ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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ネックウォーマン
日時: 2012/02/17 19:51
名前: 茶渋、 ◆TdTxabAvIk (ID: S1XpBh/Z)

茶渋、です。最新遅いです。
※この物語では作者の不十分な実力により訳の分からない描写・言い訳などが出てくるかもしれませんがそこはこのクズが、と思って見逃してあげて下さい。

登場人物

田中(仮)主人公。自分の名前は伏せて話している。ある日、ネックウォーマーを無くしてしまう。

ネックウォーマン 田中(仮)のネックウォーマーを奪い去った張本人。ある予言の動画を送りつける。

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Re: ネックウォーマン ( No.22 )
日時: 2012/03/21 18:47
名前: 茶渋、 ◆xr/5N93ZIY (ID: S1XpBh/Z)

そこは暗い森の中。朝の小鳥の声が遠くで聞こえるほど。
「……」
そして、面西裕次郎を取り囲む四人。田中(仮)のネックウォーマー、「段ボール」、黒いマフラーと布、そして紙袋で顔を隠してある。面西は恐怖でおびえ切った顔を向ける。
ガンッ、顔面を蹴られる。鼻の骨が折れたのだろうか。鈍い痛みと共に血が流れる。彼は渾身の力を込めて言った。
「なんで、こん、こ……こんなことをゲホッ、するん、だ」
四人の間に疑惑が流れる。
「あぁ、あいつ……」
「やられたな」
「こいつは面西の弟だよー!」
「仕方ない、蠍、後は頼んだ」
「……」
「無愛想な人」
三人は去っていく。蠍と呼ばれた黒いマフラーのそいつは、ゆっくり血まみれの彼に近づく。面西の顔がみるみるゆがむ。
「な あ 、 お 前 さ」



時間は十時。僕は面西をあっさり見捨てて、適当なシャツと適当なズボン、それに黒いバッグという性格がにじみ出ている服装で家を出た。階段を下ると転んだ。頭打たなくてよかった……。手がじんじんと痛むが無視して外へ出る。自動ドアの音を後目に、外の空気をたっぷり吸う。しかし……。うん。彼女は僕を置いて逃げるようにさっと帰って行った。しかし、どこに待ち合わせかは聞いていない。
「はぁ……」
ため息をつきながらとりあえず自転車を運ぶ。仕方ないや。
「寝るか。よし寝よう」
ベンチにごろりと寝転がる。大きな四角形でできたこのベンチ。多少寝ても迷惑かからない。屋根があるから日差しが来ない。
「今日は……」
今日は良い空色だ。澄み渡った空を眺めていると、自分までその空の一部になってしまったような感覚に陥る。
「寝よう」
目を閉じる。真っ暗な世界に入る。
「こんなとこで何してんのー?」
「……君か」
面西いわく「ネックウォーマンの一員」水口 明快。
「そういう君は?」
「散歩っ!」
散歩、ねぇ〜。とにかく接触は嫌だ。
「で、○○はどうしたの?」
「昼寝です」
「本当は? デートとか?」
「そんなわけないだろう」
いきなり核心をつかれる。何とか無表情を装いながら目を閉じる。
しかし、悲しいかな……。
「ごめーん、集合場所を言ってなかったー!」
「……」
凍りつく。
後ろでプッと聞こえた。
そして澄み渡った空を汚す大きな笑い声が一つ。
「やっぱり! やぁっぱりぃ——!!」
後ろでじたばた笑いまくっている。……。
「え? 今日明快も来るの?」
「……」
「私も暇だし行こっかな」
げ。
「良いよ♪」
「……」
良いよ♪ じゃなくて。
マジ?
とにかく、僕はこの危険人物を注意しつつ、僕は自転車で遊園地へ行くはめになってしまったのだ……

Re: ネックウォーマン ( No.23 )
日時: 2012/03/22 14:08
名前: 茶渋、 ◆xr/5N93ZIY (ID: S1XpBh/Z)

