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英雄の取り扱い説明書〜美少女ですが、何か?〜更新再開しますっ
日時: 2011/11/05 00:02
名前: きの子犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: ucEvqIip)
参照: http://www.kakiko.cc/bbs2/index.cgi?mode=view&no=5276

クリックいただきましたっ!初めての方も、そうでない方もどうもです。
多分、初めての方が多いんじゃないかと思います。いや、もうほとんどだと思いますがw
下手な文章で読み辛いことも多くあると思いますが、お付き合いくださいませ;


【この物語を読むにおいての取り扱い説明書】
・作者は大変亀更新得意です。元からワードで作ってたりしたものですがどうなるか分かりません。
・思いっきりラブコメで、バトルバトルバトル、といった感じです。ギャグとかも混じります。
何故シリアス・ダークに投稿したのかというと、グロ描写注意だからですw
グロ描写が苦手という方はお控え願えますよう、お願いいたします。
・読むな、危険。と、言いたいほど様々な面において危険です。それでも読んでくださる方は心して読んでください。




【目次】
この駄作にソングをつけるとしたら…>>121
プロローグ——になるのかこれ?…>>2
説明その1っ:勇者は美少女である
♯1>>4 ♯2>>7 ♯3>>8 ♯4>>13 ♯5>>14
説明その2っ:とりあえず責任者でてこい
♯1>>19 ♯2>>22 ♯3>>24 ♯4>>25 ♯5>>27
説明その3っ:拙者に斬れぬものなどございませんが?
♯1>>28 ♯2>>29 ♯3>>30 ♯4>>31 ♯5>>37
説明その4っ:え、これ、マシュマロですか?
♯1>>39 ♯2>>44 ♯3>>47 ♯4>>53 ♯5>>58
説明その5っ:——嬉しい。ありがとう
♯1>>62 ♯2>>71 ♯3>>74 ♯4>>78 ♯5>>79
説明その6っ:貴方、どこの佐藤さんですか?
♯1>>84 ♯2>>85 ♯3>>86 ♯4>>92 ♯5>>93
説明その7っ:私の王子様にしてあげるっ!
♯1>>94 ♯2>>99 ♯3>>112 ♯4>>117 ♯5>>119
説明その8っ:コンビニはこの世界、最高の癒しだろうが




【番外編】
槻児、どうしてお前はそんなにスケベなんだ
>>69
みんなで花見に行きましょう(全♯4〜5)
♯1>>95
・ツイスターだよ、全員集合!
・殺し屋佐藤さんにリアル鬼ごっこ演出させてみた(魔法・取り扱い説明書等無しで)
・入れ替わったイレモノ (全♯4〜5)
♯1>>96
・香佑にモテ期の魔法をかけてみた



【キャラ絵・挿絵】担当絵師様は王翔さんですっ!
ユキノ…>>113
結鶴…>>118
レミシア…>>120(NEW!)



【説明予告(説明その8っ)】by永瀬 理兎
コンビニとは、コンビニエンスストアの略で、最高の新天地とも書く。
この世界で唯一誇れるとしたら、コンビニだろう。世界各地にありとあらゆるコンビニが存在し、そのどれもが新商品をこれでどうだこれでどうだと張り合っている。その張り合い上に、新商品の素晴らしさが存分に発揮されているのも見物だ。
つまり、俺は何を言いたいかというと——コンビニを崇めろ、貴様ら。
……予告になってない? コンビニの説明をするだけでいいだろう。それで十分だ。コンビニ信者の話が盛り沢山な第8話だろうな。素晴らしい。(注:嘘です)



【お客様っ】
・と あさん
・Aerithさん
・夜兎_〆さん
・葵那さん
・結衣さん
・リアさん
・月読 愛さん
・風(元:秋空さん
・王翔さん

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Re: 英雄の取り扱い説明書〜美少女ですが、何か? ( No.89 )
日時: 2011/05/20 21:41
名前: Aerith ◆E6jWURZ/tw (ID: hQNiL0LO)
参照: 閃光 薔薇 氷風 慈愛 家族 使命 希望 絶望 ——終焉。

>>84
最近俺の方にも異変がる
>>85
(もちろん、槻児」
>>86
「そうか……。事を早めないかんな。

誤植いっちょお!
て、一発目から誤植発見報告ですいませんでした。
兵隊とか軍人の女性って一番のツボなんですよ。グハッ!!
まるでFFXIIIのライトニn(殴 著作権!

