ダーク・ファンタジー小説

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

(自由参加小説)異世界ぐらしはじめます(祝!閲覧1000!)
日時: 2016/11/01 22:50
名前: ミヤビ (ID: WVvT30No)

(紹介前に総合掲示板の雑談掲示板に「異世界ぐらしはじめます 雑談所」を設けました!お気軽にお聞き下さいませ♪Twitterにて基本活動しておりますので急ぎでしたらTwitterまで!)

はじめましてミヤビと言います。

異世界ぐらしでは中世チックなフィールドを好きなように駆け回り。
共闘するもよし自分で国をつくるもよし。
自分ならこうすると言ったことを書いちゃって下さい。

これはリレー小説形式で。
参加型の小説です。全てが正規ですべてが外伝であるこの世界にようこそ!

では下記に簡単な説明を乗せておこう。

また、【あくまで楽しむことを前提に】書いて下さい。
マナーを守り規則正しいもう一人の自分を小説で動かしましょう!

【異世界ぐらしはじめます】設定資料

世界観設定

【属性】

〔英雄〕基本人類のクラス、技術スキル高 基本値低
〔人外〕魔物相当のクラス、特殊スキル高 致命的な弱点有
〔自然〕精霊とかのクラス、保持スキル多 異常体勢低

【能力、職業】

能力

先天性、後天性のオリジナルスキル。

ストックは2まで。
強力な能力であればデメリットも付属させる。


能力(時を3秒止める)デメリット(次発動まで3時間チャージ)


職業(有利→不利)

〔英雄〕騎士→弓兵→魔術師→
〔人外〕死兵→呪士→死霊使→〔自然〕巨神→獣人→エルフ→

職業はオリジナルスキルの関係上でオリジナルの職業の作成可


能力(竜属性の召喚)職業(竜騎士『騎士』)

【武器】

武器や技術は中世17世紀ちょっと先程度、よくて蒸気機関までが好ましい。
(無論新型でボルトアクションのライフルから有線電気機材は可、
ただ量産する技術、発展途上の技術に留める)

【世界観】

世界が1度、人類文明が滅び再び現文明まで築き上げて17世紀。
過去の遺跡・遺産から可能な限り再現可能なものを生産しまた1から作り上げた物を使って
レンガ造りの建物や紙の作成。現歴史までなかった生命に宿る超能力『魔導力』によって可動する
乗り物や工具を作り。世界各地には『神殿』や『城都市』といった文化が確立されていった。

世界にはいくつかの大陸と無数の島があり、
上陸してすぐ山道を登ってはハルピュイアやマンドラゴラと遭遇する島もあれば
果てしない雪の平原で巨大な生物や奇妙な知的生命体に襲われる所も、

この世界で生き残ることは出来るか・・・


(参加者の視点)
あなたは普通の現実世界では人気ゲーム「ワールドレコード」をプレイしていたゲーマーで、
特殊ソフト(3DCG作成ソフト等)を使えば、自分好みの見た目をつくれたりする狩猟を目的にした
一大娯楽として確立されたゲームで早7年。
発信元の大企業『ノア』現社長『イズミ』はユーザーの期待に応えるべく。新技術の投入によって現ワールドレコードは
全く新しいゲームに生まれ変わると宣言。

同時刻、新デバイス『スフィア』と呼ばれる掌サイズのマウスの形のした機械(子機)を発売。
これと連動することで新感覚の体験ができるとのこと。

それを使うと一瞬白い閃光に包まれたと思ったら。
なんと自身が作成したキャラクターになっていた。

だが世界観は全くの別物。
土地勘無し、お金なし。ログアウト画面無し。
あるのは以前のステータスとスキル、アイテムのみ。

一応地理は現実世界の配備で問題なし

スタート地点は自由。
国を創るも奪うも自由。
この世界に入ったプレーヤーはここの住人となって元の世界に帰る方法を模索あるいは
世界征服を目論むことも自由。

* * * *

御用の方は下記まで御連絡下さい
(質問・感想お気軽に)

https://twitter.com/miyabi_virossa(ミヤビアドレス)

https://twitter.com/yawashigure(柔時雨)

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16



Re: (自由参加小説)異世界ぐらしはじめます(アレン視点) ( No.72 )
日時: 2020/08/09 12:09
名前: 柔時雨 (ID: lU2b9h8R)

No.19〜 手練れの長鱗身 〜

タドミール・テルミヌス・最上階

玉座に座りながら、図書館から持って来た本をパタンと閉じると、玉座に寄り掛かるように座っていたシルヴィアが顔を上げた。

「主様……今日はもうお休みになられますか?」
「そうだな……うん。キリの良いところまで読んだし、そうすっか……」
「承知致しました。それでは、明日の朝、朝食の準備ができましたら、お部屋へお伺いしますね。」
「気持ちは嬉しいけど、シルヴィアもしっかり休めよ。1回くらい朝食抜きでも、誰も死にはしないんだから。」
「うふふ、わかりました。では、明日はゆっくり休ませていただきますね。」

◇◇◇

シルヴィアが大広間を出て行ったのを確認して、俺も大広間から出て、以前作ったもう1つの城の方の最上階に用意した自分の部屋へ入る。

「ふぅ……さてと、寝る……ん?」

俺以外誰も居ないハズの部屋で、背筋が凍るような冷たい視線を向けられているのが分かる。
ウチのメンバーの中で扉をすり抜けられるのは、リッチであるアルフォンスだけ……しかし、これはあの爺さんが俺に向ける視線とは違う。
明らかに、敵意のある視線だ。

俺は突撃槍を構えて、視線を感じる方を向いたが……誰も居ない。

しかし、確かに何かが這うような音がしたので、そちらに視線を向けると……『ウチのメンバーではない』モンスターが天井に張り付いていた。

真紅の長い髪に、豊満な胸を金色の鱗のような装飾が施されたビキニで隠し、両手には……確か、マチェーテとかいうナイフがしっかり握られている。
さらに驚いたのが、天井に張り付いている女性の下半身との結合部は紫色のパレオで隠されているが、さらにその下を追うと……物凄く長い蛇の体が部屋の柱に5重ほど巻き付いていた。

つまり……女性は天井に背中で張り付いていたんじゃない。長い尻尾を柱に絡ませ、上半身を鎌首のようにもたげていたのだ。

「貴様が此処の主だな?同胞の仇……その命で償え!」
「同胞?」

マチェーテを持った上半身が迫って来たので、俺は突撃槍を構え……そのまま横一閃に薙いで、弾き返す。

「くっ……!初撃は止められたか。」
「襲われる理由も判らないまま、死にたくねえからな。」
「あれだけのことをしておいて、よくもそんなことが言えたものだな!」

女性がマチェーテを構え直し、再び俺の方へ迫ってくる。
俺は突撃槍の柄を両手で持ち、ザインが斬馬刀を振り下ろすのと同じ動きで女性を叩きつけようとしたが、女性は突撃槍の先端を回避し、俺の足の間を潜り抜けて、背後を取った。

「死ね。」
「させるか!」

俺は突撃槍の柄から咄嗟に右手を離し、そのまま背後に居る女性へ向けて裏拳を繰り出す。

「うぐっ!?」
「ぐあぁっ……!」

俺の右手に確かな感触があったので、おそらく女性の顔面か頬を捉えたのだろう。
代わりに、女性が持っていた2本のマチェーテのうち、1本が俺の鎧と肩当ての隙間を掻い潜って、左肩に刺さったが……痛み分けってトコだろう。

「うぅ……まさか、顔に1撃を受けてしまうとは思わなかった。」
「悪いな。咄嗟に防衛本能が働いちまってね。とりあえず、一旦落ち着いて話を…………ん?」

蛇身の女性に話しかけた時、俺は自分の体の異変に気付く。
槍の柄を握っている左手がプルプルと震え、両足の裏もジンジン痺れて、全体的に動きが鈍くなっている。

「何だ?体が痺れる……」
「どうやら効いてきたみたいだな。アタシの武器にはいろんな植物から抽出して合成した即効性の高い麻痺毒を塗り付けてあるのさ。」
「麻痺毒……くそっ!」

俺は左肩に突き刺さっていたマチェーテを引き抜き、部屋の隅に向かって投げ捨てる。

「おそらく、アタシの武器は貴様の鎧を貫通して、その心臓を貫くことはできない……だから!残り1本で、貴様の咽を掻っ切ってやる!」

女性は蛇の体の部分を蜷局状態にして、そのままバネの要領で大きく跳躍して俺の上を取って来た。

「安心しな!一思いに楽にしてやる!」
「うぉぉぉ!やられてたまるか!」

俺は痺れに耐えながら、右手に持ち替えた突撃槍を再び横一閃に薙いだ。
女性のマチェーテと俺の突撃槍がぶつかり合い……勢いに負けたマチェーテが、女性の手から弾け飛んだ。

「あっ……!」
「よし……これで、お前の武器は……」
「ふふっ。」

女性は武器を失っても尚、そのまま降下し……俺の前に下りるとそのまま俺の足の間を潜り抜け、背後から蛇の体を俺に巻き付けてきた。
武器を握った右手は隙間から外に出ているが、彼女の人間の部位は俺の背後にあるし、蛇の体はこれでもか!と俺の体に密着しているため、うまく扱えないし……そもそも当てることができない。

