ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

ネックウォーマン
日時: 2012/02/17 19:51
名前: 茶渋、 ◆TdTxabAvIk (ID: S1XpBh/Z)

茶渋、です。最新遅いです。
※この物語では作者の不十分な実力により訳の分からない描写・言い訳などが出てくるかもしれませんがそこはこのクズが、と思って見逃してあげて下さい。

登場人物

田中(仮)主人公。自分の名前は伏せて話している。ある日、ネックウォーマーを無くしてしまう。

ネックウォーマン 田中(仮)のネックウォーマーを奪い去った張本人。ある予言の動画を送りつける。

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15



Re: ネックウォーマン ( No.12 )
日時: 2012/02/12 22:15
名前: 茶渋、 ◆TdTxabAvIk (ID: S1XpBh/Z)

次の日、何かが変わっていた。大してハッキリした変化では無いが、それでも何かが変わった。まず、何かよそよそしい。僕が相手を見ると確実に目をそらす。そして、相手から話しかけるという事が無くなった。僕が話しかけるとよそよそしく「あ……うん。じゃぁ」と言って何処かへ言ってしまう。変化が無いのは後影。あいつは絶対何かを知っている……。他の奴とは違う異質なものを感じる。あまり口では表現出来ないが……何か、何かだ。
「○○」
「——!」
話しかけてきたのはクラス委員の真澄 未練(ますみ みれん)。長い髪の毛をツインテールにしているとても綺麗な女の子だ。
「貴方は何故ネックウォーマンって言ったの?」
「だからメールが来たんだ。「私はネックウォーマンだ」ってね」
「そう」
ふぅ、とため息をつくと、真澄は自分の机に座った。ほかに二人の女子が話しかけている。必殺、臆病イヤー!
(未練、どうするの? ○○どうやら本当っぽいよ)
(分かってる。でも、少し様子を見た方がいいと思うの)
(そう……。とにかく、あの子の様子も見ておかないと)
……あの子の様子‘も’? も、とはどういう事だ? も、とはつまり……僕以外にもう一人「様子を見ておくべき誰か」がいると言うことだ。そんな人物は……後影。あいつは要注意だ。今日にでも後を付けてみるか……。



チャイムが鳴る。
「はい、終了。予習は三十五ページからです」
この学校では小学校のように先生一人が全てを教える事になっている。面倒くさい国語が終わり、僕は大きすぎる欠伸をし、さっきまでの授業を振り返る。まず、音読を列順でするのではなく、手を挙げた者だけを選ぶ、と言うようなやり方に変わっていた。あ、僕は一回も当たらなかったよ? 何故って? さぁ。
クラスは再び騒がしくなる。こっそり位元と鈴村の会話でも聞くか……。僕は耳を澄ます。必殺、臆病イヤー!
(明後日バレンタインだな)
(あぁ。俺は婆ちゃんから板チョコ十枚毎年貰ってる。勿論一日で食らいつくすが)
(食い過ぎだろ〜)
(そうでもないぜ)
……どうでもいい会話だった。鈴村の言動は一つも変わっていない。僕が見た鈴村は幻影だったのだろうか……? しかし、あれは確かに鈴村だった。光を無くした目……。あの目が気になる。
再びチャイムが鳴る。



「さて、今日はおしまい。さようなら」
やっと学校の授業全てが終わった。僕の昼食シーンや他の教科は面倒くさいので省略します。僕はやることがあるんで。たった今から悟られないように後影を尾行します。
「……アイツの家どこだっけ」
校舎から出た後影をさりげなく尾行し、校門を抜けて細い道を抜けた。後影は欠伸をすると、ゆっくりこっちをむく。まずい!
「誰?」
後影はゆっくりこっちへ向かってくる。……まずい!

Re: ネックウォーマン ( No.13 )
日時: 2012/02/14 19:58
名前: 茶渋、 ◆TdTxabAvIk (ID: S1XpBh/Z)