「さて、どこ行くー?」
『無邪気』な顔で言うメーカー、もとい水口。それが表面だけという事実に彼女たちは気づいたらどうするんだろう? 僕は大きく回る観覧車を視界に入れつつ思った。観覧車……? 二人で入るような展開だけは絶対にごめんだ。いやマジで。そのまま洗脳のような流れにならないように気を付けないと。とは言っても相手は面西より小さい小柄な女子が一人。話を聞かずにそのまま暴れてしまえばいい話だ。女子相手に手をあげるのは気が引けるが……。拘束とか? こんな時のために自家製のフック付きロープを持ってきた。長袖に仕込んであるので、いざという時にすぐに出せるようにしてある。右腕が動かしにくいが。
「じゃあ、観覧車とか?」
待て咲世! そのフラグだけは——!
「え、早くない? まずジェットコースターでしょ〜」
「そうだね」
ナイス鶴井。本当にナイス。勝手にびくびくしつつ、僕はジェットコースターへ乗るためにお金を払う。コースターへ乗る……のだが。人数の流れで僕はメーカーの隣になってしまった。深く不覚。常に臆病者の敷地を広げつつ、上半身を黒いバーで固定する。隣でにやりと笑った
気がした。気のせいであっていてくれ。
「ドキドキするね」
「いや全然?」
言葉とは裏腹に、拘束された状態では逃げられない状況にドキドキしている自分。いやジェットコースターとかまったく怖くない。落ちるのが分かっている・固定していれば吹っ飛ばないのだから。落ちるタイミングも分かっているのだから、落ちるときはあくびすらでる。
ゴトン、と音がしてコースターが動き出す。「海の怪物から逃げる」という設定なので、下は水だ。ちょいちょい大きなプレシオサウルスのような顔が出てきてコースターが揺られている。水が冷たい。ガス臭い辺りを見回していると……!?
「——!!」
あれは……死体!? 作り物……だよな?
「きゃああぁああぁ——!」
悲鳴! いや、
……普通に落下した。空気の流れで髪が上へ上りだす。しかし、僕は目を凝らして見る。もしかしたらまだ何かあるかも……。
そして、そいつは居た。
最初通った洞窟の端で……赤く染まった包丁を持ち、狂い血走った眼を……こちらに向けた。さっきの男性もあいつに?
そして、ゆっくりこっちに来るのが見える。
「——やばい!」
ジェットコースターは落下し、水しぶきを上げた。前の鶴井が怖かったと何も知らずに咲世に話しかけている。そんなことしてる場合じゃない! 僕は前の二人に逃げるぞ、と叫び……
僕はなぜだろうか。大きな恐怖におびえつつ……
メーカーの手を取って走り出したのだ。

Re: ネックウォーマン ( No.24 )
日時: 2012/03/24 19:05
名前: 茶渋、 ◆xr/5N93ZIY (ID: S1XpBh/Z)

太刀魚守と後影は走り出す。案外小柄な後影に体力があったことに驚きつつ、太刀魚守もスピードを上げる。さっき欠けたメガネがあった。おそらく面西……または面西・弟のものだろう。
「ん、この足跡は」
思い切り走った後。ぬかるんだ地面にくっきりと映っている。
「急ごうか」
「……」
太刀魚守は無言で走り出す。そこは少し暗い森の奥深く。そして。
「——これは!」

※今の状況
場所……遊園地
人数……田中(仮)、水口、咲世、鶴井
状況……ジェットコースターで人が死んでいるのを発見。殺人者と思われる人間と目があってしまい、ジェットコースターが終わった瞬間、水口の手を握り走り出す。