「ぐあああぁぁぁっ!」
「確かに刃物は無いけど、貴様を始末する方法はまだまだあるぞ。例えば、このまま背骨や関節を粉々にしたりとか……な!」

そう言いながら、女性は蛇の体に力を込め、俺の体を締め上げる力を強くする。

「後はこのまま貴様の首筋に噛みつき、アタシの牙から猛毒を注入すれば……貴様を殺すことができる。」
「ぐっ……おぉぉ……!」

横目で女性の顔が俺の顔付近まで確認し……にやりと笑みを浮かべた彼女の口から見えた牙が首筋に刺さるのかと、身動きが取れない状況で思っていると
部屋の扉が勢い良く開き、シルヴィアが入って来た。

「主様!何の騒ぎ……っ!?」
「くっ!邪魔が入ったか……」
「貴様っ!主様から離れなさいっ!!」

シルヴィアが放った5本の矢を、女性は回避すると同時に、俺を締め付けていた蛇の体が離れた。

「主様!大丈夫ですか!?」
「げほっ!げほっ!た……助かったよ、シルヴィア。」
「2対1か……不利な状況ではあるが、まだまだアタシは戦え……!」
「ちょっと待った!」

未だ好戦的な姿勢を示す女性に、俺は声を張り上げて待ったをかける。

「な……何だ?」
「お前、同胞の仇がどうこう言っていたけど……俺は本当に心当たりが無いんだ!何が遭ったのか、話してくれないか?」
「しらじらしいぞ!洞窟暮らしをしていたアタシ達『ラミア』族を根絶やしにしたのは、他でもない貴様だろうが!」
「俺がラミア族を大量虐殺!?そんなことした覚えは無いぞ!?」
「失礼ですが、それはいつの話ですか?」
「5日前だ……アタシが狩りから戻ってきたら、洞窟内に居た他の仲間達が全員殺されていたんだよ!それで、愕然としていたアタシに、たまたまその光景を見ていたという人間が、『仲間を殺したのは、ヴァイナー東部にある古城の暗黒騎士だ』って言ったから……」
「5日前……じゃあ、やっぱり無理だな。」
「そうですね。」
「なっ!?何故そう言い切れる!?」
「だって、その時……俺、サイクロプスの女性と貿易都市・シフルールへ買い物に出かけていたからな。」
「主様とその女性が一緒に此処を出て行く姿は私が確認しています。」
「シフルールでも別行動をしてなかったからな……ラフィスの目を盗んで、お前達の住処で大乱闘するとか無理だ。そもそも、ラミアってどこに住んでたんだ?」
「…………本当に、知らないのか?」
「あぁ。何だったら、そのサイクロプスの女性を此処へ呼んで来て証言させようか?」

俺の言葉に、ラミアは力なく項垂れる。

「そうか……どうやら私は騙されていたのかもしれないな……」
「貴女も主様と戦って解ったでしょう?主様の武器は突撃槍……刺突が主な戦闘スタイルです。貴女の御仲間の傷に、それらしいものがありましたか?」
「そういえば……矢が刺さっていた者も居たが、殆どが剣による斬り傷だった……重ね重ねすまない!貴様……いや、アンタには迷惑をかけてしまって……」
「いや、誤解が解けたなら良かった……でも、その誤情報を流した奴が気になるな。そいつ、名乗りとかしなかったか?」
「確か……『自分はエルセア兵で、近くで野外訓練をしていた際に惨劇を見た』と……」
「エルセア……また連中か!」
「おそらく、貴女の御仲間の命を奪ったのはエルセアの軍でしょう。そして、その罪を敵対している主様に擦り付けたという訳ですか……許しがたい。えぇ!実に許しがたいです!!」
「そうか……あいつ等が同胞を……アタシはこのままエルセアに行く。謝って済む話ではないけど……ごめんなさい。」
「まぁ、待てよ。」

部屋に散っていた武器を回収し、出て行こうとするラミアを呼び止める。

「実は……もしかしたら、近いうちに大規模なエルセアとの戦闘があるかもしれないんだ。そして、俺達もそれに……エルセアへ侵攻する側へ参加しようと思ってる。そこで、もし良かったら俺達の仲間として一緒に参加しないか?」
「アタシを……仲間に誘ってくれるのか?」
「あぁ。もちろん、その戦闘の後もずっと此処に居てくれて構わない。その……元々の仲間達ほどではないけど、味方にはなってやれるからさ。」
「…………そうか。」

ラミアは俺とシルヴィアの方へ向き直り、武器を床の上に置いて頭を下げる。

「我が名は『ナターシャ』。姿は見ての通り、種族は【 人外 】でクラスは【ラミア】だ。アタシを受け入れてくれたこと、感謝する。これから……末永く此処に厄介になると思うが、よ……宜しく頼む。」
「おう!これから、よろしくな。ナターシャ。」

俺が差し出した手を、ナターシャが目尻に涙を浮かべて微笑みながら握り返してくれた。

◇◇◇

翌朝……

他の皆に昨日の夜の出来事と、そうなった過程、そして……ナターシャが仲間になってくれたことを伝えた。
皆、エルセア軍の手口に怒りながら、ナターシャの加入を快く受け入れてくれた。

ザインやエルネストからは『アレンをかなりヤバいところまで追い詰めた凄腕の戦士』として認識され、『良い手合わせの相手が増えた』と、特に喜ばれていた。

「最初は『なぜ、人間がアタシ達のような異種族を束ねて長になっているのか?』と不思議に思っていたが、今ならそれが解ったような気がする……」

俺の隣でそう呟いたナターシャは、微笑みながら他の皆との会話の輪に加わっていった。
基本的に素直で良い子……なんだと思う。まぁ……怒らせて締め付けられない様に気をつけようと、昨日の一戦を思い出して胸に誓った。

Re: 異世界ぐらしはじめます(レックス視点) ( No.73 )
日時: 2020/08/23 20:15
名前: ka☆zu (ID: opY14I5d)

act13 発展と活躍と焦りと


翌朝目を覚ました僕らを待っていたのは、ボルトより背が高くガタイのいい、若いオーガの男の人だった。
と言っても僕らよりは歳上だと思う。
キチンと礼服を着た彼は、一礼して自己紹介を始めた。
「私はポロニアーナ国より派遣されました、土地の整備や不在時の庶務を担当します管理人でして、ラーヴァと申します。皆様お見知り置きを」
ラーヴァさんにお茶を出し、僕らは今後の事について話し合う事にした。

「この土地に関しての主導権があるのはレックス様との事ですが、そこに間違いはありませんか?」
「はい。何かする時にゴーサインを出すのは僕です」
「かしこまりました。土地に関しての事柄の決定権は、レックス様より承る事にしましょう。お申し付け下されば、開発に必要な人材や設備を手配します」
「となると、どこに何を配置するかはある程度決めておいた方が良さそうですね……土地も限られていますし」
「国王陛下曰く、これからの活動次第で報酬として土地の拡大をする可能性もあるとの事ですが……私にかかれば配置した設備をそのまま移動させる事も出来ますゆえ、気軽にお考えください」
どういう技術かは分からないけど、「ゲームだから」で納得することにした。


仮の家と拠点の停泊地点は、川に面して土地の北西4分の1くらいを占めている。
現行の領地だと、仮家と同じくらいの中サイズ施設3つでトントンというところか。
小さめのオブジェや単一の施設みたいな小サイズのものならそれより多く置けるけれど、わかりやすいので中サイズをベースに考える。
僕らの拠点に欲しいものは何か?

「冒険に行けない間も資材の回収ができる施設なんかがあれば良いけど……どんなのか想像もつかないな」
「戦闘訓練も欠かせないのですっ!私達二人だと、この近くのモンスターなんてもう練習相手にもならないし……」
「倉庫が素材でパンパンになっても居ますし、バッファとしての追加倉庫が有れば良いのですが。資材の効率的な収納の為に、中間素材までは自動で加工してくれる施設もあれば尚良しです」
僕らの荒唐無稽な要求を黙って聞いていたラーヴァさんが、とうとう口を開いた。
「大方の方針は理解致しました。それでは現時点でのビジョンを提案いたしましょう」


ラーヴァさんが取り出したのは、魔力を感じる大きめの白い紙。
彼が魔力を弄ると、僕らの土地の地図が浮かび上がってきた。
仮家のある場所には、ちゃんと同じデザインの家のミニチュアが置かれた状態になっている。
ラーヴァさんは更にカタログのような物を取り出し、いくつかのページの絵から一つずつをタッチし、現れたミニチュアを地図に配置した。
仮家の東には、同じくらいの大きさの何もないプレートが置かれた…と思いきや、地図に置かれると鉱脈や木、化石や釣り堀が現れた。
その南には大きな炉や、ノコギリの付いた大きな作業台のようなもの、工場のアームのように動く縫い針が沢山ある作業台が置かれた。
これは極小サイズとのことで、一つ一つが中サイズの施設の4分の1くらいの大きさのものだ。
更に家のミニチュアに、タンクのようなパーツが付き、ドアの近くにアーケードゲームの筐体のようなものが置かれた。
これらは仮家に直接繋げられたので、スペースを取らない。