「待ってて、コーヒー、淹れてくるから」
「あ……どうも……」
さて、僕は今小さな喫茶店にいる。何故って? それは……
(あ、○○くん。何で此処にいるの?)
(え、いや君の家が何処かなと思って)
(じゃぁ、家に来て良いよ)
……と言うわけです。はい。失敗してしまいました。後影の家はどうやら喫茶店のようだ。お父さんらしき人が皿を磨いている。数分経つと、後影は二つカップに入れたコーヒーを持ってきた。
「砂糖、いるんだったら入れてね」
「あ……どうも……」
店内はログハウスに似せた落ち着いた雰囲気の店だ。何処かからもの悲しい音楽が流れてくる。こういう店は嫌いじゃないよ。僕は砂糖を五つ入れ、ごくりと飲む。深い味わいと香ばしさがとても美味しいです。
「砂糖……そんなに入れるんだ。甘党?」
「うん」
「なら、ちょっと待ってて」
後影はふらりと消えると……うっひょおぉおおおぉう!
「モンブラン、食べ」
「頂きます」
「早っ」
ごめん。僕はモンブランには目がないんだ。僕はモンブランを口に入れる。甘い栗の味わいが広がる。美味い……美味い!! 僕は五秒で全てを平らげてしまった。
「本当に好きなんだね」
「うん。まずプリンがベースとなってるモンブランがあるけどそこまで良いとは思わないんだよね。いやマズイとは言わない。しかし先に濃厚な栗の味わいが口に触れるからプリンの味わいがぼけてしまうんだよ。そうなるとモンブランとしては良いかも知れないがプリンをベースにしたモンブランって言うのでは最悪なんだよね。いや口当たりの良さとか良い点はいっぱいあるんだけど、それでも僕はあまり良いとは思わないなうん」
「……そう」
さて、言いたい事は全て言い終わった。本題に入ろう。
「後影……」
「空虚で良いよ。何?」
「ネックウォーマンって知ってる?」
「……」
沈黙。
「……そう、やっぱり……」
「知ってるの……?」
「三人目の厄災者は君か」
「厄災者?」
「ついてきて……ゆっくり話をしよう」
後影……いや空虚は階段を上る。僕はついていく。
「……」
ドアが二つある。一つを古そうな鍵で開ける。



「座って。何かいる?」
「いえ別に」
空虚の部屋はソファと机、それに布団と勉強机、テレビがある。ねじが机に大量にある。僕はソファに座ると、背筋を伸ばして質問する。
「質問、そっちからして良いよ」
「うん。ネックウォーマンって誰なの?」
「あぁ、まずは最初から話をするか……」
「行くよ」
「うん」


「始まりは、この中学校の六期生から。ある二年四組の人が、ネックウォーマーを被って「私はネックウォーマンだっ!」って言ったんだ。すると、以外と流行ってしまって、みんながネックウォーマンを真似したんだって。そしたらみんなが我が者顔で使ってしまうもんだからそのネックウォーマンを作った人が……」
「ヨゲンノドウガ、をみんなに送ったんだって。君も見たでしょ?」
「うん」
「そして、ある生徒を自殺させたんだって」
「——!」
「そう、それがあのトイレ。ネックウォーマンは強力な催眠術を習得していたらしいんだ。ま、そこまですごいものじゃないんだよ。でも、「一定の音を聞かせることであるワンパターンの事をさせる」くらいの事なら出来るんだ。そして、そのヨゲンノドウガがずっと送られてくるようになって、生徒は恐怖に怯えたんだって。当たり前だよね」
「……」
「そして、議論の末に生徒はある結論を出したんだ」
「何?」

「‘厄災者’を決め、その者のせいでネックウォーマンが人を殺すんだ、という集団催眠。つまり、恐怖から平常心を保つため、誰かを……簡単にいえば「八つ当たりの的」みたいなのにするんだ。近くに居ると殺される、お前は近くによるなっ、てね」
「——いじめじゃないか」
「そう、思うよね。でも彼らにとってはそれくらいしか思い浮かばないんだ。結果、それがずっと今まで続いて、「二代目ネックウォーマン」、「三代目ネックウォーマン」っていう風に生きながらえて居るんだ。そのいじめは。初代ネックウォーマンが二代目となる一年生を選び、催眠術の方法、使い方、警察にばれないようにするアリバイなどを徹底的に教え込むんだ。するとどうなるか。今までずっと怯えていた人が「今度は自分の番だ」って思う。ようは鬼になるんだよ」
「鬼……」
「僕達のクラスにもネックウォーマンがいる。どうやら「四組」の誰かだけがネックウォーマンになるしきたりらしい」
「どうして言わないんだろう?」
「それは君も同じでしょ。下手に告げ口すると命を奪われる。それに彼はただ「催眠にかけただけ」。直接手を下しては居ないんだ」
「でも、眉原や低橋の時は」
「あれはエレベーターの点検人を暗示にかけたんだよ。そして……」

