二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- 【二次創作】泡沫【短編集】(リクエスト募集)
- 日時: 2013/04/28 20:26
- 名前: 雲雀 (ID: Ma3wYmlW)
ご訪問ありがとうございます。
初めまして、雲雀といいます。
ここでは作者の嗜好を中心に、二次小説を書かせていただきます。
同人や乙女ゲームに免疫のない方および苦手な方はご遠慮ください。
また年齢制限があるようなものはカキコのルール上、認められていないので書きません。
18歳未満の方も安心して読んでください。作者自身も18歳未満です。というか、そもそも書けません。
作者の文章能力は他の人と比較して著しく欠落しています。
作品のイメージが損なわれる場合も御座いますので、そのあたりのことは自分で判断してくだい。
たまに創作物やオトメイト作品以外の物も書いたりします。
以上のことをご理解の上でご覧ください。楽しんでいただければ、幸いです。
■取り扱い
【オトメイト】
◇緋色の欠片 ◆薄桜鬼 ◇夏空のモノローグ ◆ワンドオブフォーチュン ◇二世の契り
◆翡翠の雫 ◇蒼黒の楔 ◆ヒイロノカケラ ◇神なる君と ◆AMNESIA
◇猛獣使いと王子様 ◆華鬼 ◇DIABOLIK LOVERS -ディアボリックラヴァーズ-
【ジャンプ】
◇家庭教師ヒットマンREBОRN! ◆D.Gray-man ◇黒子のバスケ
◆magico ◇テガミバチ ◆めだかボックス
【Gファンタジー】
◇君と僕。 ◆Pandora Hearts ◇黒執事
◆デュラララ!! ◇キューティクル探偵因幡
【LaLa】
◇夏目友人帳 ◆ヴァンパイア騎士 ◇狼陛下の花嫁
◆おいらんガール ◇サクラの秘事
【その他】
◇ボーカロイド ◆靴下にゃんこ ◇Sentimental Circus
◆FINAL FANTASY ◇THE LAST STORY ◆イナズマイレブン
◇カゲロウプロジェクト ◆終焉ノ栞プロジェクト ◇創作物
■お客様
◇マッカナポスト ◆亜瑠都様 ◇ツン萌え ◆蟻様 ◇亜鶴様 ◆カノン様 ◇素海龍様 ◆苗字様
■いちまんきかく
10000hit Thanks >>208
◇素海龍様 家庭教師ヒットマンリボーン/ヴァリアー 【くるくるまわる/ヴァリアー】 >>211
◆苗字様 夏目友人帳
参照が10000を超えたので、そのお礼です。
忘れ去られているとは思いますが、かならず書きます。
■更新履歴
<緋色の欠片>
【その声に。/祐一×珠紀】 >>1
【二人の彼】 >>34 【触れた指先/祐一×珠紀】 >>73
【記憶に残る花はあまりにも鮮やかで/真弘×珠紀】 >>81(一部) >>82(二部)
【想うことが罪だとしても/ゲントウカ×玉依姫】 >>146 【記憶の果て/祐一×珠紀】 >>158
【守りたい人/慎司×珠紀】
ACT1【分かたれた結末を想う。】 >>180
ACT2【独白】 >>181
ACT3【夕暮れに消える。】 >>187
ACT4【愛してるに耳を塞ぐ。】 >>201
ACT5【木漏れ日の記憶。】 >>203
<蒼黒の楔>
【花火】 >>13 【傍に、と消える声/拓磨×珠紀】 >>46 【花ノ香ノ/拓磨の頁】 >>70
【刹那ノ蒼/祐一の頁】 >>71 【羽休メノ刻/真弘の頁】 >>79 【褪メユク残香/卓の頁】 >>90
【春ノ呼声/慎司の頁】 >>102 【灰色ノ空/遼の頁】 >>153
<ヒイロノカケラ>
【あなたしか見えない/怜×沙弥】 >>39
<薄桜鬼>
【永久の軌跡/総司×千鶴】 >>6 【巡りゆく桜の記憶/総司×千鶴】 >>111
<ワンドオブフォーチュン>
【今日の永遠/エスト×ルル】 >>47
<夏空のモノローグ>
【いつかが終わるその日まで/葵&陽&涼太】 >>60 【気づいてしまった。/涼太×葵】 >>68