「さて…ここに私がお勧めする施設をお付けすると、こうなります」
ラーヴァさんはそう言うと、残った4分の1のスペースに何かを配置した。
それは柵で囲まれた、畑と果樹園だった。
「そのままでも食べられる食材を常時供給できるようにすれば、生活面での不自由は一気に減る事でしょう。ただ、全ての施設に設立のための素材が必要な上に、サンプルとして大量の作物を頂くことになりますが…」
「それで大丈夫です。やる事なくて集めてた素材は沢山あるので…」
持て余すよりは、今後の供給に回した方がいいだろう。
1人になった後ために貯めた資材をドンと使い、提示された施設を全て開放した。
加工が出来なかった素材達は、原木や原石のまま使っていいと言われたので助かった。

ラーヴァさんは渡した資材を外に出すと、両手に魔力を集中させた
「スペル・ド・ハウジング」
原木や原石は一瞬でインゴットや角材に変換され、それらが土地の各所に飛んでいき、先程提示された施設に勝手に組み立てられていく。
あっという間に、ミニチュアで構想された施設が全て所定の位置に設置された。


自動炉が音を上げる。
オートソーが木屑を舞い上げる。
自立裁断機がひたすら糸を織る。
ボルトが居ないがために持て余していた素材は、ボルトがすぐに製品に出来るような中間素材にどんどん加工されていく。
搬出口に魔力ゲートがあるようで、中間素材達は加工された側から新設の大型倉庫に搬入されていく。
見た目以上に巨大な倉庫は、まだ底が見えている。

何も無いようなプレートが置かれた場所に対応したのは、【無限鉱脈/樹木/秘宝/釣堀】という施設だった。
何もない土地に見えて実は地中に複雑な魔道具がいくつもあり、そこに同一の素材をサンプルとして200個入れれば、木や鉱脈が発生するという装置だ。
低ランクのものながらオーパーツが無限採取出来るのにも突っ込みたいけれど、それ以上に200匹の魚を無限にしている方法が気になる。
クローニングでもしているのだろうか?
先にこちらに手持ちで200個を超えていた資材は全て入れたのだが、それでも余ったものがあった為先述の加工機に回している。
それは改めてアンペアが採取出来るし、僕も採取で腕を磨いて経験値にできる。
大量の資材を投じる価値はあると言えると思う。

ゲーム筐体のような装置を起動すると、僕とドロップは仮想空間のような場所に飛ばされた。
出てきたインターフェイスにモンスターを入力すると、そのモンスターが目の前にホイと現れた。
指定し直さない限りは永遠に続くようで、倒した側から現れる。
疲れ果てて僕ら2人が力尽きると、自動で拠点に戻ってきた。
仮想空間だけあって素材やお金は全く手に入らなかったけど、経験値だけはしっかり入っていた。
この設備【バトルシミュレーター】があれば、回復不能で危険が伴うこの状況でも鍛える事は出来そう。
とはいえそれ以外の収入はないので、2人が戻ってきたらお役御免になりそうな気はする。
なんとなく勿体ないし。


残る果樹園/菜園も無限鉱脈なんかと同じシステムのようで、とりあえず定期的に拾っていたために大量にあったリンゴを提出してみたらすぐに木が生え実がなった。
一つずつもぎって食べてみるも、特に味に問題はない。
さらにこれらは手入れ次第でどんどん味や収穫数が増えていくらしい。
「とはいえ普段はここに留まることはないだろうし、改良までは手が回らないかな……」
「私1人では手も回りませんからね…コツコツとたまにやる位でしょうか」
と僕らが考えていたところに、ドロップが元気よく手をあげて提案した。
「それなら、私にアイデアがありますっ!」


ドロップは平原に向かい、大きな声で叫んだ。
「みんな〜!こっちに来て〜っ!」
すると地響きが鳴り響き、大量のスライム達がやってきた。
「ドロップお姉ちゃん!どうしたの?」
「えっ…?ドロップ、これは一体…?」
「この子達は、私の群れの仲間達。みんな私の弟や妹みたいな子なんですっ!戦いは苦手だけど、器用でいい子達ですよ!」
スライム達はピョンピョン跳ねて、僕やラーヴァさんに挨拶をした。
「みんな、今日からここに住んでいいから、畑の見張りや収穫をしてほしいのっ!」
「「「はーい!」」」


大勢の中で、特に印象に残ったスライム達がいるのでちょっと紹介する。
ドロップの次に年上のすらいち。
彼は果物や野菜が大好きらしく、食べてもいいとの条件を喜んで収穫係をしている。
腕白で元気のいいヤンチャ坊主で、暇なときはよくお喋りをしにくる。
今度一緒に、街に買い物に行く約束をした。

その次のお兄さんはすらじろう。
ドロップや僕には勝てないけれどなかなか強く、この地域一帯のモンスターには苦戦もしない。
彼は領地の用心棒として、周りをよく見張っている。
勇敢な性格で、鍛えるのも趣味らしい。
バトルシミュレーターをお気に召したようで、暇な時間はよく鍛えている。
人型にもなれるハンマー使いだ。

次に大きい女の子のスロワ。
彼女は頭がいいため、作物の品種改良を担当している。
魔法も使えるようで、ハーミアの話をしたら興味津々になっていた。
しっかり者だけど、読書の邪魔をしたら激怒するらしい。
すらいちと出かける時に、何冊か魔導書をお土産に買ってくる約束をした。

その他大勢の小さなスライム達がいっぱい。
3匹の仕事を手伝ったり、ぴょこぴょこ遊んだりしている。
危ないから自動機械に近づかないように言ったら、早速飛び込んで大怪我した子がいた。
しかし数秒もせずに回復し、何事もなく遊び始めた。
踏んだりしそうで心配だったけど、特にダメージが無いどころか進んで足の下にくる子も居る。
マッサージを受けているんだとか。


そんな愉快な仲間達を領地に加え、相当賑やかになった。
ラーヴァさんが外の切り株をお洒落な椅子に加工してくれて、木箱の代わりにこちらもお洒落な木のテーブルが置かれた。
椅子は2つ追加で置かれ、座る者の帰りを待つ。
テーブルも椅子も、カフェにでもありそうなデザインで少し気に入った。
ドロップはとてもお気に召したらしく、腰掛けながら笑顔で鼻歌を歌っていた。
バトラーがお茶を入れてくれて、僕に尋ねた。
「やはり……気になりますか?」
「そうだね…2人はどうしてるかな」
「失礼します。本日の活動新聞に、こんな記事がありましたよ」
ラーヴァさんは小さな板をテーブルに置き、魔力を送った。
すると板が光り、映像が流れた。
これはこの世界のテレビのようなものであり、流れたのは今日のニュースだった。


ポロニアーナ城周辺の平原。
そこに映ったのは巨大なドラゴン。
それに立ち向かっていくのは、国の聖騎士隊だ。
つまり、ボルトの姿も見える。
後ろから飛ぶ魔法は王立魔法団のものだろう、確かハーミアはそこで修行していたはずだ。
ドラゴンが吹雪の息を吐き出した。
誰かが騎士団の先頭に躍り出る。
よくよく見ると、ボルトだ。
ボルトは盾を構え、叫んだ。
「セイグリッドシールド!」
すると盾を基点に巨大なバリアが発生し、ブレスをシャットアウトした。
ブレスを防ぎ切られてボルトに意識が向いたドラゴンに、何かが被弾する。
魔法団の中に居た、ハーミアの撃ったもののようだ。
「まだまだいくわよ!【マジドクラ】!!!」
そう言ってハーミアは、いつもの鏡を使う魔法ではなく、何の属性も持たない魔力の塊を発射した。
確かハーミアが使えたあの系統は、この世界【フォレスティア】の魔法使いなら誰もが最初に習う基本の基本【マジクル】とその一段上の派生【マジクーラ】のみだったはずだ。
マジドクラはその更に一つ上にあたる。
彼女も間違いなく、新たな力を付けている。
ハーミアは更に大量の鏡を召喚し、光魔法【シャイン】の系譜の魔法を放つ。
それが鏡によって反射と拡散を繰り返し、多方からドラゴンに降り注ぐ。
「どうよ!これがあたしの新技【拡散ミラーズレーザー】よ!」
大きくよろめいたドラゴンに多くの攻撃が集中し、大きな隙を晒した。
そこにボルトが飛び上がり、剣に雷が宿る。
「終わりだゼ!雷鳴斬!」
巨大な切り傷を受けたドラゴンは、おぞましい断末魔をあげて消滅した。


2人の活躍を目の当たりにして、僕は感服と共に少しの焦りを覚えた。
二人が鍛え抜いて新たな力を身につけている間、僕は何をやっていた?
初めの頃は掃除と素材集めだ。
てんで相手にならないような弱いモンスターを狩っては、必要以上に素材を集めていただけだ。
次は単独や少数のお尋ね者退治。
大人数を相手にしたわけでもないから、経験値としては然程のものでもない。
やっていた事はただの賞金稼ぎだ。
そして今は大した戦闘もせず、貰った土地を好きなように改造していただけ。
回復手段がない状況に甘えて、いい経験になるような強敵との戦闘なんか思いっきり避けていた。
元々傭兵として活動していたドロップは、はっきり言って僕よりもよっぽど強い。
このまま2人が帰ってきても、僕が足手纏いになってしまうのではないか?
内心の焦りは、その日の深夜から僕をバトルシミュレーターに通わせる事になる。
あそこなら力尽きても自動でこちらに戻ってくるだけだし、戦いたい相手と自由に戦って鍛えられる。
ドロップやラーヴァさんが寝静まった後を見計らって、僕はバトルシミュレーターに毎晩通い、中堅どころのモンスター達に命尽きるまで挑み続ける生活を続けた。


