ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 英雄の取り扱い説明書〜美少女ですが、何か?〜更新再開しますっ
- 日時: 2011/11/05 00:02
- 名前: きの子犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: ucEvqIip)
- 参照: http://www.kakiko.cc/bbs2/index.cgi?mode=view&no=5276
クリックいただきましたっ!初めての方も、そうでない方もどうもです。
多分、初めての方が多いんじゃないかと思います。いや、もうほとんどだと思いますがw
下手な文章で読み辛いことも多くあると思いますが、お付き合いくださいませ;
【この物語を読むにおいての取り扱い説明書】
・作者は大変亀更新得意です。元からワードで作ってたりしたものですがどうなるか分かりません。
・思いっきりラブコメで、バトルバトルバトル、といった感じです。ギャグとかも混じります。
何故シリアス・ダークに投稿したのかというと、グロ描写注意だからですw
グロ描写が苦手という方はお控え願えますよう、お願いいたします。
・読むな、危険。と、言いたいほど様々な面において危険です。それでも読んでくださる方は心して読んでください。
【目次】
この駄作にソングをつけるとしたら…>>121
プロローグ——になるのかこれ?…>>2
説明その1っ:勇者は美少女である
♯1>>4 ♯2>>7 ♯3>>8 ♯4>>13 ♯5>>14
説明その2っ:とりあえず責任者でてこい
♯1>>19 ♯2>>22 ♯3>>24 ♯4>>25 ♯5>>27
説明その3っ:拙者に斬れぬものなどございませんが?
♯1>>28 ♯2>>29 ♯3>>30 ♯4>>31 ♯5>>37
説明その4っ:え、これ、マシュマロですか?
♯1>>39 ♯2>>44 ♯3>>47 ♯4>>53 ♯5>>58
説明その5っ:——嬉しい。ありがとう
♯1>>62 ♯2>>71 ♯3>>74 ♯4>>78 ♯5>>79
説明その6っ:貴方、どこの佐藤さんですか?
♯1>>84 ♯2>>85 ♯3>>86 ♯4>>92 ♯5>>93
説明その7っ:私の王子様にしてあげるっ!
♯1>>94 ♯2>>99 ♯3>>112 ♯4>>117 ♯5>>119
説明その8っ:コンビニはこの世界、最高の癒しだろうが
【番外編】
槻児、どうしてお前はそんなにスケベなんだ
>>69
みんなで花見に行きましょう(全♯4〜5)
♯1>>95
・ツイスターだよ、全員集合!
・殺し屋佐藤さんにリアル鬼ごっこ演出させてみた(魔法・取り扱い説明書等無しで)
・入れ替わった体 (全♯4〜5)
♯1>>96
・香佑にモテ期の魔法をかけてみた
【キャラ絵・挿絵】担当絵師様は王翔さんですっ!
ユキノ…>>113
結鶴…>>118
レミシア…>>120(NEW!)
