複雑・ファジー小説
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- 太陽の下に隠れた傍観者【刺されると痛い。】
- 日時: 2014/08/24 13:17
- 名前: 凰 ◆ExGQrDul2E (ID: fE.voQXi)
はじめまして、こんにちは。私は、紗倉 悠里(さくら ゆうり)と申します。凰から、改名致しました。
はい、ちゃんとしたものさえ書けない駄作者です。
そして、そんな私の小説が二作とも完結したのは、皆様の励ましのコメントや感想のおかげです。その節は、誠にありがとうございました。
さて、本題に入りますね。
今回は、罪と輪廻シリーズ第三弾であるこの作品を連載開始することにいたしました。
※第一弾&第二弾と共通するところがあると思いますので、わからないところは、遠慮なくコメントでお聞きください。また、感想もお待ちしております。誤字脱字などもあれば、ご一報くださいませ。すぐに修正点いたします。
注意
※私が嫌いな人はご閲覧はご遠慮ください。
※超絶グロいです。人を刺したい系の人とかいます。苦手な方はご遠慮ください。(多分、エロは少ないと思いますが、含まれます)
<目次>
ご挨拶 >>1
登場人物紹介 >>2
プロローグ >>3
【本編】
《第一章》
第一話 >>7-9
第二話 >>10-12
第三話 >>13-15
第四話 >>18-19 >>22
第五話 >>23-24
第六話 >>31 >>35
第七話 >>36-38
第八話 >>39-41
第九話 >>42 >>45
第十話 >>46-48
第十一話 >>49-51
第十二話 >>52-54
《第二章》
第十三話 >>55-56
第十四話 >>57 >>62 >>67
第十五話 >>68-70
第十六話 >>73 >>76-77
第十七話 >>81-83
第十八話 >>84-85
第十九話 >>86-88
第二十話
わちや様作 白野 歩(二十歳時代) >>66
<お客様>
美玉様( 第一弾、第二弾とお読みくださっている常連さん)
風死様( 雑談板でお馴染みの神小説家様です!)
はる様(『王国騎士訓練学園物語ッ!』の作者さまですっ)
環乃様(リク・依頼板の方であったことのある方です)
緋色様( オリキャラ「御子斗 御琴」をくださった方です! )
夕陽様( リク板の方でオリキャラ質問をやっている方です)
狐様( リク板の方で知り合った方です!)
わちや様( 白野歩のイラストを描いてくださった方です!)
Orfevre様( 総合掲示板の方で知り合った方です!)
ウッキー様( 小説を見る力が凄くて、とても丁寧な方です!)
【罪と輪廻シリーズの解説 (友人の説より)】
「些細な嘘から始まった」から始まる四つの小説のこと。
一弾は「些細な嘘から始まった」 (シリアスダーク)。
二弾は「必要のなかった少年と世間に忘れられた少女」(複雑・ファジー)。
三弾は「太陽の下に隠れた傍観者」(複雑・ファジー)。
四弾は、只今推敲中。
特徴の一つは、色を関係付けていること。キャラクターの名前や物の名前のモチーフなどは色が関係している。 一弾では「青」、二弾では「赤」三弾では「濁色」がモチーフにされている。ほかにも、色を関係付けてあるところがたくさんある。
もう一つの特徴は、物語となる中心の道具。 今は、「ボタン」と「スマートフォン」がでてきている。
どれもあまりに突飛な私の想像で作られた上、未来的な物語であるために、元となる時代は2050年とという想像し難い年代となっている。(といっても、もう2013年。そろそろ、この設定も厳しいかもしれない。by.作者)
この頃は、“狂った子供”や“傍観者”などの異名も登場している。
(最早、意味がわからないようなことになってきているが、多分問題ない。だいじょーぶ。by.作者)
<記念日>
11/28
連載開始!
12/8
参照100越え!
12/24
参照200越え!
12/30
参照300越え!
1/7
参照400越え!
1/14
参照500越え!
1/19
参照600越え!
1/26
参照700越え!
2/5
参照800越え!
2/23
参照900越え!
3/10
参照1000越え!!
(記念SS >>80)
3/25
参照1100越え!
4/30
参照1200越え!
5/27
参照1300越え!
7/31
参照1400越え!
