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英雄の取り扱い説明書〜美少女ですが、何か?〜更新再開しますっ
日時: 2011/11/05 00:02
名前: きの子犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: ucEvqIip)
参照: http://www.kakiko.cc/bbs2/index.cgi?mode=view&no=5276

クリックいただきましたっ!初めての方も、そうでない方もどうもです。
多分、初めての方が多いんじゃないかと思います。いや、もうほとんどだと思いますがw
下手な文章で読み辛いことも多くあると思いますが、お付き合いくださいませ;


【この物語を読むにおいての取り扱い説明書】
・作者は大変亀更新得意です。元からワードで作ってたりしたものですがどうなるか分かりません。
・思いっきりラブコメで、バトルバトルバトル、といった感じです。ギャグとかも混じります。
何故シリアス・ダークに投稿したのかというと、グロ描写注意だからですw
グロ描写が苦手という方はお控え願えますよう、お願いいたします。
・読むな、危険。と、言いたいほど様々な面において危険です。それでも読んでくださる方は心して読んでください。




【目次】
この駄作にソングをつけるとしたら…>>121
プロローグ——になるのかこれ?…>>2
説明その1っ:勇者は美少女である
♯1>>4 ♯2>>7 ♯3>>8 ♯4>>13 ♯5>>14
説明その2っ:とりあえず責任者でてこい
♯1>>19 ♯2>>22 ♯3>>24 ♯4>>25 ♯5>>27
説明その3っ:拙者に斬れぬものなどございませんが?
♯1>>28 ♯2>>29 ♯3>>30 ♯4>>31 ♯5>>37
説明その4っ:え、これ、マシュマロですか?
♯1>>39 ♯2>>44 ♯3>>47 ♯4>>53 ♯5>>58
説明その5っ:——嬉しい。ありがとう
♯1>>62 ♯2>>71 ♯3>>74 ♯4>>78 ♯5>>79
説明その6っ:貴方、どこの佐藤さんですか?
♯1>>84 ♯2>>85 ♯3>>86 ♯4>>92 ♯5>>93
説明その7っ:私の王子様にしてあげるっ!
♯1>>94 ♯2>>99 ♯3>>112 ♯4>>117 ♯5>>119
説明その8っ:コンビニはこの世界、最高の癒しだろうが




【番外編】
槻児、どうしてお前はそんなにスケベなんだ
>>69
みんなで花見に行きましょう(全♯4〜5)
♯1>>95
・ツイスターだよ、全員集合!
・殺し屋佐藤さんにリアル鬼ごっこ演出させてみた(魔法・取り扱い説明書等無しで)
・入れ替わったイレモノ (全♯4〜5)
♯1>>96
・香佑にモテ期の魔法をかけてみた



【キャラ絵・挿絵】担当絵師様は王翔さんですっ!
ユキノ…>>113
結鶴…>>118
レミシア…>>120(NEW!)



【説明予告(説明その8っ)】by永瀬 理兎
コンビニとは、コンビニエンスストアの略で、最高の新天地とも書く。
この世界で唯一誇れるとしたら、コンビニだろう。世界各地にありとあらゆるコンビニが存在し、そのどれもが新商品をこれでどうだこれでどうだと張り合っている。その張り合い上に、新商品の素晴らしさが存分に発揮されているのも見物だ。
つまり、俺は何を言いたいかというと——コンビニを崇めろ、貴様ら。
……予告になってない? コンビニの説明をするだけでいいだろう。それで十分だ。コンビニ信者の話が盛り沢山な第8話だろうな。素晴らしい。(注:嘘です)



【お客様っ】
・と あさん
・Aerithさん
・夜兎_〆さん
・葵那さん
・結衣さん
・リアさん
・月読 愛さん
・風(元:秋空さん
・王翔さん

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Re: 英雄の取り扱い説明書〜美少女ですが、何か?〜参照500突破祝 ( No.69 )
日時: 2011/04/01 19:01
名前: きの子犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: 3Xsa0XVt)

