ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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ネックウォーマン
日時: 2012/02/17 19:51
名前: 茶渋、 ◆TdTxabAvIk (ID: S1XpBh/Z)

茶渋、です。最新遅いです。
※この物語では作者の不十分な実力により訳の分からない描写・言い訳などが出てくるかもしれませんがそこはこのクズが、と思って見逃してあげて下さい。

登場人物

田中(仮)主人公。自分の名前は伏せて話している。ある日、ネックウォーマーを無くしてしまう。

ネックウォーマン 田中(仮)のネックウォーマーを奪い去った張本人。ある予言の動画を送りつける。

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Re: ネックウォーマン ( No.42 )
日時: 2012/04/03 12:39
名前: 茶渋、 ◆xr/5N93ZIY (ID: S1XpBh/Z)

「それ」は、服を突き破り、僕の肌を貫通し——中に侵入した。一瞬とても冷たかった。しかし、それは次に熱に変わり、そして——強烈な痛みへと変わった。クソ兄貴はナイフをペン回しするようにちらつかせ、僕を蹴り飛ばす。

ドクン。
「安心しろ。これもシナリオの一部さ。主人公は死んではいけないし」
ドクン。
「さて、どうしよっかなー」
ドクン。

「……ハァ、ハァ!!」
僕は立ち上がろうとする、が、どさりと倒れてしまった。腹が焼けるように痛い。熱い鉄の鉛を入れられたような痛み。血の流れる音がする。心臓が血を必死に送っている。僕は必死にタオルで止血する。
「お、そのタオル僕のじゃん。使ってなかったなー」
クソ兄貴はそういうと、僕からタオルを奪い取る。
「ま、いらないんだけどー」
ぽぃっと捨て、それを踏む。
「お前は……」
その時、サラマンダーを気絶させた雫さんが走ってくる。
「おっと、こっちには来ないでね?」
僕の首筋にナイフを当てる。容赦なく当ててくる。隙間は一ミリも開いていない。僕の意識がだんだん朦朧とする……
「……何で……兄……」
おぼろげな記憶の中、クソ兄貴が倒れているのが見えた。



「ろ……起きろ」
「ん……」
雫さんに起こされ、僕は目覚めた。もう夕暮れになっている。ずいぶん寝ていたようだ。うっ! 僕は腹と左手、太ももの強烈な痛みで目が覚める。さっき倒れた場所だろう。しかし、空虚とネックウォーマン達がいない。そして、クソ兄貴……いや、ネックウォーマンのミラーも。
「どうなったんですか……?」
「あの後、後ろから面西が出てきて、ミラーを刺した」
「面西か」
「そして、ミラーは逃亡。どこに行ったかは不明。後影は救急車、ネックウォーマン全員は警察に引き渡した」
面西か。相変わらず後ろから攻撃するのが得意な奴だ。……誰がどうやってあのロープをほどいたのか不明だが。雫さんの話によると、あの後僕も刺そうとしたので、蹴り飛ばして警察送りにしたという。僕は心の中で面西を憐れんだ。
「で、お前はまだ救急車に連れて行く前に、やる事があると思ってな」
「秘策……ですか」
「ああ。俺がやる……所で、奴はどこにいったかわかるか?」
「はい」
おそらく、ミラーのいる場所。小さなころから考え事をするときはかならずそこにいた。大きな川の前の公園。ベンチと黄色いブランコがついているだけの簡単なものだ。川に落ちると危険なので、あまり人は寄り付かない。事実昔子供が落下している。
「終わらせよう」
「——はい」



「やぁ、よく見つけたね」
「……」
夕日は落ちる寸前だ。紅蓮の大いなる輝きを出している。
「さて、このシナリオは終わりだ。ネックウォーマンは全員敗北、主人公は瀕死の重傷を負いながらも生きてラスボスにたどり着く。いやぁ面白いね」
「お前は……何故そうなんだ?」
「ん?」
「なぜ、お前はそんな事しか思えないんだ? シナリオ? 違うね」
「僕が考えたシナリオだよ。これは」
「これは——現実だ!!」
僕は大きな声を出して言った。これは今までの死者、そしてこれからの仲間の事を考えながら言った一言だった。
「現実、ねぇ」
はぁ、とため息をつくと、ミラーは黒いフードを取る。その姿は、僕とよく似ていた。
「しかし、結局お前と僕は違ったね。シナリオの終わりは僕だよ」
「え?」
「楽しかったよ。じゃあな——○○」
あまりにも考えていない事だった。
ミラーは、僕に背を向ける。血で赤く染まっていた。
そして、ゆっくりと歩き出す。
「——」
「え……」
そして、最高の笑顔を僕たちに向けた。その笑顔はどこか憂いさを秘めていて。
そして——




