二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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【イナイレ】〜俺のサッカー〜『第七章・明かされる記憶』
日時: 2012/10/22 18:05
名前: まい (ID: CMvpO4dN)

は〜い初めましてまいです!!
私は小説を書くのは2回目ですが、1回目はケントと一緒にリレー小説だったので一人で書くのは初めてで正直不安でいっぱいです。はいこんな私ですが暁をよろしくお願いします!!

3月14日:一章開始!(ちょっと修正が全話入ります)


〜プロローグ〜

俺は昔、両親に捨てられたんだ。それはあの日。

『おとうさん!・・・・おかあさん!!・・・・どこにいるの!?』

8年前、辺りが真っ暗な森のなかずっと俺は泣きながら叫んだ。何度も、何度も叫んだが、自分の声が反響するだけだった。しだいに喉がかれて声が出辛くなる。視界が揺らいでただその場に座り込んでしまった。

『へんじくらいしてよ・・・・・』

『坊やどうした!? ひどい怪我をしているじゃないか!!』

その時、目の前に光が見えた。発見してくれたおじさんが近寄りながら声を震わせていた。

『え? けが?』

一瞬、何を言われたのか分からなかったが、自分の体を障ったら、背中にぬるぬるとした感覚がある。
 恐る恐る自分の手を見ると真っ赤に染まっていた。その怪我に気づいた当時の俺はすごく混乱した。

『なにであかい・・・・・もしかして、血なの? う、うわああぁあぁぁあ!!!』

その場にいたおじさんが手当してくれて一命は取り留めたが、背中の傷は一生のこると医師に言われ、その頃から、暗いところが大嫌いになり。サッカーも大嫌いになった。人も嫌になった。俺は生きている価値もわからなくなった。その答えがわかんなかった。
雷門としてサッカーをするまでは・・・・・

*目次*
オリキャラ、暁 直也(一条 氷空)>>1  東條 颯音>>108  ティム>>109  暁家>>116
オリキャラバトン>>277 ←ちょっと変えました アンケート>>325

第一章『氷のテクニシャン』(全20話)
>>2 >>3 >>4 >>7 >>8 >>9 >>16 >>21 >>24 >>25 >>26 >>30 >>31 >>32 >>39 >>44 
>>45 >>46 >>47 >>54

第二章『暁と影山』(全16話)
>>56 >>57 >>58 >>59 >>60 >>61 >>62 >>63-64 >>65 >>66 >>69 >>70 >>71 >>72 
>>73 >>74 >>75

第三章『大波乱の遊園地!』(全20話)
>>77 >>79 >>80 >>81 >>82 >>84 >>85 >>86 >>87 >>88 >>89 >>90 >>92 >>93 >>94 
>>96 >>99 >>100 >>104 >>105

第四章『暁の弟をスカウト!?』(全22話)
>>107 >>111 >>112 >>115 >>117 >>123 >>127 >>128 >>129 >>130 >>133 >>136 >>137
>>140 >>141 >>145 >>147 >>148 >>149 >>150 >>151 >>152

第五章『運命は動き始めた』(全21話)
>>155 >>166 >>167 >>168 >>169 >>174 >>177 >>179 >>180 >>184 >>187 >>190 >>191
>>192 >>195 >>198 >>201 >>204 >>209 >>212 >>214 >>216

第六章・『奇跡の新タッグ!』(全22話)
>>218 >>220 >>221 >>222 >>226 >>229 >>233 >>235 >>237 >>240 >>243 >>244 >>245
>>249 >>251 >>253 >>254 >>255 >>256 >>259 >>261 >>267

第七章・『明かされる記憶』
>>270 >>274 >>282 >>285 >>290 >>291 >>293 >>296 >>298 >>302 >>304 >>306 >>309
>>314 >>315 >>317 >>318 >>320 >>321 >>322 >>327 >>333 >>334 >>335 >>337 >>339
>>342 >>344 >>345 >>346 >>347


番外編
10日はXデー >>157 >>160 >>164 >>165  本当の願いは? >>203  出会う前は (颯音編)>>110  弟の誕生日 >>311
質問コーナー >>122 >>125 >>162 >>206