俺は、英雄らしい。
ひょんなことで英雄の取り扱い説明書という代物を入手してから、俺はある特殊な人々から英雄と称されることになった。
特殊な人々、というと勇者やら何やらと、まるでアニメかゲームの世界でしか通用しない職業を名乗る奴のことだ。
まあ、とにかくだ。結論でいうと俺は、英雄らしい。

単に普通の高等学校に通う一般生徒でもある俺は、今日もまた学校生活を勤しもうとしていた。
平和な一日。そう、今日も平和だ。そんなことを思い浮かべながら——というのはある一人の男によって潰されたのだった。

「香佑っ!!」
「な、なんだよ……」

朝っぱらから仁王立ちで俺の目の前に立つ、この仏教面したいかにも面倒臭そうな奴——名は、横渚 槻児という。
この槻児という男は、男の中ではただの者ではない。その真意というものは——この一瞬で明かされるだろう。
仁王立ちに仏教面という、あまりに迫力の満ちた槻児の様子に、俺は深くにも怯む。そして、槻児はこう言い放った。


「女子更衣室を、覗こうと思うっ!!」


——槻児、どうしてお前はそんなにスケベなんだ




「は?」

俺は耳を疑った。それもそのはずだ。この槻児のバカは、朝っぱらから大胆にも女子更衣室を覗くというのである。
基本、早めに登校している俺だが、槻児はもちろんの如く、普段なら遅めに来る。
早め、といっても教室の中は俺達以外に誰もいない。そんな誰もいないような時刻に行っても楽しくないのだろうな。
俺は——家にいる自称勇者な美少女に何回起こす時刻を教えても、早めに起こされるのでこんな時刻になってしまっているわけだ。
そして、槻児は今日は珍しいことに早めに来ていた。それは——こんなくだらない計画のせいだったのか。

「おっと、くだらない計画だと思ったか?」
「な……!」

まさか槻児のアホ如きに俺の清い心情が見透かされるなどとは思っても見なかった。——といっても、大半の人がくだらない計画だと言うと思うが。

「ちっちっちっ! 甘いねっ!」

指を左右に振り、俺にウインクをかましてくる槻児。——ぶん殴っても、いいかな?

「そんなことだから! お前はいつまで経っても彼女出来ないまま終わるんだよっ!」
「いや、女子更衣室を覗く=彼女出来ないとは限らないと思うが。それに、覗く方が彼女出来ないと思うぞ」
「黙れっ!!」

え、何で俺一喝されたの? ちょ、本気でぶん殴りたい気分だわ。
相変わらず仁王立ちしている槻児は、やけに真剣な目つきで俺に指を差して言い放つ。

「いいかっ!? 更衣室を覗くというのはな! 男にとっては勇者同然の行為なんだっ!」
「男の更衣室か?」
「そうっ! 男の——って、男のを覗いて何が楽しいんだよっ!!」

くわっ! という好感音がつきそうなほどの豹変ぶりで、俺の顔を睨んで訂正する槻児。——クソ、引っかかってくれれば面白かったのに。

「男のに興味あるのかと思って」
「いつ何時俺がホモになった発言したんだよっ!」
「言ってただろ。毎日飯食う時に、ガチムチ最高! って言いながら学食の方まで——」
「うるさいっ!! やめろっ! 俺のこれからやろうとしている男にとっての英雄行為が損なわれるだろっ!」
「お前、死亡フラグ立ちまくりだからな?」

俺の言葉に、ピクリと痙攣したような動きを見せる槻児。何から何までウザい。
そしてその次の瞬間、ニヤリと顔を歪ませた。あー、面倒くさいこと言ってしまったようだな……。

「そう思うだろ? ふふふふっ!」
「何だよ、気持ち悪いな」
「教えて欲しいかっ!? 教えて欲しいか? このスケベッ!」
「よし。——歯、食い縛れ」
「待てっ! そういうつもりはないっ! 教えるから落ち着いて!」