グングニルですとな・・・!ふはは!←?

Re: 英雄の取り扱い説明書〜美少女ですが、何か? ( No.90 )
日時: 2011/05/21 23:34
名前: きの子犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: KnqGOOT/)

>>Aerithさん
あぁ、また誤字……!無くなりませんね……すみません><;

一発目からそれで大丈夫ですっ。毎度のことながら申し訳ございません;
そうなんですか?僕も軍人の女性のキャラは好きです。クロナギがそうですね。
隊長らしき、としか説明されていませんが一応元帥的な方です。結構位は高い方のキャラです。
レミシアはちなみに言うと大将的立場です。そして、王族とは違うと書かれてある点から国の軍隊ではない点というのも注目してもらいたいです。
この6話が終わり、7話から登場人物が増えていきます。混乱しざるを得ない部分もいくつかあるやもしれませんが、頑張りたいと思います。

グングニル、FFでもありますよね。
ありきたりな武器名ですが、その他にも技名は増えていく予定なので宜しくお願いします;
改めてコメントありがとうございましたっ。

Re: 英雄の取り扱い説明書〜美少女ですが、何か? ( No.91 )
日時: 2011/05/31 20:27
名前: Aerith ◆E6jWURZ/tw (ID: hQNiL0LO)
参照: 閃光 薔薇 氷風 慈愛 家族 使命 希望 絶望 ——終焉。

Yes, FF!!
そうなんですよ。

FF=テンションのスイッチなので
つい反応を・・・。

クロナギ、自分のドつぼにハマりそうな予感・・・

Re: 英雄の取り扱い説明書〜美少女ですが、何か? ( No.92 )
日時: 2011/06/03 22:36
名前: きの子犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: hF19FRKd)
参照: 更新遅くなってすみません;

結局、特に何事もなかったかのように授業を終えて昼飯時になる。
あぁ、ここ最近落ち着いていなかったせいか、やたらと嬉しさがこみ上げてきて仕方がないな。

「ん? どうしたぁ? そんな嬉しそうな顔して」
「いや、何でも……槻児、アホさが浮き出てるぞ」
「どういうことだよっ!?」

いつも通り槻児はアホさ全開なわけで。俺はそのことを確かめると自然に笑みが零れた。
家の環境とか、俺自身が変わってもこいつらは変わっていない。それが嬉しい。

「おうー! 一緒に食おうぜー!」

と、どこからともなくやってきたのは中里だった。笑顔で弁当を持ちながらやってくる。——てか、弁当持ってきてるのに何で食堂来るかね?
確か槻児が中里と仲が良かったはずだ。多分そのおかげでもあるだろう。
ちなみに今まで寄って来なかったのは文化祭のことで話し合いが長引いたりしたからだそうだ。
やっとお暇がもらえたとかなんとかで……お前は会社員かとつっこんでやりたいね。
いかにも自家製という感じのする弁当箱を俺たちのおいてある食い物の横に置いた。

「弁当箱作らなくても、食堂なんだから何か買えばいいんじゃないか?」
「いやーそれがいらないって言ってるのに作ってくれるんだよねー」

何とも羨ましいことか。俺なんて——前にユキノに頼んだ時とか、弁当の中に豆腐しかなかった。ポン酢かけて食べたから美味かったけどな?
その時ほど白飯を求めた時はない。以降、あまりユキノに頼まなくなった。
そういえば結鶴は料理できそうだな……。でも前にそれらしきことを言ったら——

「クレープですか?」
「いや、普通のごは——」
「パフェとクレープにマシュマロ。そしてチョコレートのビターのソースをかけたパンナコッタですね?」
「……いや、やっぱいいや……」

ということになったんだった。何で甘いものオンリーなんだよ……。剣客なのに和風じゃないというところが何ともいえない。
そういう残念な出来事があったために、結鶴もダメだな。お菓子類を作ることに関しては神がかってるが。

「どうした? 顔が青いぞ?」
「い、いや……ちょっと色々思い出していた」
「? 変な奴だなー」

中里は気楽に笑いながら槻児の隣の席についた。俺と槻児は向かい合わせに座っていたので、俺が二人と向かい合う形になっている。

「そういえば、神庭さんが嶋野のこと呼んでたぞ?」
「へ? 神庭が俺を?」
「あぁ。何か話があるとかなんとか」

弁当を早速開けておかずを口に運ぼうと箸でつつきながら、中里は俺に教えてくれた。
すると何故か槻児が「な……!」と声をあげた。——食べてる途中に口を開けるな。メロンパンがグロテスクだろうが。

