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英雄の取り扱い説明書〜美少女ですが、何か?〜更新再開しますっ
日時: 2011/11/05 00:02
名前: きの子犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: ucEvqIip)
参照: http://www.kakiko.cc/bbs2/index.cgi?mode=view&no=5276

クリックいただきましたっ!初めての方も、そうでない方もどうもです。
多分、初めての方が多いんじゃないかと思います。いや、もうほとんどだと思いますがw
下手な文章で読み辛いことも多くあると思いますが、お付き合いくださいませ;


【この物語を読むにおいての取り扱い説明書】
・作者は大変亀更新得意です。元からワードで作ってたりしたものですがどうなるか分かりません。
・思いっきりラブコメで、バトルバトルバトル、といった感じです。ギャグとかも混じります。
何故シリアス・ダークに投稿したのかというと、グロ描写注意だからですw
グロ描写が苦手という方はお控え願えますよう、お願いいたします。
・読むな、危険。と、言いたいほど様々な面において危険です。それでも読んでくださる方は心して読んでください。




【目次】
この駄作にソングをつけるとしたら…>>121
プロローグ——になるのかこれ?…>>2
説明その1っ:勇者は美少女である
♯1>>4 ♯2>>7 ♯3>>8 ♯4>>13 ♯5>>14
説明その2っ:とりあえず責任者でてこい
♯1>>19 ♯2>>22 ♯3>>24 ♯4>>25 ♯5>>27
説明その3っ:拙者に斬れぬものなどございませんが?
♯1>>28 ♯2>>29 ♯3>>30 ♯4>>31 ♯5>>37
説明その4っ:え、これ、マシュマロですか?
♯1>>39 ♯2>>44 ♯3>>47 ♯4>>53 ♯5>>58
説明その5っ:——嬉しい。ありがとう
♯1>>62 ♯2>>71 ♯3>>74 ♯4>>78 ♯5>>79
説明その6っ:貴方、どこの佐藤さんですか?
♯1>>84 ♯2>>85 ♯3>>86 ♯4>>92 ♯5>>93
説明その7っ:私の王子様にしてあげるっ!
♯1>>94 ♯2>>99 ♯3>>112 ♯4>>117 ♯5>>119
説明その8っ:コンビニはこの世界、最高の癒しだろうが




【番外編】
槻児、どうしてお前はそんなにスケベなんだ
>>69
みんなで花見に行きましょう(全♯4〜5)
♯1>>95
・ツイスターだよ、全員集合!
・殺し屋佐藤さんにリアル鬼ごっこ演出させてみた(魔法・取り扱い説明書等無しで)
・入れ替わったイレモノ (全♯4〜5)
♯1>>96
・香佑にモテ期の魔法をかけてみた



【キャラ絵・挿絵】担当絵師様は王翔さんですっ!
ユキノ…>>113
結鶴…>>118
レミシア…>>120(NEW!)



【説明予告(説明その8っ)】by永瀬 理兎
コンビニとは、コンビニエンスストアの略で、最高の新天地とも書く。
この世界で唯一誇れるとしたら、コンビニだろう。世界各地にありとあらゆるコンビニが存在し、そのどれもが新商品をこれでどうだこれでどうだと張り合っている。その張り合い上に、新商品の素晴らしさが存分に発揮されているのも見物だ。
つまり、俺は何を言いたいかというと——コンビニを崇めろ、貴様ら。
……予告になってない? コンビニの説明をするだけでいいだろう。それで十分だ。コンビニ信者の話が盛り沢山な第8話だろうな。素晴らしい。(注:嘘です)



【お客様っ】
・と あさん
・Aerithさん
・夜兎_〆さん
・葵那さん
・結衣さん
・リアさん
・月読 愛さん
・風(元:秋空さん
・王翔さん

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Re: 英雄の取り扱い説明書〜美少女ですが、何か?〜 ( No.4 )
日時: 2011/03/17 00:58
名前: きの子犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: Q2XZsHfr)

「うわぁぁぁぁっ!! ……あ?」

ベッドの上から起き上がり、俺は叫び声をあげたがそれは何の意味もないことをすぐさま理解する。
俺が目覚めたのは正真正銘俺の部屋のベット上。美少女たちが入ってきた時と定位置だ。
窓を見てみると、半壊しておらずにいつもどおりの殺風景な窓に戻っていた。