<神なる君と>
【それはもう過去のこと。/鳴海×咲耶】 >>67
<DIABOLIK LOVERS -ディアボリックラヴァーズ->
【堕ちる瞬間】 >>156
<家庭教師ヒットマンREBОRN!>
【雲雀家四人兄弟/アラウディ&風(大人ver)&雲雀恭弥(10年後)&雲雀恭弥(10年前)】 >>9
【好きを憧れで捩じ伏せる。/ベルフェゴール&フラン】 >>186
【くるくるまわる。/ヴァリアー】 >>211
<黒子のバスケ>
【甘いお菓子には変わらない/黒子&木吉】 >>59
<めだかボックス>
【気まぐれな世界の終わり/善吉&禊】 >>177
<君と僕。>
【その言葉に救われる。/悠太&祐希】 >>57 【17回目のハロウィン/悠太&祐希&要&春】 >>61
【桜日和/浅羽story&塚原story&松岡story】 >>152
<Pandora Hearts>
【終わりに重ねる掌】 >>131
<キューティクル探偵因幡>
【その声をどうか。/圭&遥】 >>27 【はじめまして、と笑う。/圭&遥】 >>213
<蛍火の杜へ>
【いつまでも。/ギン×蛍】 >>147
<ヴァンパイア騎士>
【ただあなたの幸せを。/零×優姫】 >>105 【黒ノ独白/零×優姫】 >>121 【二度と帰れない場所/零×優姫】 >>126
【面影−オモカゲ−/枢×優姫】 >>136 【虚像/枢×優姫】 >>160
<FINAL FANTASY>
【架かる虹の麓へ】 >>124
<カゲロウプロジェクト>
【あの日、いつか。/シンタローとコノハ】 >>199 【この世界に、今。/シンタローとコノハ】 >>200
【それでも、世界。/クロハ】 >>209 【伝えたいことがある。/シンタロー】 >>214
【延命プレリュード/シンタローとコノハ】 >>220【深海シンフォニー/シンタローとクロハ】 >>221
【さよならにキスをする。/シンタローとアヤノ】 >>222 【Please tell me my thought/シンタローとカノ】 >>224
◇しりーず
シンタローとコノハとクロハと遥が兄弟な話。
【朝に見る。】 >>223
<終焉ノ栞プロジェクト>
◇しりーず
【0と1のラブレター/A弥】 >>225 【届くことのないさよならを/C太】 >>226
【君が0になる前に/A弥】 >>231
<ボーカロイド>
【ロミオとシンデレラ/初音ミク】 >>2 【五月雨恋歌/初音ミク】 >>3 【秋風恋歌/巡音ルカ】 >>5 >>52
【暗い森のサーカス/初音ミク&鏡音リン&鏡音レン】 >>7
【人柱アリス/初音ミク&鏡音リン&鏡音レン&KAITО&MEIKО】 >>8 【月光と黒/KAITО】>>10
【鬼と娘/KAITО】 >>14 【大和撫子、咲き誇れ/初音ミク】 >>15 【夢の浮橋/巡音ルカ】 >>35
【からくりピエロ/初音ミク】>>45 【Trick and Treat/鏡音リン&鏡音レン】 >>62
【つきうさぎ/初音ミク】 >>63 【夢と葉桜/初音ミク】 >>125 【会いたい−Dear My Friend−/GUMI】 >>139
【右肩の蝶/鏡音リン&鏡音レン】 >>163 【背徳の記憶〜The Lost Memory〜/鏡音レン&KAITO&神威がくぽ】 >>164
<Sentimental Circus>
【いつかの温もり】 >>50 【幸福論】 >>166
<創作>
【微睡み/Short Story】 >>4 【譬えばそれを。】 >>18 【境界線】 >>38
【さよならの記憶】 >>42 【二度はないから】 >>51 【切ない優しさ】 >>53
【思慕/Short Story】 >>56 【一番星に消える】 >>58