何て弱い奴なのだろう。でも、本気で殴ろうとしたのは事実だ。——この野郎にスケベだなんて、言われたくもない。
俺は落ち着いて、自分の席へと座ると、槻児の方を見やる。

「で、何だ?」
「ふっふっふ! 聞いて驚けっ!」

別に、驚かないけどな。

「更衣室に、とある細工をいくつか仕組んでおいたのだっ!」
「細工?」

少し本格的なのかと、俺は細工という言葉に耳を貸す。——どうせこのまま一人でいても暇なのは変わりないしな。アホの末路を見届けようじゃないか。

「そうだっ! よし、お前も英雄となろうじゃないかっ!」
「ならないけど、お前の末路は見てやるよ」
「末路! いいねぇっ! フゥーッ!」

槻児のアホのことだからどうせ、末路=女子の着替え見放題と勘違いしているんだろうな。
もしもの時があれば、俺はずらかるし、女子に危険があれば止めるつもりだ。そのために、俺はいるようなもんだろ?




場所を変えて、とある女子更衣室。
この学園は、なかなか部活動に力を入れていたりしており、部の数もかなり多い。
茶道部何かでも、着替え等があるから本格的な感じだ。——そんなのがあるから、このようなアホが付け上がるわけだが。
さらに、それぞれ更衣する時間がずれていたりもしているみたいで……槻児が言うからには、だが。
どこからその情報を入手したのかは聞かないことにしておこう。
更衣室はそれぞれ3箇所ほどにあり、文化部はそれぞれの部室で。剣道部や柔道部等の武道場を使ったりする部は混合である。
女子ソフトボール、サッカー、ソフトテニスなんかも混合だな。
グラウンド部活動専用の更衣・シャワー室。体育館部活動専用の更衣・シャワー室。武道場部活動専用の更衣・シャワー室。
この三つが主となる。プールなどにある更衣室や、シャワー室。さらには校舎内にも転々とあるが、それらはほとんど文化部のものだろう。

「さて……ま・ず・は! 体育館から攻めるぞっ!」

槻児が妙に張り切った声を出しながら歩き出す。
部活動はこの時間にはスタートするという頃で、始めるために更衣室で着替えを始めることだろう。
体育館のバスケ部やら卓球やらバレーやらハンドボール部やら、等。
それらが各部で分かれて更衣しているわけだが……

「細工って、お前三つの更衣室みんなに仕掛けたのか?」
「当たり前だろっ!」

自信満々に言う、槻児。
三つの、といっても先ほど申したとおりに各部ごとにいくつも分かれていたりするわけで……一つ一つに細工をしたなら凄い数になる。

「あ、でも全てにかけたわけじゃないからな! それほど俺も暇じゃないからな!」
「まあ、そんなことだろうと思った。ていうか、暇じゃないって……お前相当暇だろ」
「あ? うるせぇってのっ! 今ちょっと調べてるんだからよっ!」

ニヤニヤとスケベな顔をしながら、槻児は何かコソコソと作業に勤しんでいる。
今現在、俺達がいるのは女子更衣室の裏側だ。えーと……バスケ、部か?

「ふふふっ! ユニフォームとか! 萌える萌える〜っ! フゥーッ!」

なにやら一人でぶつぶつと言葉を漏らしている姿には、本当にこいつはダメな奴だと心底思った。

「よし……! おりゃぁっ!」

何をするかと思えば——いきなりドアを開きだしたのだった。
中には、もちろんの如く、着替えようとしている女子達が大勢。

「え、あれ? まだ——着替えする時間じゃなくない?」

それが、槻児の最期の言葉となった。

「「きゃああああああ!!」」
「えぇぇぇぇっ!!」

もちろん、俺はその場をすぐに離れたさ。いや、まさか細工してあるとかなんとか言っておきながら——いきなり開くバカがいますか?
鈍い音が後ろの方から聞こえてくる。そして、断末魔も。
——それから数十分後、ボロボロになりすぎて顔が誰だか認識できないほどにまで膨れ上がった槻児が建物内から出てきた。