- Re: 太陽の下に隠れた傍観者【参照300越えありがとう!】 ( No.39 )
- 日時: 2014/01/07 11:01
- 名前: 紗倉 悠里 ◆ExGQrDul2E (ID: RnkmdEze)
【第八話】<やっと幕開け> -“傍観者”-
時雨に、電話をしてから五分。
早めの掛け直しを頼んでいたはずだが、まだ掛け直してこない。仕方なく、計画の資料の見直しとかをしていた。
そういえば、学生時代も、こんなことをしたはずだ。試験の時にすごく時間が余って、三十分くらい、頬杖をついて試験問題の見直しをしてたっけ。本当、学生の試験って簡単すぎるんだよね。三十分もあれば、充分だ。
しかし、予測できないソレは、突然訪れる。
——迂闊だった。
多分、この時の俺は注意が足りていなかったのだ。きっと、ウイルス伝染専用機 as-1 ができたために、浮き足立っていたのだろう。本当に俺はバカだ。
だから、俺の家に入ってきた人の存在にも気づかなかった。……俺が気づいたのは、その人が後ろからいきなり俺を叩いた時だった。
「ってっ!」
後頭部に、鈍い痛みが走る。どうやら、平手で叩かれたらしい。だが、痛みは尋常じゃない。まるで、波紋のように、頭に痛みが響いていく。
俺は、振り向くことに多少の恐怖を抱いていた。もう、俺を叩いた人が誰なのか分かっていたから。そして、その人が俺を叩くということは……——その人はかなり怒っているということなのだから。
「おい、“傍観者”。なにをやっているんだ」
俺は、ゆっくりと振り向いた。
そこには、すでにご立腹のオーラをこの場に振りまいている“狂った子供”がいた。
あまりにも怒りすぎて、アニメの演出のようにツインテールが宙に浮いて俺をビンタしてきそうだ。
「な、どうしたんだ。“狂った子供”」
どうにか、声を出す。
流石に、彼女にずっと怖じている訳にはいかない。いつもの自分のペースを取り戻そうと試みてみる。
多分、彼女は些細なことで怒っているのだろう。なんでボクの部屋の掃除をしていない、とか、なんで私を出迎えてくれなかったのか、とか。うん、きっとそうだ。
「それは、なんだ……!」
彼女の声は震えていた。勿論、泣きそうだからではない。怒りで震えているのだ、ということはすぐに分かった。
そして、彼女が指差した先にあるもの。それは……あの計画の資料であった。
やばい。俺が、本能的な恐怖を感じた。
やっぱり、彼女が怒る理由がそんな些細なことであるわけがなかったのだ。さっきの俺の考えは、きっと俺の現実逃避でしかなかったのだろう。
しかし、なぜ彼女がこの資料をみて怒るのだろう。今、俺がみているページはあのウイルス伝染専用機 as-1 の設計図。見ていても、彼女に理解できるわけがない。
「さっきからずっと見ていたら……世界を壊すだと? ふざけるなっ」
『さっきからずっと見ていた』……だと? 嘘だろ。
俺は、慌てて前のページ、もっと前のページと、捲って確認してみる。
確かに、世界を壊すことに関係する内容のことが書いてあった。ゲームのことも、台本のことも……。
その時、俺の横から何かが飛んできた。それを、体を反らせることで間一髪で避ける。頬を、何かがかすった。
そして、その何かは、俺の目前を通り過ぎて、床にぶち当たったと同時に、派手な音を立てた。
飛んできたモノは……彼女の持っていた黒いペンケースだった。周りに、沢山の鉛筆や、消しゴムが散乱している。俺が、彼女の入学祝いに購入して与えたものだった。
与えたモノを投げてくるなんて、かなり怒っているみたいだ。投げつけられたペンケースは、可哀想にほとんど原型をとどめていない。鉛筆なんかは、布を突き破って外に出ていた。多分、もう使い物にならないだろう。
「なにが『世界を壊す』だ! 壊してどうするんだよっ、人間が全員いなくなるんだぞっ!? お前の大切な人だって、死ぬんだぞ!?」
なぜか、いつも冷静な彼女は、かなり感情的になっていた。珍しい。
『研究対象』として、かなり面白い反応を出してくれているようだ。これは、かなり助かる。
しかし、今はそんなことをメモに書き留められる場面ではなかった。
まず、どう考えてもおかしいことだった。彼女が俺に怒りを示すことは。
例えるならば、洋食を取り扱うレストランで、ハンバーグを注文した時に、運ばれてきた皿にざるそばがのっていた、と言うようなくらいにおかしいこと。