【Disappearance】 >>64 【懺悔と後悔】 >>65 【謝罪と切望】 >>66 【夢物語—ユメモノガタリ—】 >>69
【瞬間センチメンタル】 >>72 【光と闇の狂想曲】 >>78 【螺旋の渇望】 >>80
【思慕の狂想曲—シボノラプソディー—】 >>140 【月下で踊る白うさぎ】 >>142
【鮮やかな黒と無色彩の真紅−Deal of black and crimson−】 >>144
【永遠の物語−Eternal story−】 >>145 【永遠の空白】 >>157 【瞬間/Short Story】 >>162
【薄紫の手紙】 >>171 【color】 >>191 【慟哭】 >>196
【アスタリスク】 >>202
<そーさく。>
【出鱈目セレクション】 >>204 【感情制御。】 >>207 【この思いが届くなら。】 >>210
■もう戻れないあの日々を、どうか。
01/あなたの傍にいられるだけで幸せ 【この思いが届くなら。】 >>210
02/口づけだけで満たされる想い 【二度と帰れない場所/零×優姫】 >>126
03/幸せになろうね 【記憶に残る花はあまりにも鮮やかで/真弘×珠紀】 >>81(一部) >>82(二部)
04/どうかあなただけはそのままで 【ただあなたの幸せを。/零×優姫】 >>105
05/あなたと過ごした日々 【いつまでも。/ギン×蛍】 >>147
06/触れ合った指先のぬくもり 【気づいてしまった。/涼太×葵】 >>68
07/追憶 【それはもう過去のこと。/鳴海×咲耶】 >>67
08/傍にいて 【その言葉に救われる。/悠太&祐希】 >>57
09/大切すぎて 【触れた指先/祐一×珠紀】 >>73
10/ずっと傍にいたから 【譬えばそれを。】 >>18
■求めたものが、あまりにも儚い存在だと知る願い
01/この瞬間が 【瞬間/Short Story】 >>162
02/今だけは 【二度はないから】 >>51
03/人というぬくもりに 【感情制御。】 >>207
04/君に会えるなら 【伝えたいことがある。】 >>214
05/静かに眠る夜 【いつかの温もり】 >>50
06/心地いい君と 【深海シンフォニー】 >>221
07/ごめんね 【謝罪と切望】 >>66
08/触れていたぬくもりが
09/痛みを抉る 【切ない優しさ】 >>53
10/もしも願いが叶うなら
■君におくる。
01/君が好きでくるしい。 >>215
02/君が嫌いすぎてわらえる。 >>216
03/君が幸せならそれでいい。 >>217
04/君が許せなくてつらい。 >>218
05/君がいてくれてうれしい。 >>219
自分で勝手につくりました。
途中からお話の中にいれるのを忘れてたので、まとめて書いておきました。興味があればどうそ。
もう戻れないあの日々を、どうか。 >>212
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- Re: 【二次創作】泡沫【短編集】 ( No.143 )
- 日時: 2012/03/25 16:30
- 名前: 雲雀 (ID: Rk/dP/2H)
亜鶴様
返信が遅れてしまって、申し訳ありません!
久方振りになってしまいましたが、雲雀です。
頑張ってくださいね。
亜鶴様が手がけたゲームをプレイできる日を楽しみにしております^^
個人的に絵師も捨てがたいですが、シナリオとかもやってみたいです←
「お仲間だ!」久しぶりでしたよね(´∀`*)
このままどんどん更新していきましょう。目指せ10回!
僕の言葉で励ますことが出来たのなら、幸いです。
賛成してくれるんですか!?
やった、お仲間だ!←
テストの結果は……英語が悲惨でしたね。
思い出したくもない←
きっとみんな同じような気持ちだと思います。
焦らずに頑張れば大丈夫です。
こんなこと言えるような立場じゃなかった……!
