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ネックウォーマン
日時: 2012/02/17 19:51
名前: 茶渋、 ◆TdTxabAvIk (ID: S1XpBh/Z)

茶渋、です。最新遅いです。
※この物語では作者の不十分な実力により訳の分からない描写・言い訳などが出てくるかもしれませんがそこはこのクズが、と思って見逃してあげて下さい。

登場人物

田中(仮)主人公。自分の名前は伏せて話している。ある日、ネックウォーマーを無くしてしまう。

ネックウォーマン 田中(仮)のネックウォーマーを奪い去った張本人。ある予言の動画を送りつける。

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Re: ネックウォーマン ( No.37 )
日時: 2012/04/01 07:58
名前: 茶渋、 ◆xr/5N93ZIY (ID: S1XpBh/Z)

「さて、まずは作戦を立てよう」
「……」
零はこくりとうなずくが、相変わらずの無表情。やりにくい。
「……えと、まず今が三階。つまり此処から出るには入口のドアか、非常階段になる。けど、約100人がうろうろしている廊下を進むのは難しい。入口はだめ」
「うん」
零が反応してくれた事に、さりげなく心の中でガッツポーズを決めながら、僕は話を続ける。よし。
「しかし、非常階段を使ったら校門のように待ち伏せされている可能性もある。そうなると廊下から挟み撃ちにされて積む」
「じゃぁ、このまま夜にまで持ち込む?」
「うーん、それも悪くはないけど時間の問題だろう。窓ガラス割られそうだし、……外側の窓の鉄網から逃げ出そうか?」
「良いよ」
外側の鉄網を伝って、二階、一階へと逃げ出し、体育館裏の塀から逃げ出せる。しかし、いざという時の覚悟も決めておかないと。
「さて、行こうか」
「うん」
僕は慎重に、窓にロープを何度も何度も括り付ける。さすがに「それは巻きすぎでしょ……どれだけ臆病なんだ」と言われたらやめたが。ゆっくり下に降りる。二階に着くと僕はロープを上へと投げる。空虚がキャッチして慎重に降りる。そして順調に零も降りてくる。ようやく二階の空間にたどり着けた。ん? 二階のこの場所って……確か……
「いたぞおぉおぉお!」
「多目的室だったか」
生徒が一気に詰め寄ってくる。……逃げきれないな。
「どうする○○? 逃げきれない」
「二人とも、聞いてくれ。……今からプールに飛び込んで逃げる!」
「そんな、下手したら」
「これしかない!」
僕は二人を正面から見つめる。二人は決意を固めたようだ。僕は手をつなぐ。零の手はびっくりするぐらい冷たかった。不思議とこの瞬間は左手の痛みが全く気にならなかった。何故だか分からないが、こんな危険な状態なのに、今までどちらかと言えば嫌いで邪魔だったはずの「繋がり」が、心地よく思えた。僕はにこりと微笑む。
「さぁ、——行こう!!」
僕たちは、プールに飛び込んだ。
……ありがとう……。

Re: ネックウォーマン ( No.38 )
日時: 2012/04/01 19:50
名前: 茶渋、 ◆xr/5N93ZIY (ID: S1XpBh/Z)

男子生徒の手が僕をかすめた。しかし、その瞬間には僕たちは飛び込んでいた。少しぶわっ、と風を受けた——そして、以前のジェットコースターの五倍はある落下の恐怖! ひゅうううぅっと一気に落ちていく。風がごうごうと耳で暴れている。そして——
ザバンと言う音、それと叩き付けられた衝撃の後には……安堵しかなかった。よかった、どうやら悪い所は打っていないようだ。僕は冷たい水から頭を出す。ぶはっと息を吐き出した。マジで死ぬかと思った。
「大丈夫? 二人とも」
「私は大丈夫。空虚が」
「……大丈夫です」
良かった。誰もけがしていない。ズキズキと左手が痛む。しかし、それでも安堵の方が大きかった。