【説明予告(説明その8っ)】by永瀬 理兎
コンビニとは、コンビニエンスストアの略で、最高の新天地とも書く。
この世界で唯一誇れるとしたら、コンビニだろう。世界各地にありとあらゆるコンビニが存在し、そのどれもが新商品をこれでどうだこれでどうだと張り合っている。その張り合い上に、新商品の素晴らしさが存分に発揮されているのも見物だ。
つまり、俺は何を言いたいかというと——コンビニを崇めろ、貴様ら。
……予告になってない? コンビニの説明をするだけでいいだろう。それで十分だ。コンビニ信者の話が盛り沢山な第8話だろうな。素晴らしい。(注:嘘です)
【お客様っ】
・と あさん
・Aerithさん
・夜兎_〆さん
・葵那さん
・結衣さん
・リアさん
・月読 愛さん
・風(元:秋空さん
・王翔さん
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- Re: 英雄の取り扱い説明書〜美少女ですが、何か?第6話完結っ ( No.94 )
- 日時: 2011/06/19 21:27
- 名前: きの子犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: hF19FRKd)
「連絡は繋がったか!?」
忙しく機械音や騒音が聞こえる中、クロナギの声が室内に響いた。
コンピューターらしきものが何台も置かれたその室内には、妙な緊迫感が所狭しとあった。
「はいっ! 現在、騎士団の団長であるシルヴィア様と連絡が繋がっております!」
「よしっ! 私に回せ!」
クロナギは連絡の繋がっている電話機のようなものを手に取り、耳に当てた。
「勇者、クロナギか?」
すると、その電話機から凛とした声が聞こえてくる。この騒音が飛び交う中、その声はハッキリと聞こえた。
「あぁ、私だ。久しぶりだな、騎士団長シルヴィア」
「……現在、歌姫様を連れて下りようとしている」
歌姫、というキーワードを聞いてクロナギは表情を険しく変えた。
「もうそっちに魔王軍は侵略しているのか!?」
「いや、まだだ。しかし、怪しい動きが見られる。既に我が王国は信用できないだろう」
騎士団の住む世界は、王国から成り立っている。一つの王国がそれぞれ王族ごとに分かれ、領土を持っている形。
その中、一際大きな王国が不審な動きを見せた。それに続くようにして他の王国もまた、不審に動くようになった。
それを決定付けることが、歌姫の部屋に弓矢が放たれたこと。明らかに何者かが故意でしていることだと感じ取れた。
「そうか……では、下りるのならば勇者レミシアと連絡を取ってくれ。現世界に今いるはずだ」
「分かった」
一言、言い残した言葉を聞くと同時に連絡が途絶えた。クロナギはゆっくりと電話機を置き、そして告げる。
「こうなったら戦争になるかもしれん! 十分準備を怠るなっ!」
他の勇者達は一斉に頷き、大きく返事をしたのだった。
カッチ、コッチと時計の音が聞こえる。いや、正確に言うとそれだけしか聞こえない。
それだけ無音の境地であるからして、そしてこの状況。
「……」
誰も一言も話さないこの状況はどういうことなのか説明してもらいたい。ていうより、久々に全員集合したのにこの姑の睨み合いみたいなことになっている原因は——俺の目の前に座っている一人の少女と、もう一人の目を閉じて寝ているかのように倒れている同じ顔をした少女二人のせいだろう。
同じように二人は俯き加減に黙っている。それがもう数十分は続いているのだから、そろそろ足の痺れがきますよ?
ちなみに言うと、現在この俺の家のリビングたるところにいるのは俺と、ユキノ、結鶴、葵、燐、レミシア、そして——佐藤少女二人。
一人、レミシアだけが笑顔でこの場に居座っているという状況。他は皆居辛そうな、何ともいえない雰囲気を醸し出している。
「あの、さぁ……」
ここで口を開いたのはユキノだった。ユキノは気まずそうに頭をポリポリと掻きながら、何とか声を発するようにして言う。
「と、とにかく、何か食べない? ……お腹、減ったんだけど」
「そ、それもそうだな……。じ、じゃあ何か作るわ」
俺はユキノに便上して、逃げるようにキッチンへと歩いていった。結鶴は結鶴で佐藤を見つつ、怖い表情で葵と燐を見てるし、同じようにして燐も結鶴を睨んでるし。対して葵は素知らぬ顔でマシュマロを無音で食べている。
ユキノは気まずすぎたのか、俺の元へと駆けて来た。手伝おうというのか。まあ、懸命な判断だとは思うがな。
何でこんな全員集合! みたいなことになったのか。少し前にさかのぼると——
「貴方、どこの佐藤さんですか?」
何かノリでグングニルを発動させることが出来た俺はあの後、崖の上に突如として現れた佐藤に目掛けて言った言葉。
この一言で、その崖の上にいる佐藤が反応したところから始まる。
「ふぇっ!」
と、可愛らしい声を出して怯えるようにしてしゃがみこむ崖の上の佐藤。
そして、そんな佐藤に後から続くようにしてユキノ、葵、燐が来た。ていうか、俺の家の留守番は?
「香佑っ!? 何してんだよっ!」
ユキノから怒った感じの口調で怒鳴られたけど、俺にとっちゃ、何がなんだかわからない。倒れている佐藤が一体何なのかも分からないし、それに崖の上の佐藤は一体どこの佐藤なんだ。
崖の上の佐藤が、本物の友里? それとも、この倒れているほうが?
