二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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  ドラゴンクエストⅨ_永遠の記憶を、空に捧ぐ。【移転完了】
日時: 2013/04/04 01:11
名前: Chess ◆1OlDeM14xY (ID: b43c/R/8)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=view&no=24342

※ (紙ほか)での更新は終了いたしました。
  (映像)で、『  永遠の記憶を、空に捧ぐ。__ドラゴンクエストⅨ』として更新を続けておりますので
  上記参照よりお越しくださいませ。




【 目次 】      >>512
【 重要なお知らせ 】 >>707




 漆千音です。元Chessです。祝・改名一周年((詳しくは >>496



 これは『ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人』の小説バージョンです。
バージョンですが現在おりじなるわーるど全開です。
ゲーム内で腑に落ちなかった点を自分なりに修正しているうちにややこしくなって
結果ゲーム以上に腑に落ちない点が出てきているかもしれず——小説書きの才能ください←

 過去に間違えて「まもりぶと」って書いちゃって「守り太」とかに変換された守られたくねぇ的な
考えをしたのは後世まで残してやろう。((黙


裏話      >>574
裏話そのに   >>601




【 ヒストリー 】

  2010
8/30 更新開始
9/30 参照100突破に喜ぶ
11/15 十露盤さん(当時MILKターボさん)、初コメありがとうございます((←
11/16 参照200突破に万歳する
12/7 参照300突破にガッツポーズする
12/13 ようやく返信100突破に浮かれる
12/14 『  ドラゴンクエスト_Original_ 漆黒の姫騎士』更新開始

  2011
1/23 パソコン変更、一時的にトリップ変更
1/27 参照600突破に調子に乗る
3/24 参照1000突破に踊る
3/25 返信300突破・サイドストーリー【 聖騎士 】
5/23 トリップを元に戻す
5/25 調子に乗って『小説図書館』に登録する
12/8 改名 chess→漆千音

 2012
2/10 返信500突破・サイドストーリー【 夢 】
8/11 teximaさん初コメありがとうです((←
8/30 小説大会2012夏・二次小説銀賞・サイドストーリー【 記憶 】
9/26 フレアさん初コメありがとうなのです((←
9/29 参照10000突破に転がって喜びを表現する
9/30 呪文一覧編集
10/1 目次編集。これで字数を500くらい減らしたぜ
    サイドストーリー【 僧侶 】
    時間についての説明をアップ >>639
10/7 スペース&ドットが再び全角で表示されるようになったぜ!! いえい←
10/8 サブサブタイトル変更。字数制限の影響でサブタイトルは省きましたorz
10/30 >>3 メイン登場人物に編集しました。ネタバレはなし。
   &過去の自分の超絶関係ない話を削除。返信数にずれが生じていますがあしからず。
11/4 >>676 『未世界』の説明を掲載。
11/7 四人の超綿密設定掲載。初3000字越え。
12/8 漆千音&十露盤さんのお父上HPB。改名してから一周年。
   「・・・」→「…」に変更。未だ時々間違える。
12/9 レヴェリーさん初コメありがたや((←
12/16 重要なお知らせ掲載。詳しくは >>707 へ。

 2013
1/14 移転開始ー。ようやく編集終わった。
1/24 >>727 ⅩⅤ章登場人物紹介チェルスのみ編集。
1/25 >>590 ようやくサイストⅢの編集。マイレナの代わりにアーヴェイを関わらせてみた。
4/3  (映像)への移転終了! 今後の更新はあちらになります。(お知らせ参照)




 今までありがとうございました!
 今後もよろしくお願いいたします。

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Re:   ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.618 )
日時: 2012/09/24 19:59
名前: 漆千音 ◆1OlDeM14xY (ID: 7K.EniuH)

               3.






 ——歴史は繰り返す。
あながち、それは、迷信ではないのかもしれない。


———はいおはよう、敵襲だ! 起きろマルヴィナ! はい起きろ! 起きろー! 仕方ないここは 闇固呪文_ドルマ_ を

「起きています! 起きています! はい起きています! チェルス・・・?」
 大事なことなので三回言いました——のギャグはマルヴィナは知らないが。
 どうやら、何某かの力を働かせて頭の中に話しかけてきたらしい。本当に一体、何者なんだ。
いやそれより、そうそれより。

 ・・・何故闇固呪文系恐怖症と知っている!!?