「べやびばいべべば……」
「え、何? お前、顔腫れすぎて何言ってるのかわっかんねぇ」
「べやに……ばいべれば……」

あーなんとなく分かってきた。多分「部屋に入れれば」だな。
いや、部屋に入る前の外側で細工は行うものだろ。とかなんとか口出ししたら、また今度やりかねんのでやめておく。
にしても、俺の嫌な予感がいち早く察知してよかった。でないと俺も槻児のようになっていたかもしれない。
なかなかスリルあるな、これ。

「お前さ、他の奴もみんな内側に細工を?」
「え……あ、うん」

いつの間にか膨らみが引いてたりするのは、殴られ慣れているせいなのか? 俺は驚く感情を必死に抑えながら、槻児を見やる。
アホにもほどがあるだろ。何で全部内側に仕掛けてあるんだ。それに時間ぐらい覚えておけよ、犯行するんだったら。

「つ、次こそは大丈夫だっ!」
「あぁ? 本当か?」
「あぁ……! 武道場の方にいくぞっ!」

武道場なら、まだ練習は始まっていないようだな。確かに、懸命な判断だと思うが……

「俺は、残るぞ?」
「はぁっ!? 一緒に大空に羽ばたくんだろうがっ!」

血を噴出しながら大空には羽ばたきたくない。

「もしバレたりしたら、半殺しじゃ済まないかもしれないぞ? 相手武器持ってるから。さっきと違って」

俺の言うことは正しいと思う。
武道場で活動している部は剣道部やらレスリング部やら柔道部やらと、やたら体を鍛えてたり、竹刀とかそういう危ないものを持っている。
この学園は、基本女の子のレベルが高いとかで、ゴツいのはあまりいないとか……槻児が言ってたが。
でも、先ほどのバスケ部でこの槻児の状態。これは、武道場は戦場そのものじゃないか。

「いや——俺はいくぜ」
「槻児……! お前、死ぬ気かよっ!?」
「生きて帰る。そうでないと、先代達の思いが報われない。俺が、俺が——叶えてやるべきなんだっ!」

なんてアホな思いなんでしょうね。皆さん、どうか心優しい目でお見守りください。

「だから、お前も来いっ!」
「何でそうなるんだよっ!」
「いいかっ!? 男には、今という時しかねぇんだよっ!!」

分からない。ただ、分かるのは——槻児がいえるようなセリフじゃないってことぐらいだ。




「よし! さすが俺の戦友だよなっ!」

結局、俺は鬱陶しすぎる槻児のウザさにやられてしまい、現在更衣室の隅っこにある置物の中にいます。
その置物こそが、細工というものだった。絶対バレない感じにしているみたいで、具体的に説明されたが、意味不明だった。
にしてもさ……なんていうことだ……。俺、何してんだろ。

「おっ! 来たみたいだっ! 危なかったなー! 後もう少し遅れてたら、バイオハザードみたいだったな!」

ゾンビみたいになるということが言いたいんだろうな。もっと日本語をよく使えよ。
そして、息を二人して殺す。じーっと待ち続けること、数十秒。
ガチャリ、と音がした。そして、中に入ってきたのは——

「はーありがとーっ! 湊ちゃんが来てくれたら大助かりだわー!」

女の子の声。いや、何か緊張してきた。
横にいるはずの槻児がふんふんと、荒い息を漏らす。気持ち悪い……。地獄だな、早く終わらせたい。

「別にいいよー。丁度今日、陸上部休みだったし」

その声はどこかで聞いたことのある声だった。
活発そうな、ポニーテールの女の子の次に入ってきたのは——神庭 湊だった。

(か、神庭っ!? 何であいつ……?)

既に袴姿の神庭は、妙に色っぽく見えた。体のラインが……いや、あまり考えるな、見るんじゃない。槻児と同類に——!