同じ顔してるから全然分かんねぇ。ていうか、双子?
「どうなってんだ……?」
どうすればいいかも分からず、ただこの状況に俺は困っていると
「待てぇっ!」
どこからともなく声が聞こえた。それは崖の上にいる一同から発された声ではなく、もっと別の——そうそう、俺の後ろとか。
その声の正体は結鶴だった。相当走ったのか、少しだけ息切れをしているように見えたが、その素振りは一瞬で消え去る。
「香佑!? どうしておぬしがここにおるのだ!」
「いやいや……逆になんで結鶴もここに——」
ますます混乱してくる中、結鶴は「あぁっ!!」と声をあげて俺の傍で倒れている佐藤の元へと近づいていく。
「おいっ! 大丈夫か! ダブルオーっ!」
え、何言ってるんすか、結鶴さん?
ダブルオーっ! って叫ぶ人、初めて見た……。ていうか、そこはセブンも付け足そうぜ。ボンド来い。ボンド。
「香佑っ! レミシア! おぬしらがまさか……!」
「ま、待てって! 落ち着け!」
刀を抜こうとし、殺気を露にする結鶴の姿に慌てて俺は弁解をする。
だが、その俺の言葉を聞きそうにもないほど強く俺を睨んでいる。——ちょ、本気でやばくないっすか?
「あはー☆ 少し誤解してますよ〜☆ 故意でこの子を気絶させたわけじゃありません☆」
「故意じゃない……? ということは、ダブルオーから攻撃を仕掛けたというのか?」
「ダブルオーちゃんって言うんですか? 面白可愛い名前ですね〜☆」
少しばかり話しが噛み合っていないような気がしないでもないが、まあ、大体のことは伝わっただろう。結鶴の表情が次第に緩んでいくのが分かる。
「では、この倒れている方は佐藤 友里で——ダブルオーはあの崖の上にいる佐藤か」
結鶴が崖の上に目を配ると、そこにいた佐藤は俯き加減と涙ぐんでいる表情で結鶴を見つめていた。
……一体どういうことだ? ていうか、やっぱり倒れてるのは佐藤 友里本人? それじゃあ、あの崖の上にいる佐藤は誰だ?
ダブルオーとかなんとか言ってたけど、ここまで来ればネタとかじゃない気がしてきた。
「だー! 分かった! じゃあ俺の家で話し合おう!」
……と、俺が言い出したことからこのような事態に。全く、後悔すべきなのかすべきでないのかいまいちよく分からないな。
そんな回想をしつつ、俺はじゃがいもを包丁で切っていく。隣でユキノがダイダロスで——って待てぇぇっ!!
「バカかお前は!! 何でそんなバカでかい大剣でニンジンを切ろうとしてんだ!」
「へ? ……あぁ、ボーっとしてた」
「普通気付くだろ……」
ため息を漏らし、後ろを振り返ってみると——未だ何も話していない一同の姿。どころか、所々ピリピリしたような空気が……。
この空気のおかげで、ユキノも変な行動をしたのかもしれない。動揺しているみたいだな。
「……拙者はまだ、全て許したわけではない」
「何も、許してくれなどと頼んだわけではないけどな」
「何……!?」
「何だ……!?」
結鶴と燐の口論がキッチンにまで聞こえてくるのが何とも痛々しい。というより、見てられない感じがする。
大丈夫なのか? あの二人。というより、俺がこれ、止めるべきなのか?
「二人共、やめて」
「姫様!?」
まさかの葵が二人を制止させた。ただ一言呟いただけでも、燐は葵には敵わない。
結鶴は多少驚いた顔をして葵を見つめる。正直、結鶴も葵と燐は悪くないと気付いてる筈なんだけどなぁ……。どうもこの二人は似てて、どちらも頑固だから扱いがなかなか難しい。
「とりあえずですね〜☆ 皆さんにお知らせしたいことがあるんですよ〜☆」
レミシアが手をポンッと軽く叩いて、笑顔で俺たち全員に聞こえるようにして言った。ていうか、それを早く言えよな。
「どうしたんだ?」
じゃがいもをなお、切りながら俺が答えた。するとレミシアは人差し指を立てて得意そうに言ったんだ。
「何者かがですね〜☆ ——ここに向かって敵意を向けながら飛んできてるんですよ〜☆」
……ふむ。なるほど?