「ゆ、夢か……?」

俺は、先ほどのことを思い出す。
確か、窓をぶち壊して美少女5人ぐらい乗り込んできて——俺は、あるものを渡された。
そう、取扱説明書だ。何の取扱説明書なのか意味が全く分からない謎の説明書。
でも、あれは夢だ。現に窓も直ってるし、取扱説明書も——あった。

「丁寧に見えやすいところに置いてくれてるな……」

取扱説明書があったのは、俺の丁度腹上にあたる部分だった。
魔性の匂いがするその取扱説明書は正直、触れたくもなかったが紙切れが一枚、取扱説明書に挟まっていた。
それが妙に気になったので抜き取り、見てみると——

『窓直していけよ、ということでしたので窓はちゃんと直させていただきました☆』

と、可愛らしい文面が綴られていた。
あの美少女の内の一人が書いて置いたものなのか? え? 確か大空にバイバーイしたはずじゃ?
また戻ってきて直してくれたのか。ご苦労さんなこったな。
——ってそうじゃねぇっ!? 

「あれ夢じゃないのかよっ!!」

問題はそこだった。
何の説明もなく、いきなり美少女が数人窓を壊してぶっ飛んできて、取扱説明書と書かれた雑誌を俺に渡す、と……。
——警察に被害届け出しても「帰れ」といわれるだけだろうな。
とりあえず、だ。

「学校に行く用意、するか……」

あぁ、わけが分からないな。学校に行けば何か変わるのだろうか?
高校一年になってまだまもなく、もうちょいと経てば夏休みに入るだろう頃合な時期に、わけの分からんことに巻き込まれた。
取扱説明書は——何か不気味だしなぁ……一応、ネタとして持っていくことにするか。
俺は、左手に取扱説明書を持ち、扉を開けて自分の部屋から出た。



家庭内事情を説明すると、俺は一人暮らしである。
高校生で一人暮らし、といわれるとは思うが少し事情というものがある。
親はお互い単身赴任でずっといない。そうだな、俺が中1の時からだからー……3年ぐらい? まあ不在。
姉が居たりもするが、姉も別居しているために不在。
妹も居たりするが、俺と二人で暮らすのは無理とか何とかの理由かは分からないが親の方にということだ。
——そう思ったら涙出てきますね。何コレ、悲しい。

実家、ということにもなるが仕送りはえらく親からもらってたりもするし、一人暮らしということもあってあまり金には困らない。
それに、今日の美少女が襲撃したことについては一人暮らしでよかったと胸を撫で下ろすほどさ。
てか、アレ何? え、世界からのサプライズか何か? ちょ、聞いてない聞いてない。
——とまあ、こんな感じに思ってしまうほど信じられないことだったからな。これでも冷静でいるほうだとは思うが。

「ふぅ……」

一通り身支度を済ませ、適当に昨日買っておいたコンビニ弁当を温め、それを食べながら横目でテーブルの上にあるものを見る。
——そう、取扱説明書である。
いや、マジで異様なオーラ放ってるから不気味で仕方ないんだけど。

「よし……」

そして、俺は勇者となる。
この取扱説明書を開くことを決意したのだ。
——ゆっくり、ゆっくり……! そして……!!

「な……!」

そこに書かれていたのは——






「白紙だったわけかよっ!」

横で大爆笑するやけに面倒臭そうな雰囲気を醸し出す男が一名。
簡潔に言うと——取扱説明書の中は、白紙だった。
そのことでヤケを起こした俺は弁当をガツガツと猛スピードで食べて鞄を持ち——あ、もちろん忌まわしき取扱説明書も共に。くそっ、緊張して損した。
つまりは、現在学校に来ており、自分の教室の自分の席に座っているという形だ。

「まあ、そういうことだ」

俺は嘆息しながら横にいるバカ一名——横渚 槻児(よこすか つきじ)という、珍しい名前の男を相手に答えた。
槻児とか名前の由来、分からなさ過ぎるだろ。
とは言ってもこの野郎とは何故だか友達歴が多いわけで……世に言う腐れ縁という奴なのだろう。

