬り伏せられた。反論できない言葉に口を噤んでサロメの方を見ると、人に向かって銃口を向けようとするサロメの姿。口元の弛緩した笑みと理性の光が欠片も無い翡翠色の瞳が不気味さと恐怖感を倍増している。その凶行の様に八咫剣は肩を落として溜息を吐き、そして焦るバーテンダーに一言頼んだ。
「空のワインボトル一杯に、出来る限り冷やした氷水をくれないか」
一瞬バーテンダーの顔に正気を疑う表情が浮かぶものの、直ぐに頷いて空のワインボトルに細長の氷と水を溢れんばかりに注いで渡す。その間にもサロメの凶行の準備は着々と整っていき、観客のパニックはどんどんヒートアップしていくばかり。その中で一人冷静に、八咫剣は霜が付きそうなほどに冷やされたワインボトルを片手に提げ、静かに羅象の式を響かせる。
彼の声で、空気が冷たく一変した。
「高天原に神留り坐す皇神達、御姿を我の目前に。我汝等に縋り、又願う。我この手に冷たき刃を握り、凶き行いをせしめんとす者に刃向おう。水女神罔象、戦神熱田、根源神神産巣日、主神天照、我汝等に望む。我の願いをその御耳に聞き容れ、我の手中に握る冷たき刃に、目の前に起こらんとす災厄を防ぐ、静かなる凍えた命を宿す事を。そして、我に災厄と向う力を授け賜る事を。祝い給え、祝い給え、之なる刃に命が宿る、その果てに。我とこの者等に命を宿し、之なる災厄を防がせ給えと申す事を、八百萬の神達と共に、聞食せと、畏み畏み申す——」
やや投げやりに言葉を引き結び、八咫剣は手にしたワインボトルに手近なコルク栓を強引に詰め込んでいく。氷と水の封入されたそれを、無造作にサロメの二メートルほど手前、二人の女の中央あたりへ投げる。それに反応したサロメは酔っているにも拘らず素早い動作で、ほぼ反射的にボトルへと向け、幾分か呂律の廻らない口調で言葉を呟いた。
「風の放浪者よ、我が意の儘に」
簡略化された式によって紡ぎだされた羅象は、サロメが銃の引き金を引くと共に発現。薔薇が巻きついた剣の模様が青白く光を放ち、銃弾がワインボトルへ近づく一瞬で不可視の風が纏わりつく。
しかし、その一瞬で八咫剣の羅象も発現していた。ワインボトルの中に隙間無く封じられた水と氷は羅象によって命を吹き込まれ、狭い瓶の中からの脱出口を探して押し合い、圧し合う。暫くは瓶も大きさを微妙に変えながら拮抗していたが、やがて瓶の強度より命を吹き込まれた“それ”の押す力が勝り、遂に“それ”は瓶を粉々に砕いて板張りの床に屹立し、風を孕む銃弾をいとも容易く弾き返した。
サロメの緑瞳に驚愕が、老店主の茶瞳に唖然が浮かぶ。
目の前に現れ、銃弾を易々と弾き返したその正体。それは氷で出来た屈強な獅子。ボトル一本分の僅かな氷水から出来たとは思えない程の巨躯、それは造形の全てが透明で、硝子の置物のようなそれは硬質の物体から顕現したにも拘らず滑らかな動作で尻尾を振る。実に典雅な動作だが、コレの出生元が業務用冷凍庫だと分かると落胆してしまうだろう。
八咫剣が使ったのは正式な喚起系羅象『想動換喚起法(サミジナ)』、の東洋式版。
何某かの媒体に己の想像(イメージ)を重ね合わせ、そこへ更に上級の霊を憑依させるという三段方式の面倒で難解なもの。降霊術師と呼ばれる人種の人間でも、その面倒臭さと難しさから殆ど使われない、滅亡しつつある羅象である。無論この喚起羅象は難しいが利点はあり、何かの媒体に霊を宿らせるため、他のどの喚起羅象より喚起した霊の実体が良く分かる上にリアルなのだ。
更に、この羅象は喚起系の属性を身に着けていなくとも、元から持っている属性に合った媒体と強い想像力があれば出来る不可思議な特性を持っている。当の八咫剣も喚起系の属性は持ち合わせていないが、水系の属性と日頃の悪趣味な本好きが昂じた想像力は持ち合わせていたため、発現に至った。