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Re: 【イナイレ】〜俺のサッカー〜『第七章・明かされる記憶』 ( No.298 )
日時: 2011/10/02 19:36
名前: まい (ID: QRtzFliU)

〜第9話〜「勝負の行方は?」

勝ち越しにされたけど。俺たちはその後攻め続けた。アフロディと豪炎寺先輩のコンビネーションが決まって、豪炎寺先輩が必殺技を出す体制になった。

豪「<爆熱ストーム>!」

ヘルガが止めようとするが、豪炎寺先輩のシュートがゴールに突き刺さった。これで、同点だ。
点を守れば引き分け。でも、引き分けじゃダメだ!勝ちに行くしかこの試合の意味がない。ガゼル達は猛攻撃にくる。アフロディや豪炎寺先輩は厳しくマークされるはず。ここは、俺が点を取るしかない・・・・。

試合再開のホイッスルが鳴る。やっぱり、二人は厳しくマークされていて、パスがすべてカットされていた。
俺もなんとか動こうとするけど。二人もマークされていて、振り切ることが出来ない。
 これじゃ、新技もやることすら出来ない。その時だった。

円「いくぞ!」
綱「おい!ゴールはどうするんだ!?」

ゴールにそんな声が聞こえた。慌ててキャプテンがいるゴールを見たら、キャプテンが攻撃に参加して、ゴールを開けていた。何を考えているんだ!?
 次の瞬間、一之瀬先輩がボールを奪われた。しかも、ガゼルの方にパスがつながっていく。これじゃあ、ゴールが、がら空きになっている状態でシュートが撃ち込まれる!

颯「そうはいかせない!」

思い切り走ってマークを振り切って、ボールをカットした。でも、目の前にガゼルが立っている。周りを見ても、パスを出せる人がいない。
 ここは、自信がないし、未完成だけど。新必殺技をやるしかないよな・・・・

颯「<サンダー・ヘッジホッグ>!!」

体に雷の針のようなトゲを背中に生えて、高速のドリブルで相手を抜く。そして、俺が通った後の地面に電気が流れる。これで、相手をマヒさせることが出来て、しばらく動けないはず。
 気になって後ろを見たら、ガゼルが膝をついて身をかがめていた。多分、技が成功したんだ!

ガ「くそっ!」
円「ナイス東條!」

キャプテンにも褒められた。よし!このまま突っ切ると颯音が思っていたのもつかの間だった。慣れない高速のドリブルをしたせいか、足元がふらつきはじめる。なんとか、踏ん張ろうとするが、次の瞬間、視界が反転して天井の方を向いた。



一方、観客席では、

ヒ「今の技・・・・・」
海「彼、すごいわね」
晴「さすが、東條だ。ま、俺ほどじゃないけど」
海「自惚れないで、気持ち悪い。もしかしたら、アンタよりもすごいかもよ」

と海夢が言った瞬間に颯音は技を出した反動でうまくバランスがとれず、手で体をかばうことが出来ず・・・・・重力に従って、背中を思い切り地面に打ち付ける。
ラッキーなことに、ボールはラインから外れて奪われることはなかった。
が、グランド全体に颯音の叫び声が響いた。

颯「いって ————————— !!!!」

しばらくの沈黙、そして、海夢はかなり冷たい目で颯音に視線を向ける。

海「前後撤回。やっぱり、アンタ以下ね」



戻って颯音目線。
 ちょ、調子に乗ったせいで、背中を思いっきり打つとか・・・・・本当、ない。俺って不幸なのかよ?ボールが奪われずに済んだのはよかったけど。
 技が未完成な理由はこれだ。実は元々、バランスをとることが苦手、それも目をつぶって片足立ちなんて、5秒間バランスが取れないぐらい大の苦手である。

颯「やっぱり、未完成な技を試すのはよくないか・・・・」

一人で颯音が反省をしている時、アフロディと鬼道が何かを話していた。多分、円堂を攻撃に参加させるか、させないかの抗議だろう。そう颯音は直感的に思った。

試合再開のホイッスルが再び鳴る。鬼道先輩が相手からボールを奪って、キャプテンを上げていく、しかし、鬼道先輩はボールを奪われてしまった。

颯「まずい!」
ア「円堂君、早くもどるんだ!」

俺とアフロディでなんとか時間を稼ぐためにリフェンスに行く。だが、すぐ近くにいた相手に気付かなくて、ガゼルにパスが送られる。
 そして、あっという間にガゼルはゴール前に立つ。お構いなしにシュート体制になった。

ガ「<ノーザンインパクト>!!」

なんとかキャプテンはゴール立って<正義の鉄拳>を発動させようとする。でも・・・・・キャプテンが立っていたのはペナルティエリア外だぞ!?