「はははっ! まあでも、羨ましいぜー!」
「何がだ?」

ウザい喋り方で俺の背中をさっきからバンバン叩いてくる槻児——あぁ、ぶん殴ってやろうか? だんだん力強くなってきてるし。

「だってな、いくら夢でも美少女5人ほどに笑顔で囲まれるってそうそうねぇぜー!」
「皆武装モードでもか?」
「ヤンデレ、いいねぇっ!」

もうお前、土の中に埋まれよ。ヤンデレに八つ裂きにされろよ。何かだんだん鬱陶しさが込み上げてきた。

「この取扱説明書があるっていうことは夢じゃねーよ」

俺は中身が白紙なクセして大きく表紙に取扱説明書、と書かれてある雑誌を机の上へと乱暴に置いた。

「取扱説明書をお前自身で作れっ! ということなんじゃね?」
「いい加減なこと言うなよ。しかも何の取扱説明書だ」
「俺的には美少女の取扱説明書がいいねぇっ!」

万年彼女などいないお前にとっては、そんな代物があったとしても無縁だろうがよ。
とりあえず、そのウザい喋り方から正そうぜ。

「てかよー? 本当に何の説明も無しなのか?」
「あぁ、無いね。笑顔で窓壊して入ってきて、笑顔で俺にこれをくれてやっただけだ」

自分で言っててもえらい迷惑な話だな、とか思う。
でも何故だろうか? この取扱説明書、ただの白紙雑誌でないような気がする。
それはもちろん、美少女たちがいきなり登場したりして、これを俺に渡すってことからして意味が分からないわけなんだが。
——俺は普通の日常が一番だぞ、おい。ややこしいことに巻き込まれないといいんだが。

「まあ、関わりたくなかったら別にほっとけばいいんじゃねぇか?」

珍しく槻児が正論を言いやがった……。——そりゃ美少女も窓壊して入ってくるわけだ。それぐらい珍しいことだ。変なものでも食ったのではあるまいな?

「そうだなぁ……」

呟くように言い、俺は取扱説明書をじっと見つめる。
何の変化もない殺風景な取扱説明書だが、何か起こるような気がしないでもない。
丁度そんなことを考えていたら、不意にチャイムが鳴り、HRが始まる合図を見せた。



「さて、どうするかな」

無為にもこの取扱説明書のせいで授業中も色々と思ったことがあったじゃないか。
そして昼へと入り、槻児と共に飯を食べて(槻児がどうしてもと俺にねだった)学校は放課後の時間となる。
つまり帰宅部は早く帰って寝てろ。運動部はとっとと働け。文化部はこまめに働け。そういうことだ。
ちなみに俺は早く帰って寝てろの部類、帰宅部だ。——何か文句あるかよ、この野郎。
一人の時間っていうのは欲しいものなんだよ。学校だと槻児に他がうるさいからな……。

「ママンっ!」
「誰がママンだっ! 一瞬知らない人のフリをしようかと思ったわっ!」

いきなり今まで呼ばれたことのないような名前で槻児がウザくも寄ってきたことに本気でウザくてならない。
こいつは俺にウザいことをするために生まれてきたのか? 悲しい人生だな。

「アメリカンドック買ってくれっ!」

あぁ、だからママンとか公民の場で言ったらちょっと頭おかしい人扱いされるようなニックネームで呼んだわけか。
——欧米っていう線だけでだが。
全国のママンさん。ごめんなさい。ママンさんをなんだか否定したみたいになっちゃったので、一応謝っておくことにする。
アメリカンドックといえば、最近近くのコンビニが潰れた後地に開店したあの店のか。
美味いとか聞いたことがあるが、一度も食べようなどとは思わない。
何故かって? このアホ槻児がついてくるからだ。

「黙れ。自分で働いて自分で買えよ。ママンはもう卒業しろ」
「何だよー。ケチケチすんじゃねぇよー。俺の中のママンは神のように神々しいぞ?」

お前の中のママンはとんでもない存在なんだな。今の発言、すげぇマザコンっぽいけどいいのか。

「でもマザコンっぽいからやめとくわー!」

そして言ったことをウザい口調でドタキャンする。……笑えねぇ。こういうところがまたウザいんだよな。

「あぁそうかい。じゃあ帰ってゲームでもしてろよ。根暗ママン」
「根暗ママン? あははっ! 何言ってんだ? お前」

うぜぇ——ッ!! 何だお前っ! 自分からママンネタを持ち出してきたんだろうがっ!
俺はそんなアホ槻児を華麗に無視してそのまま帰宅しようとする。

「あ、待てよっ!」
「何だよ、ヒモ野郎」

渾身の皮肉っぽく言ったつもりだがこのアホには全く聞いてないようだ。——まったく、やれやれだな。
槻児は俺にグーサインを突き出して気持ち悪い笑みを浮かべる。

「俺が奢るから、いこうぜっ!」
「まだママンの話を引きずってたのか。いい加減にしろよ。しつこいのはお前の顔だけで充分だ」
「ちげぇよっ! ママンじゃなくて、アメリカンドックの話だっ!」