つまりは、【あり得ない】のだ。
その上、俺には彼女が怒る理由が分からない。
別に、世界が終わる計画と言っても、“狂った子供”が怒る必要などない。寧ろ、彼女は刻一刻とこの世界を蝕み続けているのだから、壊す側の人間だ。にも関わらず、なぜこの計画が彼女の逆鱗に触れたのだろうか。
俺には、理解できなかった。
「冷静になれ、“狂った子供”」
とりあえず、そう言ってみることにした。といっても、実際に彼女が冷静になるはずなんてない。それなのに俺がこう発言しているということは、俺の方が冷静にならなければならないことを暗示しているのだろう。
「うるさいっ!!! テメェのせいでボクが産まれてきたんだろぉがっ!! テメェがいなけりゃ、ボクはこんなところに居る必要なんてなかったんだよっ! なのに、不幸分子のボクを造った後にこの世界を壊すなんて、おかしいだろ! なんで、ボクを造ったんだ!」
ちょっと待て、ちょっと待ってくれ。さすがの俺でも、それほどの悪言には耐えられないぞ。
どうやら、彼女は相当お怒りのようだ。俺が想像していたことの上をいっている。
きっと彼女は、
「ボクを造ったのに、なんでボクを壊すのだ」と言うことが言いたいのだろう。
「別に、お前を壊したいわけじゃない」
「なら、誰を壊してぇんだよっ!」
「この世界だ」
「じゃあ、この世界にボクが含まれていないとでも言うのかよっ!!」
「そんなわけはない。お前は、この世界の『重要な』人間だ」
「なら……結局ボクを壊すんだろうが……!」
そう言った途端、“狂った子供”はその場にヘナヘナと座り込んだ。
きっと、過度な電力消費によって、機械が正常に動かなくなってしまったのだろう。確か、かなり丈夫に造ったはずなんだけど……ネジでも緩んだのか。
俺は、座り込んだ“狂った子供”を見下げた。
「うるさいぞ、“狂った子供”。俺に反抗もできない癖に、偉そうな言葉を連ねるな」
- Re: 太陽の下に隠れた傍観者【参照300越えありがとう!】 ( No.40 )
- 日時: 2014/01/11 13:52
- 名前: 紗倉 悠里 ◆ExGQrDul2E (ID: /GGwJ7ib)
“狂った子供”は、一瞬怯んだような表情を見せた。
そして、いつも通り俺が勝つのだ。彼女が、会話を放棄して、そっぽを向くのだ。彼女の会話の放棄は俺の完璧な勝利を表している。
しかし、それは、もしこれが“いつも”だったら、のことだった。
「うるさいっ!! 黙れっ! 馬鹿っ!!」
怯んだ表情は、すぐに憤怒が篭った表情へと変わっていく。そして、いきなりよくわからない悪口を連ね始めた。
彼女は、俺がそれをとても嫌っていることを知っていた。だからこそ、こんな行動を始めたのだろうか。
俺は、意味のない言葉が嫌いだ。例えば、馬鹿とかアホとか。あんなモノには、意味と言うモノがないのである。
だが、よくそれらと一緒にされる間抜けと言う言葉には意味がある。もしなかったのだとしても、俺はあると思っている。
まぁ、簡単に言えば、意味がある言葉イコール「そう安安と連発できない言葉」と言うことでもあるのだ。
バカ、と言う言葉はよく連発される言葉だが、それと同じような意味合いを持つ愚かや低能、無能、と言った言葉は、比較的連発されない。
それは、バカには意味がなくて、愚かなどには意味があるってことだ。
なーんて、俺はそんな感じの自論を持っている。
だから、こんな意味のない言葉を聞くのは嫌いだ。しかも、それが自分に向けられたモノだとしたら、尚更に。
「……いい加減にしろ、“狂った子供”。悪ふざけにも程があるぞ」
「うるさいうるさいうるさいーーーーっ!!! ふざけてるのはお前だろーがっ!」
……どうやら、今の彼女には日本語が通じないらしい。
「……うるさい。俺はふざけてなどいない」
——そういって、俺は“狂った子供”を抱きしめた。
すると、彼女はそのまま力なく崩れ落ちた。——
おっと。今の言い方だと、ロマンチックな方に勘違いする人がいるかもしれない。ここは、ちゃんと弁解しておこうじゃないか。
俺が手を回したところ、つまりは彼女の腰辺りには、電源ボタンが設置してある。だから、彼女の電源ボタンを押せば、彼女の電源は自動的に切れて、力をなくすわけだ。