「お前っ! いつからそんな仲にっ!?」
「変な勘違いするな、気持ち悪い。神庭が何の用かは知らないけど、別に何も仲がどうこうしてるわけじゃねぇよ」
「嘘だぁああっ!!」

ダメだ。このアホは食堂で膝をついて涙を流してやがる。あぁ、別に神庭が好きとか、というわけではないと思う。単に美少女で狙い目をつけていた、という話だろう。
いつものことながらウザいと感じつつも、俺は食器を食堂に返し、そこから離れようとする。

「教えてくれてありがとな、中里」

中里は何も言い返さず、ただ苦笑しながら俺に向けて手を振っていた。

それで、だ。神庭が呼んでいたとは聞いたが、どこにいるかだな。まだ昼休み。食堂で食べてないとすれば、屋上か?
俺はせっせと屋上へと足を進めた。そして、辿り着く。
屋上へと通ずるドアを開いてみると、風がほのかに俺の頬をくすぐる。適当に人は居る中、俺は神庭の姿を見つけた。よかった、予測が当たったようだな。
俺が声をかけるより先に、神庭は俺のことを見つけて微笑んだ。——今更のことだが、神庭ってやっぱり美人な方なんだと思った。
風で長めの髪が揺れて、それを左手で抑えながら俺に近づいてくる。ったく、少しドキドキしてきやがった。健全な男子高校生にはちと、刺激が強いな。

「中里君から聞いた?」
「あ、あぁ。聞いた」

聞いた、というのは神庭が俺を呼んでいるとかいうのだろう。

「此処に居るって、よく分かったね?」
「飯といえば、神庭は此処にいる気がしてな」
「何それっ! まあ、確かにいること多いんだけどね」

神庭は小さく笑うと、場所を移そうと言い出した。そんな重要な話なのか? と、俺は胸の高鳴りを抑え切れない。
屋上から離れて、人気の無い場所に行くと、神庭は話し始めた。

「えっとね?」
「あ、あぁ」

告白なんてことされたらどうしよう! なんて自惚れたことは思わない。何せ、神庭と俺の仲だからそんなことは無いだろう。

「一日だけ、彼氏を演じて欲しい」
「あぁ、何だそんなこと——って、えぇっ!?」

驚愕のあまり、俺は腰を抜かしそうになった。神庭は「お願いだよっ! 香佑!」と、懇願してくる。
どうしてまた俺なんだ。他の奴でもいいというのに。俺は息をゆっくりと吐いて落ち着いた後から口を開いた。

「何でそんなこと?」
「いやー……それがー……」

神庭は頭を気まずそうに掻いた後、説明をし始めた。
何でも家庭の事情とか、友達からのこととか色々あるらしい。

「ダメ、かな……?」

上目遣いで見てくる神庭の姿を見て、俺は不甲斐無くもドキッとしてしまった。どういう状況だよ……。てか——断る理由、なくね?

「そういうことなら……一日だけなんだろ? 別に構わないけど……」
「あぁ、よかった! それじゃあ、今週の土曜日の朝からいけるかな?」

すぐさま元気良く返事を返してきた神庭。土曜日の朝、というとー……数日後だな。

「大丈夫だが……俺でいいのか? 神庭なら他にいくらでも——」
「別にいいって。それに、香佑が一番頼みやすかったし!」

無邪気に笑ってくれてはいるが、いまいち掴めないままでいる俺。まぁいいか、と割り切ることにする。

「槻児は?」
「あぁ、頼みごとをするなら別にいいと思うけど……こういうこととなると、あいつ変態じゃん?」

なるほど。一瞬で理解した。つまり、振舞うだけだというのにあいつは本気でデレたり何なりするわけだから——簡単に言うと、面倒臭いというわけだ。

「あ、そろそろ行かないと……! ごめんね、香佑。呼び出したりして」
「いや、いいけど……」
「それじゃあね!」

神庭は元気よく階段を下りて行った。俺はその場でため息を吐いて、近くにあった自動販売機でカフェオレを購入してから教室へと向かっていった。
——その時だった。
もの凄い勢いで壁が粉砕され、何かが俺の目の前にぶっ飛んできた。