お気を悪くされたら、申し訳ありません<(_ _)>
いえいえ、真っ黒なのは僕の心ですから。
亜鶴様の心は純白です(`・ω・´)
亜鶴様の将来のお話、とても参考になりました^^
貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございます<(_ _)>
応援されたからには、頑張ります。
お互いに宇宙の果て……(´∀`*)
そうですね。もうそれが一番いいですね。
ありえませんよ!
もちろん見ました。
ニコニコ動画ではないですが、パソコンの方で見させていただきました。
一般で……!お疲れ様です。
絵は……僕のいる美術部ではかなり不評でした……。
映像としての絵は好きなんですが、公式サイトのトップの絵が少し苦手です。
お前みたいな奴に言われたくないと言われてしまえばそれまでなんですが←
でも夕暮れのシーンとかを見てると、緋色の欠片らしい哀愁があって、思わず見入ってました。
なんだかんだ言っても、好きなんだと思います。
ご来訪いただき、誠にありがとうございました。
またのご来訪、心よりお待ちしております。
- Re: 【二次創作】泡沫【短編集】 ( No.144 )
- 日時: 2012/03/26 13:19
- 名前: 雲雀 (ID: Rk/dP/2H)
【鮮やかな黒と無色彩の真紅−Deal of black and crimson−】
「きれいな宝石でしょう?」
少女は真っ赤な宝石を掌で転がしながら、くすりと笑う。
少女の足元には、本来目があるべき場所に包帯を巻かれた黒猫の人形が落ちている。
首には紫のスカーフを巻いていて、真っ黒な衣装の裾からはヒラヒラしたレースのついたシャツがのぞき出ている。
宝石は妖しく光る。
人形は鳴きもしない。
「ディールは呪われた眸をもつ黒猫なの」
少女は人形を拾い上げ、人形に巻かれている包帯を指先でそっと弾く。
包帯は紅く滲み出し、人形の頬は溢れた液体で濡れた。
頬からこぼれ落ちたそれは、やがて冷たい床の上に落ちる。
「ディールが初めて見たものは、母親、兄弟……彼らはたちまち灰になった」
彼の眸は、決して自分を害そうとはしなかった。
ただ、彼の眸にうつる全ての生命を灰にした。
彼は泣いた。
自分が奪ってしまった全ての生命を想って。
自分が縛られた醜い運命を憎んで。
彼の眸は、その心のようにきれいだった。
「ディールは泣いて、泣いて、泣いて……神に祈った」
自分がもう、誰の命も奪わないようにと。
誰かがもう、自分のような運命を辿らないようにと。
「神は代償として、彼の眸を奪った」
彼が流す鮮血は、その時の痛みそのもの。
彼は苦しんだ。
激しい痛みと、美しい世界との別れに。
彼は喜んだ。
色を失わない世界がそこにあることに。
彼の眸にはいつも、灰色しかうつらなかったから。
「だからこの子は【DEAL】……取引、なの」
願いのかわりに、光を失った。
彼の眸は、もう何もうつさない。
願いと代償。
これも立派な取引でしょう?
