複雑・ファジー小説

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太陽の下に隠れた傍観者【刺されると痛い。】
日時: 2014/08/24 13:17
名前: 凰 ◆ExGQrDul2E (ID: fE.voQXi)

 はじめまして、こんにちは。私は、紗倉 悠里(さくら ゆうり)と申します。凰から、改名致しました。

 はい、ちゃんとしたものさえ書けない駄作者です。
そして、そんな私の小説が二作とも完結したのは、皆様の励ましのコメントや感想のおかげです。その節は、誠にありがとうございました。


 さて、本題に入りますね。
 今回は、罪と輪廻シリーズ第三弾であるこの作品を連載開始することにいたしました。
※第一弾&第二弾と共通するところがあると思いますので、わからないところは、遠慮なくコメントでお聞きください。また、感想もお待ちしております。誤字脱字などもあれば、ご一報くださいませ。すぐに修正点いたします。

注意
※私が嫌いな人はご閲覧はご遠慮ください。
※超絶グロいです。人を刺したい系の人とかいます。苦手な方はご遠慮ください。(多分、エロは少ないと思いますが、含まれます)


<目次>

ご挨拶 >>1
登場人物紹介 >>2
プロローグ >>3

【本編】
《第一章》
第一話 >>7-9
第二話 >>10-12
第三話 >>13-15
第四話 >>18-19 >>22
第五話 >>23-24
第六話 >>31 >>35
第七話 >>36-38
第八話 >>39-41
第九話 >>42 >>45
第十話 >>46-48
第十一話 >>49-51
第十二話 >>52-54

《第二章》
第十三話 >>55-56
第十四話 >>57 >>62 >>67
第十五話 >>68-70
第十六話 >>73 >>76-77
第十七話 >>81-83
第十八話 >>84-85
第十九話 >>86-88
第二十話

わちや様作 白野 歩(二十歳時代) >>66

<お客様>
美玉様( 第一弾、第二弾とお読みくださっている常連さん)
風死様( 雑談板でお馴染みの神小説家様です!)
はる様(『王国騎士訓練学園物語ッ!』の作者さまですっ)
環乃様(リク・依頼板の方であったことのある方です)
緋色様( オリキャラ「御子斗 御琴」をくださった方です! )
夕陽様( リク板の方でオリキャラ質問をやっている方です)
狐様( リク板の方で知り合った方です!)
わちや様( 白野歩のイラストを描いてくださった方です!)
Orfevre様( 総合掲示板の方で知り合った方です!)
ウッキー様( 小説を見る力が凄くて、とても丁寧な方です!)

【罪と輪廻シリーズの解説 (友人の説より)】
「些細な嘘から始まった」から始まる四つの小説のこと。
 一弾は「些細な嘘から始まった」 (シリアスダーク)。
 二弾は「必要のなかった少年と世間に忘れられた少女」(複雑・ファジー)。
 三弾は「太陽の下に隠れた傍観者」(複雑・ファジー)。
 四弾は、只今推敲中。
 特徴の一つは、色を関係付けていること。キャラクターの名前や物の名前のモチーフなどは色が関係している。 一弾では「青」、二弾では「赤」三弾では「濁色」がモチーフにされている。ほかにも、色を関係付けてあるところがたくさんある。
 もう一つの特徴は、物語となる中心の道具。 今は、「ボタン」と「スマートフォン」がでてきている。
 どれもあまりに突飛な私の想像で作られた上、未来的な物語であるために、元となる時代は2050年とという想像し難い年代となっている。(といっても、もう2013年。そろそろ、この設定も厳しいかもしれない。by.作者)
 この頃は、“狂った子供チルドレン”や“傍観者ノーサイド”などの異名も登場している。
 (最早、意味がわからないようなことになってきているが、多分問題ない。だいじょーぶ。by.作者)


<記念日>
11/28      
連載開始!   
12/8      
参照100越え!  
12/24      
参照200越え! 
12/30
参照300越え!
1/7
参照400越え!
1/14
参照500越え!
1/19
参照600越え!
1/26
参照700越え!
2/5
参照800越え!
2/23
参照900越え!
3/10
参照1000越え!!
(記念SS >>80)
3/25
参照1100越え!
4/30
参照1200越え!
5/27
参照1300越え!
7/31
参照1400越え!