食い物の話か。あ、いや、待てよ。こいつのアホさを考えたら——アメリカの犬のことかもしれん。いや、そんなまさかな。
奢るとかなんとか言ってるしな。まあ、そんなことはないか。

「よしっ! 早く行くぞっ!」
「分かったから服を引っ張るな。これ以上引っ張ったら新しいのお前に買わせるからな」
「ひどくねぇっ!? その扱い! パパンショックですよー」

誰がパパンだ。お前がパパンになったらさぞかしママンは可哀想だろうよ。

「いくぞ、ママン」
「って相手俺かよっ!」

俺は槻児パパンに服を引っ張られ、やむをえず着いて行くこととなった。



「……目標、捕捉。これより——英雄の取扱説明書の持ち主、嶋野 香佑を抹殺する」

影で、何かが動き始めていたことも知らずに。

Re: 英雄の取り扱い説明書〜美少女ですが、何か?〜 ( No.5 )
日時: 2011/02/13 11:36
名前: Aerith ◆E6jWURZ/tw (ID: hQNiL0LO)
参照: http://ameblo.jp/ff7-perfume-love-y

めっさうまいですね!!目が飛び出しますΣ(゜゜=_~゜゜=_~~゜゜←グロすぎるわボケw
さっそくお気に入り登録♪

わたしもyuki.・*というハンドルネームだったときに書かせていただいていましたが、こんなにうまくないです^^
また来ます!更新頑張ってくださいΣb

Re: 英雄の取り扱い説明書〜美少女ですが、何か?〜 ( No.6 )
日時: 2011/02/13 11:52
名前: きの子犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: fFMoervE)

>>Aerithさん
コメントありがとうございますっ!
いえいえっ、そんな、まだまだ全然です;お、お気に入り登録っ!?び、ビックリしすぎて僕も目が飛び出そうでしたっ(ぇ
改めまして、ありがとうございます;更新頑張ります〜っ!

Re: 英雄の取り扱い説明書〜美少女ですが、何か?〜 ( No.7 )
日時: 2011/03/17 00:54
名前: きの子犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: Q2XZsHfr)

俺は今、とても憂鬱だ。
何だろうな、とてもムカムカする。
その原因は——

「うめぇーっ! お前も買えばよかったのによっ!」
「黙れ、腐れ、埋まれ。早く食べて冥土に行けっ!」
「ひどっ! 連発して言うなよなっ!」

連発じゃなかったらいいのかよ。
つまりはその、原因は俺の隣でガツガツと結構大きなアメリカンドックを食しているこのアホ槻児のせいだ。
——ムカムカする原因といったらこいつしか最早、いないだろ。
それにだ。最近オープンしたせいかは知らないが、妙に小洒落ている。そのためかカップルのような連中がやたら多い。
その中で俺は槻児と——考えただけでこの野郎をぶん殴りたくなってくる。

俺も何故アメリカンドックを食べないかというと、ここは人気も多い場所であって二人食べてるところを他に見られたくないからだ。
今も早く帰りたくてウズウズしてる最中だ。あぁーこいつコレ食って食中毒起こして倒れないかなぁー。
——何週間かは寝ていて欲しいな。土の中で。

「にしても綺麗なところだなーっ!」
「お前がいつも行ってる店はトイレで食わないとダメだもんな」
「そんな店ねぇよっ! ていうかそれ、店とは呼ばねぇよっ!」

まともな回答してくるところも、またウザく感じてしまう。
俺、こいつのせいですぐにウザく感じてしまう性にでもなったのか? ——いや、こいつ一人にだけか。
それから俺は何度か逃げ出そうとしたが、槻児に鬱陶しいほど捕まえられてここにいるハメになっていた。

(勘弁してくれよ……)