「ネックウォーマンは‘複数犯’」
「——」
「何人かで成り立っている。おそらく低橋さんの時は適当な生徒「自分はネックウォーマンだ」と言う暗示にかけて殺させたんだろう。本当に催眠術を熟知しているのは……分かっているだけで二人」
「……誰なの?」
「それは……」





「外野、林本」

Re: ネックウォーマン ( No.14 )
日時: 2012/02/15 20:24
名前: 茶渋、 ◆TdTxabAvIk (ID: S1XpBh/Z)

外野 羽毛(そとの うもう)に林本 丈夫(りんもと たふ)……。二人とも特に目立ったことはしていない。二人とも集団グループで話している、よくいてそうな奴だ。外野は強いくせげで背が低い。テニス部だったような気がする。林本は丈夫という名前の割にはあまり身体が丈夫ではなく、よく風邪をこじらせて学校を休んでいる。卓球部でメガネをかけている。イケメンで背が高い。羨ましい。しかし……
「三人目、っていうのはどういうこと?」
「あぁ、一人目は僕、二人目が……」
「太刀魚守さん。君は二学期に転校してきたからあまり事情をしらないのも無理はないね。一応、彼女は同じマンションだって聞いたけど」
太刀魚守 零(たちうおもり れい)。あの人も異質、というよりレベルが違うような人だ。常にどこか覚めている、というか……なんというか。とにかく他の人とは纏っている空気そのものが違うというか。変、というより……気になる人だ。特徴的な名前だし。
「さて、日が沈まないうちに今日はもう帰った方がいいよ。帰り、気をつけて」
日が暮れかけている。紅い夕日が奥の窓で静かに輝いている。
「うん。今日はありがとう」
僕は、喫茶「安らぎの歌」を出た。眩しいオレンジ色が僕の目をくらませる。僕は歩き出した。



「ふぅ」
今日は色々と大収穫だ。メモメモ。
【◎林本 ◎外野 ?面西 ?鈴村 =後影 =太刀魚守】
◎はネックウォーマン、?は不明、=は僕と同類の事だ。鈴村はおそらく洗脳されたんだろう。仮のネックウォーマンとして……。
「お腹空いたなぁ。飢えた飢えた」
僕は台所に入り、冷蔵庫を開ける。とにかく、今日はアジとさつま汁にでもしよう……。え? 味噌汁じゃないのかって? いや隣のおばさんからおすそわけしてもらったサツマイモが残っていたからさ。うん。
土鍋に味噌をといてだしを加え、サツマイモ、大根、蓮根を入れる。そのまま弱火に欠ける。アジは塩をふっておいておく。
「さて、どうしたもんかね〜」
僕は台所から出てぽすっ、とソファに座る。その時、
ピーンポーン、と音がする。誰だ……?
「ん、奇遇? 唐突? それとも破滅?」
「……」
自分でも訳の分からない言葉を発してしまった。ドアを開けるとそこにいたのは……
「いやごめんなさい太刀魚守さん」
「他人行儀な言い方は相変わらずね。○○」
太刀魚守。何故わざわざ五階まで。
「……まぁ良いか。で、全部聞いたんでしょ?」
「まぁ……」
「家、入っていい?」
「いいけど」



「で、何で急に」
「別に」
会話が続かない。何て息苦しさ……。
「あの」
「しっ……」
「——」
唇に人差し指をあてられる。すいませんしこうがふりいずしそうです
「大丈夫」
「あの……なにがですか」
どんどんかおがあかくなっていっているのがわかりますいやまじでおおばあひいとしそうなんですが
「突然人が死んで、その犯人教えられたって怖いだけだもんね。気をつけて。じゃ……」
たちうおもりはすっとたちあがると「じゃあね」とことばをのこしてかえっていった。やばいもうげんかい……

——オーバーヒート——

Re: ネックウォーマン ( No.15 )
日時: 2012/02/17 20:50
名前: 茶渋、 ◆TdTxabAvIk (ID: S1XpBh/Z)

