複雑・ファジー小説

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大三島の風から—妖と海賊の物語— 【参照300感謝】
日時: 2011/10/29 20:14
名前: 火矢 八重 (ID: gG3G93SR)

えー、こんばんわ。
二次元小説は良く書くけれど、オリジナル作は初めてです。ですので注意事項があります。

・このお話は、ファンタジーです。歴史上人物がゾロゾロ出てきますが、妖怪も出てきますのであしからず。

・また、初心者が書いております。アドバイスは受け付けます(有難くもらいます)が、あまり高望みしない方がいいです(でも、アドバイスは喜んでもらいます)。

・大体シリアスですが、普段はギャグに走りますのでお気を付けてお読みください。

・荒らしや中傷といったものはおやめ下さい。


 それでも良いと言って下さる神様は、「有難うございます!(感泣)」また、この話は誰も読んで下さらなくても書き続けます。趣味ですので。
 それでは、スタート。

序章 >>1-4

第一章 運命の歯車は止まらない >>8>>11-12>>14-15>>18>>21-22>>25
第一章の後書き >>26

第二章 桜の記憶 >>32-33>>36>>42>>45-46>>51-52>>57-59>>62>>67>>69
第二章の後書き >>70
小話〜救える者と救えない者の境〜 >>71

第三章 牛の刻の雨 >>76>>81>>88>>91>>94>>97>>101>>104>>107-110

Re: 大三島の風から—妖と海賊の物語— ( No.2 )
日時: 2011/09/05 21:31
名前: 火矢 八重 (ID: AHkUrUpg)

 その二ヶ月後。
 夏で一番暑い季節に、お岩と通康は屋敷で二人、毬を転がして遊んでいた。
 幼い通康を抱いたお岩は毬を転がして通康に訊ねる。
「暑いね・・・なあ、お前もそう思うだろ?」
 まだ二カ月しか経っていない通康は何を思ったかは知らないが、こつんと、頷いた。

 お岩は中庭へ出た。一緒に、通康も抱いて。
 木からは蜩が、池からは河鹿が鳴いている。

 お岩はこの季節が一番好きだった。蜩は時々一斉に鳴きだして、小さい頃は五月蠅いと思っていた。そんな頃が懐かしいと思うと、多少は五月蠅くても声を聞き入れてしまうのだ。

「ほら、蜩が鳴いているよ」
 蝉時雨が通康の心に届くように、お岩は通康を少し高く持ち上げた。
「同じ頃、私もよく母上にこうやって蜩の声を聞いていたっけ・・・」

 あれから何年経っただろう。故郷を離れて、何年。
 別に寂しくはなかった。ここの生活は幸せで、何もかもが自分の心を満たしていく。
 ただ、やはり帰りたいな、とも思ってしまうのだ。

「もう、帰れないのにね・・・」
 ポツンと、お岩は呟いた。



 いつの間にか、お岩と通康は縁側に寝ていた。起きた時には夕暮れだった。
 朝に鳴いていた蜩が、まだ鳴いている。
「いつの間に寝てたのかしら・・・」
 そう言ってお岩はまだ寝ている通康を抱き、部屋に戻っていた。
「奥方さま———————つ!」
 その時、慌ただしく女房が顔を青ざめて来た。
「なんじゃ、慌ただしく来て。起きてしまうではないか」
「た、大変です!」
 お岩の文句を華麗にかわし、女房は青ざめたまま、言った。

「おやかた様が—————————————————!」









 何が起こったかは、お岩にはあまり理解することが出来なかった。
 女房に聞かされた言葉。
『おやかた様が、突如の襲撃で—————!』
 そこからは何を思ったか、覚えていないのだ。
 頭が真っ白になり、気がつくと自分の夫が内臓や心臓をあっちっこっちに散らばっており、頬は血で塗られていた。
 そこからはもう、記憶が無い。