「あの、それは結構ヤバいんじゃ?」
「はい☆ 結構ヤバいかもですね〜☆」
「じゃあ、戦闘の準備とか、なんなりとしないとマズいんじゃ?」
「はい☆ マズいですね〜☆」
……ダメだ、この人。
「「何でもっと早く言わなかったんだよぉぉぉぉっ!!」」
ゴシャァッ! という瓦礫か何かが潰れた音が聞こえ、その瞬間、一気に何者かが侵入してきたのと同時にとてつもない数の火の玉のようなものが俺たちのいるこの——俺のマイホーム目掛けて飛んできた。
全く。災難すぎて涙もでねぇよ。
- Re: 英雄の取り扱い説明書〜美少女ですが、何か?第7話スタートっ ( No.95 )
- 日時: 2011/06/12 22:29
- 名前: きの子犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: hF19FRKd)
季節は春。まだ桜が咲いている頃のお話。
GWに入り、暇が出来たということで花見をしようということになった。とはいっても、俺から誘ったわけじゃない。
「花見しようぜっ!」
「……またお前か、スケベ大魔王」
スケベ大魔王こと、槻児からの提案だった。アホだなーと思いつつも生憎、暇な俺は槻児の言葉を寝そべりながら聞いていた。
「大魔王じゃなくて、閻魔って呼んでくれよ!」
どう違うんだ。もうここらへんからアホが流出してるぞ、スケベ閻魔大王、槻児。
「花見行こう! 可愛い女の子とか連れちゃってさぁっ!」
バンッ! と、俺の机を叩いた槻児は、さも興奮気味に鼻息を荒くしながら言う。
いや、そんな迫られても。花見なんて遠目で見てれば十分だと考える俺にとってはさほど嬉しいイベントでもない。
「よし! じゃあ今週の〜……木曜日な! 桜見るから、木繋がりで木曜日にしよう!」
「ちょ、待てっ!」
「じゃあな! 俺、今から人数集めないといけないから!」
まだ集めていなかったのか。というより、今週の木曜日というと——GWの休みは休みだが、何だろうか……この嫌な予感は。
無視しとけばいいかなぁ、と思いながらも俺はその日を無事過ごした。
——みんなで花見に行きましょう
そして、水曜日。
行けないことを伝えるためにずっと槻児に電話をかけていたのだが、全然音信不通でかからなかった。
しかし、今日いきなり槻児の奴からかかってきた。
「さぁっ! 遂に明日だな!」
「遂に明日じゃねぇよ……お前、何で電話でなかったんだ」
「いやぁ、人数集めで忙しくてな! あっ! お前はどれぐらい人集めた? いや、どれぐらい可愛い子ちゃんを集めた? ぐふふっ!」
気持ち悪いな……。ぐふふって何だ。それに俺も人数集めをするなんてこと、一切耳にしていない。音信不通にしていたクセして都合の良い奴め……。
「いや、俺明日いけねぇから」
「はぁっ!? Why!? 冗談はたいがいにするんだぜベイビーッ!?」
いきなり口調が変わった槻児はなにやら必死すぎて怖い。ていうか、そこまで豹変しなくても——いや、元からこんな感じか。
「冗談でも何でもなく、マジだっての。お前が音信不通にしているのが悪いんだろうが」
「何でダメなんだよぉっ! 俺とお前の、仲じゃねぇかぁっ!」
「いや、誰もお前と——」
「頼むよぉっ! 来てくれよぉっ! 香佑が最高に可愛い女の子引き連れてくるって言っちゃったんだぜぇっ!?」
「はぁっ!? バカかお前は! なおさら行かねぇよっ!」
「いや、嘘ですっ! そんなこと言ってません! だからお願いします!」