真っ暗な部屋。大量の本で足場が無い。本のプールのよう。
彼は笑う。
彼女は本を読む。
彼は眠る……
かたり、と落ちる「それ」。
そして日没は訪れる。



「ん」
目が覚めた。どうやら、……ん? どうだったっけ? 確か
「ぐふうぅううう!」
とりあえず壁に頭突きをぶちかまして平常心を保つ。
「あの人も不器用、なのかな。……」
太刀魚守さんはどうやら僕を心配して(勝手に)家まで来てくれたようだ。その後眠ってしまったようだ。いやっ別に恥ずかしくて気絶したわけじゃねーし! そこまで無垢じゃないし! ただ最近の疲れで寝ちゃっただけだし! 本当だし! いやマジで
「あっ忘れてた。さつま汁」
台所から漂う良い匂いに僕は立ち上がる。案の定さつま汁はぐつぐつ煮えていた。火を消す。そのまま冷蔵庫を開け、塩をふっておいたアジを取り出し、グリルにかける。ラップをとって保存しておいたごはんを電子レンジに入れる。手抜きとかは知りません。
「……」
テレビをぼんやりと眺める。その数分後、香ばしい香りが鼻をくすぐる。アジ焼けたかな。お腹減った。飢えた飢えた。
「いただきまーす」
そこからは適当にすます。お腹空きすぎて五分で食べた。
「ごちそうさま」
僕は食べ終わった食器を洗う。面倒くさいが仕方がない。
そこで、ベルがなる。今日はよく鳴る日だ。
「はい、——!」
そして、突然それは接近してきた。そう。林本 丈夫。
「よう○○」
「……何しに来たんですか」
「まぁまぁ、今から話せる?」
「ごめん。今トイレ行きたいんで」
一方的にドアを閉める。ついでに鍵とチェーンもかける。こいつと話すのは危険だ。なんと言ってもネックウォーマンだし。僕は少し躊躇したが、覗き穴でそっと覗いてみる。
「——!!」
背筋が凍った。奴は覗き穴をギロリとのぞき込んでいる。
(何なんだ、こいつは!)
僕は怖くなってリビングへ行く。
「お風呂入って寝よう」
僕は家の前に不気味な「あいつ」がいるのを想像すると、とてもビビリながらお風呂に入った。さっさと髪を洗い、身体をささっと洗う。そして、湯船に入ってすぐに上がる。なんだかんだで三十分かかってしまった。僕は布団を敷いてさっさと電気を消す。今日は早く寝よう……。
おやすみ。



その日はずっと嫌な雨が降り続いていた。学校は今日は休み。僕は窓をぼんやりと眺めながら、布団の中でごろごろしている。別に一人が嫌いなわけではない。むしろ、好きな方だ。「一人は寂しい」と言う人がいるが、寂しさ、と言うものは毛嫌いするより受け入れてしまった方がとても気が楽になる。よくその事について「変わってるね」と言われるが、まぁ大して気にしていない。だって僕だし。
「——あれは」
……面西。雨の中、傘を差してきょろきょろしている。この何日かは風邪をこじらせて休んでいた。僕は布団から芋虫のごとくはいだし、適当な長袖の服とジャンパーを着る。あいつに何か聞いてみよう。間違いなく何か隠している。
僕はドアを閉める。一気に階段をかけ下る。
「偶然ね。また会うなんて」
「……太刀魚守さん。もしかして……」
彼女はうなずく。やはり同じ考えか。あいつはマンションの下で……!? 大谷先生。なぜあの(変態)人が……? もしかして何か……
ピロロロッ、ピロロロッ。メール。まさか。タイトルは「ヨゲンノドウガ」。——来た!
【やぁ、もう名前は覚えてくれたかな? 私の名前はネックウォーマン。予言の主のネックウォーマーさ!】
「太刀魚守さん」
「うん」
【さて、今日は雨だね。しかーし、今日は】
【大谷 恵が死ぬ。死因は事故死】
「——何!?」
僕と太刀魚守は同時に走り出していた。二人が見えた。
「おい、ヅラ——」
全てがフィクションのように思えた。
キキー、と鳴り響く車の雄叫び。
声を上げるまもなく大谷先生は吹っ飛ぶ。
スローモーションのように宙に舞う。
飛び散る血しぶき。
落ちる欠けたメガネ。
——ドサリ。

Re: ネックウォーマン ( No.16 )
日時: 2012/02/18 20:24
名前: 茶渋、 ◆TdTxabAvIk (ID: S1XpBh/Z)