「良かった……」
とにかく、コンクリートに上がる。びしょ濡れだ。僕は倒れこむ。
「ここから一気に逃げよう!」
空虚は自分の怪我がまったく気にならないように、すっと立ち上がる。どんな精神してるんだ……、と僕は半分尊敬、、半分呆れの目線を向ける。僕は立ち上がり、零に手を貸す。空虚は胸を押さえて苦しそうにしている。
「ほら、お前は無理したらダメだって……」
「違うんだ。これは…いつもの発作」
「発作?」
「たまに肺がとても痛むんだ。鈍い音がして……」
だったらますます急いで病院に行かないと。僕は金網を越えて着地する。左の太ももが開かないか心配だが、とにかく、空虚の体が。そして……雫さん。立派な人だった。
「さて、行くぞ!」
二人が着地した時、体育館裏の大きな木の影から……現れた。
「まさか逃げ延びるとは思わなかったよ。おめでとう」
ぱちぱちと手を叩くそいつ。頭には段ボールを被っている。
「サラマンダー」
零が言った。やはりこいつが……ネックウォーマンのリーダー格か。背は僕より少し高いくらいだ。段ボールはありがちなみかん。
「お前がネックウォーマンのリーダーか」
「ん? 私が? ……ちょっと違うね」
そして影から数人出てくる。一人は紙袋、もう一人は熊の着ぐるみの頭、もう一人は茶色い帽子とマスク、最後の一人は……僕のネックウォーマー。
「○○。紙袋のコードネームはルリビタキ。熊の着ぐるみ頭はロンガー、茶色い帽子はヨシノ、そして……○○のネックウォーマーを着けている奴は、ミラー」
ルリビタキ、ロンガー、ヨシノ、ミラー。
「で、のこのこ現れてどうするつもり? 花見には少し早いんじゃないかい?」
「それもをかし。しかし、私たちは君たちを逃がす訳には」
サラマンダーが言い終わる前に、僕は顔面に蹴りを入れる。サラマンダーはぎりぎり回避したが、ダンボールは一気に破れる。あいつは——
「お前は——」

Re: ネックウォーマン ( No.39 )
日時: 2012/04/01 17:13
名前: 茶渋、 ◆xr/5N93ZIY (ID: S1XpBh/Z)