「ハァ、ハァ、……ふぅ」
「何で、私を……」
自分でも何をやっているのか分からなかった。こいつはネックウォーマン。直接手を下すとまではいかないにしろ、遠回しに殺人を繰り返している集団の一員。そんな事は誰よりもわかっている。
分かっているのだが。
「さぁ……」
僕にも自分のやったことが分からない。ほっといて逃げればいいのに。……。まぁいい。相手はおそらくアトラクションの清掃員だろう。そしてスーツを着た大柄の男が一人倒れていた。武器は包丁。今はかなり離れて観覧車の前だ。
「おーい、どうしたん?」
「知らぬが咲世ってやつかな」
「なにそれ」
……今いうべきか。
「さて、次はお化け屋敷に行こうか!」
「待って、違うんだよ、その」
「良いよー」
鶴井の提案をあっさり受け入れるメーカー。さっきの会話からすでに「自分がネックウォーマンの一員」というのが僕に知られているの知っている。なのに、焦る様子もなくのんきに歩き出す。僕に至っては殺人者が追いかけてこないかとびくびくしているんだが。常に後ろを振り返っているせいで鶴井に「誰かいたの?」と聞かれた。軽くはぐらかしつつ歩くスピードを強める。
「入るのか」
「? もちろん」
すでに待ち伏せしていて、とか考えているとマジで行く気になれない。しかし悲しいかな。女子に引っ張られるようにして僕はしぶしぶ入った。このテーマは「病院」。もともとは本物の病院だったが潰れてしまったのでよく「出る」と評判らしい。マジでいやだって!
真っ暗な中、しぶしぶ進む。フォーメーションは僕→鶴井→メーカー→咲世、だった。先頭とかマジで泣きそう。
「おぉおぉおおぉ!」
「ぎやあぁああぁああぁああ!?」
僕はさっきのあれでいつも以上にチキンだ。思いっきり後ろずさった。怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
「……落ち着け」
落ち着け、と声に出す。後ろから「何言ってんの?」という声を無視して精神を、耳を集中する。臆病者の敷地は本当に耳を済まさないと発動しない。かなり中二っぽいがこれは単なる「聴覚特化体」だ。目をつぶる。しかし問題が一つ。本気で「臆病者の敷地」を発動している間は……当たり前だが、目が見えなくなる。まぁ当たり前。目をつぶっているのだから。いつもは後ろに警戒する程度だが、今回は本気だ。
「まぁ分かった。奥の部屋に人が……二人」
ドアの向こうの……虫の知らせ、というよりは「気配」。それを感じる。……ってあれ。
「いない」
後ろに誰もいない。どうやらはめられたようだ。
「マジで勘弁してくださいよ!」
僕はひとりごちると、ゆっくり階段を下りだす。走ったりしたらもう止まれなくなり、気配とかが感じられなくなる。ちょっと耳がいい臆病者からただの醜い臆病者になりさがってしまう。しかし。
「やっぱむりいいいぃいぃいい!!」
僕は全速力で走って、出てくる幽霊を無視して、最後のおにぎりを持った不気味なおばあさんを無視して、一気に外へ出た!
「あ、来た〜!」
「全速力じゃん!」
ニヤニヤしながら三人は僕を見る。
「……もう、勘弁してくださいよ」

Re: ネックウォーマン ( No.25 )
日時: 2012/03/24 19:47
名前: 茶渋、 ◆xr/5N93ZIY (ID: S1XpBh/Z)

そして今、ファミレスにいる。僕はそんなに食べる気にはなれないので、適当にフライドポテトを頼んだ。咲世はハンバーグランチ、鶴井は目玉焼きハンバーグランチ、メーカーは……
「チーズハンバーグ、目玉焼きハンバーグ、パフェ、スープ……よくそんなに食べるな」
「余裕〜」
その上早食い、しかし汚い食べ方ではない。ささっと食べる。僕が一番早かったが、咲世が食べ終わった時にはメーカーはパフェを食べ終わっていた。マジで怖いんですけど。
「あのさ、最初ジェットコースターに乗った時」
「あぁ、観覧車? 乗ろうか」
「ち ょ っ と 違 う !」
僕が言いたいのは、つまり、その
「乗ろうかー」
……場の空気はすでに乗ることになっている。こいつら。——しかし、なぜだ? メーカーはばれた事に焦りは覚えてないようだ。むしろ嬉しさすら伺える。もしかしたら……こいつは、僕を洗脳するつもりでいるのかもしれない。ぴょんぴょこ跳ねる青い大きなリボンがやたらと目障りだ。取ればいいのに。
「ごちそうさま」
僕は軽く外の空気を吸ってくる、というとお金を払って外へ出た。あいつに見えないように裏に回って持ってきたものを確認する。フック付きロープ、発電式ライト、ケータイ、こんなものか。フック付きロープは袖に仕込んでいる。虚しいがこんなことしかできない。
「さて、行くよー」
彼女たちは満足そうに外へ出ている。僕はすでにさっきの殺人者が来ないかと本気でビビッているんだが。仕方なくとぼとぼと観覧車のほうへ歩き出す。こんな事なら家で寝てればよかった。
「さて、と」
「——なんで?」
今の状況。咲世と鶴井が先に乗り、僕とメーカーは二人で乗るはめになっている。二人はニヤニヤしている。気を利かせたつもりなんだろうか。こっちからすればとんでもない迷惑だ。いや本当に。
「……」
無言。いやだって話す話題なんかないし。そもそも会話したくないし。メーカーはむじゃきにこちらに背を向けて外を見ている。まぁその方がありがたいんだが。しかし、そのささやかな時間はある一言によって破壊されてしまった。
「どう、『厄災者』の気分は?」
「……よくもまぁそんな軽々しく言えますね」
張り詰める空気。
「別に私は○○を殺そうなんて思ってないよ」
「よく言えるよ」
「本当。私は嫌いじゃないよ○○」
「僕は嫌いだけどね」
「むっ、なんで?」
「人を遠回しに殺してるくせに」
僕は煮えたぎる怒りを抑え込んで冷静に言う。
「別に、私は何もしてないよ、中にいるだけ」
「あー、そうですか」
すると、メーカーの顔がゆがむ。やべっ。
「なんで、私は、ただ、○○……ぐすっ」
「僕は騙されない」
「本当だもん!」
突然大きな声を出す。少し驚いたがすました顔で無視する。
「……」
再び凍る空気。観覧車が降りたので、隣で泣いている声を無視して、僕は勝手に外へ出た。女って怖い事は誰よりも知っている。が、僕は鶴井や咲世の声を無視して、一人で家へ帰った。



