複雑・ファジー小説

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大三島の風から—妖と海賊の物語— 【参照300感謝】
日時: 2011/10/29 20:14
名前: 火矢 八重 (ID: gG3G93SR)

えー、こんばんわ。
二次元小説は良く書くけれど、オリジナル作は初めてです。ですので注意事項があります。

・このお話は、ファンタジーです。歴史上人物がゾロゾロ出てきますが、妖怪も出てきますのであしからず。

・また、初心者が書いております。アドバイスは受け付けます(有難くもらいます)が、あまり高望みしない方がいいです(でも、アドバイスは喜んでもらいます)。

・大体シリアスですが、普段はギャグに走りますのでお気を付けてお読みください。

・荒らしや中傷といったものはおやめ下さい。


 それでも良いと言って下さる神様は、「有難うございます!(感泣)」また、この話は誰も読んで下さらなくても書き続けます。趣味ですので。
 それでは、スタート。

序章 >>1-4

第一章 運命の歯車は止まらない >>8>>11-12>>14-15>>18>>21-22>>25
第一章の後書き >>26

第二章 桜の記憶 >>32-33>>36>>42>>45-46>>51-52>>57-59>>62>>67>>69
第二章の後書き >>70
小話〜救える者と救えない者の境〜 >>71

第三章 牛の刻の雨 >>76>>81>>88>>91>>94>>97>>101>>104>>107-110

Re: 大三島の風から—妖と海賊の物語— 【参照200感謝】 ( No.103 )
日時: 2011/10/02 20:44
名前: 火矢 八重 (ID: 6DNfJ1VU)

王翔さんへ
こんばんわー!テスト間近で更新さぼっていた八重です(汗)

医師はいびきはおろか色んなトラブルメーカーですw無口なんですけどねw

虚ろについては次回で説明します、多分w

Re: 大三島の風から—妖と海賊の物語— 【参照200感謝】 ( No.104 )
日時: 2011/10/08 19:04
名前: 火矢 八重 (ID: FLZh3btT)

                  ◆
「虚ろ?」

 一方、妖文献所で通康たちは『呪い』について調べていた。
 献妃が説明する。

「ええ、虚ろと言うのは、負の感情・・・『怒り』『嫉妬』『悲しみ』・・・そう言った、黒い感情が集まるのです。例えば、蠱術。器の中に腹の空かせた虫を多数入れ、お互いを喰わせます。そして、最後に生き残ったもっとも生命力の強い一匹を持ちいりて使用する。生き残りたい、そして生き残った虫への『恨み』、『妬み』、そして生への『執念』・・・そう言う虫の『負』の想いが、呪いになるのです」

 鶴姫も付け加える。

「呪いって言うのは、要は人の『想い』だからね。名前や言葉も『呪』。ほら、言霊って言うでしょう?悪口や中傷で人が傷つくのもそう。その人の負の想いが、そのまま言葉で伝わっているから」

 だから言葉って、本当に重いんだよ、と鶴姫が言った。


 通康は思う。呪う人は、どんな想いで人を呪うのだろうと。

 —————人と言うのは、凄く寂しがりで構って欲しい生き物だ。

 人を呪うということは、ある意味一番楽なのかもしれない。誰かを蔑み、妬み、見下ろすことで自分の居場所を得ることが出来るのだから。

 自分もそうだった。周りを憎み、蔑み、誰かのせいにして過ごしていた昔の自分。
 そうすることによって、自分は悪くないと思えることが出来たから。

 だが、それは—————傍から見れば、あまりにも惨めで哀れなモノだ。
 人を蔑むということは、人を傷つけていると言う事。そう言う人に、誰かが好きで寄って来る訳がない。
 むしろ、どんどん居場所が無くなって————一人になってしまうのではないだろうか。そして、気づかないまま、自滅して——————。

 ふと、通康の脳裏に汐音の姿が思い浮かぶ。

 汐音は目立つ存在だ。朝早くの空に浮かぶ雲のような銀髪、萌える草木と海のような瞳、神の血を引いているからか、身にまとう雰囲気が神秘的だ。

 そんな彼女は、全ての者に愛されているわけではない。

 傍から見れば異端の姿をした彼女を、悪く言う家臣たちも居る。不思議な力を持つ彼女を、「災いの神」「祟り神」と言って、蔑む輩は少なくない。

 妖も、自分の力を蓄える為に汐音を狙っている。霊力を半端なく持っている幼き少女を。

幼い少女にとっては、板挟みされているような環境だろう。

 だが、彼女は決して周りも自分の生い立ちも憎まなかった。自分も周りも受け止めて、それすらも前向きに考える。

 蔑まれても、妬まれても、必死に他の者の価値観に合わせたり受け止めたりする努力を持った彼女だからこそ、良い友人たちに恵まれたのだ。

 ————そうだ、だから呪いは跳ね返って行くんだ。

 人を呪う時には、穴二つと言われている。何故なら、人を呪えば呪うほど、自分も傷つけてしまうだけだから。


 自分は汐音のお陰で気づくことが出来た。なら、気づかせてあげたい。
 通康の想いが、湧きあがった。

「なあ、鶴姫。妖たちに一晩見張らせることは出来ないか?それと、献妃にはもう少し呪いについて調べて欲しいんだけど・・・」




 別に、自分のお陰で救えるなんて思っていない。
 自分は神じゃない。いや、神にだって救えない者だってあるだろう。どんなに水を掬っても、指の隙間から水が零れるように、救えない者だって沢山ある。
 現に今だって、こうやって鶴姫や妖たちの力を借りないと自分のことすらも出来ない。