飛び散った血しぶきをもろにあびた面西は……真っ赤に染まった顔を真っ青にして、へっぴり腰をさらにへっぴりさせたような歩き方で家へと帰った。僕は気が動転しながらも、救急車を呼び、軽く説明を済ませた。どうやら、運転手の男性は突然とても眠くなってしまったようだ。そして、ふらっ、となったと思ったら目の前が真っ暗になり……目が覚めると遺体が横たわっていた、という事だ。
「どうぞ」
「……あ、どうも」
僕達は今「安らぎの歌」に居る。空虚の父、後影 空洞(のちかげ くうどう)はサービスでおいしいカフェオレを出してくれた。ココアよりカフェオレの方が僕は好きです。はい。僕はごくりと飲むと、辺りを見回す。左端の席はお気に入り。ちょっと他の机より離れていて、壁があるのでゆっくり話などが出来る。
「……大丈夫?」
「——え」
「ほら、目の前で人が死んだんだし、その」
「……くすっ」
太刀魚守はくすりと笑うと、心なしかきらめいている大きな目をこちらに向けた。僕はどきっとするやらびっくりするやらで訳の分からない心境になってしまった。我ながらひどく滑稽に見えるだろうと思う。
「私は大丈夫。あなたこそ……」
「あぁ、僕はすでに低橋さん、面西(兄)などで耐性ついたから」
「そう」
彼女はコーヒー(ブラック)を飲む。よくあんな苦い奴飲めるよ……。そして階段から下りてくる後影。
「やぁ、先生が死んじゃったって?」
「うん。どうして知ってるの?」
「面西君が言ってた」
……あいつ、もう人に? どんな神経しているんだ。
「で、おさらいおさらい」
「……」
何も喋らない太刀魚守。気まずそうに切り出す空虚。
「ふぅ。えっと、まずネックウォーマンに殺されちゃった人たち。一人目は面西君のお兄ちゃん。これはおそらく面西君が関係している。彼は怪しいからね」
「面西の手助けなしで面西さんを暗示にかけるのは難しいね」
口を開く太刀魚守。
「二人目は眉原君。おそらく管理人や点検係の人を暗示にかけたんだろうけど、管理人さんは行方不明。どうなった事やら」
「……」
「三人目は低橋さん。おそらく誰かを操って自分をネックウォーマンだと思いこませて燃やしたんだろう。しかし、君の証言では燃えやすい液体をかけられたのにもかかわらず、辺りの火は消えかけていた。調査をする必要がありそう」
「うん」
僕は軽く返事をする。
「四人目は大谷先生。車にひかれて即死」
「……」
「これくらいかな。クラスで三人の生徒が死んだから残りは二十五人。はたしてどれくらい生き残るのか……」
僕は疑問に思ったことを考えずにそのまま口に出す。
「うーん、ネックウォーマンが外野と林本なら、後何人いるんだろう? 少なくとも後三人はいると思うけど」
「あぁ、そうかもね。……いまから面西君を訪ねてみようか」
「えっ」
「え」
重なる透き通った声と驚いた声。
「善は急げっていうじゃないか」
「善ではないと思うけど」
冷静すぎる太刀魚守のツッコミにあはは、と軽く笑い飛ばす空虚。僕は冷めかけていたカフェオレを一気飲みする。
「ありがとうございました」
「又どうぞ」
にこりと紳士的に笑う空洞さん。こういう人は嫌いじゃない。



「面西君」
「何?」
太刀魚守の質問に冷静をキープしたまま返事する面西。
「単刀直入に言う。ネックウォーマンと何か関係あるでしょ」
「は? 何で俺? 別に俺は」
「じゃぁ、何でお兄さんはわざわざプールで自殺したの?」
「死んだ人のことなんて分からないよ」
「引きこもりだって聞いたけど、外に出るのなら気づかない?」
「いや、俺学校行ってたし……」
「その前にプールで見つかったよね」
「っ、ちがい、違う! 俺はただ」
「 た だ ?」
三人の声が重なる。かなりの圧力。
「違う、違う、違う違う違う違う違う違うちがうちがう」
「俺だて、やりたっ、た、やりたく無かったんだ」
僕達は目を合わせる。
「とにかく、じっくり話を聞くか……」
「俺は、ただあいつに殺されたくなくて」
臆病者と簡単には批判できない。僕だってその立場ならどうしていたか。おそらく面西と同じ事をしていただろう。何やったか知らないけど。
「あいつ、って」
太刀魚守の少し優しさを帯びた声が面西に向けられる。メガネの淵が涙で濡れている。
そして、口を開く。まるで溜まった闇をはき出すように。



「水口だよぉ!!」
——水口明快。


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15



この掲示板は過去ログ化されています。