俺はそんなことを思いながら早くでかいアメリカンドック——あ、そうそう。槻児のクソ野郎はこのでかいのを5本も買いやがった。
どれだけ食うんだよこのバカは。その栄養を頭に使え。そしてそのウザさ改善にも使え。

「はぁ……俺も暇だから、何か買ってくる」
「アメリカンドック食うのかっ!?」
「食わねぇよ。お前みたいなバカじゃあるまいし」
「香佑。とりあえずお前、今アメリカンドック食ってる皆に謝れ」

槻児の戯言を余裕でスルーし、カウンターへと向かう。
何を購入するかというと、飲み物さ。さっきからあの野郎の顔見てたら喉が渇いたし、潤そうと思ってな。
んーそうだな……デスサイズとかいう恐ろしいネーミングを持つ炭酸飲料はやめておいて……フレッシュ・マ・マンにしよう。
——ん? マ・マン? あれ? ママン?

「230円になります!」

え、そんな高いの? 量的にペットボトルより少ない可能性高いのに? ——これだから小洒落た店は嫌なんだ。何でも高い。
渋々、俺は財布から300円を取り出し、お釣とフレッシュ・マ・マンを受け取ると槻児の元へと——帰りたくはない。
そのまま逃亡を図ろうとすると、肩をガッチリと掴まれた。——槻児の奴か?

「——見つけました」
「え?」

機械が喋ったような無感情の声で淡々と告げたものが、後方から聞こえた。
振り返ると、そこには綺麗な女の子がいた。あー何か最近綺麗な女の子を見るのが多くなった気がするなぁ。
——それも、右手に物騒なものを装備している綺麗な女の子を、だ。
そしていきなり、物騒なものを持っていない左手でぶん殴られた。——ちょ、この怪力想像できてなかったぞ。
まさかの空を舞ってそのまま勢いよく地面へとたたきつけられた。

「目標、確認。英雄の取扱説明書の持ち主である嶋野 香佑を確認。これより——抹殺します」
「あ、え? 何か言いまし——!?」

殴られて頭がボンヤリと朦朧する中、機械口調で喋られたので何を言ったのか聞き取り辛かったが、突如として物騒なものを構えて俺の元へと直進してきた。それと共に俺の第五感覚がその気迫が何かを回答する。——これは、殺気だと。

「いぃっ!?」

辛うじて横へ飛び去り、何とか物騒な刀の形状をし、赤い光を放っているそれを避けた。
椅子やテーブルが砕け散り、地面へとばら撒いた。のと同時にフレッシュ・マ・マンも——あぁ! 俺の230円っ!

「お前、人がいたら——!」

そして気付いたことがある。
それは、いつの間にか人がいないのだ。先ほどまでカウンターで話したあの受付ガールすらもいない。
槻児のアホの姿も探すがどこにもいなかった。まるで、世界に俺とこの襲ってきた美女しかいないようだった。

「変革世界にログイン成功。この世界より、嶋野 香佑の存在を抹殺します」
「は!? 抹殺!?」

今度はちゃんと聞き取れた。——目がマジだよこの子。俺を殺る気満々か? 冗談じゃねぇぞ。
謎の美女は二、三歩その場でリズムよく足踏みしたかと思えば、瞬間的に俺の目の前まで迫っていた。

「このやろっ!」

必死に俺は、テーブルを破壊されたがために出来た長くて太い木の棒でバッターの如く——振りかぶって打った。
顔面直撃——と、思った。確かに顔面には直撃した。だが——木の棒が逆に木っ端微塵☆
美女の顔はかすり傷一つもついていない。どうなってんですか、貴方の顔は。

「えぇぇぇぇっ!?」

右手の刀を美女は俺を目標に、袈裟切りで斬りかかった。
——終わった。俺の人生。そう確信したね。
わけのわからないことだらけの中、俺は死ぬのか、と。
半ば、走馬灯が走った気がしたが——ダメだ。フレッシュ・マ・マンの味を味わってから死にたいとだけ思うばかりだ。
最期まで、俺はバカだったなぁ。あばよ、世界。あばよ、俺の寛大な人生っ!


「はぁぁぁぁっ!!」
「ッ!?」


いきなり世界が煙と化したみたいになった。
周りが白い煙で覆われて、俺は、何をしていて何がどうなってどんな状態なのか全く持って分からない。
ただ……ん? 何か、柔らかい? でも何かボリュームが足りないような……。
俺はゆっくりと状況を考えてみる。そして白い煙が空けた後、俺はきっと天国に——!