「いやーでも助かるよっ! 陸上部に入ってるのが勿体無いわっ! 剣道部に来たら!?」
「ふふ、中学校の頃にちょっとやってたぐらいですから。全然たいしたことないですよ」
「そんなこと言ってー! 前なんかウチのライバル校のエース、倒しちゃったじゃない!」

神庭のらしい部分があったりしたが、俺は神庭の新鮮な姿に見とれてしまっていた。

「あれ? 湊ちゃん? これー……サイズ、大きくない?」
「え、そうですかね?」

ポニーテールの女の子がキョロキョロと、神庭の着ている袴をチェックし始める。ちょっと待て、この雰囲気は……?
ハァハァと、うるさい息遣いが隣から聞こえてくるのがやたら鬱陶しい。

「こっちのサイズじゃない? ちょっと脱いでみて?」
「え、あ、うん」
「「ぶふっ!!」」

いきなりの行動に、俺と槻児は噴出してしまった。
やっちゃった。そう思って口を押さえる。だが——

「うん? 誰かいる?」
「……いるわけないじゃない。私達が来る時は鍵、閉まってたし」

鍵が閉まってたとかなんとか言うのは、槻児が第二の細工とかで鍵をこじ開けて、俺達は侵入したのだった。
そのおかげかどうかで、何とかバレずに済んだが……これは時間の問題な感じがしてきたぞ。

「それもそうね……。じゃあ、着替えましょうか」
「はい」

いよいよ、神庭の着替えが始まる。いや、でも何か悪いような気がするんだが……。
スルスルと、布と布の擦る音がする。そのたびに、横にいる槻児の息が荒くなっていく。
そして、神庭が遂に袴を全て脱ごうとしたその時——
ドサッ。と、俺の隣から音が聞こえた。それは、流血している槻児だった。
このアホ、あまりに興奮しすぎて鼻血出して気絶した模様。——ちょっと待てぇぇっ!!

「誰っ!?」

鋭い一声が俺の耳元を貫く。やべぇ、心臓が張り裂けそうだ。
なんという事態だよ。このバカ、迷惑かけすぎだろっ!
俺は、そこでふと、槻児のもう一つの細工を思い出したのだった。

(やるしか、ない!)

それは、更衣室にそれぞれ兼ね備えられた非難経路。そこに顔をバレずに逃げるために考案された、細工。
そう——ぬいぐるみたるもの。そして、槻児特製の煙玉。
俺は槻児の手から煙玉を入手し、こんなこともあろうかとあらかじめ、ぬいぐるみに着替えておいた俺は煙玉を投げた。
途端に煙が室内を覆う。

「な、何なのよっ! これ!」

そんなポニーテールの女の子の言葉を残して、俺は非難経路を急いで駆け抜けた。
煙玉、少々凄くてだ。避難経路のドアを開ける音が聞こえるのを防ぐためだとか。俺のために、ありがとうな、槻児。
俺は一気に避難経路を駆けていった。——槻児をその場に残して。

結果、俺は全く利害は無く免れたが——その後、顔が何十倍と膨れ上がった槻児から散々恨まれた挙句、飯を奢らされたのは言うまでもない。




「ったく! 本当クソな奴よね!」

ポニーテルの女の子が、怒った口調で文句を述べる。
その姿に、苦笑する神庭。

「湊ちゃんはどうしてそんなに怒らないの!? 裸見られそうになったのに!」
「いや……ふふ、ちょっと、ね」
「?」

ポニーテールの女の子は、神庭の笑う姿を見て困惑の表情をしていた。
神庭は、その後ポツリと呟いた。

「たいした、英雄だな。——香佑は」

そうして、クスっと、また笑う神庭であった。




「俺は諦めないぞっ!」

まだ言うか。そんな一言が漏れそうになる言葉だ。
何度この言葉を聞いて、何度試して失敗したかは数え切れない。
それが、まあ、この槻児という男なんだろう。

「俺は、女子が大好きなんだぁぁぁぁっ!!」

——槻児、どうしてお前はそんなにスケベなんだ


END

Re: 英雄の取り扱い説明書〜美少女ですが、何か?〜参照500突破祝 ( No.70 )
日時: 2011/04/01 02:29
名前: Aerith ◆E6jWURZ/tw (ID: hQNiL0LO)
参照: ライトニング>ファング ・・・ファングごめん