哀れな……。多分今頃、槻児は電話に目掛けて土下座をしていることだろう。少し声が遠く聞こえるのはそのためだと簡単に分かる。
何てプライドのない男? ——そんなこと、百も承知だ。槻児はここらへんもバカ野郎なんだ。
「あぁ、もう……うぜぇ」
「え? 来てくれるんすかっ!?」
「何て都合のいい耳してんだお前はっ! ……はぁ、分かったよ。行く行く」
「おぉっ! さすが心の友よっ!」
「ジャイアンかお前は……。あ、でも可愛い子ちゃんは無理だからな?」
「えぇっ!!」
「……都合いいね、お前」
ため息が漏れる。いや、こいつといるだけでため息が出るのは仕方ないことなのかもしれないが。
そんなこんなで、俺は明日、花見に行く約束をしてしまった。
電話機をおいて、また一つため息を漏らした数秒後、いきなり俺の両肩に凄まじい痛みが走った。
そのあまりの痛みによって倒れこむ俺。その原因は恐らく——
「ははは! さっきプロレスでやってたモンゴリアンチョップだーっ!」
「ユキノ……てめぇ……」
仁王立ちで俺の真後ろに立つユキノはなにやら怖いほどニヤついていた。——ダメだ、すげぇ嫌な予感がする。
「さっき、何の話してた?」
「はぁ? ……あぁ、ちょっと明日同級生と出かけ——」
「どこに?」
質問が速い速い。これは、嫌な予感が的中しそうですよ?
「いや……公園に」
「モンゴリアンチョップッ!」
「いてぇっ!!」
細い腕からは想像できないほどの威力を持つ両腕が俺の腰を仕留めた。普通はそこにチョップやらないんすけどね。
「嘘を言うからだ、ボーイ」
誰の真似だそれは。ふっ、と鼻で笑うユキノの顔があまりに不気味で仕方がないほどだ。
「さぁ、言え……!」
これは言わなければ俺の命が危ないと思った。仕方なく、俺は花見の件を話してしまったのだった。
これほどまでに雨が降って欲しいと願ったことはなかった。
でも、現実は残酷であるからして快晴となってしまった。逆に願わない方がよかったのかもしれない。
会場たる場所はどうせ人がいっぱいだろうと思いつつも準備をする。朝早くに出れば、きっと俺一人だけで行けるだろう。
家で未だ睡眠中のユキノ、結鶴、葵、燐が起きないように気をつけて行かなければならない。
こっそりと俺は玄関を飛び出し、朝早くに出かけたのだった。
会場たる場所はさほど遠くはなかった。とはいっても、電車で30分程度はかかる場所なのだが。
自転車で行く方が近道があって速かったりもするが、荷物があるために今回は電車で行くことにした。
ガタゴトと、GWのためか朝早くから親子連れやら旅行に行くための荷物を持った人々が同様に揺られていた。
俺は眠気でウトウトしつつも、放送の声をしっかりと耳にしながら下りる駅を待っていた。
「あれ? 香佑?」
そんな時、どこかで聞いたことのあるような声が俺の耳に届いた。それは放送でもなんでもなく、生の声。
眠気でウトウトしていた目が覚めると、そこにいたのは——
「か、神庭?」
「あ、やっぱり香佑じゃん! どうしたの? 一人にしては多いに荷物じゃない?」
可愛い私服姿の神庭が目の前にいた。荷物は俺に比べたら少ないが、女の子にしては少し大きめのバッグを持っていた。
「そういう神庭こそ、荷物大きくないか?」
「あぁ、これは花見のためだよー。何か槻児に呼ばれちゃって……」
「え、槻児に?」
「あれ? 香佑も?」
神庭を呼んでいたとは聞いていなかったな……。まぁ、別に構わないんだけども。
俺はそんなこんなで、神庭と一緒に電車に揺られることになった。他愛も話を幾つかしながらだが。