円「<正義の・・・・・」
颯「キャプテン!ペナルティエリアの外だ。ハンドになる!!」

ハンドになったら、PKになってもっと不利になる。そう思って、必殺技をだそうとしたのを止めた。

円「くそ!!」

キャプテンはやけくそになって、拳を出さないでヘッドで<ノーザンインパクト>を防ごうとする。
 防げない。誰もがそう思った。すると、頭部にゴットハンドのようなエネルギーの手を展開させ、その手が拳を作りパンチをすることでガゼルのシュートを止めた。
 全員が唖然とする中、ここで試合終了のホイッスルが鳴り響く。結果は2−2の引き分け・・・・・。

ヒ「そこまでだよ。ガゼル」
円「ヒロト!?」
海「情けないわ、引き分けなんて・・・・・」

そこには、グラン、ティム、さらには南雲がいた。試合をずっと見ていたってわけか。っていうか、いるなら、言えよ。

ガ「ティム・・・・」
海「アンタにはがっかり。でも、いい試合をしていたじゃない。楽しかった?」
ガ「あぁ」
海「そう、よかった」

曖昧な返事をしたガゼルにティムはニッコリと微笑む、それは沖縄で出会った時よりもやわらかい表情だった。
 なんというか・・・・・人間みたいだった。
その時、グランにガゼルやバーンの頬が少し赤かったのは気のせいか?

海「東條 颯音」
颯「はい!?」

いきなり名前を呼ばれて身が固まってしまい、声も裏声になる。そして、ティムはゆっくりと俺の方に近づいて、ティムの片手が肩に触れながら耳元に囁いた。

海「貴方はバランスを取るのが苦手ですね。克服すれば<ヘッジホッグ・サンダー>を完成するはずです。」
颯「なんでそんなことを?」
海「貴方はもしかしたら、エイリア学園の脅威になるかもしれないからです」

ティムが悲しそうに発した言葉はよく分からなって頭の中が真っ白になる。
 なんで?敵にわざわざ必殺技の完成をさせるためのヒントを言うんだ?脅威になるかもしれないのに?ティムは一体、何を考えているんだ?
顔を上げてティムに問いかけようとした次の瞬間、さっきまでいたダイヤモンドダスト達が白い光が辺りを包み込む、気が付いたときはいなくなった。

Re: 【イナイレ】〜俺のサッカー〜『第七章・明かされる記憶』 ( No.299 )
日時: 2011/10/07 21:04
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: Kgb35kUF)

蓮「<サンダー・ヘッジホッグ>かっこいいね! ティムさんの台詞も意味深で気になるね……」

しずく「ネーミングセンスいいねぇ。私もそろそろ必殺技考えなきゃ」

蓮「うん、アフロディは容姿プレイ共に魅力的で憧れるよ〜(以下300字はオーバーするのでカットいたす)」

しずく「スイッチはいると語るならまだいいやん。蓮は暴走するからね……」

蓮「もちろんファイアードラゴンにだって負けないよ。颯音くんも晴矢や風介、ヒロ兄に勝ってね。ふぁいとーおー!」

Re: 【イナイレ】〜俺のサッカー〜『第七章・明かされる記憶』 ( No.300 )
日時: 2011/10/09 19:35
名前: まい (ID: 2qfinqA1)

しずく♪

颯音「必殺技のネーミングは父さんが決めてるんだ。意味は知らないけど」
まい「意味を知らないって・・・・・本当に英語、出来ないんだね」
颯音「まずさ、サンダーって何?」
まい「そこから!?」