 汐音だって、今の環境に苦ぐらいは持っているはずだ。汐音だって、辛い思いは一度や二度はしてるはずだ。
 汐音だって、全てが全て救われているわけではない。

 だが—————救える可能性だってあるんだ。

 救うには、両方の手から差し伸べなければ決して不可能だろう。一人じゃ無理だから、周りの力も不可欠なのだ。
 だが、その時自分の手も差し伸べなければならない。自分も救われようと努力をしなければならないのだ。

 ————良い結果が出るように、最善を尽くそう。でも、救えないことだって沢山ある。

 結果が全てじゃない。例え望んだ結果が出なくても、人はちゃんと一歩は進んでいるのだ。







 と、信じようと通康は思ったり思わなかったり。

Re: 大三島の風から—妖と海賊の物語— 【参照200感謝】 ( No.105 )
日時: 2011/10/08 20:01
名前: 白波 ◆cOg4HY4At. (ID: ZUkStBmr)

こんにちは、白波です。
 最新話はなんか教訓めいた話でしたね。
 通康の行動や心が五龍さんを救ってくれると信じています。
 では、更新頑張ってください。

Re: 大三島の風から—妖と海賊の物語— 【参照200感謝】 ( No.106 )
日時: 2011/10/13 17:18
名前: 火矢 八重 (ID: gG3G93SR)

白波さんへ

ちょっと教訓を入れて見たいな、と思ってやってみましたw
恐らく最後は期待というか予想を裏切るかもしれません。
どうか最後までお付き合いして頂くと光栄です。

Re: 大三島の風から—妖と海賊の物語— 【参照200感謝】 ( No.107 )
日時: 2011/10/20 18:01
名前: 火矢 八重 (ID: gG3G93SR)

              ◆
 それは、小さな記憶だった。

 汐音は何処で産まれたのか、両親の顔などもう覚えていなかった。
 けれど一つだけ。たった一つだけ、覚えていることがある。

 大きな手があった。その手は、良く汐音を撫でていた。

 気持ち良かった。撫でられるのが好きで、良く汐音は父に甘えていた。

 けれど、傍から鋭い視線を感じた。それは時々汐音を畏怖させるものだった。

 何時も振り向くと視線は感じるのに、何も居ない。だから怖かった。

 だから汐音は物心がついた時には、父から頭を撫でられるのを嫌がった。

 何故なら視線が嫌だったから。妬まれるような、憎まれるような、そんな視線が。


 そして、父の死によって、ようやく理解出来た。

 あれは、私を妬んでいるモノの仕業だと。
 あれは、私を憎んでいるモノの仕業だと。


 いつの間にか、その記憶は新しい時間に、押し流されてしまったけれど—————————・・・。









         ◆
「大丈夫ですか?ご気分は?」

 妙が青年に聞くと、青年はこくりと頷いた。

 ここは心の病を患った青年の家。医師が言っていた、「何か黒いものが憑いている」本人。

 調査のついでに医師から薬を届けるのを頼まれたからだ。

 妙が青年に薬を飲ませている間、汐音はこっそり覗いて見ていた。妙曰く「知らない人が来たら疑心暗鬼を持つかもしれない」と注意されたからだ。

 汐音は黒いモヤに気づいた。————間違いなく、あの青年は「虚」状態だ。
 肉の器は健康だ。しかし、心が何処かに置いている。あの青年には、心が無いのだ。

(まるで、人形のようだ・・・)

 表情も無に等しい。唇は真っ青、目は虚ろのようで、何も見えていないように見える。

 妙が汐音の方へ来た。どうやら、診察は終わりのようだ。

「どうだった?」

 汐音が聞くと、妙は首を縦に振った。

「あー、あの人もう廃人状態だわ。通常に戻すには、時間がかかりそうね・・・。五龍姉さんを呪ったのはあの人で間違いないと思うけど、恐らく、あの人は別に五龍姉さんに恨みなんて持っていないと思う。勿論、汐音の仮説で言う周りの人のことも、ね。これは私の仮説だけど・・・もう一つ、別の黒幕が居るんじゃないかしら」

「別の黒幕?」

「そう、あそこまで廃人になっちゃったら付け込まれたと言った方が信憑性あるでしょう。妖とかは特にね。妖は私たちが恐れたのが具現化したモノだから、付け込むなんてたやすいと思うし」

「成程」

 その言葉を聞いて、汐音は納得する。

 心が無くなれば、人形のように器しかなくなる。それは、一番危うい所なのだ。

 例えば、負の感情なんて言う「大きな流れ」は大きな器を求める。何かの文献で読んだが、陰陽師は呪いを受けない為に、人形(ひとがた)を作り、代わりに受けさせたと言う。

難しい話だが、要は大きな負の感情(妬み、憎しみ、悲しみ)は、より大きな器を求めるのだ。それこそ、人間のような肉体を。


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