毎日自分が命を落とすまで仮想空間で戦い続けて、ある日シミュレーターのUIに新たな表記を見つけた。
「対仮想プレイヤーモード……?」
どうやら、自分が会ったことのあるプレイヤー達の幻影と戦うことが出来るらしい。
最初やこの前アレンさん達と一緒に戦った盗賊団や、オーベロン様とティターニア様、そしてもちろんアレンさん達一行。
その下には「ドロップ」の文字があったが、まるでプレイヤーか否かの判断をしかねるように光ったり消えたり点滅したりを繰り返していた。
しかし、今は見なかった事にする。
今日の目的はそれではない。


間違いなく勝てない事は承知だった。
それでも自分を一刻も早く鍛えたい一心で、アレンさん達の幻影と戦う事を選んだ。
すると、僕の知っている4人だけではなく。
見覚えのない5人の人物と1つの巨大モンスター含め、10人の幻影が僕の前に現れた。

Re: 異世界ぐらしはじめます(レックス視点) ( No.74 )
日時: 2020/09/02 05:59
名前: ka☆zu (ID: opY14I5d)

act14 光明無き無謀な戦い

いつもの仮想空間と違う、朽ち果てて崩れた古城のような場所で、静寂が一瞬訪れて破られた。
現れた幻影達は、僕を発見すると真っ先に襲いかかってきた。
全員が真っ黒いシルエットに、赤い目だけを光らせて向かってくる。
初めに、シルヴィアさんの幻影が大量の矢を放つ。
続いて初めて見る何者かが巨大な火球を撃ってきた。
間一髪でそれらを躱してよく見ると、それはローブを纏った骸骨……いわゆるリッチだった。
2人は一度かわしても間髪入れずに次を投入してくる。
特に過去に戦いぶりを見たことのあるシルヴィアさんで顕著だが、一切の思考を挟まずにこちらを狙っているように見える。
攻撃こそ本人と同じ5本の矢の同時発射だが、戦況もなにもお構い無しに猛スピードで連射してくる。
僕もボウガンを装備し、矢の雨で牽制しつつ彼らの位置をずらして攻撃を中断させて近づく。
一瞬油断したところを光の矢に弾き飛ばされた。
それを放ったのは3対の翼を持った女性の幻影だった。
光の魔法や月桂冠から察するに、天使か堕天使と思われる。
その天使は僕が弾き飛ばされたのを見ると、高速で急降下して剣で切り掛かってきた。
慌ててトンファーで弾き、切っ先をずらす。
後ろに殺気を感じ、近くの瓦礫にフックショットをかけて退避する。
1秒前僕が居た場所には、十字型に突進してきたアレンさんとエルネストさんの幻影の槍がぶつかっていた。
再びフックショットで飛び上がり、ボウガングローブに疾風スキルをかけて上空から矢を連射する。
「アローレイン・ストーム!」
全体が一瞬怯んだが、何かが飛び上がってきた。
それはドラゴンかトカゲの亜人といった感じの人物だったので、恐らくドラゴニュートかリザードマンだろう。
その幻影は巨大な、それこそ馬でも一太刀に叩き斬れそうな長い刀を構えた。
空中にいて足場もなく、もはや回避もできない。
僕は、そのまま一太刀に切り捨てられた。


気がつくと、僕は拠点に戻って……いなかった。
再び古城で立ち上がった僕の目の前に、システムログが現れる。
「本体がバグを起こしたため、現実世界への帰還に失敗。蘇生の上、シミュレーションを継続します」
絶望している暇はなかった。
悪寒を感じ飛び上がると、地中からマウトさんの幻影が飛び出してきた。
「あの構え…エルセア戦で見たことある……」
彼が放とうとしたのは、かの「ホウビヤ」だった。
間一髪で避けたまではよかったけど、飛んだ角度が悪かった。
そのまま飛び上がった彼の指は、勢い良く僕を脇腹から貫いた。


目を開けた僕の前には、さっきと同じシステムログ。
よくよく見ると、矢の雨を降らせた時のダメージは相手に蓄積しているようだった。
倒れたとしてもやり直しになる事はない事に安堵しつつ、打破の糸口を探す事にした。
足に疾風スキルをかけ、分析と思考の為の生存時間の延長を狙う。
守りを捨てて、出来る限りの攻撃を回避しながら幻影の行動や戦法の情報を集める。
元々守りは薄いので、あまり足枷にはならない。
命を落とした事を証明するかのような服の傷は、さっきの痛みが幻想じゃない事をはっきりと物語っていた。
その中で僕は、ハンマーを振り回す一つ目の女の子に注目した。
雷を纏うそれは、叩きつけられると火柱を上げ、僕の頬を物理的に焦がした。
強いが、他の幻影と比べると動きが少しぎこちない。
恐らく、本来の彼女は非戦闘員なのだろう。
飛び回る鉄塊を止めるため接近すれば、その鉄塊の一撃で吹っ飛ばされた。
そして上空に上がったところで矢を放ち、肩にヒットした事で隙が生まれる。
僕は彼女の目に向かって、フックショットを発射した。
それは見事に直撃し、一つ目の女の子は動けなくなる。
倒したわけではなくとも、行動不能にさえ出来れば戦況は変わる。

ひらりと身を翻す間もなく、僕は巨大なものに叩きつけられた。
それは巨大な怪物、クラーケンのものだった。
慌てて瓦礫を投げつけ、一瞬怯ませる。
その隙に矢で斬りつけると、横から何かに捕らえられた。
それは大蛇の尾。
その尻尾の主は半蛇半人の女性、つまりラミアだ。
その尾は強靭で、もがこうとすればする程締め付けられる。
それで止血されてしまい、僕の肌が紫に変色する。
さらにラミアは、僕を短剣で斬りつけた。
斬られた所が痙攣して動かない。
どうやら毒を塗られていたようだ。
「せめて……手だけでも動いてくれれば…!」
その願い虚しく、舞い降りた天使の剣により、僕は首を切り落とされた。


次の僕は、クラーケンの頭部に赤熱したトンファーを押し当てて行動不能にし、後ろから矢と炎をモロに受けて倒れた。
ラミアの短剣を奪い、逆に斬りつけて麻痺させる間に二本の槍に心臓を貫かれた。
天使の羽をボウガンでボロボロにして尖った岩に墜落させると、横殴りに闇の波動で消し飛ばされた。
リッチを誘導して瓦礫のそばに誘い込み、一気に崩して下敷きにした所を巨大な刀で再度叩き斬られた。
ドラゴニュートの懐に潜り込んで首の鱗の隙間に矢を思いっきり打ち込んだら僕の頭にも矢が刺さっていた。
突進してくるエルネストさんの幻影を誘導し、シルヴィアさんの幻影を貫かせるとすぐに踵を返して僕も貫かれた。
その幻影に拡縮スキルで巨大化させたインゴットを落として潰すと、四方八方から飛んできた鋭い骨が全身に突き刺さった。
赤熱したトンファーを太陽で照らしてマウトさんの幻影を焼き払うと、アレンさんの幻影の槍に頭を貫かれた。


何度も死を繰り返し、なんとか立っている。
動ける敵はもはやアレンさんの幻影だけだ。
彼は闇を纏って突っ込んできた。
僕は直前でかわし、後ろに回り込む。
ラミアの短剣で顔を斬りつけ、怯ませる。
本人達とは違う、反応こそ早いが機械的な幻影に対する戦い方がなんとなくわかってきた気がする。
僕はそのまま、至近距離にある首にボウガンを撃ち込んだ。


するとアレンさんの幻影は後ろに下がり、何かが新しく現れた。
それは武装こそ違うが、僕のコピーのようだった。
……ただ、今まで戦ってきた彼らのキメラのようなものに僕の首がくっついているだけなのだけど。
それは姿もおかしければ、戦い方もおかしかった。
初めに振るわれたハンマーで、僕は目を潰された。
赤熱する触手は僕を締め付け焼いた。
毒を塗られた短剣は、僕を滅多刺しにした。
聖なる剣は僕を貫いて地に落とし、墜落した心臓は尖った瓦礫に突き刺さった。
火球をくらうと、猛烈な熱さと共に瓦礫に潰された。
ハッと気づくと僕の首に、巨大な刀が刺さっていた。
突然足場が崩れると、矢が往復して胸に刺さる。
巨大な槍は、僕を押しつぶす。
燃え上がる骨は、全身に刺さって僕を焼く。
禍々しい槍が、まるで弓矢のようなスピードで僕の首を貫いた。
それは僕が、彼らにとどめを刺した攻撃にそっくりだ。
そうだ、僕が手にかけたんだ。
僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺


「惑わされるナ!」
その声で、意識がハッキリする。
目を開けた僕の目の前に、盾を構えて幻影をシャットアウトしたボルトがいた。
「それはただの幻影!あなたは誰も殺してませんっ!」
ドロップの放った渦潮が、幻影達を僕から引き剥がす。
「それに……本物のあいつらは、こんなヤワなへっぽこなんかじゃないでしょ!」
ハーミアが放ったレーザーが、幻影達を焼き払う。
「みんな…!?」
なぜ彼らがここに居るのだろう?
ボルトやハーミアは修行に出ていて、ドロップは眠っていたはずだ。
僕がバトルシミュレーターにいた事なんて知らないはず。
「そんなの後よ!」
「ここは何とか乗り越えましょうっ!」
「土産話は、無事にここから出てからダ!」
三人の周りに同時に出たのは、「奥義発動」の文字だった。

「強引'g my way!」
雷のミサイルと化したボルトが幻影を吹き飛ばす。
「セイレーンダンス!」
ドロップが大剣を切り上げると、美しい音と景色が空を切り裂いた。
「ミラーズスターストーム!」
ハーミアが呼び出した巨大な鏡から、流星群が降り注いで空にできた裂け目を広げた。
「さあ、ここから出ようゼ!」
僕の周りにも、奥義発動可能の告知エフェクトが発生した。
「舞踏・春一番!」
近づいてきた幻影を風の刃で切り裂きながら、三人を連れて空から脱出した。



気がつくと、僕はいつもの世界に戻っていた。
目を開くと沢山の心配の目。
起き上がってみると、いきなりボルトにぶん殴られた。
「何つう無茶してんダ馬鹿野郎!」
「今日のはトラブルだったみたいだけど……履歴見たら凄かったわね。毎日死ぬまでやってたわ」
ハーミアが心底呆れたような口調で言う。
「えっとそれは……いたっ」
「完全には治ってないみたいです…っ、まだあまり動かないで」
ドロップが心配そうに僕を見る。
そう言われて身体を見ると、食らった当時よりはそうとう縮まった生傷が全身にあった。
それだけではなく、最初にドラゴニュートの幻影に右肩から袈裟斬りにされた傷と、その次にママウトさんの幻影に貫かれた左の脇腹の傷はほぼそのまま残っていた。
「ごめん……結局心配かけちゃったね」


「で?なんでこんな無謀なことしてたわけ?」
ハーミアの問いに僕は答える。
「この前のドラゴン討伐の映像を見て、二人はどんどん強くなっていた事を知ったんだ。ドロップもかなり強いし、このままだと僕は足手纏いになってしまうと思った。だから、焦ってすぐに強くなろうとして夜な夜なシミュレーターに……」
何かを思い出したような素振りをしたドロップが、一度僕に声をかける。
「明け方頃、すごい大きな雷の音で起きたんですっ。天気はすごく悪くなってて、横を見たらレックスは居なくて、探そうとしてラーヴァさんと外に出たら、バトルシミュレーターが起動してました。でも、画面はブツブツ言って、煙が登ってて……」
「僕が入り込んでから、そんな事が……」
そこまで言うと、黙っていたボルトがこんな事を言った。

「バトルシミュレーターの転送は実際に身体を仮想空間に送りつけるんダ。意識だけ持ってかれて負けたら追い出される訳じゃねエ、死ぬ度に仮想空間で再構築されて蘇生してるだけなんだゼ…………それが容易なシミュレーターとはいえ、何度も死ぬのを繰り返すのは正規使用とは言えねえナ。現にお前は死ぬのに慣れて、命を守りながら戦う意識が薄れてやがル。それを毎晩だ、負荷かけ過ぎて筐体がショートしてた矢先にこれって事になル。事故でもあれど、お前のせいでもあるんだゼ」
「その……ごめん」

「……いくつか誓ってもらうゼ。命を顧みない戦法は二度と取るナ」
「一人で抱え込んで突っ走るのも無しよ」
「仲間なんだから、ちゃんと頼ってくださいっ!私もレックスを頼るから!」
「マスター……確かにドロップ様の強さと御二方の成長は眼を見張るものがあります。ですが、貴方とて決して弱くなど無い。足手纏いになど、なる事はありません。この私を倒し従えたのです、既に実力はお持ちだ」
みんなの言葉に、曇っていた視界が一気に晴れたような気がした。
「みんな……ごめん、ありがとう。誓って命を捨てるような無茶はしない」
「解れば良しダ。ったく心配させんなヨ」
「それはアンタもよ。昨日のアレは無いわ」
「へっ?何かあったんですかっ?」
「こちらをご覧ください」
ラーヴァさんが出してきたのは、例の映像新聞。


城に攻めてきたトロールの一撃をくらい、満身創痍のボルトがいた。
「へっ……こんなん屁でもねェ!スキル【自動修復(オートリペア)】!」
そう叫んだボルトの周りに緑色のエフェクトが発生し、少しずつ傷を癒す。
「がッ……!」
しかしそれには強烈な痛みが襲うようで、ボルトは歯を食いしばってトロールに切り掛かった。
結果トロールは倒れたが、ボルトはまだボロボロだった。


「良いんだよ俺ハ。スキルで回復出来るんだからナ」
「馬鹿じゃないの?回復ったってすぐ治るわけでなし、おまけに痛くて苦しんでる姿を晒しまくるのよ?見てて気分いいもんじゃ無いわ」
「あれは成長痛みてえなもんだし、そんな騒ぐことでも無えだろうがヨ……死なねえようには振る舞ってんだシ」
「あのねえ……あたしがあんたのそんな姿見たくないのよわかる!?ねえ!?あ・な・たっ!!!」
「なッ……!悪かったよ…ったク」
決まり悪そうにボルトは目を逸らした。
その様子にちょっと吹き出してしまう。
それを見たドロップが、少し膨れたような顔で言った。

「レックスは笑えませんよ?二人だけじゃありません。みんなで無理してみんなでボロボロに傷付くならまだしも、たった一人で無理して抱え込んで、一人で勝手にボロボロになったら悲しむ人がいるって事、ちゃんと自覚してくださいね。あなたはもう、あなた一人だけの物じゃないんですよっ」
「その……本当にごめん」
ボルトとハーミアも戻り、僕たちは元の賑やかな一行に戻った。
僕の身体が動くようになってから、2人にちゃんと領地を紹介してお茶の時間になった。
主を待っていた二つの椅子には2人がしっかり座り、楽しいティータイムを楽しめた。

Re: (自由参加小説)異世界ぐらしはじめます(アレン視点) ( No.75 )
日時: 2020/09/03 23:12
名前: 柔時雨 (ID: lU2b9h8R)

No.20〜 金色の妖気 〜

タドミール・テルミヌス領内・鍛冶屋

カウンターでラフィスと談笑していると、店内に飾られている彼女の作った武器の中で見慣れない物を見つけた。

俺の知る限り、ウチのメンバーの誰の武器でもない……某海賊漫画の狙撃手がたまに出す5tハンマー並にデカいハンマーが、棚と棚の間に叩く部分を下にして立て掛けられている。

「ラフィス……あのゴツいハンマーは何だ?」
「え?あぁ、あれはアタシの武器です。」
「え?ラフィスの武器って……」
「あの……アレンさんや、他の皆さんのような戦働きは期待しないでくださいね?あれはあくまで護身用です。本職はこっちですし……ただ、ギミックとして雷を帯びるようにはしてあります。」
「雷って……」

護身用のスタンガンみたいなものだろうか?

それでも、ギリシャ神話の最高神・ゼウス様の武器は雷だし、北欧神話の武神・トール様の武器はミョルニルっつう雷を帯びた小型のハンマーだし……

雷ってだけで、最強の武器に聞こえてしまうのは、俺だけだろうか?

「……あっ、そうだ。アレンさん、少し思い出したことがあるのですが……」
「ん?何だ?」
「直接、アタシ達には関係のないことなのですが、実は……」


◇◇◇


タドミール・テルミヌス最上階・大広間

「シフルール北東の山から、女性の呻き声が聞こえる?」

鍛冶屋でラフィスから聞いた話を、シルヴィアにも伝えた。

「アレンよ……それはいつ頃の話なのだ?」

大広間へ移動中に声を掛けたアルフォンスも同席し、質問して来た。

「ラフィスの話だと、確か……前にシフルールに行ったときに聞いたみたいだから、1週間ほど前かな?」
「あァ〜……じゃあ、今から行っても無理だな。大将が到着した頃には、その女はもう、オレ達『 あっち側 』の人間だぜ。」

アルフォンスと一緒に居たマウトが、発言する。

「まぁ、普通の生き埋めならマウトの言う通りだろうな、俺もそう思う。……でも、それが……今でも女性の呻き声が聞こえるそうなんだ。」
「ほぅ……それはまた面妖な。」

『お前が言うな』って言ってやりたいけど、言わない俺の空気読み。

「とりあえず、興味があるから、行って確認してみようと思うんだ。留守を任せても良いかな?」
「お待ちください!私も同行します。」
「シルヴィア?」
「大将、察してやれよ。今までは自分だけしか女性が居なかったのに、フレデリカの加入からラフィス、ナターシャと女性陣が増えてきて、今回の声の主も女だろ?仮にそいつを仲間にするかどうかは大将の判断だとしても……だ。大将ダイスキーのシルヴィアは、アンタを他の女性陣に奪われるんじゃないかと気が気じゃねェんだよ。」
「ふぉっふぉっふぉ!乙女じゃのう、シルヴィア。」
「うるさいですよ!」