名指しは嬉しかったんですよ!光栄です^^
迷惑だなんてとんでもないっ!リク楽しみにしてますね!
そいじゃ ノシ

Re: 英雄の取り扱い説明書〜美少女ですが、何か?〜番外編始動っ ( No.71 )
日時: 2011/04/04 17:49
名前: きの子犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: 3Xsa0XVt)

そこは、優しい世界で、優しそうな匂いで、優しそうな人々。
私は、そんなところで生まれたはずだった。誰もが優しく、共に笑いあいながら生きていける。そんな幸せな、世界に。
その国の、私はお姫様という立場だった。
あまり、周りと関わらずに生きてきて、私は一人になることが多かった。
寂しい。そう思うのは無理もなかった。その時、まだ私は幼かったのだから。
でも、ある時少しの疑問に気付いた。
いくらお姫様という立場でも、私は幽閉されすぎなのではないか、ということに。
外に出ること、更には部屋の外に出ることすらも、叶われていなかったのだから。
お父様、という私の父に値する方に聞こうとも、会うことすら叶わない。
嫌われているんだ。そう思った。会ったのは私の記憶の保つ限り、一度か二度ほどしかないのだから。

「私は——何のために生きてるの?」

小さな身体で、ポツリと呟いたのだった。




「ん……」

随分と、眠っていたような気がした。
ゆっくりと、視界がぼやけながらも目を開けると、そこは見たこともない部屋だった。

「すー……すー……」

足元の方から、寝息が聞こえた。
そこには、気持ちよさそうに眠っている燐の姿があった。
この燐と契約していなければ、私は捕まっていたかもしれない。
あるものを、天界から持ち出したのだから。
自身の着ている、白のワンピースのポケットの中から、碧色をしたペンダントを取り出した。
これがあったら、また多くの死を招く。それは、巨大な魔力を持った魔装兵器。
元は私に取り付けて、大量に殺させるつもりだったようだ。

「私は……道具じゃ、ない……」

急に、目から水が零れ落ちてきた。
これは、涙というらしい。燐から教わった。
ならば私は——これまでに一体どれほどの量の涙を零してきたことだろう。
自身の持つ"巨大な能力"によって、私は感情を無くしてしまった。
でも、私は——あの香佑という男の持ってきたマシュマロを見て、私は心が温まった気がした。
そして、手と手が触れた時——私は力を取り戻した。

「……確かめよう」

私は、何故かあの香佑という男が気になった。
ただの英雄気取りにしては、何かがひっかかったのだった。




「えぇっ!? 八宝祭っ!?(はっぽうさい)」
「うん。え、知らなかった?」

クラスメイトの中の一人、中里に俺は八宝祭が近日あるということを知らされたために、動揺しざるを得ない。
ちなみに八宝祭というのは、文化祭のことだ。それをこの学校では八宝祭と名前を変えているというだけだ。

「普通秋とかにやるんじゃ……?」
「いや、梅雨時期ぐらいにやってからまた秋にも七宝祭ってのが……」
「どんだけ祭り事が好きなんだよっ! この学校は! 別に文化祭は一
つでいいだろっ!」     

おぉ、里中! 言い分最もだぞっ! そしてお前らの苗字、逆なだけになかなかコンビネーションがよさそうな気がしてならん。

「俺に言われても」

まあ、確かに中里の言い分も、里中の言い分も最もだ。オーライ、それはよしとしよう。
しかしだ。文化祭って、何かまた面倒そうだな。最近面倒なことが多いと思ったら、次は学校行事で文化祭か。

「つーわけで。クラスの出し物とか、この残りわずかな5月中に決めたいから。意見出してもらう」

クラス委員だったな。そういえば中里は。教壇の前に歩きながら語っていく。
黒板の前には、白チョークを持って仁王立ちするやたら活発そうな女の子、柴崎が笑みを浮かべていた。