「ッ!?」

煙が凄い勢いで視界を奪う。だが、段々とそれも薄れて行き、そして——

「嶋野様、ですよね?」

この可愛らしい声。そして嶋野様と呼ぶ唯一の存在。

「お前……! レミシアか?」

煙の中から出てきたのは最初に会った時のようなゴスロリに似た服を着たレミシアだった。右手には、最初同様に物騒な長剣が握られている。

「お久しぶり? ですか? 実はお話したいことがあるんです☆」
「話したいこと?」
「はい☆」

レミシアはニッコリと笑って俺を見つめた。そして、何故だが俺は思ってしまったんだ。この笑顔を見て
——レミシアは、何か嘘を吐いている、と。




「う……!」
「あ、気付いた?」
「こ、ここは……?」

佐藤はベットから身を起こし、周りを見渡す。部屋の中にいつぞやの勇者、ユキノの姿と見知らぬ女の子二人の姿があったことに驚く。

「ふぁあっ!! だ、誰ですかぁっ!? って、勇者のっ!!」
「ユキノだっ! 僕の名前ぐらい覚えておけよっ!」
「す、すすすすみません!!」

えらく動揺しているのと、ユキノの顔を見るだけで驚愕と困惑の表情を入れ替えたりしている姿にふっ、と燐は笑ってしまう。

「え、えっと……? こ、この方々は……?」

佐藤はユキノに燐と葵の紹介を頼む。ユキノが口を開いて自己紹介する前に燐が先に口を開いて、話し出した。

「私は燐。そしてこちらが姫様……葵様、です」

渋々、といった感じで燐は葵の紹介をした。ペコリ、と葵は頭を下げて小さく「よろしく」と言った気がする。

「て、ていうか! ここ、どこですかっ!」

急に佐藤は思い出したようにして声をあげて居場所をユキノに聞く。

「あぁ、ここは香佑の家だよ」
「こ、香佑って……! 英雄の家ですかっ!!」

先ほどとは比べ物にならないぐらいの驚愕ぶりに、さすがのユキノも少し引いた。

「ちょ……! 落ち着けって! 佐藤 友里、だっけ? 何であんなボロボロだったんだよ?」
「へ……?」

と、そこで佐藤の同様が一瞬にして消える。そして沈黙。どういう状況なのか飲み込めずに、思わず燐は口を開いた。

「つまり、傷だらけで倒れていたところをユキノが助け、ここに連れて来た。その傷だらけの理由を教えて欲しいというわけです」

初対面の人には大抵、敬語の燐は佐藤に問いただしている内容を軽く説明した。
その説明を聞いた佐藤は、表情を深刻な顔つきに変えて黙り込む。

「な、何かあったのか?」

ユキノが少し躊躇いがちに聞いてみる。すると、重苦しそうに佐藤は言葉を発した。


「私は……救世主メシアの魔力を備えている、オリジナルの佐藤なんです」


救世主。その言葉に、一同は騒然とした。
それはどこの異世界でも共通に伝えられている——伝説の職種なのだから。

Re: 英雄の取り扱い説明書〜美少女ですが、何か? ( No.93 )
日時: 2011/06/08 23:23
名前: きの子犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: hF19FRKd)
参照: 更新遅くなってすみません;

校舎を元に戻したレミシアは俺と共に場所を移すことにした。
今日は文化祭に向けて準備をする期間が設けられているため、午後からは文化祭の用意で忙しい。
言いだしっぺがその場にいないというのは少し悪い気がしないでもないが、あのままレミシアをスルーするわけにもいかなかった。
人気のない草むらでレミシアは立ち止まり、俺をいつもの笑顔で見る。久しぶりに見るような気がするのは、格好がゴスロリだからか? 最初会った時と同じ格好だからな……。

「嶋野様☆」

なんてことを考えていると、レミシアの方から相変わらずのロリ声で俺を呼びかけてきた。

「えっと……用件って何だよ」

少しだけ、この時先ほどの神庭との出来事を思い出してしまったことはこの際、勘弁して欲しい。——だって似たようなシュチュエーションなんだから仕方ないだろっ! 何か逆ギレみたいになってしまったな。