シルヴィアが放った2本の矢が、マウトとアルフォンスの眉間に突き刺さる。

「まぁまぁ、シルヴィア、落ち着いて。」
「大丈夫ですよ?御主人様。私は至って冷静です。」
「ギャハハハハハ!何か久しぶりにシルヴィアの矢を受けたなァ。」
「ふぉっふぉっふぉ!この矢で我が死ぬことは無いが……あまり気分の良いモノではないな。」

そう笑いながら平然と眉間に刺さった矢を引き抜くアンデッド2人……

「じゃあ、俺とシルヴィアでちょっと出掛けてくる。他の皆にも伝えておいてくれ。」
「あいよ!土産話を楽しみにしてるぜ。」
「何も起こらんだろうが……有事の際は、我等に任せておくが良い。」
「おぅ!頼りにしてるぜ。」


***


クラーケンにシフルールの近くの浜辺まで乗せてもらい、カプセルに収めた後、俺とシルヴィアは陸路を進み、現在、シフルールの北東の岩山を登っていた。

「この山で女性の呻き声が聞こえるって話だけど……どの辺りだろう?」
「麓では聞こえませんでしたから、少なくとも中腹……最悪、山頂でしょうね。」
「山頂か……」

何気に山の頂を見上げると、俺の耳に女性の呻き声が聞こえてきた。

「シルヴィア……何か言ったか?」
「いいえ。私の耳にも入ってきていますよ。女性の苦しそうな呻き声が。」

声がする方へ歩いて行くと、岩山の中腹、少し開けた場所に灰色の大きな岩が立っており、何処の国の文字か判らない……記号のような物が黄色く光っていた。

女性の声はこの岩の中から聞こえる。

「う……うぅぅ……」
「間違いなく、これだよな?俺達の探し物。」
「そうですね。それにこの岩……普通の物ではありませんね。何やら、神聖な術で作り出した物のようです。」
「とりあえず……この文字の所を貫いてみるか。」
「お待ちください、御主人様!」

突撃槍を構える俺を、シルヴィアが慌てて静止する。

「声は岩の中から聞こえるんですよ?御主人様の突撃槍で岩の向こう側まで貫通させてしまったら……もしかして中に居るかもしれない女性はどうなるのですか?」
「あ……そうだな。」
「ここは私にお任せください。矢を向こう側へ貫通させず……そして、岩に皹を入れるくらいのことは、やって見せますから。」

そう言うとシルヴィアは弓に番えた1本の矢に闇を纏わせ、そのまま黄色く光る文字に向かって矢を放つ。

シルヴィアの弓から放たれた矢は、吸い込まれるように黄色く光る文字に突き刺さり……そこを中心に、少しずつ岩に皹が入っていく。

黄色い光も消え、岩全体に皹が入ると、そこから炎が噴き出し……音を立てて崩れ落ち、中から1人の女性が現れた。

「んっ!んん〜……っはぁ!やっと出れたわぁ!お兄さん等が妾を助けてくれたん?おおきにぃ。」

岩から出てきた女性は妖艶な笑みを浮かべながら、俺達に感謝の言葉を述べる。

「この大陸ではあまり聞きなれない喋り方ですね。」
「それせやろな。妾は海の向こう、ショウカ大陸から来たんやさかい。」
「ショウカ大陸から?」

確か……前にラフィスが言っていた、このサーバー内の海の向こうにあるもう1つの大陸だっけか?

「せや。この地には物見遊山のつもりで来たんやけど……シフルール?いう町で、何や白装束を着た変な奴等に絡まれてなぁ。」
「白装束?」
「おそらく、聖都・ハルシエトの者……それも教会勤めをしている者達のことでしょう。」
「あいつ等……妾は何もしてへんのに、妾の姿を見るなり追いかけて来おってな。必死で逃げて……此処まで来た時に、変な術を受けてしもうてな、封印されとったんよ。」
「その邪気を垂れ流していたのでしたら、当然かと思いますが……」

俺にはまだよくわからないが、シルヴィアは目の前の女性から漂う邪気ってやつを敏感に感じているらしい。

「え?嘘やろ?これでも隠してたつもりやってんけどなぁ……」
「俺にはまだ、その邪気とやらはまだ見えないが……邪気が漂ってるってことは、お前……普通の人間じゃない……んだよな?」
「せや。妾の名は『 スクナ 』!属性は『 自然 』。種族は……見ての通りや。」

そう言ったスクナの頭から金色の尖った耳が生え、お尻の少し上辺りから金色に輝くふっさふさの尻尾が9本生えてきた。

「マジで……?九尾の狐じゃねえか。」
「御名答。正解したお兄さんには、御褒美に妾がそりゃあもうえぇことして差し上げま……」
「そこまでです!」

俺に擦り寄って来たスクナを強引に押し退ける様に、シルヴィアが割って入ってくる。

「まったく!こんな白昼堂々何を考えているのです!?小さいお子さんも見てるかもしれないんですよ!?」

まぁ、九尾の狐ならこれがデフォって感じもするけど……

確か……中国では妲己になって殷の紂王を堕落させて国を傾けさせたり、日本では玉藻前っていう絶世の美女に化けてたんだっけ?

それでも霊獣や神獣の類ともされてるとか何とか……たぶん、スクナの属性が『 自然 』なのは、そこが影響してるんだと思う。

「いけませんの?せやったら……う〜ん……ほな、助けてもろうたお礼に、妾が何でも1つだけ言うこと聞いてあげますわ。」
「願い事1つだけ。」
「せや。国が欲しいんでしたら、どっかその辺の町滅ぼして来たりますえ?お金が欲しいんでしたら、どっかその辺の町からしこたま奪って来たります。それだけの力は有してますさかい。」

妖艶な笑みを浮かべながらスクナは提案してくる。

九尾の狐は洒落にならないくらい強い妖怪……冗談じゃなくて、マジでやってのけるだけの力を持ってるんだろうなぁ。

でも……

「悪い。領土はもう持ってるし、お金にも困ってない。」
「そうなん?何や、偉い裕福な暮らししてるんやなぁ……ほなやっぱり、絶世の美女との甘美なひと時でも……」
「それはダメです!私が許しません!!」

そう言いながらシルヴィアは弓に5本の矢を番え、スクナに狙いを定める。

「何でそんなムキに…………はっはぁ〜ん。なるほどなぁ……そういうことかいな。」
「なっ……何ですか?」
「あんさん、可愛らしいなぁ。そんなあんさんの大切な人を略奪する……寝取り展開、禁断の恋……燃える展開になるぅ思いません?」
「まったく、思わないです!」

シルヴィアとスクナのやり取りを横目に、俺はゆっくりと口を開く。

「なぁ、スクナ。お前へのお願い、決まったぞ。」
「何や?言うてみぃ。」
「俺達の仲間になって欲しい。」
「仲間?まさか、妾を仲間にすれば、お願い事を無制限に使える……なんて魂胆でいるんやったら、お断りやで。」
「違う、違う!いや、まぁ……そりゃちょっとはお願いすることもあるだろうけど、基本的には拠点で自由に過ごしてくれて構わない。」
「ふぅん……せやなぁ……正直言うと、仲間に勧誘してくれるんは嬉しいんよ。この地に来ても、行く宛なんてありゃしませんでしたし。またあのけったいな白装束共に狙われる恐怖を感じる必要性が無くなるんやもん。」

スクナは真面目な顔をして、俺の目を真っ直ぐ見つめて言葉を続ける。

「せやけど……ほんまに妾を仲間にする気?自分で言うんも何やけど、妾……めっちゃ気分屋でお気楽主義やで?ほんでもって、彼女みたいに女の子を揶揄って……最悪、喧嘩に発展するかもしれへん。それでも……妾を仲間にしたいと、お兄さんは言いはるん?」
「まぁ、そんな頻繁に喧嘩をされたら、さすがに『自嘲せよ!』くらいの注意はするだろうけど、それくらいかな……気分屋な連中は、他にも居るし……」

マウトとか……あと、マウトとか……

「俺はスクナを仲間にしたい……いや、仲間になってもらいたい。シルヴィアも、特に問題無いよな?」
「御主人様の願いが決まらないようでしたら、私は『自分で自分を封印し直してください』とお願いするつもりでしたが……」
「ちょっ!?何真顔でシレっと無茶振り言うてはりますのん!?」
「御安心を、冗談です。」
「いいや、今の顔は絶対本気やった……」
「コホン。とにかく、御主人様が決めてしまったのでしたら、仕方ありませんね。私としましても、仲間が増えるという事は、純粋に嬉しいですから。」
「そういうわけだ。あとはスクナの返事を聞かせてもらえないかな?」
「……さっきも言うたやろ?仲間に誘ってもらうこと自体は嬉しいって。えぇで!妾がお兄さん達に力貸したる!これから宜しゅうな!」ニコッ
「あぁ。よろしくな、スクナ。」
「また拠点が賑やかになりますね。」
「でも、それも悪くない……だろ?」
「はい。」ニコッ