「よっしゃーっ! じゃあ決めていこーかぁっ!」

このノリというかなんというか。声でかいし、何とも明るいということからクラスメイト達の中ではいち早く人気者だ。
それを冷静に対処できる奴がいいということで、里中——じゃねぇわ、中里を選抜させたということだ。

「はいはいはいはいっ!!」
「はいっ! 槻児のドアホっ!」

柴崎にもドアホ扱いされてるな。いち早く。おめでとうと拍手してやりたかったぐらいだ。
槻児は、ガタッ! と、勢いよく立ち上がると流暢に言葉を連ねていった。

「下手な服装はいりません。メイド、チャイナ、小悪魔風ロリっ娘服を着て喫茶をやろうと思う人、すぐに俺の元に来なさい。——以上」
「よし、ご苦労だ。とりあえずだ——おい、誰かあのドアホを教室の窓から叩き出してくれないか」

クラス委員の中里の言葉によって、ラグビー部やら野球部やらの面子が立ち上がり、槻児に近づいていく。

「どぁああっ!! 待て待て待てぇっ!! ここ三階三階っ! 死にますよーっ!!」

槻児のもの凄いアホな意見や末路はおいといて、話をまたリスタートさせる。

「とんだアホが失礼しました! でもいいキャラだったよね! 来世で会おう! えーっと! 他に意見あるー?」

柴崎が笑顔やら、ダンディな顔やら豹変していきながら、他のクラスメイトに意見を求める。
数十分と、口論が続いたが、結果飲食類といっても定番の物は取れる可能性が低いとかなんとか。
他のクラスと同様のは嫌だということで、何か無いかと考えを模索するクラスメイト一同。
そんな中、俺は何故か言葉を発していた。

「色んな職業をやる……そんな喫茶、どうだ?」
「え?」

中里の不意をつかれたような声と、クラスメイトたちからの視線を集める中、俺は言う。

「コスプレっていっても、メイドとかそんなありきたりなものじゃなくて、ほら、勇者とかさ」
「あー……ゲームの世界の?」
「そうそう。色々、面白いのもあるからいいんじゃないかなぁ、ってな」

しばしの沈黙が訪れ、そして数秒経った後に——

「面白、そう」
「うん……何か、画期的だよね」
「うん! いいんじゃない? 私、お姫様やりたーい!」
「お前には無理だろー!」

とかなんとか、クラスメイト達の声が溢れ返り、反響を招く形になった。

「いいねぇっ! じゃあ、それでいこう!」

柴崎が勢いに乗せて、黒板に『色々職業喫茶』と、名前だけ見ると少し不気味そうな喫茶の名前を書いた。
何か決まってしまったが……俺のここ最近の出来事が影響しているのか?
それはともかく、早く決まってよかった。下手すればこれを決めるために放課後残ったり、なんてのもまんざらではないしな。
成り行きだが、こうして俺達のクラス1−2の出し物は決まった。




「魔力戻れっ! こんにゃろっ!」

ユキノはその頃、何度も手を大きく広げては前に突き出したり、他人が見れば変人さながらの行為を行っていた。
場所は、あの例の公園である櫻木公園であった。
香佑たちにあまりバレたくない、というのもあったので香佑が学校に行っている間は最近ほとんど毎日、ここでこんなことを繰り返している。
魔力は、数日前のあの天使の一件で少々使ってしまった。そのために、魔力がまた0に近い状態になっているのだ。
それから少しは回復したとは思うのだが——いくら頑張っても、勇者の力が戻らない。
これは、少し異常なことでもあった。

「何で、戻らないんだよーっ!」

と、ベンチを蹴る。だが、凄まじく足に痛みが走ってきて、うずくまって半泣きしてしまう。

「ッ〜〜!!」

悶絶しながらも、何とか立ち上がって先ほど蹴ったベンチに倒れ込むように座る。

「あんな雑魚に不覚とっちゃったから……!」

雑魚、というのは茶色の純粋瞳のことである。
ユキノからすると、あれぐらいの敵は全くどうってことはないのだが——ただ、香佑が危なかったから咄嗟に助けてしまった。
その行動が意味するものなど、ユキノにはよく分からない。いや、分からないように隠しているだけなのかもしれない。