そんな中、またしても聞いたことのある声が俺の耳に届くのだった。
「ん……? もしかして、嶋野と神庭?」
その声の持ち主は、俺のクラスの副委員長たる中里だった。中里は相変わらずの面倒臭そうな顔と少しの笑顔で俺たちに近づいてきた。
「もしかして……中里もか?」
「え、二人も槻児に?」
「うん。中里君もかー」
なんてことになって、中里も俺たちと一緒に電車に揺られることとなった。
それからまたまもなくのことだが、同じように声をかけられる。
「あーっ! 中里君に嶋野君に湊ちゃん!」
この声も聴いた事あるなぁ……。何て思いながら目を配ると、そこにはやはり知っている顔があった。
「柴崎? お前もまさか……」
「三人も花見? 何か奇遇だねー」
まあ、同じ場所に召集されているわけだから、当然といっても当然なのだが……時間帯が時間帯だから驚いているわけだ。
「何で皆こんな朝早くに?」
「んー……なんとなく?」
皆なんとなくこの時間帯に来ようと思ったらしい。俺はなんとなくではなく、必然的になのだけども。
そうしている間に、目的地到着を示す放送が流れる。いつも大変ですね、だなんてこの時思いながらも俺たちは外に出た。
「わー! 凄く綺麗だねー!」
柴崎がテンション上げ気味に言う。といってもいっつもテンション高いかな、柴崎は。
満開の桜が所狭しと広がっていた。辺りは桃色一色に染められている。さすがこの付近では有名な花見スポットだ。遠くからではあまりよく分からないが、どうやら大部分が場所取りを完了しているようだった。
「でも、こんだけ広かったら迷わないかなー?」
神庭が漏らした一言は確かに一理ある。結構広く、駅からこうして見えるわけなので一見迷いそうな感じが拭いきれない。
そうして駅から桜を見ていると「おーいっ!」と、どこからともなく声が聞こえた。
「こっちだーっ!」
すぐ近くに、それはそれは満面の笑顔で俺たちを迎えに来たと思われる槻児の姿があった。
- Re: 英雄の取り扱い説明書〜美少女ですが、何か?〜参照900突破! ( No.96 )
- 日時: 2011/06/21 23:48
- 名前: きの子犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: hF19FRKd)
たまに、アニメやドラマでよく見る光景とか、本当にあったら面白いなぁと思うことがよくある。
でも、それらは皆実際にあったらもの凄く大変だし、面倒なことばかりだ。
「か、体が入れ替わったっ!?」
そんなことをテレビに映る俳優が言ってる。その姿を見て、俺はそんなことがあったら……なんて思ってしまう。
もし、それが現実の物となったのならば、俺は誰と入れ替わりたいのだろう。
「……んなアホなこと考えてないで、とっとと寝るか」
そうして俺は眠りについたのであった。
——入れ替わった体
「ん……」
朝の日差しが俺の目元に当たる。そのおかげで目が少しボヤけながらも見えてくる。
ボーっとしながらも、なんだかこのまま寝てしまいたい気分になるが、朝飯を作らないとユキノから何されるかも分からない。
なので朝飯の用意をするために体を起こす。
「……ん?」
何か変だ。そう思った。
まず、部屋が違うこと。俺が現在いる部屋は昨日寝た時の俺の部屋ではなく——他の部屋。
「ここって、ユキノが使って——!?」
俺は驚きのあまり、口を塞いでしまった。
何故か? 君達、よく聞きなさい。ある日、朝に目覚めたら——声帯が女の子になってたら驚かないか?