「・・・? ・・・えっと、チェルス?」
———あーやっと起きたねマルヴィナ。今すぐ準備して外に出ろ。ついでに仲間も起こしな。・・・襲うなよ
「・・・っ誰が襲うかぁぁぁぁぁっ!!」
———うわ耳、耳ちぎれる。きーんってするきーんって。あーもう早くする!
 朝っぱらから何つー冗談を、と憤慨しつつマルヴィナはキルガを呼ぶ。
彼は起きていた、が問題はセリアス。

「がー」

 ・・・やはり寝ていた。
「起きろ! 起きろ! 起きろ! 起きろ! 起きろ! セリアス! 起きろ! 起きろ! 起きろ! 敵襲だ! 起きろ!
起きろ! 起きろ! 起きろ! 起きろ!」
 目覚まし時計顔負けの勢いで叫ぶマルヴィナ。が、セリアスはしつこく寝返りを打つのみ。
計三十回「起きろ!」と言った挙句、マルヴィナは気疲れして一息。
これはかつてないほど寝起きが悪いのではないか。
セリアス起こしの名人キルガは(本人はその呼ばれ名に若干眉をひそめていた)既に外。
「起きろセリアス! 敵襲だぞ! あぁもう起きろ!!」
 それでも反応なし。マルヴィナの堪忍袋の緒が千切れかける。
 マルヴィナは悪ーい黒ーい笑顔になり、剣を鞘ごと抜く。
(・・・あぁもう知らん)
 傍目から見れば可愛いとも言えなくはない笑顔のまま——マルヴィナは剣の鞘でセリアスの頭をブッ叩いた。
 奇妙な絶叫が響いた。






 マルヴィナは階段を使わず、そのまま二階の窓から地上へ飛び降りる。
ざっ、と土を踏みしめ、着地。
彼女が最初に見たのは、多すぎる紅鎧と、ドミールの民たち、 獄雷爆_ジゴ・スパーク_ を発動させるキルガ、そして、
見たことのない大剣を振るうチェルスの姿だった。
「ようやく来たか・・・いったい何やっていたんだか」
「とりあえずわたしのせいじゃないことは理解してもらいたい!」
「セリアスか」発動させ、息を吐くキルガが言った。「何回?」
「三十二」
「過去最高だ」
 キルガは真剣な顔のまま言う。その割に交わされている言葉はどうでもいいものなのだが。
「状況は?」
 隼の剣を構え、腰を落とし、マルヴィナはキルガに問う。キルガは敵と距離をとって答えた。
「彼女——あの人から聞いた情報ではあるが」あの人、とはチェルスだ。
「当初の兵士の数はざっと見積もって二十、どうやら兜の下は魔物らしい・・・元は人間だとか言っていたが、
うまくは聞き取れなかった。今は半分斃したが、殆どはあの人によるものだ」
「殆ど・・・?」
「あぁ」キルガは突進してきた兵士を眼光鋭く睨み付け、槍を振り相対する。マルヴィナも続いた。
「この里の人か? ・・・なんか、違うように思えるんだが——」
 それに、と思う。
それに——二度、驚いた。
一度目は、彼女を見た瞬間に。二度目は、そこで驚いた、自分自身に。
 そう、また、思った。
——懐かしいと。

「あぁ、違うよ」
 マルヴィナは気合を込めて魔物を一閃、剣を横に振って答えた。
ようやく準備を整えたセリアスが扉を開けて走ってくる。
そして、同じように——チェルスを、驚いたように見る。
伝えるべき者たちが揃って、マルヴィナはにやりと笑うと——その動きを止めぬまま、言った。




「彼女が、わたしの『記憶の先祖』——“蒼穹嚆矢”チェルスだ」




 時を止めて思わず驚愕に叫んだキルガとセリアスに襲い掛かった魔物まで斃す羽目に遭った。











「はっ、大したことないな。その腕でわたしを狙おうなんざ三千年早いんだよ!」
 にやりと笑い——だがその瞬間、チェルスははっとして鋭く眼を空へ移した。険しい、顔で。
眼を見開く。ひゅっと、息を吸い込んだ。何かが、来る。この気は、知っている、これは、———————!!
「っ!!」
 マルヴィナが、視線を転じた。マルヴィナだけでない。キルガもセリアスも、戦う里の民たちも。
空に、紅が生じる。一つではない。複数だ。
そのうちの一つ、少々黒みがかったその鎧、艶めく羽と共に降りかかってきたその剣が過たずマルヴィナを狙う!!