「お腹、空いたなぁ〜……」

腹を手で撫でながら、空を見上げて言う。
いっそ、元の世界に戻れれば、力は取り戻されるのだろうか?
でも、僕は英雄の取扱説明書を完成させて、魔王を倒さなければいけない。
それにしても、何故僕に英雄の取扱説明書の護衛などという、重要な役目を言い渡したのだろう?
そんなことを、考えていた。

「ん」

その時、横から何か物が目の前に飛び込んできた。
"とびっきりカレーパン"と書かれたそれは、腹の空いているユキノからすると、それは美味しそうなものだった。

「おおっ!」

と、目の前のパンを横取りしようとした時、ふっと目の前からパンが消える。
消えた方向を見ると、そこには若い男性の姿があった。
服装は——コンビニ店員の服装だった。
そして、そのコンビニ店員の男は口にコッペパンを咥えていた。

「か、返せよっ!」

自分の物でもないのに、返せというユキノに対して、その男は無表情でコッペパンを咥えている。

「コンビニエンスストアは、好きか?」
「は?」

いきなりその男は、コッペパンが口に挟まっている状態だというのに、流暢にコンビニエンスストアは好きかどうかを問いかけてきた。

「コンビニ、好きか?」

次は、略して言って来た。ずっとコッペパンを咥えっぱなしだが、苦しくはないのだろうか?

「食べ物ばっかり置いてあるところか?」
「……ほとんどはそうだな」
「なら大好きだっ! 最高だよな!」

と、ユキノは胸を張って答えた瞬間、その男はカレーパンをユキノに手渡した。
喜ぶユキノを置いて、そのコンビニ店員はゆっくりと公園から出て行った。

「いっただっきまーす!」

その定番の挨拶と共に、ユキノはカレーパンをものの数秒足らずで食べ上げた。
味は——ものすごく美味かった。コンビニエンスストア、必ず覚えておこう。そして香佑が帰ってきたら買いに行かせよう。
そう決めながら、満足気に背伸びを行おうと両手を前に伸ばした時だった。
——鋭い、閃光が唸り、目の前にある大きな砂山を巨大な破裂音と共にぶっ飛ばした。

「……え?」

ユキノは、いきなりのことで呆然としていた。
今のは、僕の魔力? と、感じでそう思った。試しに立ち上がり「ダイダロス!」と、例の大剣を魔方陣の中から呼んで、それを持ち上げようとした。
地面に刺さったダイダロスは、すぐにザクッと音を鳴らし、振るうことが出来た。
つまり、魔力が戻ったのだった。

Re: 英雄の取り扱い説明書〜美少女ですが、何か?〜 ( No.72 )
日時: 2011/04/05 19:29
名前: Aerith ◆E6jWURZ/tw (ID: hQNiL0LO)
参照: 〝迷わなければ強くなれますか?〟〝だから生きてる〟

カレーパンとかマシュマロとか・・・w
いやコンビニの店員さんか。あの人何者?;
槻児って勇者とかの力には関連してないのにキャラ濃いですよねw
何はともあれあの人みたいなのがうちの中学にいなくて何よりです←
はい。w

Re: 英雄の取り扱い説明書〜美少女ですが、何か?〜 ( No.73 )
日時: 2011/04/07 14:09
名前: きの子犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: 3Xsa0XVt)

>>Aerithさん
はい、カレーパンですっ。
コンビニの店員さん、あのキャラはとても好きなキャラです。
かなり意外な感じになると思いますが……これからに期待してくださいっ。
槻児は基本アホキャラなので……槻児がいてこその香佑の学校生活が生きる、みたいな感じですかね。
そうですね……あんなのがいたら、ちょっとうるさくて、うざくてたまりませんね……。
改めてコメント、ありがとうございました;


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