まい「ところでさ、颯音はアフロディのことどう思っている?」
颯音「第一印象は不思議な人だ。壱松兄貴に似ている雰囲気があるせいで、あの人の言う事を素直に聞いちゃうんだよね。」
まい「人の言うことを聞くのは当たり前では?」
颯音「そんなことは気にしない!白鳥先輩と共感できます!あと、応援ありがとうございます!」

Re: 【イナイレ】〜俺のサッカー〜『第七章・明かされる記憶』 ( No.301 )
日時: 2011/10/10 11:13
名前: 伊莉寿 (ID: r4kEfg7B)

伊莉寿デス♪

わおっ☆
ダイヤモンドダストって響きが好き〜!!
瑠「そこ?!」
魁「ガゼルって風から来たんだよな。」
瑠「良いね、風!」
自称神については?
瑠「問題外だよ☆」
笑顔で怖い事言わないで下さい。
魁「ナルシストは受け付けません★」
ひ…ひどい…
瑠「そもそも神様はもっと神々しいんです!!!天使にも及びませんゴッドノウズなんか!」
キレないで!!!
えっと…乱文コメ失礼しました!!

Re: 【イナイレ】〜俺のサッカー〜『第七章・明かされる記憶』 ( No.302 )
日時: 2011/10/11 18:53
名前: まい (ID: nujUYaTi)

〜第10話〜「過去の決意」※少しアニメと違います※

試合が終わった俺達は、外に出てダイヤモンドダスト戦の反省をしていた。俺はキャプテン達から指摘されてないけど、未完成なまま必殺技を出してしまったのがダメだった。
あそこで成功すれば、追加点もとれたと思うし。
様々な思考を浮かばせて思わず深いため息をつく颯音。次の瞬間、耳に叫び声が響く。反射的に両耳をふさいで、目をつぶってしまった。

塔「なんで円堂がキーパーをやめないといけないんですか!?」
一「円堂以外に雷門のキーパーはいませんよ!納得できません!」

どうやら、監督は円堂に「キーパーをやめろ」といったらしい。別におかしいとは思わない。理由は二つ
一つは俺やアフロディ、豪炎寺先輩が動けない場合はキャプテンも攻撃に参加して必殺シュートを打つしかない。でも、それは G K であるキャプテンが前に出ると、相手に得点を与えるチャンスを与えてしまう弱点になるから。
もう一つは、最後のキャプテンがガゼルの<ノーザンインパクト>を止めた必殺技を使いこなせたら、強力な戦力にもなるから。
もし、キャプテンがフィールドに立つなら、リベロが適任だ。リベロっていうのは、基本的に「自由」な守備をしたり、チャンスの時は積極的に攻撃に参加したりする DF のことだ。キャプテンみたいな行動が激しい人にぴったりのはず。

瞳「貴方は、リベロになりなさい」
綱「リベロ?」
颯「知らないのか!?」

颯音はまず、悲鳴に近い大声をだします。かなり驚愕の表情です。上の説明通りに円堂に言いました。

綱「東條、よく知っているな!」
颯「先輩が無知なだけでしょ」

すっごく冷たい目で颯音は綱海を見ます。考えてみれば、綱海はサッカーを始めたばかりで知らないのは当然なのに気付かない颯音もしつれいです。
 それ以前に、颯音の口から「無知」という言葉を聞いたメンバーも驚愕の表情だったのも言うまでもありません。

木「じゃあ、キャプテンがリベロをやって誰がゴールを守るのさ?」
円「立向居がいる」
立「俺が、ですか?」

それは、全員納得が出来た。円堂以外の選手にGKを務められるのは<マジン・ザ・ハンド>を覚えている立向居しかいない。ここで、瞳子監督が段取りよく話を進めます。

瞳「練習は、明日よ。今日は休みなさい。各自、自由行動にします」

 自由行動、そう聞いた颯音は『イナズマ総合病院』へ足を運んだ。兄である暁を見るためだ。時間は夕方になって辺りが夕焼けで照らされていた。
中に入って真っ先に暁がいる個室に行く。そこには、眠ったままの暁がいた。看護師の話によると、気を失っているだけで体に異常にないらしい。カーテンが大きく揺れて、風が強くなる。近くにある椅子に腕を組んで座った。