そりゃ驚くさ。現に俺が今そうなんだから。
それも、この声は聞いたことがあった。結構身近な人で、驚くのだが。
「これ……ユキノ?」
ユキノの声だった。俺が話すと、ユキノの声になって表れる。何か面白くて色々喋ってみることにした。
「ユキノのアホー!」
「ペッタンコーっ!」
「チビで態度デカいドアホー!」
——すげぇ。未だかつてないぐらいスッキリした気分になる。こんな気分になったのは槻児を殴り飛ばした時以上だな。
何故かテンションがあがった俺はベットから飛び起きた。……あれ? 何か身長ちっさい。
「俺、身長縮んだ?」
ユキノの声で言うのは何ともおかしいが、俺は笑いを抑えてとりあえず部屋を出ようとしたその時。
「え……?」
驚愕の事実がそこにあった。
「何で——俺、ユキノなんだ?」
俺の体はつまり——全身ユキノになっていて、顔も体も身長も何もかも全てユキノになってしまっていたのだった。
「えぇっ!! これ、どういうことだよっ!」
俺はテンション高い状態から驚きの声をあげる。そりゃそうだろう。いきなりすぎてついていけませんから。
「と、となると……?」
自分はつまり、ユキノの体になっているとすれば……当然、色々男にはないものがあったりなかったりもする。
「い、いやいやいや!! それは外道すぎる! そこまで槻児みたいにアホじゃねぇっ!」
そういって俺はベッドに腰かけるが、声がユキノなもので何故だか変に体が熱くなる。
これは夢なのだろうとほっぺたをつねってみても、全然夢は覚めない。それどころか、これが現実なのだと知らされているようだった。
「ほ、ほっぺた……柔らかいな」
と、俺は自分の手を——ではなく、ユキノの女の子さながらの小さな手を見つめながら呟いた。また、それの声もユキノ。
「……香佑君。私を、た・べ・て?」
何てことを言ってみる。言ってすぐに俺は頭を抱えて「うぉぉぉぉっ!」と叫び声をあげた。
何をしてるんだ、俺は……。
「と、とにかく……なんでこんな状況になったのか意味不明だし、本当のユキノはどこに行ったのか気になる!」
そういうことで俺はユキノの小柄な体で扉を開いた。胸が邪魔になるかと思ったら、見た目どおりのペッタンコなためにあまり邪魔でもなかった。
扉を開けると、そこにはいつものマイホームの廊下が広がっていた。結構広いのかもな、こうしてみると。
俺はそうして俺自身、結鶴、葵、燐を起こすことにしたのだった。
一同を起こし、何か一同様子がおかしかったが、とりあえずリビングまで下りてきてもらった。
「で……。お前は誰だ?」
どうやら皆どこか寝ぼけているようで、何がなんだか分からないどころか夢気分のようだった。
とりあえず、俺は自分自身である嶋野 香佑に問いただした。自分の姿を他人の目から見るというのは一生ない経験だろう。
寝ぼけた顔ではなく、俺はどこか凛々しい顔をしていたところから何か変な感じがする。雰囲気が、凛としているというか……。
「お前……もしかして、葵か?」
「……?」
首を傾げる、俺。あ、いや、体的に俺ってことだ。首を傾げる動作と言えば、葵だろう。葵自身もどこかつかめていないようで、なにやらキョロキョロと辺りを見ている。
「私は、誰?」
俺の声で……! 気持ち悪いと、葵には申し訳ないが思ってしまった俺だが、何とか抑えて答えることにした。
「葵。実はな、どうやら体が入れ替わってるようなんだ」
「体が……?」
俺は不思議そうな顔をして俺……というか、ユキノの体をした俺を見つめる。——正直、見つめられると気持ち悪くて仕方がない。
「ふみゃぁ……」
何だかもの凄く可愛らしい声で寝ぼけたことを言っているのは——なんと、葵だった。あ、いや、体とかが葵ってことだ。凄く色っぽいんだが、今はそれどころじゃないな。
それも、何故か幼女ではない。あのスタイルの良い感じの少女姿で、だ。寝たらあの姿になるのだろうか?