彼は川へと飛び込んだ。

Re: ネックウォーマン ( No.43 )
日時: 2012/04/03 18:55
名前: 茶渋、 ◆xr/5N93ZIY (ID: S1XpBh/Z)

「え……」
僕たちは、あまりにも一瞬の出来事に……しばらく立ち尽くしていた。残ったのは僕のネックウォーマー。僕はそれを大事に拾う。すっと下を見ると、川は勢いを増して流れていた。そして、彼の姿は無かった。

(——お前は、仲間がいる。だから……この先大丈夫だ)

いつの間にか、僕の目には熱いものがこみあげていた。それは、まるでマグマのようで。それは、まるで川のようで。その……涙は僕の目からあふれ出ていた。僕は嗚咽する。
「……みんないる」
零は手を握る。それだけで十分だった。
「うぅ……うあぁぁ——」
僕はしばらくの間、彼女の胸の中で泣いていた。



そして次の日。僕は色々と忙しかった。警察の人には全てを話した。「全校生徒が殺そうとしてきた」と言う話はなんと二年全員が「違う」と答えたのだから我ながら呆れる。そして、ネックウォーマンの全員は……想像にお任せする。ついでに、面西は……なんと、行方不明になってしまった。途中でトイレに行くと言って、ガラスを割って逃走したらしい。まぁ、すぐに捕まるだろう。
 僕は例の「柳薔薇病院」で頭の傷、腹を見てもらった。頭の傷は大丈夫だが、驚くことに腹の刺された部分は臓器や骨を避けて刺されていたので大丈夫だった。おそらく狙ってやったのだろう。安静にして急激な運動さえしなければ、すぐに回復するだろう、と言われた。雫さんはかなりの傷で、特に背中の裂かれた部分がかなり深かったそうだ。しばらくは入院生活らしい。零は大した傷はない。良かった。そして、空虚は奇跡的に骨や臓器を一切傷つけてはいなかった。多分あいつはそんな事は考えずに刺したんだろう。だが、太ももはかなり深く、しばらくは入院だそうだ。ついでに僕は断ったが。しかし、元からの病気はなんと肺に穴が開いてパンクのような状態になるというものだった。しかし、手術をして大成功、太ももの状態しだいで一週間後には退院できるそうだ。僕と零は空虚にお見舞いに行った。
「しかし、これで終わりだね」
「何が?」
空虚はベッドの上で聞く。
「ネックウォーマンの連鎖が」
「そうだね……でも」
でも、と言いかけて空虚は言葉を閉じ込める。僕も言いたいことは分かっている。「すでに優秀な素質を持つ者に催眠を教えているのでは」と言う考えが浮かんだが、僕達は言わずに笑っていた。
数十分後、僕達は空虚の病室を出た。その時、警察の人と見なれない医師が現れた。話によると、兄を診ていた医師だそうだ。僕は説明する。
「やはり……彼は……」
「何か知っているんですか?」
「ああ。最後に診た時は起君は重度の心臓病で、残り二か月も持たない状態だった」
「——え……」
「三年前、残り三年と三か月ほどしか生きれないと伝えると、最後に自分が死んで弟に悲しんでほしくない。死ぬなら最悪の兄になって死んでも悲しまないようにしてやりたい、と」
「だから……あの時……」
「彼は覚悟の上だったのだ」
そして医師は去っていく。僕は……もう泣かないと決めたはずなのに、再び熱い涙がこぼれてしまった。
「大丈夫」
零が手をつなぐ。僕もしっかりと握り返す。
僕は、「繋がり」を嬉しく思いながら、零と一緒に帰った。

Re: ネックウォーマン ( No.44 )
日時: 2012/04/04 11:13
名前: 茶渋、 ◆xr/5N93ZIY (ID: S1XpBh/Z)

