複雑・ファジー小説

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ついそう【完結】
日時: 2013/01/30 16:51
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: KRYGERxe)
参照: https://



+目次+
8月25日>>1
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CAST>>68
あとがき>>69

Re: ついそう ( No.5 )
日時: 2012/09/26 20:48
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w93.1umH)
参照: https://


+4+


汚れきっていた服を脱いで、三春に言われていた籠に入れる。洗面台の前に立って、耳についていた青いピアスを外した。

なんで、こんな物をしているんだろう。なんで、僕の髪は金色なんだろう。なんで、こんな派手な格好を。

考えていたって仕方ないので、風呂場に入って、シャワーを浴びる。
初めて入るお風呂なので、シャンプーとかどこにあるかよく分からなくて迷ったけど、よくよく考えれば、僕に慣れているお風呂なんてないんだ。そうだった。
金色の髪を何回かに分けて洗う。汚れが邪魔をして、泡が上手く立たないからだ。体を洗うと、日に焼けていない白い肌が顔を出した。
すらりと伸びる白い腕と、足。自分の体なのに、すごく不気味に感じる。
鏡を見ると、僕と目が合う。黒い睫が飾る茶色い目。この頭の金は、染めたんだな。眉毛までしっかり染めているのに、まつ毛はしていない。当然だけど。
初めて見る自分の顔や、体を見たりしていたら、大分時間が経っていた。
ゆっくりと、まったりとお湯につかったり、指を絡めて見たり。泡を潰してみたり。そんな子供のようなことをしていると、すごく落ち着いた。
ここは、音が少ない。最後の方は慣れてきていたけど、まだ三春の出す音には慣れない。怖い。心臓の皮を直接撫でられて居るような感じがして、息が詰まる。それが嫌だ。だから、一人で居たい。まだここの音が少ない環境に居たい。

どうして、僕はそんなことを思うんだろう。
優しくしてくれる三春が、怖いなんて。

「……でよ」

ぽつりと呟くと同時に、蛇口の水滴も落ちる。
いつまでもこうして居たってしょうがない。のぼせてしまったら三春に迷惑がかかる。

お風呂場で軽く手で水滴を払ってから、出る。花柄のバスタオルで髪を拭く。顔を埋めてみる。いい匂いだ。落ち付く。
じーっとそのままの体制でいたら、くしゃみが出た。間抜けな格好をしていることに気がついて、急いで体も拭いて服を着ようとして、気が付いた。
僕、服はどうしたら良いんだろう。籠の中の僕がさっきまで来ていた服は汚すぎて、今お風呂に入った意味がない。
僕はドアを少し開けて、三春を呼んだ。

「三春、みーはーるー」

「秋、あーきー」

三春はすぐ近くにいた様で、すぐに来てくれた。
スリッパを引きずるような音がしたと思ったら、僕よりだいぶ背の低い三春が目の前に現れた。

「僕、服ないんだけど」

見えていないだろうけど、恥ずかしくて出来るだけ体をドアで隠す。三春には僕の顔しか見えていないだろう。
三春は唇に指を当てて、唸った。
しばらく唸った後、三春は当たり前のように、無表情で言った。

「バスタオルでも巻いておいて」

Re: ついそう ( No.6 )
日時: 2012/09/19 21:40
名前: 柚月* (ID: 0NyvUW87)

はじめまして(●^∀^●)

あなた様と同じ、素人の柚月*と申します。

素人とは思えないうまさですね(°Д°;

更新楽しみにしてます!頑張ってください!