「彼の絶望は、今でもこの宝石に宿ってる……悲しみ、憎しみ、怒り、愛しさ」
彼の生から、一切の色を奪った絶望が、
彼の生から、一切の生命を奪った絶望が、
彼は悲しんだ。ぬくもりに触れられない孤独に。
彼は憎んだ。自分に宛てがわれた運命に。
彼は怒った。全ての生命を奪う自分の眸に。
彼は愛した。閉じた瞼の先にある美しい世界を。
「彼の眸はどこにあるかって?ふふ……あなたもさっき見たじゃない。思い出せないなら、この宝石を彼の瞼に入れてあげて……」
真っ赤な瞳が見えたなら、鎖はもうほどけない。
鮮やかな黒が心を支配したならば、あなたの心は彼のもの。
最後に美しい涙が見えたなら、彼があなたを愛した証拠。
世界との別れは、無色彩でありながら鮮やかに。
■後書き
【月下で踊る白うさぎ】のシリーズです。
今回使ったのは「ディール」で、「取引」という意味です。
- Re: 【二次創作】泡沫【短編集】 ( No.145 )
- 日時: 2012/03/31 19:32
- 名前: 雲雀 (ID: Rk/dP/2H)
【永遠の物語−Eternal story−】
またひとつ、世界が終わった。
始まりを否定した白も、終わりを渇望した黒も、
繰り返される世界に気づかないまま。
消えてなくなることさえ、叶わずに。
「物語はいつも、こうして終わりを迎えるの」
少女は涙を流しながら、開いていた絵本をゆっくりと閉じた。
今まで数え切れないほどの絵本を読んできたが、物語の最後はいつも冒頭の文章で終わる。
世界は終わる。
そして、再び始まりを繰り返す。
「繰り返される世界の中で、ロンドはいつもあの人を探す」
始まりを迎えた世界の中で、終わりを迎えた世界の果てで、
輪廻転生を繰り返し、何度でも心に焼きついた面影を探す。
堆く積まれた絵本の上に、顔を包帯で巻かれたくまのぬいぐるみが置かれている。
顔は黒と白のつぎはぎでできていて、首には真っ白なスカーフを巻いている。
真っ黒な衣装の胸元には、真っ白な薔薇の花が二輪。
薔薇の花びらが散ることはなく、それは永遠の時を意味していた。
「ロンドは何度も何度も生まれ変わって……あの人を探し続けた」
けれど、二人の生が重なることはなかった。
どんなに求めても、どんなに願っても、
繰り返される世界の中で、二人が再び出逢うことはなかった。
「ロンドは泣いた……心に残る、あの人の面影を探して」
生命は何度もその姿を変え、再びこの世に生まれ落ちる。
形は変われど、魂は永遠に存在し続ける。
幾億の時を超えても、変わらない想い。
心に刻みつけられた面影も、声も、ぬくもりも、
永遠の中で色褪せることなく、切ないほどの遠い記憶は涙に変わる。
「幾億の生を繰り返し、再び深い眠りについた時……ロンドは初めて、あの人の心に触れた」
交わらない生。
出逢った事実。
別れた事実。
褪せない記憶。
褪せない想い。
そして再び、世界は終わる。
「ロンドの胸元にある薔薇の花は、二人の約束なの」
少女は濡れた瞳のまま、僅かに微笑む。
ぬいぐるみの頬を伝うのは、透明な涙。
「白い薔薇の花びらが紅く染まり、終わりを迎えた世界のなかで散ったなら、きっと二人は再び巡り逢えるでしょう」
少女の手から、銀色の砂が滑り落ちる。
それらはきらきらと輝きながら、時を刻む砂時計の中に次々と入っていく。
ぬいぐるみがぽてり、と絵本の上に倒れる。
少女は再び、涙を流す。
「“ またひとつ、世界が終わった ”」
薔薇の花びらは白のまま。
ぬいぐるみの頬には透明な涙。
少女の手には涙で濡れた絵本。
灰色になる世界。
「今回も……二人は出逢えなかったのね」
力をなくした手で支えきれなくなった絵本。
ばさり、と音をたてながら床に落ちる。
その音は、少女の耳に届いていたのかいなかったのか。
「それでも……また繰り返すの。世界も……願いも……」
終焉の鎖から解き放たれた世界は、
始まりの枷をはめられる。
砂時計が、再び時を刻み出した。
「だからこの子は【RONDO】……輪廻曲、なの」