さて、この一件で犠牲になった者を紹介しよう。

面西 介佑 最初の犠牲者。有紀の助けもあって暗示にかかり、服に煉瓦を大量に入れてプールで死亡。

眉原 圭典 帰る時にエレベーターに乗り、落下して頭を打って死亡。

低橋 アクア 手足を縛られ、火をつけられてトイレで死亡。

大谷 恵 面西と何かを話そうとしていたが、自動車に轢かれて死亡。

面西 裕次郎 面西の代わりに暗示をかけられ、森で自殺。

○○・兄 面西の奇襲によって背中を刺され、川に落下して自殺。

……と、こんな所だ。ご冥福をお祈りします……。
「しかし、次のクラスは一緒だったらいいね」
「……」
零の相変わらずの無表情に凹む空虚。頷いてくれているんだけどな。
「さて、もう春休みも終わりか」
一週間後、僕たちは空虚が無事に退院したこともあり、僕の家でパーティーを開いていた。僕はホットケーキを大量に焼いた。
「…良かったの?」
小さな口でアツアツのホットケーキを頬張りながら零が聞く。
「別にー」
僕は軽く返す。言いたいことは分かっている。空虚だけが状況を理解できずにきょろきょろしている。いずれは彼に話してあげようと思う。
「あ、メイプルシロップ取って……熱っ!」
空虚は一人でアツアツのホットケーキに文句を言っている。それを見て僕たちは笑った。ようやく手に入れた束の間の「平和」。もしこの学校にネックウォーマンがいなければ、この二人とも近い関係にはなれなかったわけだし。僕は今までのネックウォーマンにこっそり感謝した。そうだ、言い忘れていたがメーカー、零は最後に「被害者」となって殺されかけたので、どうやら他のネックウォーマン達とは違って軽い処分で済んだそうだ。良いのかそれで。
「もう三年生ですね」
僕は誰ともなしにつぶやく。
「……でも、三人は一緒。ね?」
零が微笑みながら言う。
「うん」
空虚はようやく口の熱さが引いたようだ。僕はメイプルシロップを渡してやる。
「さぁ、次のクラスでも頑張ろう」
僕たちは頷きあった。














「——そうそう、僕の兄の名前は土枕 起(つちまくら おきる)」

そして——僕の名前は、

「——土枕 眠だよ」

ネックウォーマン 第一章 見えない名前編
—完—

Re: ネックウォーマン ( No.45 )
日時: 2012/04/04 11:21
名前: 茶渋、 ◆xr/5N93ZIY (ID: S1XpBh/Z)

ようやく一章が終わった。……ふぅ。
次は眠達の三年生の話を書きたいと思います。

Re: ネックウォーマン ( No.46 )
日時: 2012/04/04 13:11
名前: 茶渋、 ◆xr/5N93ZIY (ID: S1XpBh/Z)

『厄災者』の紹介

土枕 眠(つちまくら ねむる)十四歳。今年で三年生になる。性格は臆病・眠たがり・面倒くさがり。髪は黒で猫背。
趣味は寝る事・食べる事。よくベランダのアロエに水をやっている。
好きな食べ物はモンブラン・きゅうり。嫌いな食べ物は色々。
自称スキル的な物が
「臆病者の敷地」効果…耳に神経を集中して周りの音を拾う。耳がいい人なら誰でもできる。周りがうるさいと使用不可。
「臆病者の未来妄想」効果…常に最悪のケースだけを考えて行動する。よって危険はある程度回避できる。鬱屈した精神を持っていて臆病者なら誰でもできる。例…上のベランダの植木鉢が風で落下して頭に直撃して死ぬのではないか、など。

後影 空虚(のちかげ くうきょ)十四歳。眠と同期。性格は無邪気。髪が茶色。背がかなり小柄。かわいい顔で本気で女装したら誰も気づかないレベル。
趣味が縁側でまったりする事。眠と馬が合うのはこのせいかもしれない。好きな食べ物が抹茶、和菓子。本人は時代劇などは嫌いらしい。
嫌いな食べ物が納豆。匂いを嗅ぐだけで逃げる。
スキル的な物はない。なんだかんだ言って厄災者の中で一番戦闘が苦手なのかもしれない。

太刀魚守 零(たちうおもり れい)上に同じ。性格は冷静。髪は黒色。さほど長くはない。背は眠よりぎりぎり小さい。常に無表情。反応こそしてくれるが表情が全く分からないので空虚はいつも凹んでいる。趣味はスイーツ巡り(無論一人で)。いつかは三人で行く予定。
好きな食べ物はホットケーキ。ホカホカアツアツの物が大好き。
嫌いな食べ物はドレッシング・マヨネーズ。
剣道をやっている。普通に厄災者の中で一番強い。かわいいぬいぐるみが大好きだが、この事を誰かにしれたら殺すつもりでいる。


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