「実はですね……」
「あ、あぁ……」

俺は少し胸に密かな希望を抱きながらレミシアの顔を見つめる。見れば見るほどロリ顔だ。俺より年下なんじゃないかと思う。
だが、今はそんなことは関係ない。しっかりと向き合った途端、レミシアの口が開いた。

「魔王の目的が少し見えてきたんですよ〜☆」
「……へぇ」
「あれ〜? 何で冷めてるんですかー☆」
「いや、別に」

何だ、魔王のことか。そう思って俺は内心ガッカリした。もっとマシなものがよかったな……そうだな、例えば——

「嶋野様ぁ〜☆ 私を、た・べ・て☆ (注:香佑の妄想です)」

なーんてこととか、最高だな。やべぇやべぇ、鼻の下伸びるわ。伸びきるわコレ。
そんな風に俺が勝手に作り出したレミシア煩悩と戦っている時、レミシアは突然「あ!」と、声をあげた。

「すみません〜☆ 着替えますね☆」
「えぇっ!? 此処でぇっ!?」

俺の驚きの声(ほぼ歓喜の声)をスルーしてレミシアは着替えようとゴスロリの服に手をかける。そして——!
光に包まれ、一瞬にしてレミシアは普通のそこら一般の女の子が着るような服に変わった。

「男の夢が……」
「どうしましたか? 嶋野様☆」
「いや、なんでもない……」

テンションの上がり下がりが激しいと思ったのかは知らないが、落ち込む俺を見て不思議そうにレミシアは首を傾げた。

「まあ、いいです☆ それでですねー魔王の目的というのが——」

レミシアは笑顔を崩さずに口を開き、話そうとしたその時だった。
ドゴォンッ! という凄まじい爆音に似たような音が近場で、いや——すぐ傍で聞こえた。
煙が立ち込め、視界が遮られる中、俺はその音の正体がかろうじて見えた。

「お前は……!」

目を疑いそうになった。その正体は煙がだんだん晴れていくと共に露になってくる。
そして、その正体が見えてくる。何度確認しても、それは同じことだった。

「佐藤 友里……!?」

その音の正体はあの殺し屋の佐藤 友里だった。ぼんやりと、目線を地面に向けて立ち止まっている。少し顔は見えにくいが、明らかに佐藤の顔だった。

「知り合いですか〜?」
「あぁ。こいつは殺し屋の佐藤 友里っていう俺の同級生でもあるやつで——」

その時、俺がレミシアに説明をしている途中、いきなり佐藤が地面へと倒れた。どこか傷ついているのか? と思い、駆けつけようとしたがそれをレミシアに静止させられる。

「嶋野様☆ どこかあの子、様子がおかしいようですよ〜?」

レミシアの言葉通り、佐藤は何度か痙攣のような動作を起こしていた。それが4,5回続いた後、いきなり佐藤の体は浮き上がった。
よく見ると、表情は無表情で目が虚ろ。いつもの佐藤ではないことは明らかだった。

「異常事態発生。至急、緊急防衛モードに入る」

機械口調で佐藤は呟いた。あのおっとりとした性格の佐藤はどこにいったんだ? 
俺は少々躊躇いながら佐藤の姿を見つめていた。レミシアはいつの間にか右手に剣を装備していたが。

「変革世界ログインします〜☆ 状態、100%ですー☆」

レミシアが呟いたその瞬間、世界が灰色に染まっていく。色をだんだんと失っていく光景が見れた。
この場所は知っている。この世界は、アンドロイドと名乗る奴に殺されかけて、そして——俺がユキノと出会った場所だ。

「救世主の魔力解放。リミッター解除」

またもや佐藤は呟く。意味は全く分からないが、何やら重苦しいプレッシャーのようなものが俺に突如襲いかかってきた。
これは一体何なんだと、俺は言葉にしてレミシアに伝えようとしたが、それより先にレミシアが口を開いた。

「魔力がもの凄いですねぇ〜☆」

お気楽な口調で言うが、結構ヤバいんじゃないのか? ——何か凄い波動みたいなのが出てるんですけど?
まるでどこぞのサイヤ人のように噴出音を出しながら、白い靄のようなものが辺りを囲む。何も分からない俺だが、これだけは分かるかな。
めちゃくちゃ、嫌な予感がする。