Re: 太陽の下に隠れた傍観者【黒の少年は蒼い少女の何を見る】 ( No.80 )
日時: 2014/03/25 18:37
名前: 紗倉 悠里 ◆ExGQrDul2E (ID: v2BiiJyf)

 えーっと、こんにちは!! 皆様、本編の途中ですが、始まります!!
〜【参照1000越!&コメントをくださった方10名越記念!! 番外編SS】〜
     視点:私
 
 三月。一月は行く、二月は逃げる、三月は去る、と言うが、私の三月は簡単に過ぎそうにはない。
 
 友達と別れて、家への帰り道。一人とぼとぼ歩いていた時のことだ。
——「静かにしろ。さもないと撃つぞ」——後ろからいきなりの女の声と共に、口に押し付けられたハンカチ。僅かな花の香りと……薬剤の臭いに支配されて、いきなり私の日常は幕を閉じた。あぁ、私は最期に頭に銃を押し付けられるのか。それにしても、ここには銃刀法があった気がするのだが……うーん。


「おい、起きろ。クズが」

 自由に動かない身体。よくよく見れば、縄で縛られているではないか。なんということだ、拘束だなんて物騒な。
 それに加えて、この暴言。どれだけ私の心が寛大だろうと、限界はあるのだ。一体、どんな無礼者が私にこんな言葉を浴びせるのだ——そう思って、目を開けるとびっくり仰天。そこには、青いツインテールを肩まで伸ばした可愛らしい少女が私を見下ろしているではないか。女子の制服を着ている彼女、このアングルからだと彼女のスカートの中が……と思ったのだが、床に張り付けにされている私は身体はおろか、首さえ動くことも許されず、それは断念することとなった。
 それはそうと、さっきまで私に暴言を吐いた奴は一体どこに行ったのだろう。こんな可愛らしい少女を残してどこかにいくとは、いろんな意味で物騒な奴である。

「おい、クズ。お前、さくら ゆうり……だな?」

 またまた聞こえる声。おいおい、私はクズじゃないよ、紗倉 悠里だよ。
 そう思いながら、今度こそ声の主を見つけようとする。が、首が動かないから、やはり俺を見下す少女しか見えない。
 まさか、この少女が……いや、そんなことはあり得ない。なんたって、こんなに可愛いのだから。
 まぁ、とりあえず、人物確認をされたらしいから、はい、と返事をしようとした。しかし、口に貼られているガムテープ。まさかの、声を出すことさえも許されないらしい。なんと過剰な拘束だ。
 声が出せないなら、首肯しかない。だが、首は動かせない。どうやって、肯定すればいいのか。

「おい、聞いてんのか!!」

 と、その時。少女がいきなりしゃがみこんだかと思うと、私のこめかみ辺りに銃を押し付けてきた。え、いや、薄々感じてたけど、やっぱりあなたですか、あの声は。こ、怖い……。
 いや、聞いてるも聞かないも、頭が動かせないんですよ、少女様。なんで首に変なギプスみたいなの付けてるんですか、おかしいでしょ。私の首は怪我してませんからね!?
 喉の奥から、うーうーと呻き声を出して肯定してみるけど、ただの曇った音にしか聞こえないだろう。

「ま、ぜったい紗倉 悠里だよな。この前手に入れた写真と顔が全く一緒だ」

 いやいや、何堂々盗撮宣言してるんですか! 犯罪ですよ、少女様。まぁ、口に出しては言えないけど。物理的に。

「さてさて、今からこっちの愚痴を言わせてもらおうかなぁ? 毎回毎回、“狂った子供チルドレン”、“狂った子供チルドレン”と。まじでうざってぇんだよね、あれ。さっさと本名だせよっ!!」

 うーん、抵抗したいのにできない辛さ、とはまさにこのことか。
 ていうか、まさか彼女がかの有名な殺人鬼“狂った子供チルドレン”だったとは。驚いて声が出ないよ。出せないけど。
 本名って……キミはそれを知らない設定なんだよ、一応。だから、もう解放してよ……せめて、口だけでも。