「冥土まで飛んでいけぇぇぇぇっ!!」
「ぐはぁぁっ!!」

俺は、本日二度目の空を舞っていた。——鼻から血を多量に噴出して。
ぶっ飛ばされたのは、あの淡々と話す機械口調の美女ではないことは確かだ。
そして、何か元気の良いロリ声が聞こえたのも、また確かだ。

「いてて……一体何がどうなって——!?」

俺の目の前に繰り広げられた光景は、とりあえず機械口調の美女は冷静な顔で少し遠くの方に立っており——もう一人、俺と機械口調の美女との間に立っている人物がいた。
巫女服、といえば分かりやすいか。着物と言っても分かりやすいのかもしれない。
まあ、そんな感じの服を着て、右耳に小さな鈴がついている。他には……ヘアピンとか留めてて、だ。顔は——めちゃくちゃ可愛い。
身長は小さめだが、スタイルは良いほうだろう。——胸の膨らみを除けばな。
そして最後に、右手に——ゲームでしか見たことがないような機械仕掛けの大太刀が握られていた。
そして何故だか顔を真っ赤にしてツルペタ少女は俺に指を差す。

「お前っ! いきなり胸触りやがって! この変態がっ! 男のクズッ!」
「え、えぇっ!? あ、じゃあ、あの柔らかいのって——」
「黙れぇぇぇぇっ!!」

だから顔が真っ赤なわけだったのか。あれはあの凹凸の全然ない胸だったのか……。
成り行きだから、もう許してくれとは思うが。
それに、そんなイベントでもなかっただろ。必死だったからな。——あぁーでも何か惜しいことしたような気が。

「外部の敵、出現。これより敵を除去する」

美女は透き通るような機械口調で淡々と告げた後、右手に持っている刀を構えた。

「アンドロイドか。面倒臭いなー。この世界に入ってくることさえ、だるかったのにな」

ツルペタ少女が何か呟いているが、何一つ理解できない。ていうかここは一体どこで何なんだ。
色々な疑問が浮かんだが、とりあえず知りたいことがあった。

「お前、名前は?」
「黙れっ! 変態がっ!」

——畜生っ! 槻児の方が変態だろうがよっ!
結局教えてもらえずに、機械仕掛けの剣を構え、ツルペタ少女は美女と向き合った。

「こいつを倒したら教えてやるよ。——それまで死んでろよ」

え? 俺を守ってくれるか何かしてくれるんじゃね? なのに死んでろって矛盾起こりまくりだよ。
とりあえず、物陰の方まで移動して成り行きを見守ることにした。


「こんな雑魚、一瞬で倒してやるよ。——この美少女パーフェクト勇者様がなっ!」


え? 何? 美少女パーフェクト……じゃなくて、勇者って言った? あの子。

Re: 英雄の取り扱い説明書〜美少女ですが、何か?〜 ( No.8 )
日時: 2011/07/01 18:20
名前: きの子犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: hF19FRKd)

勇者? 勇者って言ったか? ——その格好で?
確かに勇者と言ったあのツルペタ少女は勢いよく駆けていく。

「でぁああっ!!」
「っ!?」

機械仕掛けのような大太刀を大きくなぎ払い、美女の胴を狙う。しかし、美女難なくそれを自らの刀で受け止め、返す。
受けられることが予想出来ていたのか、ツルペタ少女は連続的に大太刀を振るいに振るう。
それらを受け止めたり避けたりしては、美女も反撃してくる。——まさに一進一退の攻防戦だった。

「何だよ……これ」

俺は、ただ呟くのみ。いや、それしか出来ない。あの中に丸腰で入ったとしたらミンチにされて終わりだろう。
ともかく、応援すべきはツルペタ少女の方のはず。心の中で何とか倒してくれと願うばかりだ。

「はぁっ!」

ガシュッ! ——何かが斬れる音がした。
それは——美女の左肩が盛大に斬られていた。とはいえ、血が出ない。
こいつ、人間じゃないのか?