が、イメージを重ね合わせると同時に上級霊を憑依させるという作業は喚起の属性を持っていてもいなくても非常に負荷の掛かる行為だ。その負担は呼び出したものの出現時間に比例し、その増え方は一秒間だけでも尋常ではない。喚起の属性を持っていない彼ならば尚更の事であり、それはどれ程屈強な人間でも同じである。
サロメは唖然と言う言葉がよく似合う顔で尻尾を立たせる獅子を眺め、八咫剣に向かって視線を送る。当の八咫剣は掛かる負荷によってふら付いており、直ぐ凄まじい負荷に耐えられなくなって羅象を解除した。獅子は氷諸共無数の式になって散華(さんげ)し、八咫剣は弾かれたように椅子へ倒れこむ。同時にサロメからの問い。
「なん、な、何? 今? 戯(たわむ)れ? 実験?」断片的な質疑。八咫剣は肩で息をしながらも問いを脳内で繋ぎ合わせ、黙って首を横に振る。「じゃあ今のは何!?」と凄まじい勢いで肩を掴んで揺らすサロメを手で押しのけ、八咫剣は肺を押さえて少々息と調子を整えてから、サロメの問いに答えた。
「酔ったお前の羅象がどれだけ危険なものなのか、お前は知ってるのか? 普通の状態で戦闘しているときは銃に強化を施しても私の防御羅象で一応は防げる。だが、ここ数年酒を酌み交わしていて漸く気付いた。お前は酔うと私の防御結界なぞ薄紙の如く突き破ってしまう。多分防御の天才であるイェソドやジャオエルが本気を出しても今みたいに酔ったお前の羅象を生半可な結界では止められない。だから態々(わざわざ)喚起の羅象を使って屈強な獅子を呼び寄せたんじゃないか」
「嗚呼、そういうこと」
長い返答に対し、サロメの声は短い。八咫剣も「そういうことだ」と至極簡単に疲れた声を返し、一瞬の惨劇を目の当たりにして硬直する客と老店主へ向かって詫びの言葉を言う。客と店主がしどろもどろながらも頭を深々と下げる八咫剣に対して頭を上げるよう言葉を放ち、八咫剣はそれに従い頭を上げようとした。
刹那。
- Re: 双翼は哭かずに叫ぶ ( No.40 )
- 日時: 2010/07/25 17:45
- 名前: SHAKUSYA ◆fnwGhcGHos (ID: zz2UUpI4)
- 参照: 第三話 続き
淋、淋、淋。
鈴が鳴った。稚(いとけな)いと言うか頑是(がんぜ)無いと言うか、高くも身の詰まらぬ空虚な鈴の音。空虚で冷たく、重い静けさが辺り一体に広がっていく。サロメも八咫剣もその空虚な音には特別厭な気配を感じ、席を蹴って耳を欹(そばだ)てる。老店主は何事かあってはならぬと客をカウンターの方へと寄せ、討伐屋二人は慄く客を庇うように前方へ立った。
淋。淋、淋。
リズムを変えた、再びの空っぽな音。耳の良いサロメは静寂の最中誰よりも早く音の方角を聞き分け、南側に大きく取られた四角い窓へ——空虚な空間が広がるばかりのそこへ、弾倉に残る全ての銃弾を一気に叩き込んだ。普通であれば、物理法則が正常に作用しているのならば、窓ガラスが無惨に砕け散るはずなのだ、が。
燦。
空虚な、しかし音色の違う涼やかな音が一つ響いたかと思うと、銃弾は恰も強化硝子に突っ込んだかのように空中で詰まって床に落ちる。サロメと八咫剣が夫々(それぞれ)の利き脚を一歩引いて構えるが、そんな二人の緊張とは裏腹に、二つの鈴音の主は「あっはっはっは」と、乾いた中性の笑声を発して姿を現した。
白い。
そこだけ白抜きしたような、背の低い“子供”が立っていた。少年とも少女とも言えない、ただ、子供である。
全体的に滲み出てくるのはミステリアスな雰囲気。雪のように白い巻き毛の短髪に、在り得ないほど白い肌。眼は真新しい純白の包帯で覆われており、仄かな薔薇色の唇には無邪気な笑み。袖が長く丈が短い真っ白な貫頭衣、それを茶のベルトで止め、穿いているのは膝までしかない白デニムのズボンに茶のサンダル。首には何かの角のような材質で出来たペンダントを下げ、淋燦と音を立てているのは、腰のベルトに下がっている金と銀の鈴。
色が少ない。
故に彼、若しくは彼女の存在は余計に浮き上がっている。