段ボールが破れて風で飛ばされる。そして現れたのは……よく知った顔。大きな二つのツインテール、そしてキッとした鋭い目。そう、クラスの委員長でこの前僕の家に上り込んできた……
「……真澄」
真澄だった。今までは微妙な男とも女とも分からない声だったが、正体がばれた途端にいつもの声に戻る。僕はいまだに続いている痛みを堪えつつ、キッと睨む。袖にはすでにロック付きロープがある。
その時、影から二人現れた。外野と林本だった。
「何この状況」
「サラマンダーいきなり破られてる……ださっ」
二人は口々に言うと、数人の中に入る。これで敵は六人。勝てる気がしないが、僕は戦闘態勢に入る。「臆病者の敷地」を拡げる。もう近くには誰もいないようだ。僕はタオルを左腕に巻く。右腕にしたかったが傷の心配もあるので、切られた部分を中心に丁寧に巻く。
「いち、にぃ、さん……」
右足で特定のリズムを取る。激しい行動をする時にはかかせない。怒りや緊張などでいつものポテンシャルが上手く引き出せないのを防ぐためだ。とんとん、といつものリズムを取り、身体を上下させる。
「いち、さん、ご、にぃ……」
乗ってきた所で僕は相手を虚ろに、包み込むように見る。あまりに集中してしまうと視点が一つに絞られてしまうので、一歩集中から引く。モニターで全体を見るような感じだ。これは日常生活でも使っているやり方で、見た感じはぼーっとしている時と全く変わらない。よく病んでると言われるが、他から見ればその通りなのだろう。僕に変わりはないが。僕はうぅ〜、と変な声を出し、脱力して一気に肩の力を抜く。
「さて、○○。終わりだよ」
「そうだね、終わりの始まりって所か」
僕は容赦なく蹴りを——入れる前に体育館の角から少し大きな影が飛び出し、サラマンダー、もとい真澄は吹っ飛んでいた。この蹴りは……
「雫さん!」
「何6人でよってたかってけが人囲ってるんだか」
雫さんだった。生きていたのか、と安堵のため息をつこうとした——が、彼は傷だらけだった。腕からは無数の切り傷があり、出血している。顔は殴られたのか痣ができている。背中は大きく切り裂かれ、服が裂けている。足は蹴られて痣が出来ている。外からは見えないが、おそらく腹はかなり傷んでいるだろう。
「生きてたんですか?」
「後影こそ刺されたのに生きてたんだな。俺はさすがにヴォコヴォコにされたが、消火器を使って周りの奴を追っ払った後、外に出たらお前らがプールにダイブしていたから走ってきた。さすがに驚いた」
少し軽く笑いながら説明する姿は——そう、いつもの雫さんで。僕は心の中でありがとう、と皆に言うと、前を見据える。雫さんは箒を持ってきていた。零に渡す。
「仕方ないな、皆、やって」
立ち上がったサラマンダーが命令する。四人が飛び掛かってくる。ん? ルリビタキは立ち止まっている。もしかしてあいつは……
「おらぁっ!」
「おっと」
その時、再び頭に嫌な映像が浮かんだ。
「吹っ飛べ!」
——やはり。ロンガーはとび蹴りをして来た。僕は予測済みだ、と言い放つと、腰に蹴りを入れる。空中でロンガーは横に飛ばされ、壁に衝突する。……僕もそろそろ臆病すぎて自分でも呆れる。今のは「もしこいつがとび蹴りしてきて飛ばされ、そのまま馬乗りにされたり、何度も蹴りを入れられたらどうしよう」と言う最悪のケースの映像を妄想したのだ。「臆病者の敷地」に加え、「臆病者の未来妄想」(チキンフューチャー)とでも名付けようか。正直名前が中二っぽすぎるので、いつか改善しよう。ただの被害妄想じゃないか、と言われればおしまいだが、常に最悪のケースを考えるので、思ったより危険は回避出来たりする。
「臆病者を見くびるな」
僕は「臆病者の未来妄想」を発動しつつ、数発蹴りを入れて……やはりすねを蹴る。ロンガーは悲鳴を上げるが、顔面を蹴るとおとなしくなった。そのままさっきの面西のように腹を踏む。ロンガーはのけぞる。
「さっさと正体さらせ。気が向いたらネットにでもアップするよ」
ロンガーは必死に抵抗するが、僕は着ぐるみを取る。
「お前かよ」
陸上部の田長だった。僕は最後に蹴りを入れ、なんどもきつく手足を縛って首を木につなぐ。芋虫飼ってる人みたいな絵になってしまったが、僕はそのまま放置する。放置プレイ。
「はっ!」
後ろを振り返ると林本が箒の一撃を食らっていた。メガネが割れる。
「お前えぇえ!」
林本はパンチをするが、逆に抜き胴を入れられて跪く。せめてもの供養として、僕は憐みの目を向けた。

Re: ネックウォーマン ( No.40 )
日時: 2012/04/02 07:26
名前: 茶渋、 ◆xr/5N93ZIY (ID: S1XpBh/Z)