「やっぱりアンドロイドね。誰の指令かは知らないけど、とりあえず——終われぇぇっ!」

ツルペタ少女は大きく大太刀を振り上げて振り落とした——が、瞬時に美女は体をくねらせて横へと飛び去る。
何とか回避したようだが、左肩が取れかけているような状態だ。——アンドロイドっていうと、あの機械で出来ている?
こんな高性能な技術が既に日本にも上陸したのかと考えたが、一つもそんなニュースなど見た覚えがないぞ。
だが、現に目の前に存在している。それは——事実なのだから。

「目標、撃破失敗。指定時間到達。任務失敗。指定時間までに撃墜不可能な場合、退避。これより、帰還する」

淡々と機械口調で美女は喋り、その後煙のようなものが立ち込めたかと思うと美女はその中に消えていった。
すると、砕けたテーブルや椅子などが修復されて元の世界に戻るかのようにして人々の声が聞こえてくる。
そして、気が付いた時には店前では人々が賑わっていた。いつもなら鬱陶しく思うカップルも今ならいてよかったと思えるね。
それで、問題は——

「おい。ツルペタ」
「誰がツルペタだっ! この人生生き恥がっ!」
「そこまで怒るなよ。ていうか誰が生き恥だっ!」

着物姿のツルペタ少女の姿がやけに珍しいのか客が俺を含めて、ツルペタ少女をジロジロと見る。
——あぁ、面倒くせぇ。だから嫌なんだ。

「こい」
「はぁ? 命令すんなよなっ!」
「いいからこいっ!」

俺はツルペタ少女を連れ出してあまり目立たない場所へと移動した。

「こんなところで何を——ハッ! このド変態がっ!」
「お前は何を勘違いしてんだっ! 何もしねぇよ! 話を聞くだけだっ!」

己の体を抱き締めるように手を置きながら顔を真っ赤に染めて俺の顔を睨むツルペタ少女。
ため息一つ吐いて、俺は本題にさっさと移ることにした。

「とりあえず、名前は?」
「教えてくださいだろ、カスッ!」

何この娘。槻児並みにウザいじゃないか。

「……俺は嶋野 こ——」
「ま、知ってるからいいんだけどなっ!」

知ってるんかぃっ!! こけそうになったわっ!
ていうか、何で俺の名前を知ってるんだ? どういう経路で? まさか……槻児の野郎、ぶっ飛ばしてやろう。

「"僕"の名前は——」
「まてまて、一人称がキャラと全く違う」
「はぁっ!? どこがだよっ! 僕は僕でいいだろうがっ!」

こんなキャラ、見たことねぇぞ。何だ、強気なキャラでツルペタで明らかツンデレとかなタイプの奴が一人称僕?
キャラがにぶるにぶる。ていうか全く合ってねぇ。

「お前、ふざけて言ってる?」
「なわけねぇだろっ! ぶっ飛ばすぞ?」

少女は顔は可愛らしく、一人称も草食だが——言動だけは外道の極みだな。

「まあいい。とにかく名前を教えろ」
「人に頼む時は——!」
「教えてください、お願いします」

あぁ、畜生。何で俺が下手に出ないといけないんだ。
——抑えろ、抑えろ俺の右拳っ!
では、改めましてもう一度このツルペタ少女の名前を聞くことにしよう。

「僕の名前はユキノだっ!」
「ユキノ? 案外普通だな」
「普通に決まってるだろっ! ていうか、お前の名前よりマシだよ——な、ミジンコサイヤ人」
「ミジンコいらねぇぇぇっ!! いらなくてもサイヤ人でもねぇしっ! サイヤ人は名前じゃなくて種族だからなっ!?」

本当にこの野郎は俺の名前を知ってるのか? 絶対今の知らないだろ。何だよ、ミジンコなサイヤ人って。

「じゃあ、フランケンシュタインで」
「じゃあって何だよっ! じゃあもクソもねぇよっ! フランケンシュタインって妖怪だったよねぇ!?」
「いえ、幽霊です」
「どっちでもいいだろっ!」

フランケンシュタインって実在の人物じゃなかった? あれ? まあいいよ。そんなことはどうでもっ! ややこしいこと言いやがって。

「お前、俺の名前言ってみろよ」
「だから言ったじゃん。ミジンコフランケンサイヤシュタイン人だって」
「合わせてきやがった——ッ!! 何、その最後のシュタイン人とかっ! 実際に何かありそうな人種だよっ!」
「シュタイン人は頭にネジをぶち込むことを開発した——」
「それがフランケンシュタインだろっ!」

