複雑・ファジー小説

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・・・夕映えのリベラリスト・・・(自由主義者の物語)
日時: 2011/06/30 17:09
名前: ザクラ・ノイザ (ID: jusjvnjl)

 こんにちわ。はじめてのかたもそうでないかたも、ぜひ!読んでいってください!!

・このスレッドのルール
(お願い)このスレッドにレスをしたら、適当な頃に削除してください。最終的には小説本文だけを残していきたいので…。


 この小説に出てきた用語を覚えるのが難しい、との意見をいただいたので!
 下のスレに用語集みたいなものを作りました!!
 >>116


【スレ主さんへ:】←アドバイス(?)ありがとうございます!


ではスタート!!!

 
 夜、満月だったかな。星がすごくきれいだった。
 僕は、そんな宝石が輝くような 夜 に家を飛び出した。
 
 
 なぜって?それはねぇ・・・

 

  ・・・・・・僕が、犯罪を犯してしまったからなんだよ・・・・・・



 これから、どうやって生きていけばいいんだろう?
 お金も着替えも食料も・・・
  全部、家においてきちゃったよ・・・。
 

 引き返せないよ?もう、・・・戻れないんだ・・・。

 

 少年は濡れた瞳をごしごしと拭うと笑った。

 「あははははー!まぁ、いっか。僕はこれで自由なんだもん!」


 少年は、暗い夜の街を歩く。
 楽しそうに、ゆかいそうに、面白そうに、悲しい歌を歌いながら。
   母の歌った子守唄。優しく切ない思い出の歌。

 

Re: ・・・夕映えのリベラリスト・・・(自由主義者の物語) ( No.36 )
日時: 2011/04/05 10:25
名前: ザクラ・ノイザ (ID: jusjvnjl)
参照: http:

 次の日の朝、学校は休校だと連絡がはいった。
 赤木礼が撃たれた事件で警察が取り調べを行う、というのが理由らしい。
 
 オレは夜中に病院にいって消毒と包帯をまいてもらった。
 オレが机に向かいつつ(勉強中)包帯でまかれた左腕をながめていると、鎖維が言った。
 「お兄さん、その腕大丈夫?僕の感覚だと、けっこう深く斬った感じなんだけど?」

 心配そうな顔をする鎖維にオレはほほえんだ。
 「一応大丈夫みたいだよ。うん、医者もたいしたこと無いって言ってたし!」
 ちなみにこれは
       ———嘘だ———
 
 昨日の夜、夜だから子供をつれて医者には行けない、と言い鎖維を家においていったのだが・・。
 医者にはこう言われた。
  「けっこうザックリ行っちゃってますね。えぇ〜と。料理中に間違えて斬っちゃったんだってね?痛かっただろう・・・。」
 入院しないか?といわれたが断った。
 高校性でバイトのお金で精一杯生活している身だ。
 そう言うと、医者は心配気にしぶしぶ了解してくれた。
 
 この傷はつまり、入院するかしないか、迷うくらい深い傷ということだ。
 オレにもよく分からないたとえなのだが・・・・。

 「な、なぁ、ところで鎖維。{ピエロ}についてもっと詳しく教えて欲しいんだけど?」
 ふと昨日の夜のことを思い出し、オレは鎖維にたずねる。

 鎖維は、朝陽が差し込む窓辺によりかかりつつ、だるそうに言った。
 「・・・僕だってそんなに詳しいわけじゃないからね?
  ん〜そうだな、簡単にまとめてみると、ピエロは人間と呪いとの間に生まれた生物で、人間には無いような能力を持っているんだよ。
 あ、あと全ピエロ共通の能力が、空を飛べるって事だよ。」

 コクコクとうなずくオレ。
 (・・・だから、女の子と助けに来た仲間は浮いていたのか!ってことは、助けにきた仲間もピエロってことになるんだな。)

 鎖維は続けた。
 「ピエロは痛みを感じないし、能力だってある。人間は危機感を感じたんだよ。
  このままだと、ピエロに世界はのっとられる、ってね。そうおもった人間達は、さっそくピエロの家族狩りをしたんだよ。
 家族狩り、って言ってもピエロの親を殺して、子供のピエロを【兵士】にするって内容なんだけどね。」