Re: ついそう ( No.7 )
日時: 2012/09/21 19:00
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w93.1umH)
参照: https://

+5+


異議を唱えようとしたけど、すぐに三春は僕が開けていたドアを閉めてしまった。くしゃみがもう一度出る。
なんなんだ、それ。
仕方なく言われた通りにバスタオルを下半身に巻く。洗濯機の上に置いていた青いピアスを両耳に戻して、鏡で体と顔を確認してから、扉を開けた。
三春はすぐ近くのキッチンで何かを炒めていて、テーブルの上の包丁は無くなっていた。
まな板の上に放置されている包丁は、さっきの物とは違うものだろう。柄の部分の色が違うから。

「三春、お風呂ありがとう、ございます」

ホカホカと湯気を立てる髪を触りながら、三春に言うと、シンプルなエプロンをつけた三春が振り返った。僕の格好を見て、軽く微笑む。可愛らしく微笑む三春。

「敬語じゃなくていいんだよ」

「そんなこと言われても、」

三春は僕の声を遮るように、フライパンとフライ返しで音を立てて見せた。大人しく、僕は口を紡ぐ。
『三春』と僕に呼ばせるために浮かべた笑顔と同じ顔。
その顔に僕が逆らえないことを、三春は早くも理解したようだ。
でも、僕はどんな三春でも逆らえないかもしれない。

「三春、聞きたいんだけど、良い?」

三春はフライパンで炒めていたお肉と野菜を皿に移しながら、僕の言葉に反応する。

僕の言葉がまだ敬語だったらきっと、きっと。きっと、どうなっていたのかな。僕に対する三春の罰は、なんなんだろう。
少しだけ想像してみたら、体が寒くなった。

「三春と僕は、どんな関係なの?」

気になっていたことだった。
三春は僕に優しい。三春の知る僕じゃないはずだ。それなのに、まるで三春はそれを知っていたかのように、優しくしてくれる。

「……恋人よ」

Re: ついそう ( No.8 )
日時: 2012/09/19 22:15
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w93.1umH)
参照: https://ツイッターは主に小説について。



柚月*さま


初めまして、揶揄菟唖と申します。
初コメントありがとうございますヾ(´ω`=´ω`)ノ

いやいや、そんなことはないです
褒めて下さってありがとうございますw

まったりやっていきますので、また暇なときにでも覗いてくださるとうれしいです(*´ω`*)

コメントありがとうございました!

Re: ついそう ( No.9 )
日時: 2012/09/21 19:18
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w93.1umH)



+6+


今まで確実な自信を持って答えていた三春が、一瞬だけど言葉を詰まらせた。自分でも分かっていないだろうというくらいの、小さな躊躇い。
それに僕は気が付かないフリをする。納得したフリをする。僕が不安を見せてはいけない。三春の言うことは絶対正しい。僕が『違う』なんて言う権利は無い。
僕の言葉には足が無い。フワフワしていて、根拠が無い。でも、三春には足がある。三春の言葉には根拠がある。
そのはずだった。
この言葉に本当に足はあるのか?これは、義足かもしれない。そんな疑問が出てきた。
僕に生まれてはいけない、三春への不信感。

「三春と僕が、恋人」

「そうよ」

僕が出した確認も、三春は自信を持って答える。
気のせいなのではないだろうか。さっき感じた違和感は、僕の思い違いなんじゃないだろうか。
三春は、今だって自信を持って答えてくれる。それを疑うなんて、僕は愚かなんじゃないだろうか。
なんで僕は、こんなに三春が正しいって思うのだろうか。

「じゃあ、その、指輪は」

皿をなぜか掴んでいる左手の薬指には、光る指輪がはまっていた。銀色の、シンプルな指輪。三春の細くて長い指にはよく似合っている。
三春は左手を見て、そして、少しだけ驚いたような顔をした。これも、一瞬。僕は分かった。三春が浮かべた、『しまった』というような表情。
なんでそんな顔をするんだろう。僕には全く分からない。

「貴方がくれたのよ」

三春は僕に近づいてくる。僕の手を取って、その中に自分の左手を入れた。僕は手の中の三春の左手を見る。
やっぱり、婚約指輪だ。
僕が、これを三春に。
想像して、顔が熱くなる。きっとなんか言葉を言いながら渡したんだろうな。結婚してください、とか。ずっと一緒に居て下さい、とか。

僕は三春の左手を優しく両手で包んだ。そして、三春をじっと見つめる。

「なんで、僕は指輪をしていないの?」


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