ぐ……! こいつ、何かウザいというか、妙にツッコマせざるを得ないようなことを連続して言ってきやがる……。
とにかく落ち着こう。名前はー……えー、ユキノだったな。

「よし、ユキノ」
「呼び捨てするなっ!」
「………」

ということで、何時間とかけて聞き出したところのことをまとめてみよう。
簡潔に言うと、あの例の取扱説明書。あれを持った人がマスターとなり、種族の争いとやらに勝ち抜くたらなんたら。
正直、意味分かりません。
様々な種族がいて、ユキノはその中の勇者という種族らしい。ていうか、勇者って種族じゃなくて職業の部類じゃね?
——とかなんとかいう質問は受け付けないらしい。
詰まるところ、この世や異世界には様々な種族がありすぎるわけだそうだ。
んでもってその種族ごとが力を付け出して、様々な派閥が出来上がってくる。
それら全てが戦う戦争のようなものが今、火蓋を切りそうなところらしい。

「そこで、取扱説明書たる魔道書を完璧にコンプリートして最強の勇者になるために私は来たわけだっ!」
「……それで?」
「……それでって、話聞いてなかったのか?」
「いや、聞いてたさ。そりゃもう耳が痛くなるほどな」
「じゃあお前がマスターだな。——胸クソ悪いけど」

笑顔で言うもんだから何かあれだよね、悪意ないように見えるよね。
といっても、だ。——冗談じゃない。

「残念だが、俺はお断りだ」
「はぁっ!?」

俺の断りを予想だにしていなかったのか、困惑の表情が途端にユキノの顔に表れた。

「俺はな、普通の日常がいいんだ。この日常が気に入ってる。何もさっきみたいなアンドロイドか何か知らねぇが、そんな物騒なものと戦う毎日なんて想像も出来ない」
「お前っ! 世界がグチャグチャになっちゃってもいいってのかよっ!」
「はぁ? 何の話だ?」

聞いていなかったことがユーノの口から出たので聞いてみることにした。何? 世界がグチャグチャになるだって?

「異世界とこの世界がそれぞれに交じり合い、やがてはそれぞれの力と力がぶつかり合って——ドーンッ! だっ!」
「すまんが、最後が幼稚だったのでよくわからなかったが……えーと、世界と異世界がぶつかり合って爆発するってことか?」
「そういうことだっ! 誰が幼稚だっ! お前の鼻毛の方がよっぽど幼稚だろっ!」

幼稚って意味、分かってんのか? それと、鼻毛は多ければいいってもんじゃないからな? 手入れはちゃんとしとけよ?
にしても、また寛大な内容の話が出てきたもんだ。世界が爆発する? それを一少女から信じろと言われて信じるバカがどこにいる?
——ここにいたりしてな。

「はぁ……でも、あれだけのことを見せられたりしたら確かに信じざるを得ないだろ」
「本当かっ!?」

目の前で人々がいなくなったりした——あ、あれは変換世界とかいう世界の別次元から生み出した世界のことを言うらしいです。
……言ってて現実味なさすぎるわー。
まあ、そんな現実味のないことが目の前で起こったりしてしまったんだ。もう信じるしか道はないみたいだ。

「よしっ! よくやったっ! でかしたぞ、下僕っ!」
「確か俺がお前のマスターか何かだったよな? 立場思いっきり逆転じゃね?」

そんな俺の言葉など知らずに上機嫌で勇者、ユキノは意気揚々と歩いていくのだった。

「ていうかあいつ——どこに泊まる気なんだ?」

何か、変な波乱が起こりそうな気がした。
そういえば……何か忘れてるような気がするんだけど、何だろうか?
——あ、槻児のアホを忘れてたな。……ま、もういいか。



とあるところでは、見た目は美女ともいえる姿をしたアンドロイドが膝を地面に付き、頭を下げていた。
目の前にいるのは、偉そうに足を組んでいるスーツ姿の男。

「まあいいだろう……勇者、か。なかなかの種族じゃないか」

男はニヤリと笑い、美女アンドロイドの頭をなでた。

「ユナシィー。君も休みたまえ。その忌々しい肩の傷をじっくり治してくれ」
「はい。かしこまりました」

ユナシィーと呼ばれた美女アンドロイドはそのまま立ち上がり、別室へと移動していった。

「クククク……楽しみだよ。非常に、ね」


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