 夕方の蜩が物哀しく鳴く。大好きな蜩と河鹿の声も、お岩には届かない。
 通康が泣きだした。何時もはとっさに動くお岩はもう放心状態で、通康の声も届いていなかった。
 乳母は泣いている通康を抱きかかえ、泣きやませようと背中をトントンと軽く叩く。
「奥方さま・・・」
 乳母は心配して呼びかけるが、その声すらもお岩には届かない。
 乳母は通康を抱いて、お岩を一人にした。————一人にした方がいいと、思ったのだ。
 
 その晩、お岩は食事を取らず、一人で寝た。
 いつ寝たのか、またどうやって布団を引いて寝たのかはお岩には全く覚えてない。うとうとし始めてそのまま深い眠りについた。
 その日は、真っ暗な一夜の闇を斬り裂けるように、ほうき星が流れた。



 









Re: 大三島の風から—妖と海賊の物語— ( No.3 )
日時: 2011/09/05 20:55
名前: 火矢 八重 (ID: AHkUrUpg)

 一週間後。
 夫康吉が死んでから、お岩は食事すらもまともに食べなかった。
「もういい・・・下げておくれ」
「奥方様、そんな量ではお体を壊します!」
 乳母が慌てて言う。
「奥方様がお体を壊してしまっては、お世継ぎであるお子も・・・!」
「もう、いい」
 乳母の必死な言い分が言い終わらないうちに、お岩はうんざりした声で遮った。
「も、もういいなんて、そんな・・・ッ!」
「もう、どうでもいい!息子も世継ぎも蜩の声も河鹿の声ももううんざり!もう、何も触れたくない!」
 その言葉に、乳母は唖然とした。
 
 お岩は本当に大人しい女性だった。声を荒げることなんて絶対に無かった。だがらこそ、乳母は唖然としたのだ。
 この人は壊れてきている。乳母はそう感じた。

「早く下がれ!私は一人で居たい!」
「は、はい」
 乳母は大人しく、通康を連れて部屋から出た。

 その様子が、七日間続いた。
 遂にお岩は体を壊し、寝込むようになった。




 それからというものの、館では次々に人が倒れていった。
 流行病なのか。どうしてこんな目に遭ったのか———と、床についた人々は口癖に言う。
 そんな中、一人の法師がやってきた。
 その法師の姿をこっそり御簾から見ていたお岩は、男の周りが何か禍々しい気配を感じた。
「私は法師。この家の主は居るか」
 乳母は慌てて法師を客間へ案内し、お茶と茶菓子を出した。
 法師は言った。
「この家は呪われている。特に、その赤ん坊が生まれた時から」
 そう言って指を指したのは、乳母が抱きかかえている通康。
 乳母は驚いた。———確かに、この子が生まれた時から良くない事が続いている。
 けれど、いきなり来て人の子供に悪口を言うなんて、図々しくは無いだろうか。
 この子が生まれたから災いが起きているなんて、確定出来ない。
 そう思い、乳母は慌てて法師を追い払おうとした。
 その時、法師はあるとんでもない予言をする。
「もしもこの子がこの家に居るならば、七日の晩が過ぎた頃にお前の主は死ぬぞ」
 そう言って抵抗することなく去って行った。


 そうして、七日の晩が明ける頃。
 お岩は、あっけなく死んでしまった。本当に、呆気なく。
 康吉のように、殺されたわけでもない。眠っている間に、息を引き取ってしまったのだ。———法師が言った通りに。
 
 そして、その日の朝の内に、法師は屋敷の玄関に立っていた。
 法師は最初に、丁重にお岩の亡骸を葬った。
 他の者たちはその姿を見て思った。お岩の死によって、法師の言葉を疑う者は居なくなった。
 屋敷の者たちは法師にすがった。どうか、あの子供を退治してください、と。
 人々は通康を、『災いのもと』と思ったのだろう。そして、次は自分が死ぬかもしれないと脅え、通康が疎ましくなったのだ。
 法師は言った。
「全てがこの御子のせいではない。私が預かって、この者の災いを呼ぶ力を封じましょう」
 その言葉に、屋敷の者たちは簡単に、通康を法師に渡してしまった。