「もう本当いい加減にしないと、撃つよ? 殺すよ?」

 そんな声が聞こえる。あー、怖いよ、“狂った子供チルドレン”。それと、銃をゴリゴリするのやめて、痛いし怖いから。……言えないけど。

「あーもー、喋れよ!!」

 喋れねぇよ。
 そんな時だった。ガチャ、と音がした。多分、ドアが開いて誰かが入ってきたのだろう。

「あれ、なにしてるんですか?」「お、なにしてるんだ、お前。そいつ、誰だ?」

 救世主かと思いきや、まさかの二人。この口調は……言わなくても分かるだろうが、スーツメガネこと高川時雨と、ムッツリ白衣こと白野 歩だ。

「おう。こいつらはな、ボクらの憎き敵の紗倉 悠里だよ」

 私が強制的に黙秘されているのに、“狂った子供チルドレン”はいとも気軽にそう答えた。
 それを聞いて、二人はつかつかと私を見下ろしながら歩いてくる。あぁ、もう近寄らないで……怖い、怖いから!

「へぇ……この人が」「まさか、こんな女がか」

 思い思いの言葉を呟きながら、私を見下ろす二人。“狂った子供チルドレン”は、二人がきてからはにっこりと可愛らしくて子供らしい笑みを浮かべていた。この笑みは、あれだ——「ボク頑張ったでしょ? 偉い? 褒めて褒めてー」——。
 イケメン二人と、可愛い少女が私の周りをぐるりと囲んだ。うーん、これで私がマゾヒストだったらどれだけ幸福だったことか。
 しかし、これは現実。小説の世界とは違って、甘いはずがない。

——————。

————。

——。

 その後。
 拘束を外していきなり放り出され、暗い路地裏に一人残された私。
 先ほどまで、見るに耐えない暴行を受けて、そのなのとおり「ボッコボコ」にされた私は、「警察沙汰にしたらブチ殺すぞ」という脅迫を受けて、今ここにいるのであった。

 あぁ、神様、私は一体、どんな悪いことをしたのでしょうか。確か、参照が1000を越えて、喜んでいた一日前。あの時、“狂った子供チルドレン”や“傍観者ノーサイド”達にはとても親近感と愛を感じたのに——私は、なにも悪くないはずなのに。敢えて言うなら、シナリオが悪かったのだ。この世界が、この世界を創設した者が。
 そんなことを考えながら、路地裏を抜けて自宅へと向かう。
 と、その横をサッと通り過ぎる者がいた。黒いパーカーに身を包む男。
 ——あれ、何処かでみたことがあるような……。——




 しかし、私が彼の正体を思い出すことはない。なんたって、彼に関する記憶データは全て消去されてしまったのだから。

 
 BAD END

コメディ展開と思った方、申し訳ありません!! バカ作者によってシリアス&本編につながってる!? になってしまいました! いやあ、本当申し訳ない……。

「はぁ、すっきりした」
「いやぁ、久しぶりに暴力なんて振りましたよ……」
「おい、“狂った子供チルドレン”。これは法に触れてないだろうな?」
「え、や、それは……あはは」

「「えぇ!? おい、“狂った子供チルドレン”!!」」

 
「うわぁ……緊張した。いきなりパーカーで横突っ走ってこいとか……パシリにも程がありますよぉっ」
「黙れ、お前は俺のパシリだろうが。一々緊張とかしてんじゃねーよ」


最後に。
皆様、本当にありがとうございます!!
これからも私やキャラクター達を、ぜひよろしくお願いします。心から、お願いします。(真顔&涙)


Re: 太陽の下に隠れた傍観者【参照1000記念SS公開中】 ( No.81 )
日時: 2014/05/06 17:29
名前: 紗倉 悠里 ◆kvgzsaG21E (ID: MgUgGnIS)

【第十七話】<“雨雨ふれふれ” なーんてな> -白野 夜人-

「んなわけねーだろ? だって、さっきまで晴れだったんだぞ!?」
 
 苛立っている弥生に言い返す。すると、弥生は笑いながら言ったのだ。それは、楽しそうな笑いではない。俺を嘲るかの様な笑いだった。こいつはよくこんな笑い方をする。慣れていても、やっぱり腹が立つ。