「マルヴィナっ!!」
「だっ!!」

 マルヴィナは歯を食いしばり、咄嗟に前に跳び来んでそのまま転がった。
ワンピースの裾が翻ったが、この際恰好など気にしなかった。
膝をついたまま、剣を杖に必要以上に転がるのを防ぐ。キッと前を見据える。

「流石——不意打ちは、通用せずか」

 剣を地面に突き立てたまま、兜の下から聞こえた声は、女のもの。

 十二の魔物を従えて。
 空より獲物を狙い定め。
 紅き鎧に身を包む女剣士。
 今最も警戒すべき帝国の者。

「・・・ルィシア・・・!」

 再びマルヴィナの前に、現れた。
その兜を無造作に放り投げ、魔剣士ルィシアは変わらず、冷たく笑う。














    漆千音))はっはっは明日からテストだ。何やっているんだわたしは。・・・だって疲れたんだもん

Re:   ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.619 )
日時: 2012/09/24 21:16
名前: 漆千音 ◆1OlDeM14xY (ID: 7K.EniuH)

 当初いた魔物どもは残さず撃退した。
だが——新たに現れた敵。
分かる。兜の下には、魔物の顔。

 魔物を従える騎士。

 静かというには緩すぎる緊張感が漂う。
まるで、氷の中。
冷たい、冷たい張りつめた空間。

「久しぶりでは、ないわね」
「あぁ」
 互いに値踏みするように視線を交わし合う、二人の剣士。
ルィシアの眼が、もう一人の剣士に向いた。
「けれどこちらは——『お久しぶりです』——“蒼穹嚆矢”殿」
「・・・あぁ、久しぶりだ。・・・随分目つきが悪くなったな」
「帝国に居りますゆえ」ルィシアは嗤った。「昔とは違います」
「え? ・・・え」
 マルヴィナはその会話の意味が分からなくて、訝しげに二人を見比べた。
「どういう——」視線を逸らしたのがまずかった。
ルィシアは瞬時にして間合いを詰め、マルヴィナの眼先を薙いだ。レイピアじゃない。
今度は、両刃の剣だ。
再び不意を打たれ、マルヴィナは後ろにかろうじて跳躍。姿勢を低くする。頬が切れていた。
ルィシアは剣を振り、そして——マルヴィナに向かって、真っ直ぐに突きつけた。
「——追い詰めた。まさかこんな早く再戦を迎えるとは思わなかったけどね——
今ここで、あたしと戦う事ね、“天性の剣姫”」
「かっ」マルヴィナは喉が渇いていることに気付き——それに腹立たしさを覚えながら——言う。
「勝手なこと、言わないでくれる!?」
「従え、マルヴィナ」
 その言葉をさえぎったのは、他でもないチェルスだ。
驚いて、今度はルィシアから目をそらさず、説明を要求した。
「あんたがそいつを引き付けろ。じゃないと——形勢が崩れる」
 言葉の意味が分かった。
現在のルィシアのポジションはこちらで言うチェルス、団体戦にて個人技を発揮し、次々と敵を殲滅する者。
誰かが引き付けておかねば、こちらの戦士が一気に減ってしまう——そう言っているのだ。
「心配無用——あんたはそう簡単に殺られない。なんせ——」
 断言する、その理由は。

「わたしの『子孫』だからなッ!!」

 めちゃくちゃだ。マルヴィナは呆れながらも、頷いた。
やってやる。いずれ、剣を交わらせねばならなかった者だ。
 ・・・いずれなら、今だってかまわない。
マルヴィナは己の剣を見た。一対一には向いていない。ならば——
 後ずさる、しゃがみこむ。視線はつないだまま。右手を後ろへ、そして——掴む。

 敵国の剣を、その手に。
右へ、左へ。強く重く振り、馴染ませる。がっしと握り、同じように相手に突き付けた。
「では、他の方には、暇を潰していただきましょうか——」
 ルィシアの鋭い合図、動き出す十二の魔物。
キルガが、セリアスが、里の者たちが、再び顔を険しくするその場で、ただ一人、チェルスは凶悪に笑う。
「さぁ、再戦だ」
 独特な、危険な生気を漂わせて、唱える——
「面を上げろ、武器をかざせ——戦闘開始!!」