 屋敷の者たちは知らない。何故、こんな『災い』が起きてしまったのか。

 それを知っているのは————————通康の中に居た、『人ならぬモノ』だけ。
 ————やれやれ、人は現金だねえ。

 何処かでポツリと、人ならぬモノが呟いた。



Re: 大三島の風から—妖と海賊の物語— ( No.4 )
日時: 2011/09/06 19:30
名前: 火矢 八重 (ID: AHkUrUpg)

 さて、通康はどうなってしまったのだろうか。
 確かに、通康は法師の元で半月居る。だが、あっという間に法師も死んでしまった。
 では、通康は何処で育ったのか。

 まず最初に、路地でさ迷っている通康を、百姓夫婦が拾った。そこには子供がおらず、通康を本当の子供のように育てた。
 そこで通康は、五年暮らした。
 そして、六歳(正確に言えば五年と六カ月)になった、正月の頃。
 何と、今まで子宝を授けなかった夫婦たちに、新しい命が生まれた。生まれたのは女だった。
 嬉しい夫婦たちは、通康にも一杯の愛を注いだ。

 だが、娘が生まれてすぐ、百姓夫婦は通康を捨ててしまった。
 理由は、通康は他の者には見えないモノを目に写すことが出来たからだった。例えば、通康が「あそこに首の長い女の人がいる」と言っても、百姓夫婦には見えない。彼が見ている世界は、他の者とは違うのだった。
 そして、もう一つ。何故か何時も米が不作になってしまう。
 時々荒らされたり、豊作でもごっそり無くなっていたり、全て枯れてしまったりした。時々夫婦が大きな怪我を負ったり、重い病にかかってしまった。
 夫婦も思ったのだろう。通康は、「役病神」と。

 そしてまた路地をさ迷い、拾われ、また捨てられ、時には村八分になったり、一斉に石を投げられたりした。
 そうしているうちに、どんどん通康の心はすたれていった。彼にしか見えないモノもまた、彼に石を投げ、時には大けがを負わせたりした。彼には不思議な力があり、時に喰われそうにもなった。———恐らく、『妖』という類に。

 妖を写せる目と、人には無い『不思議な力』。その体質のせいで、どんどんと通康の心はすたれていったのである。






だが、そんな通康にもある「光」が訪れた————。


Re: 大三島の風から—妖と海賊の物語— ( No.5 )
日時: 2011/09/06 19:20
名前: 火矢 八重 (ID: AHkUrUpg)

今更ですが、人物紹介。


村上通康 (むらかみ みちやす)

本編の主人公。第一章から十四歳です。遅めの元服を迎えます。
色々見えたり妖力が強いようで、良く妖に狙われる。人には見えないモノを言ったり、不思議な力を持っていたので人々に気味悪がれ、人からの『呪い』を受ける。その為、人とは極力会話を避けていたが、汐音によって癒されていく。

河野汐音 (こうの しおね)

本編のヒロイン。河野家当主の娘だが、実は半神半人で河野家の血は一切引いていない。良く妖に狙われ、神にも祟られる。だがそんなことを微塵に感じさせない程明るい。銀色の髪と蒼緑の瞳を持つ。

もののけさん

本編のマスコットキャラクター。通康たちには「もののけさん」と呼ばれるが、実は「百尾」と呼ばれる由緒正しき妖。通康が生まれた時から体に潜んでいて、通康の生い立ちの真実を知っている妖。かなりの暴飲暴食。


・・・取りあえず、ここまでです。

Re: 大三島の風から—妖と海賊の物語— ( No.6 )
日時: 2011/09/06 20:16
名前: ふーまさん (ID: wmDqaJUX)

題名に惹かれてやってきました! ふーまさんです。名前表記はふーまさんでいいです。

俺の好きなジャンルがいっぱいー。て、天国です!


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