「う……」
最後に喉に突きを入れられて林本は倒れる。とにかく早急に手足を縛って、蹴り転がしながら木へ運んで縛り付ける。メガネの破片で頬が切れている。僕は憐みの目を最後に向けたまま、ぼそりと「残念だったね」と言うと、他の方を見る。
他の——空虚!
「うぅ……」
空虚はヨシノと外野にボコボコにされている。僕は走り出す。ヨシノにとび蹴りをするがあっさり回避されて転ぶ。しかし予測済みだ!
「危ないね」
「臆病者の未来妄想」により、回避されることくらい読めている。むしろもっとやばい事を妄想していた。回避されて膝蹴り入れられるとか。僕は一回転してすぐに受け身を取る。——ガン!
「な……」
外野は倒れた。気絶している。え?
「ルリビタキ、裏切ったなぁあ!」
ルリビタキだった。やはりあれは……。紙袋を取る彼女。
「やっぱりメーカーだったか」
メーカーがバットで後頭部を殴っていた。その時、ヨシノがナイフで襲い掛かる。僕はがら空きの背中を蹴る。案の定前のめりに転んで、ヨシノは倒れた。そして間髪入れず、メーカーが背中を殴る。僕は内心すねを打った方が動けなくなるし、良いんじゃないかと思ったが。
「さて」
僕は足を縛って、茶色い帽子とマスクを取る。
「——君か」
咲世。つまり、あの時遊園地で僕は二人のネックウォーマンと行動していたわけか。思い出しただけでテンションが下がる。あの時はメーカーだけを注意していたが……。僕をずっと監視していたわけか。
「離せ!」
「嫌だ。それとも、もう離さないとでも言ってほしいのかい?」
僕は手を縛る。そして先ほどと同じように外野と咲世を木に縛る。残っているのは、えーと、サラマンダー、ミラー。僕は辺りを見る。確か雫さんが……
「大丈夫空虚?」
「無理かも」
空虚は胸を押さえている。まずいな……。
「お前は!!」
その時、雫さんが叫んだ。ミラーを見ている。正体が分かったのか?
「あ? ばれた? まぁお前とはよく遊んだ事だし」
ミラーは平然と語る。ん? この声……どこかで……。
「つまり、この学校を卒業した身のお前が再びネックウォーマンとして今までの事をやっていたのか!」
「うん。サラマンダーはただのリモコン。操っているのは僕さ」
卒業した身? ——まさか……いや、そんなはずは……「ありえない」。あいつは……あいつは、もういないんだ。だって、そんな、嘘だ。僕は心の中で否定するが、どうしても一つの考えが浮かんでしまう。そんな事は……あってほしくない。なのになぜ出てくる!?
「そう。僕だよ」
ミラーは……最後のネックウォーマンは、自分でネックウォーマーを取った。

Re: ネックウォーマン ( No.41 )
日時: 2012/04/02 18:34
名前: 茶渋、 ◆xr/5N93ZIY (ID: S1XpBh/Z)

「……嘘だ」
嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ
「そんな……」
零がネックウォーマンだと知った時よりも大きい衝撃が僕を襲う。頭がくらりとしたが、なんとか堪える。僕は最後のネックウォーマン、ミラーを見る。やはり……間違いない。あいつは……あいつは。







「クソ兄貴……」
「——覚えていてくれたかい? 嬉しいなぁ」
「何で……」
「そうだな。お前には語らないといけない。僕は……この現実世界に飽きたんだよ。まるで作り物のようでさ」
「……」
「そして、思いついたんだよ。「シナリオを作ってしまえば良い」って。だから以前のネックウォーマンに催眠術を教えてもらった。マスターにはさすがに二年かかったが」
「そんな事……」
「それで、お前を尾行して、ネックウォーマーを奪った。この物語の「主人公」はあくまでもお前なんだから、死なないように調整したんだ。さすがに保健室で追い詰められた時は焦ったが」
僕は……揺れていた。過去の兄。そして今の兄。差が激しすぎて、何だか全部が夢みたいで、それでいてどこか現実味がはっきりしていて。頭がズキズキと痛む。多分……面西のバットの攻撃とは無関係。まるで脳がきゅっと締め付けられるような。
「最初の面西は面白かった。ギャラリー多かったし、いかにも「始まり」みたいでさ」
「ふざけるな」
「え?」
「たかがお前の暇つぶしのために、どれだけ死んで、どれだけ傷ついたと思っている? 数えられるか? お前は人殺しだ!!」
「違うね、ネックウォーマンさ。おーおー、お前も変わったねぇ。いつからそんな熱血キャラになったんだ?」
僕は何かに怒っていた。目の前のネックウォーマンでもなく、過去の兄でもなく、自分でもなく。何か分からない衝動に動かされて、いつの間にか走り出していた。「臆病者の未来妄想」も何も発動していないまま。ただ本能のようなものに突き動かされて、僕はとび蹴りをした。
「それもシナリオの一部だよ」
回避され、強烈なパンチで僕は倒れる。頭を踏まれたが、僕はそれを払いのけて立ち上がる。
「お前は……殺す」
殺す。今までそんな事は山ほど思ったが、——初めて本気で人を殺したいと思った。否、こいつは「殺さなければならない」と思った。怒りが渦巻き、だんだんと僕が僕ではなくなっている。
「うぉおおぉお!」
僕は——刺されていた。


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