「魔力集結。攻撃魔法準備」

どんどん進行していくように見える魔法の詠唱的なものを呟いていく佐藤。その表情はまるで死人のような気がした。

「おいっ! 佐藤! 俺だ!」

俺がいくら叫んでも、佐藤はまるで返事をしない。本当別人じゃないのか? いや、別人であって欲しい。
そう願いながら名前を呼んでいるのだが、全く降下がないことに俺は半ばどうすればいいのか分からない状態だった。
そんな時、レミシアが瞬時に佐藤の元へと駆け出した。そのスピードは肉眼で捉えられるのがやっとのぐらい。

「レミシアっ!」

レミシアを何故か止めようと静止のために名前を叫んだが、これも聞こえないかのようにレミシアは佐藤の目の前まで行き、そして——右手に持っている綺麗な刃を持つ長剣で、佐藤の左肩から一気に斜めへと斬り落とした。
一瞬の出来事だったためか、俺は言葉を失った。同時に、佐藤の様子が気になる。
しかし、結果はレミシアが大きく弾かれて終わっていた。佐藤の周りに薄い膜のようなバリアが張られており、それが何なのかは分からないが、それがレミシアの攻撃を弾いたのか?

「本物ですか〜。厄介ですねー」

レミシアの表情は笑っていたが、目だけは全然笑ってなどいなかった。むしろ怒っているんじゃないかと思えるほどに怖い印象を与えていた。
何が本物なのか、とツッコミたかったが、どうやら佐藤はその暇すらも与えてくれないようだった。

「準備完了。マグマオーシャン——発動」

その途端、一瞬だけ佐藤の差し出した右手から絶大なプレッシャーが抜け落ちた気がした。だが、それは本当に一瞬だけで、上空からそのプレッシャーの塊が落ちてくる感じがした。

「リミッター解除です〜☆」

可愛らしい声が近くで聞こえたと思うと、俺の周りに何やら青く澄んだ光が覆っていた。
いつの間にか傍にいるレミシアがその結果意のような光を形成しているのだろう。なんだか心地いい感じがしたが、それも束の間だった。
上空には、ありえないものが落ちてきていた。一言で表すとすれば、それは——原始地球。いや、バカでかい太陽みたいに赤く燃え上がっている隕石か?
どちらにしても、そんな半端でないものが容赦なく俺とレミシアを飲み込んでいく事実は確かだった。
結界と衝突した時もの凄い地響きと頭の揺れが半端なかった。交通事故とかしたら、これぐらいの衝動は来るのだろうか?
俺はそれに抗うことも出来ずに、ゆっくりと視界がぼやけて、最後には真っ暗な闇に落ちていく。

「う……」

どれぐらい経ったのか定かではないが、気を失ってからそれほど時間の経過はしていないだろう。
状態を起こし、辺りを見回すとそこには——驚愕の光景が広がっていた。

「なんだよ、これ……!」

建物は崩れ去り、周りの灰色をした草むらは燃えて無くなって荒野と化していた。
残っているものといえば、いまだ無表情の佐藤の姿と、地面に手をついて少々呼吸を荒くしているレミシアの姿だった。

「私が任務遂行後でなく、全快の状態だったら……!」

表情は笑顔から少し苦笑した感じの表情に変わっていた。俺をかばって結界みたいなもので守ってくれたみたいで、そのおかげでレミシアの魔力は大分削られたようだった。

「嶋野様」
「は、はいっ!?」

いつもと違う声のトーンに少々戸惑い、声が多少裏返りながら返事をした。正直、すげぇ怖い。こんなレミシアを見るのは初めてのことだった。

「あの野郎……あ、いえ、あの子をやっちまいましょう☆」

言葉と声のテンションが合ってなさ過ぎる……! それにあの野郎とか言ったよね? 今絶対言ったよねぇ!?

「佐藤を倒すにしても、傷をつけるのは……」
「分かってますよー☆ 嶋野様のご友人なので、気絶ぐらいで済ませてあげましょう☆」

すげぇ上から目線というか、なんと言うか。とにかく、凄く怖いです。
今となってはせっかくの可愛い顔が恐ろしくギャップを感じてしまい、身震いまで起こさせる。それほど迫力があった。

「あの子が何故か纏っている厄介な魔力の正体は、救世主メシアのですね〜☆」
「救世主? 何だそれ?」

また新しい言葉が出てきたので、俺はそれについて聞いてみるが——どうやら佐藤の方はそれを待ってはくれないようだった。
次の詠唱に向けて、早々と準備をしている様子だった。

「魔力集結……」

再び佐藤の右手に魔力が宿る。先ほどと同じようなプレッシャーの塊が俺に襲いかかってくる。
もう一度あの巨大な隕石の降る魔法でも出されたら——レミシアは耐え切れるだろうか?