 鎖維は前髪で自分の瞳を隠すようにうつむいた。
 「だから、兵士に使われているほとんどのピエロは親を目の前で殺された経験があるってことだよ。」

 「・・・・・」
 オレは言葉につまった。
 昨日のよるの少女の悲鳴が頭のなかでジンジンと鳴り響く。

 「ピエロはさぁ、親を殺された記憶とかを封印させられてるんだよ。記憶は兵士には必要ない!って、封印の石とか言うやつで。
 でも、衝撃的なことが起こりすぎると、封印していたはずの記憶がよみがえって、あんな感じに、・・・昨日の女みたいになっちゃうんだってさ。」

 「・・・じゃぁ、昨日何か衝撃的なことが起こったんだ。女の子にとって・・・。なんだろうね?」

 誰もわかるはずがない、と思いつつ、オレは鎖維にたずねてみた。
 鎖維もやはり分からないらしく、単純に首をふった。

 オレの頭のなかに、学校でおこった事件の存在はすでに薄れてきていた。
 それくらい昨日起こったことがオレの中に色濃く残っているという事なのだろう。



 少年、鎖維は青騎野瑞を不思議そうにながめた。
 ——・・・この人、昨日あんなに現実ばなれした事に巻き込まれてたのに、どうしていつもどうりなんだ?
 ——僕が会ってきた人間達はみんな次の日にはもう話す事すらできなかったのに・・・。

 机に向かって勉強をする青年に異様なものを感じつつ、鎖維は青年の後ろ姿を見ていた。

 この男は普通じゃない。
 会ったときからそう思ってはいた。
 自分が言った{ピエロ}をおびき寄せるための呪文を無意識に聞いていて、しかも誰がその言葉を発していたのかまで、探し当てていたからだ。
 そして、目の前の男が異常だと確信したのは呪いで彼を襲ったときだった。
 心を半分近く食え!と心の中で命令したはずが、蟻一匹分しか食べることが出来なかった。
 
 鎖維は青騎野 瑞の背中をにらみつけた。

 そして何より、この男は昨日、僕が振り下ろした刃を受け止めたのだ。
 普通の人間なら、速すぎて見えないし反応できないはずの刃を一瞬で僕の目の前まできて、止めた。
 どうして女をかばったのかは分からないが、ヤツは異常だ。

 「・・・ん?鎖維、どうした?」
 僕が睨んでいることを感じたのか、青騎野 瑞が振り向いた。
 ———さすが。勘がいいんだね。お兄さんは・・・。

 僕はすぐに笑顔をつくり言った。
 「何でもないよ。高校性って勉強があって大変だね。」
 「・・まぁね。」

 青騎野 瑞が机に向き直ったあとも、鎖維は青年から目を離すことができなかった。
 ——この男は面白い。

 鎖維は小さく笑った。
 怪しい笑みを口元にうかべつつ。

 

Re: ・・・夕映えのリベラリスト・・・(自由主義者の物語) ( No.37 )
日時: 2011/04/08 19:59
名前: ザクラ・ノイザ (ID: jusjvnjl)
参照: http:

 「菜ノ刃(なのは)、どうしたん?しらけたツラして。」

 ——鎖ヶ丘高等学校——
 2年A組。
 教室の中には三人の私服を着た男子達がいた。

 窓側の席に座りつつ、窓の外を眺めている青年が言った。
 「・・・別にどうもしてないっスよ。」
 菜ノ刃といわれた青年の返答に、黒板の前の教卓に教室内を見渡すカタチでドカリと座っている長身の青年が言う。
 「どす黒いオーラ出してるやん。何かあったん?」

 「何もないっス!!一平さんには関係ないことでス!!!」
 菜ノ刃は内心イライラしつつ、笑みを顔に貼り付けた。

 

Re: ・・・夕映えのリベラリスト・・・(自由主義者の物語) ( No.40 )
日時: 2011/04/12 18:46
名前: ザクラ・ノイザ (ID: jusjvnjl)
参照: http:

 お返事ありがとうございますww
 こちらもできるだけ早く新便できるようにしますんでww((ヨロシク^^

 それでは〜〜さっそくスタート!!
 