しかし、電源を切っても、一定の時間が経てば、また勝手に再起動してしまう。だから、また彼女が起きた時に、この論争は始めようじゃないか。
ちなみに、なんで俺が抱きしめた——正しくは羽交い締めにした——のかといえば、彼女が暴れては困るからだ。いくら人造物とはいえ、容姿は幼女。大人の男である俺に抱きしめられれば、上手に暴れることはできまい。だから、いつも抱きしめてから、電源を切ることにしている。
ついでにいえば、もし、抱きしめずに腰に手を当てたりなんかしたら、腕の骨一本くらいは折れるほどの激しい抵抗を受けてしまうから、気をつけなければならない。
まぁ、実をいえば、こんな姑息な行動はとりたくなかった。だって、論争の途中で相手の意思が途切れるようなことをするのは、ズルいじゃないか。
でも、仕方が無い。こいつが黙らなかったんだから。
崩れ落ちた彼女を、リビングの隣の寝室に持っていく。そして、ベッドに寝かせて置いた。そっと、布団をかぶせる。
そのまま、音を立てないように(まぁ、彼女の耳元でダイナマイトを爆発させて轟音を発生させても、彼女は起きないけどね。それでも、雰囲気は大切だ)寝室をでた。
そして、その時だった。
玄関のチャイムが鳴ったのは。
俺は、少し驚いた。こんな時間に、誰が俺の家に訪問してくるのだろうか。梅子ならば、少し外出しているし、夜までは帰ってこないと言っていたはず。
少し怪しんだ俺は、音を立てないようにドアに近づく。そして、小さな丸い窓から相手の顔を確認した。
そこに映っていたのは、貼り付けたような笑顔で立っている時雨だった。
俺は、ホッとして、静かに自分の胸をなでおろした。
そして、ドアを開ける。
、、、、、
「よぉ、時雨。お前がきたのは、やっぱりさっきの件か?」
- Re: 太陽の下に隠れた傍観者【参照400越えありがとう!】 ( No.41 )
- 日時: 2014/01/22 21:47
- 名前: 紗倉 悠里 ◆ExGQrDul2E (ID: XyK12djH)
俺は、すぐにそう問いかけた。ウイルス伝染専用機 as-1 の話ではないのなら、今日はお引き取り願いたい。リビングがすでにぐちゃぐちゃに荒れている。あんなのを、俺が完璧な存在だと思っている時雨に見せたくはないのだ。
「はい、そうです。早速、見せてもらいたくて」
時雨は、はにかみながらそう答えた。彼は、右手の指でぽりぽりと頬を掻いていた。
——あれが要件なのなら、仕方が無い——俺は、時雨を家に招き入れた。できれば、明日にして欲しかった……なんて思いながら。
二人で、リビングの奥の研究室に向かう。
時雨は、ペンケースの部品が飛び散り、木造の椅子が木の粉塵へと変わっていたことにかなり戸惑っていたが、「気にするな」という言葉で彼が質問してくるのを制し続けた。
頼むから、時雨、このことは見てないことにしてくれ。
そう思いながら、研究室のドアのタッチパネルに、暗号を入力する。すると、ガチャ、と重々しい音がした。これはロックが開けられる音だ。……もう三年使い続けている今でも、この音には慣れない。
この研究室には、一応、大切なモノが置いてあるために、ドアにはロック機能がついている。暗号を入力しなければいけないのは、心底面倒くさい。
だが、中にあるのは、本当に大切だ。なくなれば、マジで泣き出すほどに。
そのままドアをガチャリと開ける。そして、時雨も部屋に入れると、ドアをきっちりと閉めておいた(半開きにしてはいけない、と説明書に書いてあったからやっているだけで、別に俺が律儀なわけじゃない)。
「うわっ、相変わらず……“傍観者”って『片付けられない男』ですね」
時雨が、顔を引き攣らせた。
まぁ、この時雨の反応は決して間違っていなかった。ここには、資料が散乱しているのだから。
床から、壁までびっしりと資料に埋め尽くされている。(壁には、画鋲で貼り付けているのだが、もう新しいモノが貼れるスペースは残っていない)
勿論、足場なんてない。
「うるさい。どっかの姑みたいなことをいうな、男の部屋は皆こんなもんだ」
「今度、俺の家に来ますか? 綺麗に片付けてありますよ」
「黙れ。お前とは根本的な性格が違うんだよ」
「そうですね、貴方は面倒くさがりやですから」
「黙れ」
「冷たいですねーっ。あ、この資料は踏んでいいやつですか?」
「黙れ」
「踏みますよー」