繰り返したその先に、たとえあなたがいなくても。
何度でも、終わりと始まりを迎えるのでしょう。
「二人の願いは薔薇の花に託された……世界はただ繰り返すだけ……」
過ぎ去った過去。
刻まれる現在。
訪れる未来。
存在し続ける時間と空間。
終わりと始まりの中で、世界は何を願うのか。
「今度は……どんな終わりを迎えるのでしょうね」
白い薔薇の花びらが紅く染まり、終わりを迎えた世界のなかで散ったなら、きっと二人は再び巡り逢えるでしょう。
月が太陽に食い散らかされた瞬間に、涙で願いを繋いだなら、この想いは永遠になるでしょう。
(「永遠」の意味、)
(今はただそれだけを)
■後書き
【月下で踊る白うさぎ】【鮮やかな黒と無色彩の真紅−Deal of black and crimson−】のシリーズです。
今回使ったのは「ロンド」で、「輪廻曲」という意味です。
- Re: 【二次創作】泡沫【短編集】 ( No.146 )
- 日時: 2012/09/18 17:45
- 名前: 雲雀 (ID: QGuPLo0Y)
- 参照: ■緋色の欠片 アニメ放送記念
【想うことが罪だとしても/ゲントウカ×玉依姫】
——————彼女はとても強く、美しい女性だった。
人間に化物と恐れられてきた自分にも、彼女は優しく微笑んでくれる。
幾人もの人間を喰い殺し、孤独の中で死に絶えようとしていた自分にも、彼女はぬくもりを与えてくれる。
自分にとって彼女は、生きる意味、そして、この世界で唯一の希望だった。
彼女の傍で、彼女を守ることが出来るなら、どんなに幸せだろう。
花のような笑顔も、川のせせらぎのような声も、光のようなあたたかな手も、星のように美しい涙も、全てが愛しかった。
たとえ彼女のために命を落とすことになったとしても、本望だと、そう思った。
◇
紅い葉が舞い落ちる静かな世界の中に、彼女は佇んでいた。
長くのびた髪は風に攫われ、それらを掻きあげるように、彼女は自らの髪に触れた。
その光景を眩しく感じ、目を細める。
狭まった視野にうつる彼女の姿。
それはひとつの幻のようで、手を伸ばしても触れられないような気がした。
いや、実際、そうなのかもしれない。
彼女は姫で、自分は妖。
共に在ろうと願っても、決して交われない存在。
傍から見ればさぞ滑稽だろうと、彼は薄く笑った。
決して愛してはいけない存在。
でも、惹かれずには、愛さずにはいられないから。
ならばせめて、遠くから想おうと。
自分には、彼女を幸せにすることも、幸せにする資格もないから。
だから今は、遠くから見つめていよう。
届かなくても、彼女が笑っていてくれるなら、微かに痛む胸も、幸福で満たされるから。
「姫……どうか、あなたを想う罪を許してください」
想いを綴る、儚い贖罪。
呟いた言葉は、刹那におきた風によって攫われた。
きっと、彼女には届かない。
——————ゲントウカ。
誰よりも、何よりも、愛しい存在。
たとえこの想いが罪だとしても、きっと消えることはないだろう。
「愛してる……」
届かないように、小さな声で言葉を紡ぐ。
人と関わりをもたなかったせいなのか、元来からの性質なのか、その言葉は酷く不器用だったが、自分の口元が緩く弧を描いているのがわかった。
こちらに気付いたのか、彼女が歩み寄ってくる。
「ゲントウカ」
恋焦がれた彼女の声音。
胸を満たす安らぎと、僅かに残る痛み。
そして、切ないほどの愛しさ。
どうかいつまでも、彼女が笑顔であれるように。
「たとえどれほどの時が経とうとも、あなただけをお慕いしております……」
この想いが、永久に届かなくても。
■後書き
緋色の欠片がアニメ本放送ということで、お祝いに書かせていただきました。
個人的に遼の登場が気になるのですが……どうなんでしょう。
蒼黒の楔 緋色の欠片3 明日への扉 のサンプルボイスがとても素敵だったので、今回の話にも使わせていただきました。
まだ聴いていない方は、是非聴いてみてください。
- Re: 【二次創作】泡沫【短編集】 ( No.147 )