 「・・・なら、いいんやけど。」
 菜ノ刃の心情に気づいた一平は黙り込む。
 (菜ノ刃のヤツ、またアイツのことを気にしてるのかと心配したけど・・心配必要なかったみたいやな。)
 いつもどうりの強気な菜ノ刃洸大(なのは こうだい)を横目でみつつ、一平はクスリと笑った。

 「おい、ホリー!そこでなにしてんスか?」
 菜ノ刃が後ろを振り返る。
 そこには、教室の(後ろの方の)ドアの入り口に立つ青年がいた。
 ホリーと呼ばれた青年は教室を見回すのをやめて、菜ノ刃へ視線を向ける。

 「・・・別に・・なにもして、無いデス。」
 ホリー、本名、堀河武斗(ほりかわ むと)は言葉と同時にうつむいた。
 「何もしてないなんて事は息もしてないってことッスか?」
 バカにしたように堀河を眺める菜ノ刃。
 そんな彼に二人のやりとりを黙ってみていた一平がアキレタように言った。
 「菜ノ刃・・。お前、小学生の屁理屈みたいなこと言うんやな。・・・」

 「一平には関係ないッスよ!それに、オレの質問は正しいッス!!」
 
 噛み付く勢いで睨む菜ノ刃。
 そして、反抗期のように敵意むき出しの菜ノ刃にあきれたように笑みをかえす一平。

 「やっぱり菜ノ刃はガキやなぁ。その言葉じたいがオレにとっちゃぁ、子供なんよ。」

 「・・うるさいッス!だいたい、一平には関係ないッスよ!!オレはホリーとしゃべってるんでス!!!」

 「あぁ〜はいはい、わかったわかった。」
 両手のひらをあげる一平を菜ノ刃は睨んだあと、堀河に向き直った。
 「ホリー、こっちきて一緒にはなさないか?オレ退屈っス。」

 「・・・分か・・リマシタ・・・。」
 堀河はノソノソと菜ノ刃のもとへ歩み寄る。
 「ここにすわって!」
 菜ノ刃は堀河を隣の席に座らせた。

 「さぁ、何を話そうっスかね?」

 「・・・・・・」

 黙り込む堀河に代わって、一平が口を開いた。
 「・・じゃぁ、礼(れい)の思い出話とかどう?盛り上がりそうやけど。」

 「バカっスか?悲しい意味で盛り上がるに決まってるっスよ!!」

 菜ノ刃はプンスカと一平の言葉に返答をした。
 ちなみに、菜ノ刃はいつも一平にたいしてはこの態度だ。
 「・・・・赤木サン、には・・おせわに・・ナリマシタ。」
 堀河がうつむいた。
 
 その行動にチッと舌打ちをしつつ菜ノ刃は髪の毛をかきむりった。
 「オレ、こういうシラケタ話は苦ってっス。・・でもホリーがやるき満々なら・・・・・・オレも話に参加するっスよ。」

 「そういえばお前ら、赤木礼と一番親しかった気するねんけど?何で、平気そうなツラしてるん?」
 赤木礼が銃で撃たれた日のことを思い出しつつ、一平は首をかしげた。

 「・・・あんなヤツ、友達でもなんでもないっスよ!!・・・・まぁ、礼を撃ったヤツには何倍もの苦痛をあたえてやるケド・・・・」
 最後の方を小さく低い声で言う菜ノ刃。

 それに続いて、堀河も小さく言った。
 「・・・・絶対、ニ・・・・見つけ・・マス。」


 「・・・・まぁ、せいぜいガンバりぃ。オレぁ、何もしぃひんけど・・」

 目の前の人間二人から危ない臭いを感じつつ、一平はそれに気づかないふりをした。
 

Re: ・・・夕映えのリベラリスト・・・(自由主義者の物語) ( No.41 )
日時: 2011/04/12 18:52
名前: ザクラ・ノイザ (ID: jusjvnjl)
参照: http:

 「で?こんな事をして何か意味があるんスか?」
 不機嫌そうに顔をしかめる菜ノ刃。

 青年3人組は、学校を出たあと、ビルが立ち並ぶ{甘角}といわれる通りを歩いていた。
 そこにはオシャレをした女子高生達や、仕事中の男性女性・・・などたくさんの人でにぎわっていた。