颯「兄貴、ダイヤモンドダスト戦・・・・やっぱり、俺の力もまだまだ弱いよ。引き分けになったのがやっとだった。兄貴がいてくれたら、勝ったのかな?」

確かに、暁の洞察力があれば、勝っていたのかもしれなかった。だが、あの時に暁は倒れてしまった。運が悪かっただけか。そんなものじゃない気がする。ここで、颯音の脳裏にある記憶がよみがえった。

颯「覚えているか兄貴?壱松兄貴がいなくなって ——— 兄貴が人前で涙を流したくないって決めた時、あと、一人称が「俺」になった時」


5年前、壱松が死んで、泣いているばかりの時期が颯音にあった。だが、兄である直也の方は違っていた。直也はいつも通りに明るく振る舞って、サッカーをしていた。だが、颯音にとっては腹立たしく感じた。
 壱松が亡くなったというのに、平然としている直也の姿に。一度だけ、直也を殴ったことがあった。
あの日、直也は学校の友達と楽しく会話をしながら帰ってくる直也を待ち伏せた。
そして、頬を本気で殴った。ゆっくりと立ち上がろうとする直也に思い切り感情をぶつけた。

——— なんでなんだよ!?壱松が死んでもそんなにヘラヘラ笑えるんだ!?兄貴は壱松のことなんて、もう、どうでもいいのか!? ———

——— 颯音、僕は・・・・ ———

——— うるさい!もう、兄貴なんか知らない!!! ———

その場を走って立ち去る。この時、家に帰ったら「サッカーをやめる」って家族全員に言うと決めた。
帰り道で花を摘む。そして、摘んだ花を持って事故があった横断歩道に向かう。颯音は日課的に、お参りをしていた。喧嘩した後で、涙があふれ出して、目の前が少しぼやける。
 下をうつむいたまま横断歩道に着いた。ここは元々人通りが少ないから自分しかいない、そう思っていた。だが、颯音より先にさっき喧嘩した兄、直也が横断歩道の近くの電信柱に座っている。
 颯音は慌てて草むらに身を隠れた。遠くで、直也の声が聞こえる。


——— 壱松、さっき颯音に殴られた。しかも、『ヘラヘラ笑っているんだ?』って言われたよ ———


———『男は周りの人を不安にさせないために、どんなに悲しくても、涙を流さない』って壱松とおじさんの教えだよね———


全部、壱松に伝える言葉だった。この時、やっとわかった。なんで直也もいつも通りに明るく振る舞っていたのか、それは、周りの人に心配をかけさせないため。そう思うと、颯音は思い違いだったことを理解した。思い違いをしていた自分が嫌になる。


——— 僕は泣かない!これから先、どんなに傷つき、辛くて苦しくてもね。あと、強くなるため「僕」じゃなくて、「俺」として生きる! ———


決意を胸に直也は精一杯の笑顔をつくって言う。次の言葉を発した時、直也の声は震えていて涙声だった。


——— だから、これが最後の「僕」だよ ———


次に聞こえたのは、直也の泣き叫ぶ声だった。人通りが少なくて、幸い、海に近かった道だったため波音でほとんどの音がかき消された。この泣き声はおそらく、颯音と直也にしか聞こえない。
 その日から、直也は一人称が「俺」になった。顔つきも変わったような気がして、あの日から弟の颯音でも兄の泣き顔を見たことない
 颯音は直也と離れ離れになっても、ひたすらボールを追いかける日々が続いた。そして、偶然、兄と再会して現在に至る。


颯「たまたま聞いたあの兄貴の決意、もしもあの時、聞かなかったら・・・・俺、サッカーやめていたよ。ありがとう」

普段なら、必ず返事してくれるのに、今はなんにも答えてくれない。颯音の胸にぽっかり穴が開いた感じがした。本当は、泣きたい気持ちになったが、拳を握りしめて我慢した。
 ここに来る途中に咲いていた『萩(はぎ)』を一輪、花瓶に挿して颯音は個室を出て行った。


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