「黙れ」
「あの……“傍観者”、日本語通じてますか?」
「黙れ」
「まるで、壊れたレコードみたいですね」
「黙れ」
正直言って、こいつとの会話はチョーめんどくせぇ。だから、殆ど「黙れ」でパスしている。今のようにな。
今日も、いつも通り「黙れ」を連呼しながら、資料の上を踏み歩いた。
ちなみに、俺の研究室には、踏んでいい資料と踏んではいけない資料がある。ちなみに、床に踏んではいけない資料も、沢山散らばっているから、踏まないように気をつけてもらいたい。もし踏んだ時には(暴力的な意味で)体払いだ。
俺は、時雨の前を歩いて行く。
そろそろ、部屋を片付けようか。毎回この部屋に入るたびにそう思う。だが、できない。なぜなら、『めんどくせぇ』からだ。
それで、そのまま月日は経って、いつの間にか片付けないまま二十年が経っていた。もう、ここまで来てしまえば片付けようがない。だから、片付ようなんて思ったらいけない。そんな感情を持ってはいけない。
俺が、頭の中で「片付けよう」という感情と「めんどくせぇ」という感情のガチの殴り合いをやっている間に、時雨は身軽に資料の合間を縫って歩いている。
スーツを着ているのに、なぜあれほどしなやかに動けるのかは、未だに謎だ。いつか、彼の体を調べさせてもらおうじゃないか(黒笑)。
ついでに言っておけば、どうやら、何年もここに来ているうちに、資料の重要度がわかるようになってきたのか、この頃彼の身体を(暴力的な意味で)痛めつける事はなくなってきていた。
「“傍観者”……ねぇ、そろそろ片付けませんか?」
「黙れ」
「俺、手伝いますよ?」
「黙れ」
「よし、じゃあ今週の日曜でいいですか?」
「嫌だ、めんどくせぇ」
「うぉっ、喋った!? え、今喋りましたよね!? 俺、夢みてませんよね?」
「……オイ。なに動物が喋った所を目撃した某少女みたいなこと言ってんだよ。俺は喋るぞ」
「そ、そうですよね……。でも、あまりに驚いちゃいまして」
「黙れ」
「えぇっ、また戻るんですかーっ?」
「黙れ」
あぁ、中途半端に喋ったのが悪かった……。全部、黙れでかわしておけば良かった。俺はバカなのか……。
そんなことを考えながら、歩く。
割と、この紙を踏む感触は心地がいい。まぁ、あまり踏んでいいものではないのだが。
しばらく歩いて、俺はあるドアの前で立ち止まった。これは、この部屋の最奥にある古びたドアだ。鍵なんてついていなくて、ちょっと蹴ればすぐに壊れそうなほどに古い。
だが、このドアの奥には、あの機械が置いてあるのだ。
——俺は、ドアノブに手を掛けた——
【第八話 END】
- Re: 太陽の下に隠れた傍観者【参照400越えありがとう!】 ( No.42 )
- 日時: 2014/01/13 17:09
- 名前: 紗倉 悠里 ◆ExGQrDul2E (ID: 07Anwjr8)
【第九話】<面白くない混沌> -“狂った子供”-
キー、キー……。
頭の中で、サイレンみたいな音が鳴り響いている。久しぶりのこの感覚。このサイレンは警戒音なんだけど、なんだか落ち着いてしまう自分がいた。
ふぅ、と心の中でため息をつく。
どうやら、ボクは電源を切られてしまったらしい。しかも、突然に。とても危険なことだった。それに、リスクも半端ない。
しかし、これがどれだけ危険でリスクがあることか言葉で表現しろと言われると、なかなか表せない。
とーっても簡単に例えるならば、「最後まで進んだゲームのセーブを忘れてしまい、次起動させた時には全てのデータが消えていた」というようなものだ。
つまり、ボクからも一定の記憶が消えてしまう。流石に、全ての記憶が消えることはないけどね。
電源が切られる度に、ボクは必要なことも不必要なことも忘れていく。せめて、必要なことくらい残していってくれたらいいのに、ボクの頭にある記憶機能はあまり性能が高くないらしい。全部、忘れていってしまう。
なんだか切ない感情だった。でも、考えてみれば、ボクの存在自体が消えなければならないものなのだ。いっそのこと、ボクの存在自体を忘れてしまいたい。ボクなんか、いなくなってしまえばいいのだ。
……皆さんは、薄々気づいているんじゃないかな。
——ボクが人造人間であるってことを——
ちょっとだけ、長くなる話をしたいと思う。どうせ、あと一時間でまた新しいデータが起動するんだから、それまでのボクの悪足掻きをしておきたい。今のデータが消えてしまわないうちに、ね。