 一平は菜ノ刃と堀河の不満そうな顔を無視して、能天気そうに笑った。
 「赤木礼を銃で撃った犯人探すんやろ?だったら最初は聞き込みから始めるのが一般的や。」
 
 「・・・確か、に・・そう・・・・デスネ。」
 堀河は不満そうにうなずいた。
 「ってか!一平さっき、オレは何もしない、って言ってたっス!オレしっかりきいてたっスよ!!」

 菜ノ刃の言葉に一平は小さく舌打ちをした。
 「ガキのくせに記憶力はいいんやな。」

 「ガキって誰っスか!オレ?もしかしてオレのこと!?」
 心からの驚きと怒りを交わらせて菜ノ刃は自分を指差す。
 「お前のほかに誰がいるんよ?ここにガキは菜ノ刃だけやろ。」

 「オレはガキじゃないっスよ!だいたい、ガキって言うほうがガキなんス!!」

 「その発言がもうガキなんよ。」

 ハハハと楽しそうに笑う一平を菜ノ刃は一瞬殴り倒してしまおうかと考えた。・・・が・・・
 (ん?待てよ??)
 ある一つのひらめきが菜ノ刃をおしとどめる。

 (もしも赤木礼を撃った犯人がみつからなかったら、代わりに一平を犯人ということにすればいいかもっス。そうすれば好きなだけ殴れるっスよ!!)
 「おぉぉおぉ—————!!」

 とつぜん大声をあげる菜ノ刃。
 (オレって何気に頭よかったんスね!!)

 「ど、どないしたん?ガキって呼ばれて嬉しいんか?」
 驚いたように言う一平に菜ノ刃は得意げに言った。
 「フン。まぁオレは見た目は子供でも頭は大人以上っスから!」

 「・・菜ノ刃は・・・見た目は・・青年・・・・・デスヨ?」
 堀河がためらいガチ言った。
 「違う違う!ホリーとオレは背の高い一平からみたら小さくてガキみたいなんスよ!」
 雰囲気が暗い堀河と対照的に菜ノ刃は満面の笑みだ。

 「・・・オレは精神年齢のほうをガキって言ってたんやけどな・・やっぱコイツはガキや・・・・。」

 ボソリと一平が言った言葉に反論しようと菜ノ刃が口を開きかけたとき

    ドガァッ!!!

 「わぁっ」
 「っ痛ぅ!?」

 突然何かと前面衝突をした。菜ノ刃は反射的に目をつぶる
 声がきこえたというところから、おそらく人間なのだろう。
 菜ノ刃は尻餅をつく。その数秒後に相手が地面とぶつかる音がした。

 「ぉ、おい!気をつけろ!!」

 自分とぶつかった相手の顔を見ようと目をあける菜ノ刃。
 目の前には、少年と青年がいた。
 どうやら自分とぶつかったのは青年の方らしい・・。


 

Re: ・・・夕映えのリベラリスト・・・(自由主義者の物語) ( No.42 )
日時: 2011/04/11 19:12
名前: ザクラ・ノイザ (ID: jusjvnjl)
参照: http:

 午後——
 「お兄さん、これからなにか用事とかある?」
 青騎野瑞が勉強を終え、昼ごはんにインスタントラーメンを二人で食べていたときのことだ。
 突然、ためらいがちに言う鎖維の質問にオレは逆に聞き返した。

 「オレは別にないけど・・何で?」

 「・・いゃ、昨日のことでちょっと話したい人がいて・・。」

 意味深に目をふせる鎖維。
 オレはそんな鎖維の様子に気づかないふりをして明るく言った。
 「そっか。その人はどこにいるんだ?オレも一緒に行く。」
 オレの言葉に鎖維はニコリと笑った。いや、正確にはごまかしている自分をオレに気づかせないようにするために笑った。
 「・・でも、彼は人見知りが激しくてさ。すごく凶暴なんだよ?始めてあった人には。」

 (鎖維のやつ、何を隠してるんだ?)
 オレは自分の頭のなかにフと浮かんだ疑問をぬぐいきれず、言った。
 「・・大丈夫。オレ、そういう人にあったことあるから!もうなれたし。」

 「・・・・・」
 黙りこむ鎖維。
 (鎖維にはなにか秘密がある。でもオレはそれを鎖維からはきかない。いや・・聞けない。)
 だからこそ、鎖維の秘密を知ってそうなヤツと接触して、秘密を聞き出したし。