 互いが吠えた。





「・・・魔帝国騎士、“漆黒の妖剣”ルィシア・ローリアス」
「・・・・・・」マルヴィナは一瞬考え——だが、堂々と、言った。「天界の民、“天性の剣姫”マルヴィナ」
 ルィシアが少しだけ、眉をひそめた。だが、それは一瞬。
 決定的な相手の発言に、マルヴィナは一瞬戸惑った、だがそれは一瞬。




 ——踏み込んだのは、ほぼ同時だった。

Re:   ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.620 )
日時: 2012/09/26 23:54
名前: 漆千音 ◆1OlDeM14xY (ID: 7K.EniuH)

 重い斬撃。
躱す。身をひねって半回転様に剣を振り下ろす。
斬撃の動きを止めぬまま、剣を頭上に、刃を刃で受け止める。
剣を離す。金属音。耳に障る。
腰を落とす、居合腰。
飛びのく、突き進む。
剣が擦れあう、ルィシアの気合一閃、炎をその剣に生じさせる。

(——火炎斬り!!)

 マルヴィナは顎をそらし、舌打ちした。魔法的な技も使うのか!
髪が数本、焼けていた。厄介だ、と思った。
上から、下へ。速い。重い。
言うまでもない、相当の実力者。マルヴィナとほぼ互角だった。一体誰に習ったのだろう、
どうして魔法的な技が使えるのだろう——そんな考えは、今は頭には入ってこなかった。ただひたすらに、
目の前の敵の動きを見極める。
このままの状況が続けば、あとは体力、あるいは刃のこぼれ具合がモノを言う。ろくに観察せずに取った剣は
あまり良い使われ方をしていなかったらしく、心もとない。
早く、なるべく早く。速攻で終わらせられるような技術を、自分は持っているだろうか。


 —————ある。


 たった一つだけ—— 一撃必殺の強力な技が、ある。
だが、成功するかはわからない。もともと物理的な戦いを主としてきたマルヴィナにとって、この技——
[魔法的な技]は非常に難易度が高い。キルガに手伝ってもらいながら、鍛錬し続けた、この技。
 ・・・やるしかない。できるかどうかじゃない。やる。

「————っは!!」
「!!」

 ルィシアの火炎斬り、再び突かれる不意。炎で隠された刃は見切ることができない。
「がっ!!」
 横腹を、剣が裂いた。たちまち紅くなる。思わずその場で、よろめいた。
(しまっ)
 マルヴィナが頬を引きつらせる、ルィシアが勝利の確信を笑みに乗せる。
「く、っ・・・・・・・・・・・・・・!!」
「終局!!」
 殺った。ルィシアは、そう思った。
 一瞬だけ。

 マルヴィナが鋭く叫んだ、その微妙な体勢から、彼女は後ろへ飛んだ——

 空中へ。

「なッ!?」
 さしものルィシアも驚いた。まさか——まさか、あの傷で、あの体勢で。
剣は上から振り下ろした。そんな中で宙返りなど——下手するとそのまま体に刃が突き刺さりかねないその行動。
あり得ない、だが実際にあったその行為に、ルィシアは一瞬、けれど確かに、あってはならない隙を作った。
 膝を深く折り、腰を落とし、マルヴィナは剣を横に、両手で持った。
意識を集中させる。

 雷光。稲妻。光電。稲光。光輝。

「————は」

 轟け。唸れ。気を溜めろ、溜め込んで——

「———ぁぁあ」

 溜め込み続け、そして————


「—————————————っあああああああああああああああ!!」








 ——————————————————爆発せよ!!