俺達の陣営に新しく九尾の狐が加わった。
(今は人の姿で耳と尻尾が生えている状態だけど……本気になったら、たぶんガチの狐になるんだろうな……)

スクナは拠点へ戻る際、カプセルから出てきたクラーケンに驚き……拠点に戻ってからは、人間が俺しか居らず、他は自分みたいな異種族ばかりであることに驚いていた。

そして、歓迎の酒宴が催された際……備蓄していた酒を、スクナが殆ど飲み干したことに、俺が驚かされた。

何にせよ、テンションが高く、実力もある仲間が増えてくれたことは、純粋に嬉しいことだ。

Re: 異世界ぐらしはじめます(レックス視点) ( No.76 )
日時: 2020/09/14 04:21
名前: ka☆zu ◆RfyqxjRpsY (ID: opY14I5d)

act15 改装、怪鳥、機械鳥

「ふふっ、お酒が足りないならこっちから送ろうか?っと」
アレンさんからのメールに笑い、それに返信する。
そこに居たボルトが声をかけてきた。
「おい待てヨ、送っちまったらこっちの酒はどうなるんダ」
「どうせボルトとバトラーしか飲まないんだから、結構余ってるでしょ」
「とは言ってもだナ……」
「そこまでよ、らちがあかないからさっさと送っちゃって」
ハーミアに遮られ、ボルトは渋々その場を離れた。


「さて、この場所にいる理由はパパから聞いたわ。レックスが領地持ちになるなんてね」
「だが、今のままだと結構な設備をT-Rex頼りの状態って訳カ。これは割とまずいナ」
「そうだね……T-Rex2号のメンテナンスの事を考えると、こっちの家でも同じ生活が出来る方がいいね」
「でも、仮家に付けてる倉庫とかは、改築しても勝手に外れたりしないんですかっ?中の物バラまいちゃったら大変です」
「それは、俺に任しときナ」
ボルトがニッと笑って、自信たっぷりの表情を見せた。


ボルトに言われるがまま僕らは資材を集めては指定の場所に置く作業を繰り返した。
ボルトとラーヴァさんが協力して、建物を建てていく。
止めっぱなしの本拠点で寝泊まりしながら、1週間でそれは終わった。
完成したのは、前のよりも幾分豪華でお洒落になった木造の四角い二階建てだった。
青い屋根が少しアクセントになっている。
一階部分は、T-Rex2号と全く同じ間取りと構成だ。
広さは増してるので、設備の間隔や予備のベッド数にも余裕を持たせてある。ベッドも増産した。
二階にはラーヴァさん用の私室と、スライム達の寝室が付いた。
シャワーや厨房設備なんかは、移動の必要がないのもあってより便利なものになっている。
というかシャワールームにはバスタブも置かれた。
更に台所には、ボルトたっての希望で酒造が可能な酒樽が設置された。
ボルトは早速林檎を放り込んで林檎酒を作り始めた。(これはポロニアーナの名産品でもあり、さっきアレンさん達に送ったのもこれだ)
新調した僕達の家は、横に止まる本拠点と共に、誇らしげに輝いていた。


「そういえば、前に農園荒らしを捕まえた時に報酬で貰った葡萄が農場に実ったんです。みんなでちょっと食べてみませんかっ?」
「良いわね!林檎と葡萄、ポロニアーナの名産の果物ツートップが勢揃いね!」
「酒樽にぶち込んでワインにするのも良いナ!丁度良い羊肉が入ったんだ、赤ワインと一緒に頂くカ」
スロワによる農作物の品種改良も順調なようで、葡萄はとても美味しかった。
お礼にジュースに加工してプレゼントしたら喜ばれた。


さて、この家は一階に拠点ほぼそのままの設備と部屋がある。
そう、シャワーなんかの改良した物を除いてほぼそのままだ。
本拠点の該当する部屋と同じ場所に、拠点内のものと全く同じゲートが発生した。
領地にいる時は、転送石をこちらのゲートに置いておく事にした。


「ねえ、たまには一緒にお風呂に行きましょうよ、あなた」
「何を言ってんだお前ハ。良いからさっさと入ってこいヨ」
のんびりとした夜、ハーミアがボルトに無茶振りをかけていた。
僕らは微笑ましくそれを見ている。
決してハーミアを止めたりしない、それが僕達の付き合い方になっている。
「だってぇ、一月近く別々に過ごしてたのよ?恋しくなるじゃない!ほら早く」
「未成年が寝言言ってんじゃ無えヨ。もう行けお前ハ……ドロップ、こいつ連れてってくレ」
「はーいっ」
ハーミアはドロップに手を取られ、浴室に連れて行かれた。

「……そういえば、今日はアンペアも食事してたね。いつの間に食料摂取可能になったの?」
「あア、それは俺がちょちょいと改造したからダ。これからは、今まで通りの燃料でも、俺達同様の食事でも変わらずエネルギー補給が出来るゼ」
「私からボルトに頼んだんだ。お陰で好物だったシードルを再び楽しめたよ」
「魂の情報から、味覚や好みも実装したのサ。この一月、剣ばっかり振ってたと思ったら大間違いだゼ」


新しい家で一晩を過ごし、翌朝になって届いた手紙に従い、ポロニアーナ城に向かった。
そこで、オーベロン様はこう言った。

「遠く北に、我が友の治める雪の国がある。その国から救援要請が来たのだ。そこで、今やこの国でも有名な実力者となったそなた達にその遂行を依頼したいのだ」
「勿論行きましょう!オーベロン様の友人となれば、僕らにとっても関係者と同義です」
「有難い。しかし大陸としてそこそこの距離がある故に現在定期の移動手段がないのでな、これを使って欲しい」
僕はオーベロン様から、翼を象ったエンブレムを渡された。
「それは翼の通行証。一箇所のみ記録した場所に、いついかなる時でも飛べる物だ。それを使い、かの国での問題を解決してきて欲しい。……一点物なので後で返してくれ」
「わかりました。依頼を遂行しに行ってきます」
僕らは準備を済ませてラーヴァさん達に留守を任せると、翼の通行証をかざして雪の国「ワモクス」に向かった。


ワモクス国に降り立つと、すぐに毛皮のコートを纏い、頭に毛皮の帽子を被った壮年の男性に声をかけられた。
「君達が、ポロニアーナから派遣されてきた冒険者だね?私はクフリン、このワモクス国を治める者であり、オーベロンの友だ」
クフリン様はそう言うと、「寒いところで話すのもなんだ」と言って僕達をお城に案内してくれた。

「実は最近この国の近くの雪山に、巨大な怪鳥が住み着いてね……農作物を荒らしたり、家畜や旅人を連れ去ってしまうんだ。我が国の兵士たちが討伐に向かったが、全員がそれを果たせず、大怪我をして帰還した。なので、この国よりも強者の多いポロニアーナに救援を求めたと言うわけさ」
事情は思ったより深刻そうだ。
「僕達にお任せください!」
「その悪い鳥は、私達が退治してみせますっ!」
僕達の返答に、クフリン様は満足げに頷いた。


翌日、件の雪山の頂上。
僕達が向かった先には、巨大な鳥の巣があった。
その中央には大きな玉座のようなものがあり、そこに巨大な鳥が座っていた。
「貴様ら、誰の許可を得てここに現れた?余がこの氷原の支配者となる者【怪鳥王ブラッド】と知っての狼藉か?」
「僕達はワモクス国の王、クフリン様の依頼を受けてやってきた者!お前がこれまでかの国にしてきた暴挙、目に余る!この大陸の平和のため、お前を討伐する!」
「ふん!腰抜けの兵しか持たぬ広いだけの古い弱国などに何が出来る!ワモクスの領土は、余が世界を獲るための礎となるのだ!」
「てめえ、世界征服まで狙ってやがったのカ!それなら尚更ここでぶっ飛ばさねえとナァ!」
「あんたの野望、ここであたし達が木っ端微塵に砕いてあげるわ!」
「笑止千万!貴様らのような小さき者どもに何が出来ると言うのだ!この氷原で最強たる余に争う事は、強さ比類なき世界の覇者に歯向かうと同義と知れ!」
怪鳥は飛び上がり、飛びかかってきた。
戦いの火蓋が切って落とされた。


最強を名乗るだけあって、ブラッドはかなりの手練れだった。
飛翔しているので近接攻撃は当たらず、遠隔攻撃もひらりと躱してしまう。
鋭い爪や嘴の攻撃は重く、気付けば僕らは傷だらけだ。
僕は一度上空に連れ去られ、高所から落とされた。
はっきり言って、下が雪じゃなかったら即死だっただろう。
苦労しながら戦い、それでも考え抜いて糸口を見出した。

わざと目立つように暴れ、ブラッドのターゲットになるように振る舞う。
僕を狙って急降下してきたブラッドの頭に、飛び上がったドロップの大剣が叩きつけられた。
その瞬間にハーミアのミラーズフラッシュが発動し、頭への衝撃と目眩しを行う。
怯んだ隙に、なんとなく準備していた毒針(ポロニアーナ領の蜂系モンスターから採取した)を首に突き刺した。
ブラッドは慌てて飛び上がるが、もう勢いもスピードもない。
毒が回って体力も削れたようだ。
「今ならいけそうだゼ!受け取れレックス!」
ボルトが僕のボウガングローブにプラズマショットを放ち、電気を纏わせた。
「アローレイン・サンダー!」
雷を帯びた矢の雨は、怪鳥王ブラッドの身体をズタボロに引き裂いた。