 オレはひそかに決意をかためつつ、にこやかに鎖維に言った。
 「オレもついていくよ。最近は子供をさらう悪いやつとかいて危ないしさ?」


 オレと鎖維は{甘角}といわれるとおりにでた。
 ここにくるまで、オレたちは無言だ。
 (鎖維のヤツ、オレが無理やり付いてきたから怒ってるだろうなぁ・・。)
 気まずい沈黙に耐え切れず、オレは携帯を取り出した。
 誰かからメールが届いてないかをチェックした後、ポケットにしまおうとした手を止めた。
 (・・そういえば、学校で事件があった時、オレ犯人の顔、撮ったんだったっけ。)
 事件のおきた日、事件意外にもいろいろな事がおこりすぎていて写真を撮ったことに気づかなかったのだ。
 (どんなふうに写ったんだろ?)
 オレが赤木礼と犯人が写っている写真を画面に出したときだ。

  ドガァ!!

 「わぁっ」
 「っ痛ぅ!?」
 何かにぶつかった。
 ここの通りにたくさんの人が歩いている、という事からおそらく人とぶつかったのだろう。
 「ぉ、おい!気をつけろ!!」
 相手のどなる声がする。

 「お兄さん、大丈夫?」
 「・・・あぁ、まぁ・・。」
 鎖維の言葉に適当に返事をしつつ、オレはぶつかった相手の顔を見る。
 (・・この人、鎖ヶ丘高等学校の2年生の人だ。よく廊下で見かけたんだよね・・。)

 

 菜ノ刃はぶつかった相手をにらみつけた。
 「あやまれ!ぶつかってきたのはそっちっスよ!!」
 後ろから、これだからガキは・・とあきれたようにため息をつく一平にムカムカしつつ、菜ノ刃はそれを無視した。

 「・・・ぇと、すいませんでした。」
 緊張気味に言う青年。
 (・・・ん?この顔見たことあるっスなぁ〜・・・・・。まぁいっか)
 菜ノ刃は近くに落ちていた、おそらく青年のものと思われる携帯電話を拾った。
 「・・・まぁ、いいっスよ。ほらこr——・・・・・・」
 菜ノ刃は携帯電話をもちぬしに帰そうとさしだした手を止めた。

 (——今、一瞬・・画面に・・・・・)
 「っあ!・・それは・・・」
 相手が気まずげな声を出す。
 
 菜ノ刃はもう一度携帯電話の画面を見た。
    ・・・そこには・・・

 スーツにサングラスをかけた男達。
 その中でも一歩前に出ている男が赤木礼に銃を向けている。
 その銃から一つの弾が飛び出している・・。
 —まさに一瞬の出来事の徹底的瞬間を運よく撮った写真が目に入った。—

 「・・おぉい!これ、何——」
 菜ノ刃が言い終わる前に青年は携帯電話を無理やり引ったくり、走り出した。
 もちろん、後に少年も続く。

 「っちょ!待つっス!」
 続いて追いかけようとする菜ノ刃を一平が襟首を掴んで止めた。
 「っなんスか!?はなせ!!!」
 手足をばたつかせる菜ノ刃の耳元で一平が小さく言う。
 「ココは町中やで?みんなオレ等を怪しい目つきでみてるんよ。ここで追いかけたら、まずいことになるかもしれへん。」
 一平に指摘され、菜ノ刃は周囲を見回す。

 ——確かに、他からみたら、下手をすればぶつかった青年と少年が三人の青年達にカツアゲをされているように見えるかもしれない。——

 菜ノ刃はなおも抵抗する。
 「だって、アイツ携帯の写真に、礼を撃った犯人が!手がかりになる!」
 「!?なんやて!!??」

 (コイツ、気づいてなかったのか!!)
 菜ノ刃は苛立ちを顔に出しつつ嫌味がましく言う。
 「どうするんスか?貴重すぎる手がかりを逃がしちゃったっスよ?」

 「・・・・・・」
 ミスった。と頭をかかえる一平に代わって堀河が言った。
 「・・あの子・・・うちの・・学校の、ヒト・・・・・デスヨ。」

 堀河の言葉に菜ノ刃の瞳が刃物のように一瞬キラリと光った。


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