 稲妻が駆ける、響く轟音。黄金の雷電を、剣に生じさせ、一閃する、その名は。

 『雷光薙剣技』———

「・・・っギガスラッシュ————!!?」

 ルィシアの叫びは、最後まで聞こえなかった。
手加減など意識の外に飛ばされていたマルヴィナの一撃必殺を、驚愕したままもろに喰らい——
がっ、と声を上げ、背を強かに打ち据えて——ルィシアの手から、剣が抜け落ちた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・っ、は」
 剣を両手に構えたまま、マルヴィナは荒い息を繰り返した。
横に倒れるルィシアの姿を認識できるようになると——マルヴィナは、はっとして剣を地面に落とした。
乾いた金属音。疲労に、足の力が抜ける。
「かっ、た」
 どうにか呟くが——疲れすぎた。動けない。だが、戦いは終わっていない。
ルィシアは肩で荒く息をし、どうにか立ち上がろうとするが、ままならない。
——終わった。ルィシアは、思った。ここで、あたしも終わりか。

「——マルヴィナ!」

 チェルスの声がした。よく知っていた者の声が。
——そう、そして、あなたも言うんでしょう? ・・・とどめをさせ、と。


「殺すなよ。死なせるな! そいつには話がある、交代だ!」
「・・・ぅ、交代・・・?」
「あんたの役割は援護だ、戦うのは奴らに任せな——あんた、魔法使いか魔法戦士の経験は?」
 後者、と呟く。正直、喋る余裕さえ失われつつあった。
「悪いが戻ってくれ。その技で援護しな——」言いつつ、マルヴィナの額に指を突き付けるチェルス。淡い光。
回復したわけではない。だが——全身を巡る、変化の風。
異なる力を取り戻した、感覚。

「・・・え?」
「それであんたは魔法戦士にもどった、あと少しだ、終わったらなんかおごってやる」
 素早く言って——チェルスは、困惑顔のマルヴィナを押し、未だ倒れるルィシアの前に立った。



















漆千音))こんなことやっている暇があるなら勉強しろ——と言われそうだ。
     ・・・だって疲れたn((略
     さて寝るか。しっかし溜め込んだなこの話。((それを言うなら詰め込んだ、では? byキルガ

Re:   ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.621 )
日時: 2012/09/25 21:41
名前: 漆千音 ◆1OlDeM14xY (ID: 7K.EniuH)

 困惑しつつも自分を奮い立たせ、兵士の——ではなく、自らの剣を手にする。マルヴィナは、相手を見た。
観察したのではない、見ただけで、敵の弱点が分かる。それは魔法戦士の特技。
一年弱異なった『職』を経験したが、勘は鈍っていない。
「マルヴィナ、悪いが相手の守備を下げてくれ!」
「分かった」
 マルヴィナは集中し詠唱、 守減呪文改_ルカナン_ を唱える。魔物の気力を奪う。
そして、炎——ファイアフォースを送る——[全員に]。
「流れはこちらだ、一気に片を付ける!」
 疲労を払うように、マルヴィナは叫んだ。唱和が響く。

 それを見てチェルスは、よし、と頷くと——いつの間にか顔を上げていたルィシアと、視線をぶつけた。
「・・・なんの、つもり・・・?」
 自分を生かせ、と言った理由だ。変わらず深く息を吐きながら、麻痺する身体を動かそうとして——無理だった。
「言った通り——話がある」
 チェルスは相手に合わせた姿勢にはならず、ただ立ったまま話し続ける。
「わたしを復活させ——あいつはどうなっている」
「・・・さぁ?」
 ルィシアは目を閉じてもう一度息を吐く。「どうこうとかは、訊いていない」
「・・・『儀式』は行われていないんだな」
 チェルスはどこかで安堵しながら、言った。
「貴女が、逃げ出した、から・・・よっぽどのことがない限り、『儀式』とやらは、行われないでしょうよ」
 帝国に対する侮蔑を孕んだ物言いに、チェルスは眉をひそめた。心中で、やはりと思いながら。
「・・・もう一つだ」
 先陣を切るキルガとセリアス、後に続く里の民たちによって最後の魔物も、討伐される。
里の勝利に喜び、負傷者の手当てにまわりだした皆を見て、チェルスは問うた——

「里襲撃の命令を下したのは誰だ?」






 答えは、別の場所から返ってきた。






「わたくしですよ、“蒼穹嚆矢”殿」










 丁度、あるいは狙ってか。
チェルスの名を呼んだ者が、姿を現す——

「ッ!!」

 意識の飛びかけたマルヴィナが、息を吐くキルガとセリアスが、はっとそいつの姿に目を見開いた。
ひだひだしたローブ、毒を含んだ丁寧語、まるで妖鳥のような顔の、男。
 あの日、箱舟を襲った者、

“ —首尾はどうですか? イザヤールさん— ”