田中(仮)が去った後、泣きじゃくるメーカーを鶴井と咲世がなだめていた。メーカーは「本物」か「偽物」かわからない涙を流しながら、さらに大きな声で泣く。
そして、こうつぶやいた。
「……あきらめない」



その頃、後影と太刀魚守は動けずにいた。
「ダメか」
森を進んで、暗い奥深くで首つり自殺をしている面西・弟を見つけたとき、後ろから誰かに殴られて気を失ってしまったのだ。今は黒い鎖とロープでぐるぐる巻きにされ、身動きが取れないまま放置されている。
「何とかして、彼に連絡を……」
その瞬間、バットで殴られ、雷のようなショックと痛みに後影は気絶してしまった。そして、その隣で鎖とロープをほどかれ、ゆっくり立ち上がる彼女。
「スパイご苦労」
「……」
そう、太刀魚守だった。

Re: ネックウォーマン ( No.26 )
日時: 2012/03/26 13:38
名前: 茶渋、 ◆xr/5N93ZIY (ID: S1XpBh/Z)

次の日。僕は学校が春休みに近づいているのもあって早く起きた。無理やり身体を動かす。正直クラスに入りたくないんだが。『厄災者』とかはまぁ耐えれる。もともと一人ぼっちだし。しかし……。
「メーカーさんに会いたくない……」
とても重い気分のまま、とりあえずトーストにかじりつく。さりげなくハムを乗せて贅沢気分。すぐに平らげ、ミルクティーを一気飲みする。そして、おそらく……二度としないだろう。僕はお気に入りのコップを投げ割った。これは山に行って消えた兄からもらった思い出の品。流れてくるあの兄との思い出をかみしめ、覚悟を決める!
「さて!」
見ててくれ、クソ兄。さっさと……この家へ帰ってこい!
「そうだ、太刀魚守さんは」
面西を助けたんだろうか。僕はさっさと学ランに着替えると、家の鍵を閉める。おっと、忘れるところだった。
「お前も「一緒」だね」
兄が買ったものの一度も使われることのなかった、「一人ぼっち」のタオル。緑色の楓が描かれている変わったものだ。頭にかぶせ、家を出る。新たな覚悟と共に……。
「あれ」
おかしい。インターホンを鳴らしても出てこない。……何故?
「あ、○○くん。零、昨日から帰ってないのよ! 知らない!?」
「知らない」
ひどく動揺する太刀魚守・母をなだめ、僕は背を向ける。
「おい、待て」
「ん」
太刀魚守の兄、太刀魚守 雫(たちうおもり しずく)だった。
「まだ学校に行くのは早すぎるな。ちょっと部屋に来てくれないか」
「あ、……はい」
ただのイケメン。身長は高く、バスケ部のエース……だっけ? 初めて会ったときは「兄妹そろって美顔でうらやましいな……リア充め」とかこっそり思っていたものだ。性格は冷静沈着、だがやる時はやってくれる兄貴的存在だ。かくいう僕もカツアゲされかけた時に助けられた。サバットをやっているとかやっていないとか。
「まぁ、座ってくれ」
かちゃり、と鍵を閉める。僕はさりげなく警戒する。もっとも抵抗した所でかなうはずもないが。太刀魚守・兄は真剣な顔になって話しだした。
「なぁ、○○。お前の事は零から聞いた。学校での様子、今までの事、それに「ネックウォーマン」の事も。全部だ」
「——」
「そして、これはお前に対しての「忠告」でもある」
「忠告?」
「零はネックウォーマンだ」
「——な!!」
……嘘だ。
「嘘だ、だってあの子は、ぼくとおなじやくさいしゃ………」
「スパイだ。あいつはスパイとしてお前と共にいる」
「嘘だ!」
「……あいつらはお前が動くのを楽しんでいるんだ。だから……お前に秘策を授ける
「秘策?」
「——」
「そんな事……」
「これは、俺たちで終わらせなければいけない」
「分かった」
太刀魚守・兄から聞いた「秘策」。それを心に刻みつつ、僕は太刀魚守家を出た。


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