「レミシアっ! どうする?」
「そうですねー☆ 私に考えがあります〜☆」

俺とレミシアが作戦会議のようなものをしている間に、佐藤は攻撃魔法を発動する手前の方まで詠唱を進行させていた。早く実行しないと、佐藤は待ってくれなさそうだ。俺とレミシアは素早く左右に分かれる。

「よし……! 作戦実行っ!」

俺の掛け声でレミシアは瞬時の速さで佐藤の目の前まで到達し、そして——魔力を込めた渾身の斬撃が佐藤を襲った。
ガキィッ! と、再び最初の方と同じような音が四散し、レミシアは大きく弾き返されそうになるが、連続して斬りかかっている。

「……詠唱一時停止。至急、侵害者除去せよ」

佐藤が呟きながらレミシアの方へと顔を向けた。
今だ。この時しか、チャンスはない。俺は密かに佐藤へと近づき、右手を後ろに引く。
レミシアはその間佐藤と応戦している。佐藤の攻撃は何の詠唱もなしに、激しい衝撃を放つ何かでレミシアへと当てようとしていた。
それをレミシアは剣で受け止めたり、流したりと、様々な動きを見せて避けつつ、攻撃を繰り返していた。

「もう少し耐えてくれよ……!」

俺は右手に力を込める。今の俺の格好は槍でも投げる瞬間のような格好をしている。右手を後ろにして構えているような形。まさに、槍を投げる時だろう。
俺がやろうとしていること。それは——朝に見た、あのグングニルという技だった。
右手を後ろに引っ張り、肩ごと前に放つ。
簡単に書いてはあったが、意外と難しい。なかなかエルデンテが右手に集まらない。

「クッソッ! 集まれこの野郎っ!」

大声を出して力を出す。すると、バリバリっと電撃のような音が右手の方から聞こえたと思うと、エルデンテが集まり始めていた。

「これならいける……!」

感覚でもう放てると感じた俺は、力を込めて前へとそれを放とうとする。——が、かなり重く、前に投げ出すことすら難しい。

「いけぇぇぇぇっ!!」

このさい気合で何とかしてしまえ! やけくそながらもそう思った俺は、渾身の叫び声をあげて投げ出した。
雷撃はいつの間にか、槍状を保ちながら真っ直ぐ放たれていく。狙いは勿論、佐藤に目掛けて。
レミシアと応戦していた佐藤は、ゆっくりと放った槍状のものを見ようとするが、向きかえるまでに俺の放った槍状のものが佐藤の腹ぐらいを貫通せんとした。
手前でバチバチと音をたて、遂には佐藤に覆われていた魔力が破壊される。
そこにすかさずレミシアは生身の佐藤に目掛けててを差し伸ばし——魔力の衝撃のようなものを放った。
ドクンッ! と、妙に生々しい音が聞こえたと思うと、佐藤は痙攣した後にその場へと倒れた。

「な、なんとか上手くいったな……」

俺はため息を吐いて佐藤を起こそうとしたその時だった。

「友里ーっ!」

誰かの声が聞こえた。それは、近くの崖の上からだった。
いつの間にか現実の世界へと戻っていたようで、色彩もちゃんとある。つまり現実の世界で誰かが佐藤を呼んでいる?
見上げると、そこにいたのは——

「さ、佐藤っ!?」

傍で倒れているはずの佐藤 友里と同じ顔をした女の子がそこにいた。
そこには確かに佐藤がいた。外見も、俺の知っている佐藤だし、声の感じも、雰囲気も何もかもが同じ感じだった。
でも、目の前で倒れているこの佐藤も、佐藤 友里本人なような気がする。
矛盾が矛盾しているような感覚に陥るが、とにかく、俺は崖の上にいる佐藤の姿を見て言った。


「貴方、どこの佐藤さんですか?」


失礼だとは思いながらも、聞かずにはいられない俺なのであったとさ。


説明その6っ:貴方、どこの佐藤さんですか?(完)


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