 闇竜に乗り、師匠の名を呼んだ、あいつが————・・・。




「「・・・ゲルニック・・・!!」」




 マルヴィナとチェルスに同時に名を呼ばれたそいつが、邪悪な笑顔を浮かべて立っていた。



「・・・久しいな、“毒牙の妖術師”」
「全くです。いきなり面倒を起こしてくださった、出来損ないの天使殿」
「面倒起こしはどっちだ」チェルスが吐き捨て、マルヴィナが叫んだ。
「貴様っ・・・!」
 その姿を目に映し、ゲルニックはわざとらしく驚いて見せた。
「おやおや・・・生きていたのですか。確か、イザヤールさんの」
「死にかけた、で止めたよ!」マルヴィナは怒気を孕んで、詰め寄った。「よくも、わたしの師匠をっ・・・!」
 ゲルニックは答えなかった。まるで軽くあしらうような小馬鹿にした笑みを崩さず、
再びチェルスへ視線を転じる——否。その先は——ルィシア。
はっとして、ルィシアが顔を上げた。憤怒、屈辱。だが、動けない。
「・・・無様な」
 少々、声色を低くして——ゲルニックは、杖を持ち直す。
マルヴィナが、チェルスが、そして何よりルィシア自身が——その先の行動が目に見えて、息を呑む。
前触れなしに、杖から生じた黒い雷を伴う、箱舟を襲ったそれに酷似した渦が、ルィシアに向かって放たれる!!

「————————————ッ!」

 マルヴィナは、何かを叫ぼうとした。だが、声にはならなかった。

 狙いが外れるわけがない。
それは、そこにいた——




「ぐっ!?」




 否、
そこに飛び込んだチェルスを、遠慮容赦なく襲った。

「  」
 ルィシアの驚愕の声は、だが、チェルスが受けきれなかった分に襲われ、意識が飛び——声には、ならなかった。
「チェルスっ」
 マルヴィナが叫ぶ、駈け寄ろうとして足をもつれさせる。限界が来た。
肩を支えるキルガ、武器を構えるセリアス。笑うゲルニック。
「おやおや・・・まさか敵を庇うとは。まぁ、いいでしょう」
 くくっ、と、厭らしく笑って。

「——いずれこの里も消滅する」

「!?」顔を上げる、戦慄する。
「このっ」斧を手に、だっと走るセリアス。
だが、その前に、ゲルニックは飛び去った。
 むなしく空をきった斧の上に、キメラの翼の羽が、嘲笑うようにはらりと落ちた——・・・。

Re:   ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.622 )
日時: 2012/09/25 22:38
名前: 漆千音 ◆1OlDeM14xY (ID: 7K.EniuH)

        4.    (しまった、明らかに配分間違えた。3.短っ)