随分殺風景な身形をしたその人物は、道化(おどけ)た格好で腰を折り、深く頭を下げる。討伐屋二人はその間も警戒の色を緩めず隙を窺っていたが、殺風景なその幼子は一見隙だらけなように見えて、剃刀一枚ほどの隙も無い。百戦錬磨の両討伐屋でさえ迂闊には手を出せず、ただその場で固まるばかり。
——これは、強い。
口の動きだけで八咫剣が呟いたのを、サロメは見逃さなかった。
二人が警戒する一方、色の無い幼子はやはり隙の無い典雅な動作で頭を挙げ、挑発的な声で己の名を名乗った。
「やっす、はじめまァして。僕はジェイブル・シャダイ・エル・カイ。何だか僕を疑ってるみたいに見えるけど、男だからネ? それとアレだよ、『十二翼の熾天使(サタネル)』だかラ。んでまあ、早速こーゆーピリピリしたお出迎えを喰らっちゃった訳ダケド、別に酒場を荒らす心算じゃないンだよネェ。僕はキミ達に用事があってきた。一応確認取るけどサァ、サロメ・ラシュタル・ローゼン・ロネッタに八咫剣紅蓮の両名はキミ達人種も性別も性格も武器も違う凸凹コンビで大丈夫?」
語尾の裏返った声で一息に言い切り、ジェイブルは包帯に覆われた向こうの瞳から鋭い視線を送ってくる。討伐屋が睨み返し、一瞬刃と針の視線の応酬が立ち尽くす両者の間で拮抗する。疑念、殺気、怖気、余裕、苛々、様々な感情を込めた視線の応酬の末、それら全てを代表してサロメが口を叩いた。
「随分捲くし立ててくれるねえ、サタネルのジェイブル君? 確かにアタシ達が君の用を満たせるサロメ八咫剣だよ。そりゃあ性別人種性格武器に羅象の性質から趣味も特技も全く違うアタシ達だけどね、十年一緒に仕事遣ってきたらある程度妥協ってのは出来るもんだよ? 確かにアンタ達はアタシ達と似てるけど、サタネルは背を預けあうって事を知らない。だから異端扱いされるのさ」
「僕達サタネルからしてみればキミ達の方が異端だし百害なんだけド? そっちの東洋さんは分かってそうだけどサ、僕達サタネルを強引に闇の世界から呼び寄せて、居心地良いから思わず住み着いた僕等を異端だの百害だの言って排除しようとしたのはキミ達。お陰でこっちゃあ何時人にばれるかわからない中をびくびくしながら日々を過ごす、そんな心の余裕さえ持てない僕達の実状を君たちは知ってるのかイ? 知ってるなら、何で打開しようと思わないんだイ? 僕達って一体何のために呼び出されたんだイ? 何で排除しようとスル? 精神の余裕を奪ったのはキミ達なのニ? 何でだイ?……」
「待った」
まだまだ続きそうな錯綜(さくそう)した質問を八咫剣が強引に止める。ジェイブルの包帯越しの眼から痛いほどの疑問と殺気が放たれるも、八咫剣は平然を装い言葉を続ける。
「本題は私達を質問攻めにすることか、違うだろう? まあ知りたそうだから本題に入る前に一応質問には答えよう。君達の危険と隣り合わせの現状は知っている、だが私達討伐屋は依頼を請けて討伐する技術屋だ、コレで生計を立てているのだから文句を言っては干上がってしまう。君達は羅象が発展し始めた頃、物好きが趣味で呼び出そうとして呼び出したその結果だ。その結果人間も<異怪の者共>も含めて地面に載る生物の数が爆発的に増え、二進(にっち)も三進(さっち)も行かなくなった討伐屋が排除を決め込んだ。昔から共存してきたミトコンドリアと常在菌を除き、イレギュラーを排除して安寧を図るのが人間だ。イレギュラーをレギュラーとして存在させ、結果的に安寧にしてしまう君達サタネルとは社会保持形態が正反対なんだよ」
「長い返答どーモ。質問はまだ山ほどあるけどネェ、とりあえず僕の本題は一つサ」
ジェイブルはそこで言葉を切った。華奢な白い手が伸ばされ、二人を指す。言葉は毒液のように陰々と響いた。
「死んじゃエ」
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