「ぐっ…!赦しはせぬぞ貴様らっ……!」
そう言ったブラッドがおぞましい鳴き声をあげる。
僕達が動けなくなった所を飛び上がって上空に退避された。
「このまま嬲り殺してやる!覚悟しろォォォ!」
僕らを狙って再び急降下をした所に、何処からか飛んできた矢が突き刺さった。
それはブラッドの心臓を正確に射抜いていた。
ブラッドの目はワモクス城の城壁に向けられた。
「ま、まさか……クフリン…!奴め未だ腕を残していたかっ…!口惜しい……奴に勝てぬまま果てるとは口惜しい…!」
そのままブラッドは地面に墜落し、息絶えた。


怪鳥王ブラッドの亡骸を運んでお城に戻ると、クフリン様が出迎えてくれた。
「よくやってくれた!君達のお陰で国を脅かす怪鳥は討たれた!君達は我が国の英雄だ!」
「ちょっと待ってくレ!確かに俺達はヤツを弱らせた。だがトドメを刺したのは、この城から飛んできた矢だゼ?俺達の手柄じゃねえヨ」
「この鳥……怪鳥王ブラッドは今際の際にクフリン様の名を口にしていました。あの矢は、クフリン様の放ったものなのでは…?」
「まあ、その通り私の放った矢ではある。しかし君達がブラッドを瀕死まで弱らせてくれたお陰で致命傷を与えることが出来たに過ぎない。この戦果は、確実に君達のお陰で為せたんだ」
「それにしてもあの距離からズレもなく心臓を一撃で……物凄い視力と腕ですねっ」
「パパが「あいつの力も伊達ではない、建国の英雄たる実力を見てくるがいい」ってしきりに言ってたけど、本当だったのね……」
「大したことではないよ。昔長い事【狩人】をしていただけなんだ」


その夜はワモクス城で記念のパーティーが行われた。
この国の郷土料理となっているピロシキやボルシチに舌鼓を打ちながら、みんなで平和を喜びあった。
僕達はクフリン様に、かつてオーベロン様と共に冒険した日々を聞かせてもらった。
彼らはあの日、早朝も早朝からワールドレコードを始めて、このフォレスティアの世界に降り立った初期の人達だった。
そして何もなかったこの世界をここまで発展させてきた功労者だったんだ。
今僕達が割と平和に過ごせているのは彼らのお陰であると知り、感謝で頭が下がる思いだった。


夜。
喉が乾いて目が覚めた僕は、お城の広間に降りた。
するとそこで、ボルトとクフリン様が何かをしていた。
「2人とも、こんな時間に一体何を…?」
「レックス君か。これを見て欲しい」
それは充電モードのスパークのような、トランク型の何かだった。
「ブラッドの身体のパーツもしっかり回収したからナ。とうとうアレを用意しようと思ってヨ」
「アレ…?」
「あア、陸のスパーク、海のアンペアに続く、空飛ぶガジェットのお出ましダ」
「とは言えここからポロニアーナまでの距離は相当離れているからね。詳しくは帰ってからのお楽しみさ」


翌朝、僕達はワモクス領の様々な素材や作物をお土産に貰った。
翼の通行証で帰還しようとすると、クフリン様に止められた。
「それは翼の通行証か、私とオーベロンの友情の証を使ってきてくれたわけだね。それで帰るのもいいが、良ければこちらに来てくれないか?」
僕達が案内されるがままに進むと、街の大きな建物に入った。
確か似たような建造物がポロニアーナにもあった筈だ。入れなかったけど。
「ここは国を跨いで運行する、大型旅客飛空艇の発着場さ。ずっと閉鎖していたが、やっと機体が完成したのでね。良ければ旅客第一号になってくれないか?」
その申し出を受け、僕達は飛空艇に乗り込んだ。
飛空艇はかなり快適なものだった。
食事や宴会のできる大広間や、パーティや団体毎に寝泊まりできる個室があった。
強風に煽られてもほぼ揺れず、酔いも覚えなかった。
……ボルトだけが、お土産にと沢山もらったウォッカを飲んだくれて酔っ払っていたけれど。(出発前にこれもアレンさんにいくらか送っておいた)
今は僕達だけだが、大勢の人達が乗り込んで旅行に向かうさまを想像すると、期待に胸が膨らんだ。
出発前に聞いた話によると、この機体は旅客用だが他にも貨物用の飛空艇も開発されたらしい。
空輸での貿易が盛んになれば、ポロニアーナの市場の品揃えももっと豊富になるかもしれない。
そうすれば僕らには便利だと展望を語り合った。


ポロニアーナの発着場に降り立ち、僕達は報告のためにお城に向かった。
翼の通行証を返却し、事の次第をオーベロン様に報告する。
「成る程、原因はブラッドだったか……奴とクフリンには昔から因縁があるからな。それを断ち切ってみせたそなた達には感服だ」
「クフリン様強かったです!お城の上から雪山のブラッドを狙撃したんですよ!」
「そうであろう!あいつは私の誇る親友だからな!」
「それはそうとパパ、そんな奴をやっつけたんだから、報酬は奮発してくれるよね?」
「バッカお前親子とはいえ、王様になんて事言うんダ」
「まあそう急くなハーミア、報酬は既にそなた達の領土に届けておいたぞ。ラーヴァが預かっているはずだから、受け取るといい」


そう言われて領土に帰ってくると、既に何かおかしい。
とりあえず柵の位置が変わっている。
今までの領土と同じ大きさの土地を隣にもう一つ分広げた感じに長方形になっている。
「……ちょっと雑すぎない?パパ」
「まあそう言うな我が娘よ。その内その付近の土地一帯がレックスの領土になるだろうからな、今はこれくらいアバウトな広げ方でも良いだろう」
……ちなみにこれは、僕とオーベロン様、ティターニア様のそれぞれのスフィアにボルトが手を加えて実装された通話機能で会話している。
ひとまずラーヴァさんに会いに行くと、届いていた報酬を渡してくれた。
今回の戦利品としては、倍になった領土が一つ。
それからポロニアーナ城とこの国の飛空艇発着場に直接行き来できるワープ装置が一つずつ。
そして何度でも使える、ワモクス行きの飛空艇無料搭乗チケット(団体)が一枚。
ひとえに言えば、ワモクス関連で一気に行動範囲が広がった。

広がった領土に合わせ、早速施設の移動をした。
川縁にあった家と拠点の停車場を中央付近にずらし、その隣の川側に自動機械達を移動した。
その南の川縁には農場を移動させ、その真北になる川のすぐ近くには小サイズのスペースが空いた。
「ここに作りたいものがあるんダ」
そう言ってボルトがラーヴァさんと一緒に建てたのは、小さな水車小屋だった。
「動力を強化すれば、自動炉達は作業効率が一気に上がるんダ。ついでに汲み上げもやって、農場の水やりも兼ねられるゼ」
そして3つの自動機械のあまりスペースに、もう一つ自動機械が置かれた。
それは、いわゆる粉挽きだった。
ボルトがそこに小麦を入ると、しばらくして小麦粉になって出てきた。
「料理やら錬金術やらで結構色々な粉を使うからナ。そろそろ自家生産出来る様にしたかったんダ」
そう言ってボルトは、粉挽きに複数あるタルに別々の素材を放り込んでいった。
加工された粉は、やはり家の倉庫に自動搬入されていく。
増えていく中間素材を見て、ボルトの創作意欲はどんどん上がっているようだった。


「それで、ダ。とうとうこれのお披露目だゼ」
ボルトが僕らに言って、例のトランク状の何かを取り出した。
「なによそれ?」
「新しい武器ですかっ?」
「まあ見てろっテ。ほら起きナ、ワット」
トランク型の何かは変形し、大きな鳥型のロボットになった。
その形は、思いっきり。
「ブラッドじゃない!どうして!?」
「なんでわざわざブラッドを復活させたんですかっ!?」
「まあ確かに見てくれはブラッドだナ。ヤツのパーツを使ったから当然だガ」
「大丈夫!僕はみんなを襲ったりしないよ!」
「喋った!?」
「今回こいつの思考回路になってくれたのは、ブラッドのヤツに襲われて食われちまった小鳥の魂サ」
「生まれてすぐに拐われたから名前も無かったんだ。だから、今ワットって名前をもらって、すごく嬉しい!みんな、僕に乗って空を飛んでね!」
新たなガジェットとして、機械鳥ワットが加わる事になり、そういう意味でも行動範囲の拡大が出来たと思う。


あ、そうだ。
領地に戻ってから、ボルトにボウガングローブを改造してもらったんだ。
そうして、新たに二つのモードが使えるようになったよ。
一つは、玉や爆弾を撃ち出せるスリングショットモード。
そしてもう一つは、何かを撃ったりは出来ないけど仕込み毒針が飛び出すアサシンモード。
例の幻影との戦いで、毒を塗った暗器の使い方は覚えたので、ここぞと言う時に使おうと思う。


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。