「・・・説明を要求いたします」
「えーと・・・どこから?」

 二時_この世界で言う、二時間_、経った。
 ついにぶっ倒れて今は宿屋で安静にしているマルヴィナについてやっているキルガは、
頭を抱えるセリアスを後ろに超不機嫌顔のシェナを見て、苦笑していた。
「どっからでも来なさい」
「いや、そう言われても・・・セリアス?」
 困りながら、キルガは珍しく、少々非難がましく後ろのセリアスを見た。
「いや悪い・・・話すつもりはなかったんだが・・・」
 要するに——セリアスは、先ほど闘っていたことを、シェナに話したのである。
いくら寝ていたとはいえ、何故自分を呼ばなかったのか、まして故郷を守る戦いは自分が参加する義務がある、
熱なんてとっくに治まっているんだ寝ているのはケルシュがどーしてもって言って譲らないから仕方なしに云々、
機関銃のような勢いで参戦できなかった不満をまくしたてられ、セリアスがげんなり。
しかも、もう一つ——宿屋に寝ているもう一人、すなわち、ルィシア。
彼女の存在を見て、更に説明を要求され、説明下手なセリアスは遂に挫折しキルガに泣きついた——とまぁ、
大まかに現在の流れを説明すれば、このようなことである。
「話すつもりがないって言ったって、結果的にこうなっているじゃないか」
「イヤだって、ラスタバさん——いや、シェナ家か、に行ったら、起きてたからさ」
「・・・その恰好で行ったから、ばれたってわけか」
 セリアスは戦禍を被ってぼろぼろであった。
「・・・面目ない」
「ちょっと」シェナだ。「隠すつもりだったわけ?」
「・・・こんな感じになるだろうから説明は里の人に任せよう、ってことになっていただけだ」
 こんな感じ、つまり——説明を求められて、最終的にシェナチョップを喰らう確立を減らすための
男二人の(正確にはシェナチョップを最も恐れるセリアスがキルガに頼み込んで立ててもらった)案であった。
「・・・そーゆーこと」シェナは第一段階は納得したように頷くと——
いきなり身を翻してセリアスの頭に容赦ないチョップを叩きいれる。
 奇妙な絶叫。マルヴィナが起きる、とこれまた珍しくキルガの非難の眼。
「い、いや、悪い」
「シェナもだ」
「え?」
 脱力。
「『え?』じゃない」
「・・・・・・・・? ・・・とりあえずゴメンナサイ」
 反省っ気のない、いやそもそもなぜ非難されているか理解していない様子で謝るシェナ。
「・・・まぁとりあえず——だったら襲撃の話は誰かから訊くわ。
・・・下で寝ている敵を介抱している理由、訊かせてもらえる?」
 彼らにとって、ルィシアは憎むべき敵だ。マルヴィナを狙い、ハイリーを殺めた、冷徹な少女。
敵を助けるという概念の理解できないシェナは、やはり不機嫌な顔になった。
「・・・どこから話そうか・・・どこまで訊いた?」
「んー・・・戦って、勝って、そしたら襲われて、助けろって言われて助けた。
・・・っていう感じの話なら聞いたけど」
 大まかすぎる説明に再び脱力。面目ない、と再びセリアスが言い、首を引っこめた。

「えっと、まず最初に言っておくが——今、この里にはマルヴィナの『記憶の先祖』がいる」
 シェナが目を開いた。あ、それ言ってない、とセリアスが思ったのは余談。
「それ、まさか・・・“蒼穹嚆矢”!?」
「あぁ。しかも、何故か実体で。
その理由は知らないから説明は省くが、ともかくその人も一緒に戦っていたんだ」
 いきなり出てきたその名に驚愕を隠さないまま、シェナは部屋の扉の横に座る。セリアスは立たせたままだが。

「それで、戦いの途中でルィシアが割り込んできて、マルヴィナと一対一で闘ったんだ。
この前から練習していた剣技でマルヴィナが勝利したんだが、その影響で疲労して、こうやって寝ている。
・・・なんとか全ての敵を倒したところで、襲撃の首謀者——先日闇竜の上に載って箱舟を襲ってきた帝国の
ゲルニックって将軍が現れて、恐らく処刑としてルィシアに一種の攻撃魔法を唱えたんだが、
“蒼穹嚆矢”がそれを庇って——けれど少しはその被害を受けたらしく、現在気絶。
助けると言い出したのは“蒼穹嚆矢”だ。ゲルニックが言っていたんだが、彼女はどうやら天使だったらしい。
恐らく僕らよりずっと上位だ。となると、掟に従い、僕らは彼女には逆らえないということになる——
——以上が理由だ」

 感服してセリアスが「おー」と思わず拍手。
さすがはキルガ、と呆れ半分、納得半分で頷くシェナ。セリアスとは大違いだ——とは、思うだけにしておいたが。
「・・・そーゆーこと。・・・天使って義理堅いのね。・・・あ、皮肉じゃなくて」
 素直すぎた感想に慌てて補足をいれ、シェナは言った。
「・・・その掟が、こんなことを起こしてしまったんだけれどね」
 キルガが、マルヴィナを見る。
箱舟の、二両目で起きた、あの出来事。
剣を向ける師匠に逆らえず、その剣を受け、悔咎に叫んだマルヴィナを思い出す。
 ・・・あの日から、彼女は変わった。前より、笑わなくなった。ふと気づけば、哀しそうな顔をしていた。
 ——信じていた者に、裏切られたから。
 キルガの言った意味が分かって、セリアスもシェナも、言葉に窮した。・・・特に、シェナは。
「・・・僕らは、裏切らない。・・・絶対に」
「あぁ。もちろんだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・えぇ」
 即答したセリアスに対し——シェナは、すぐに頷けなかった。




 頷けない秘密を、それこそ今言ってはいけない真実を、まだ隠していたから。


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