「あれ、私。何で、元の姿に?」
どうやらそうではないらしいな。葵自身も不思議がっているようだ。
「く、喰らいやがれぇっ!」
「えぇっ!?」
葵が喰らいやがれ、というセリフは全然似合わない。こんなことを言うとするならば——ユキノだろう。
葵にユキノが……。何ともミスマッチな感じだな。俺に葵がいくのもミスマッチなんだが。
寝ぼけているようで、顔を腕に埋めて静かに寝息を立て始める葵の姿をしているユキノ。
こうしてみると愉快極まりないんだがな……結構一大事だ。
「となるとー……こいつら二人は、それぞれに入れ替わってるということか?」
残りの二人に目を配ると、お互いそれぞれに眠そうに目を擦っていた。何だかんだで似た者同士の二人は同じ動作をするところらへんが双子みたいだった。
「拙者……何がどうなってー……」
「姫様……? 私に、一体何が……」
燐の姿で結鶴の口調。結鶴の姿で燐の口調と、綺麗に分かれていた。
おいおい……これ、皆が起きた時が一番大変だぞ。ていうより、これを治す術を見つけないとマズいだろ……。
そう思っていた矢先、葵がバッと顔をあげた。あ、体的に葵だから〜……つまり、ユキノがだ。
「どこだここはぁっ!! 離せぇっ! ゴルァッ!」
そんな捕われた罪人みたいなセリフで目覚めなくても。ていうか、リビングまで下りてきたのは自分ででしょうが。俺は促しただけだ。
兎にも角にも、葵の姿でそんなセリフはあまり聞きたくなかった。もっとそうだなぁ……。
『だぁいすきっ! 私の傍にいてねっ!』
みたいなセリフが聞きたいものだ。……そんな顔をしないでくれ。これはあくまで男の希望ってなもんだ。
本物の葵は俺の中にいるわけなんだが……うわぁ、すげぇ無表情だな、俺。
「何だっ!? 僕、何かおかしいっ! なんじゃこりゃぁっ!!」
そんな、松田優作ネタを無理矢理しなくても。大袈裟に両手を広げるな、バカ野郎。
「落ち着いて聞け、ユキノ。実はな——」
「あぁっ!! 私じゃんかっ! 何だ! 誰だお前! ていうか、私の体返せよっ!」
「うわっ! ちょ、飛びついてくんなっ!」
いきなり飛び掛ってきた葵の姿をしているユキノにのしかかられる俺。ていうか、顔が葵何だけど——こんな怒ったような表情をする葵は初めて見る。これが葵自身だったらなぁ、なんて思うが。
「落ち着けって! まず話を聞け!」
「うるさいうるさいっ! この偽者〜ッ!!」
「う、うわぁっ!!」
ビリリッ! と、布が破ける音がした。俺は何とかその瞬間、葵の姿をするユキノを追い払った。
「ったく。落ち着けって……ん?」
俺は自分の着ているものへと目を落とした。そこには——服が破かれ、着ているものが二つに分かれて肌が露になっている。
そう、その場所を人は——谷間という。しかし、ツルペタなのかただ広くそこは開けているが、すぐ隣の方には少しの膨らみが。何とかギリギリ胸は見えな——
「み、みゃぁああああっ!!」
「ごふっ!!」
猫みたいな叫び声と共に、俺は視界が揺れたと同時に衝撃は走り、そのまま気絶してしまったのであった。
……不可抗力、だよな?
- Re: 英雄の取り扱い説明書〜美少女ですが、何か?〜参照900突破っ ( No.97 )
- 日時: 2011/06/23 17:52
- 名前: 風(元:秋空 ◆jU80AwU6/. (ID: .cKA7lxF)
うわぁ、凄い更新したですね。
取敢えず性転換のネタが笑えたです。
いろいろ、良いチョイスですね♪
全体の感想は、後程
- Re: 英雄の取り扱い説明書〜美少女ですが、何か?〜参照900突破っ ( No.98 )
- 日時: 2011/07/01 18:08
- 名前: きの子犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: hF19FRKd)
>>風さん
最近来ていなくて申し訳ございません><;返信とても遅くなりました;
凄い更新しましたっ。亀更新で諦めることがモットーみたいになっているきの子犬にとってここまでこれたのは感動するほど嬉しいですっ。
性転換のネタは、リク依頼掲示板の方で番外編を募集させていたところ、Aerithさんが投稿なさってくれたものです。
面白いネタですし、必ずや投稿をと思っておりました><;
良いチョイスをしてくださったAerithさんっ!ありがとうございますっ。
これからまたボチボチと更新していくことになりますが、以前より更に亀更新になる期間、つまりテスト期間という期間に突入してしまいました。
テスト期間が過ぎ次第、再び通常の亀更新に戻ると思われますが、どうなるかは自分自身も分かっておりません。
更新が不定期なこと、ご了承ください><;
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