まず、ボクは人造物である。
そして、そんなボクを造ったのは他の何者でもない、白野 歩だった。彼は、“傍観者”と呼ばれることを好んでいるから、ボクは彼のことを“傍観者”としか呼ばないが、本当の名前は白野 歩だ。
このことを頭にいれてから、聞いて欲しい。
昔々、約100年前の話。この世界の、前の世界の話だった(といっても、これはかなり分かりにくい表現だと思う。でも、簡単に言いたくても言葉が見つからない。とりあえず、この世界は第二の世界で、100年前には第一の世界があった、という解釈をしておいてほしい)。
そこに、一人の少女がいた。名前は忘れたけど、腰までの黄色い髪をしていて、とっても綺麗な女性だったらしい。
そして、もう一人。黒い髪の男がいた。彼は、優しい人間だった。……ただ一つ、重い過去があったことを除けば。しかし、その過去は、彼にとって忘れたいものであり、あってはならない事実だった。だから、消された。まるで鉛筆の文字を消しゴムで消されるように、綺麗に、だけどくっきりと痕を残して、消された。
彼女と彼は、夫婦だった。そして彼は、創造主の友人の生まれ変わりだった。だから、「台本」という道具を所持していたのだ。
台本というのは、世界を造る道具だった。創造主によって創られた世界に、付け足すものを造る道具。
そして、その台本はまさに全知全能だった。この道具の手にかかれば、全ての事実を捻じ曲げることも、嘘を本当にすることも、可能だった(本当は一つだけ欠点があったのだけど、今ここでは棚に上げておくことにする)。
だから、あの二人の心は、その台本に捉えられてしまった。それで、二人は沢山の人を騙して、振り回して、挙げ句の果てには殺しちゃって……そんなことまでして、自分達の願望を叶えようとした。
その願望は……「この世界を創りかえたい」というものだった。
しかし、その願望には沢山の障害がある。
だって、考えてみれば当然のこと。創造主が創った世界を、創造主が創ったモノで壊すなんて、到底不可能。
なのに、二人はどうしても壊したかった。願望を、叶えたかった。
そして、ある日。その願いは叶った。台本によって造られた「世界を終わらせるボタン」は、実に有能だった。有能っていうのは、世界が本当に壊せる、ということ。
しかし、それは同時に、『創造主が創ったモノが創造主よりも優っていた』ということを証明することにもなっていた。
でも、二人はそんな事実には気づかなかった。だから……完成したボタンを押した。
そしたらね、世界は真っ赤っかになる。その後で、真っ白になるの。
なんで真っ赤っかになるか。それはね、光が赤いから。その光は、世界を壊せる力を持っていた。全てを、粉々の粒子にできる。それは、すごい力。
こんなちっちゃな世界を壊すことは、赤い光には簡単なことだった。あっという間に世界を覆い尽くして、壊してしまった。
さて、ここからが重要。世界に、大変なことが訪れてしまった。
この世界を終わらせるボタンには、世界を壊す力はあった。だけど……新しい世界を創る力なんて、なかった。だから、このボタンを押した後で、新しい世界は誕生しなかった。人は一人残らず消えて、文明も全部なくなった。地球って存在は消えて、宇宙も消えた。ぜーんぶ、真っ白になる。
はずだった。
だけど、そうならなかった。なぜかって? それは、世界が創られたから。分かりやすくいうならば……「世界を終わらせるボタンに対するモノができたから」。
そして、それを創ったのは……“傍観者”だつた。
“傍観者”が造った、世界を創るモノの名前は、「世界を創り上げるボタン」。ふざけてる名前だけど、一応彼は大真面目に造ったものなんだよ。
- Re: 太陽の下に隠れた傍観者【参照400越えありがとう!】 ( No.43 )
- 日時: 2014/01/11 23:23
- 名前: 緋色 (ID: hmF5PELO)
はいっ
リク版でオリキャラ投下した緋色です!
読み終わりました!
狂った子供、可愛くて好きです!
だけど人殺すんですか…ギャップが素敵です
ではでは!更新楽しみにしています!
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