- 日時: 2012/12/17 15:04
- 名前: 雲雀 (ID: QGuPLo0Y)
- 参照: http://www.hotarubi.info/
【いつまでも。/ギン×蛍】
「やっとお前に触れられる」
今でも心に残る、彼の最後の言葉。
最初で最後と分かっていても、そのぬくもりに縋り付くことを止められなかった。
何度も触れたいと願った彼の体温と、優しく抱きしめてくれる彼の腕。
それは、他のどんな瞬間よりも、幸せなものだった。
「好きだよ」
まるで蛍のように淡く夜に溶けていくギン。その光が届けた幻だったのか。
微かに残る彼のぬくもりに縋って泣いていた私の耳に、その言葉が聴こえた気がした。
◇
「ここに来るのも久しぶりね……」
幾つもの縄を巻かれた、寂れた鳥居。
ここは彼と何度も会う約束をした場所で、今でも当時のことをよく覚えている。
初めて彼の名前を聞いたことや、制服が変わる度に見せに来たこと。
彼の表情は狐の面で隠されていて見えなかったが、なんとなく、でも確かに、優しく笑ってくれていたような気がする。
「ギン……」
夏の蒸し暑い風が、頬を撫でて通り過ぎていった。
呼んだ名前に返事があるはずもなく、森のざわめきさえ、今は遠く離れているような気がする。
それらを振り切るように空を仰いで、薄く笑った。
「今年も会いに来たよ」
木々が揺れる。
そのざわめきの向こうに、ギンがいる気がして————
私は夢中で、ギンとの思い出の場所を駆け出していた。
「……っ……は……」
荒い息を整えながら、懐かしい風景を目にうつす。
そこは最後に訪れたときと、何ひとつ変わっていなかった。
「ここも……全然変わらないのね」
嬉しく思う反面、変わらないあの日の姿を思い出して、少し心が痛んだ。
初めて、ギンに触れた場所。
最後に、ギンに触れた場所。
あの瞬間は、他のどんな瞬間よりも幸せで、
やっと触れられた喜びと、消えていくギンの体温に、ただ涙を流した。
きっと、あれ以上に幸せな瞬間は、もう私には訪れないだろうと思っている。
ギンのいない世界はあまりにも寂しくて、しばらくは夏がくるのを待ち遠しくは感じられなかったけれど。
彼といた夏の思い出も、声も、笑顔も、体温も、私の心に刻みつけられているから。
だから、また来たいと思った。
ギンと出逢った、この森に。
ギンと過ごした、この森に。
ギンとの思い出が残る、緑深いこの森に。
「ギン……」
あなたがいなくなってしまった寂しさは、まだ拭えない。
もう二度と逢えない悲しさも、全て拭いさることはできない。
でも、最後に触れたあなたのぬくもりと、何にもかえ難いあなたとの思い出を抱いて、生きていくと決めたから。
「頑張るよ……私」
青く澄み渡る空に向かって、満面の笑みを見せる。
その空はギンと過ごした夏の空とよく似ていて、昔に戻ったような錯覚を覚えた。
————刹那。
「蛍」
懐かしい声が、私を呼んだ。
振り返る間もなく、あたたかな抱擁が私を包み込む。
「ありがとう。今年も会いに来てくれたんだね」
優しい、声。
そして、恋焦がれた、彼のぬくもり。
「ギっ……!」
強い風が吹き、あたたかな抱擁は終わりを迎える。
最後の夏のように、消えていくぬくもり。
「 」
すぐ傍で、彼が笑ったような気がした。
忘れられない彼の笑顔が脳裏をよぎって、切なさと、愛しさが混じった涙が溢れる。
最後に囁かれた言葉は、私の心を捉えて離さなかった。
「うん……ギン。ありがとう……」
両手を胸のところで強く握り締める。
確かに触れた体温と、彼が言ってくれた言葉を忘れないように。
『きっとまたいつか、会える日がくる』
その時は、ずっと一緒にいよう。
その約束だけで、私は頑張れるから。
『きっと』その言葉を信じて、頑張るから。
「ありがとう」
その言葉が、あなたに届くと信じて。
■後書き
幸せな終わりを見てみたかった。
でも、やっぱり、この切なさが好きです。
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