「バァカ。俄雨に決まってんだろうが」

 『ニワカアメ』? なんだそれ。
 。。あぁ、あのザッと降ってサッと止むあれか。まぁ、それならあり得る気がする。だとすれば、もしかしたら俺があの子の覗き見をしてた時にはもう雨が降ってたということなのか。そうしないと、弥生達だってそんなに早くこの階まで上がってこれないだろうし。

「ハハッ、お前ってマジで頭悪いな」

 弥生が意地悪く笑ってみせると、周りの奴もそれに合わせて笑い出した。その声に、高三の奴等がウザそうにこっちを見ているのが分かった。
 でも、確かに、今のは俺が頭悪いのがだめだったんだよな。あー、残念。理科は割と得意だったはずなんだけどな、小学生の時は。

「仕方ねーじゃん、普段『俄雨』とか使わねーし」

 俺も一緒に笑いながら、そう言ってみる。弥生も、その言葉で尚更爆笑していたが、高三達を教えていた教師が流石に怒ってきて、一瞬でその場は静かになった。
 
 とりあえず、弥生たちはさっさと服を着替えて、教室に帰って行った。俺も、その集団の中に混じり混んで、教室へと向かう。
 さて。よく考えてみれば、俺、一時間目サボったのか。やばいな、先生に怒られそう。怒られるんだったら、巨乳のお姉さんか、高校生にしか見えないようなロリロリしてる可愛い人がいいのに。なんで、毎回毎回禿げたおっさんに怒られなきゃならないんだろうか。はぁー、やだやだ。
 これは、怒られないように逃げるしかないよな。今日は、体育の教師に巡り会わないように気をつけておこう。
 そんなことを考えながら、自分の席に着く。そして、ため息をついた。
 すると、それと同時に授業終了のチャイムが鳴った。キーンコーンカーンコーン、とお馴染みの音楽を聞き流しながら俺は、もう一度ため息をついた。

——「早く放課後になって欲しいよ、マジで」


 

Re: 太陽の下に隠れた傍観者【参照1000記念SS公開中】 ( No.82 )
日時: 2014/05/25 17:56
名前: 紗倉 悠里 ◆kvgzsaG21E (ID: G1aoRKsm)

 二時間目、三時間目……そして、六時間目。今日の最後の授業だ。
 俺らが授業を聞いていても、聞いていなくても、時間は過ぎていく。
 意味のわからない数式をジジィが並べ立てていく数学や、巨乳のお姉さん系の先生が白衣を着て、これまた意味のわからない記号を教えてくれる理科。そして、ロリロリした妹系の先生が語り出す現代文や古典を学ぶ国語。……ジジィはともかく、女方には申し訳ないが、俺の感想は、全て『つまらない』の一言だ。
 もっと面白いハプニングがあればいいのに。いっそのこと、保健体育の授業が毎日あればいいのに。それで、男の体の仕組みじゃなくて、女の子の体の仕組みを美人な女医さんが教えてくれれば尚更GOOD!!
 俺が、そんなピンクな男子高校生らしいことを妄想していると、「ピシッ!」と、なにか硬いものが額にヒットした。
 それは、俺の石頭によってパラパラと砕けて、重力によって下に落ちていく。その白い塊の正体は言わずもがな、「チョーク」である。多分、俺の額は一箇所だけ真っ白になっていることだろう。

「ちょっと、白野くん! なにをボーッとしてるの!」

 わーぉ。見事な美人ボイス頂きました。
 今は、理科の時間。担当の先生は、高川玲子先生。我が校に誇る巨乳美女だと、俺は思っている。ついでにいえば、あの可愛らしい高川さんは、この先生の娘さんだ。
 さて、この高川先生。実は、特技が……チョーク投げ、なのだ。
 チョーク投げとは、皆さんご存知、「漫画によく出てくるけど、実際にはあまり見ない二次元に精通する必殺技」のこと。
 勿論、俺は今現実にいる。だが、誰が考えられるだろうか。巨乳美女からチョーク投げを受ける男子高校生が現実にいる、ということを!
 この丸菜学園、そういうところだけは男子高校生に都合良いところが多い。俺たち男子生徒は、ここに入れてもらえたことを、今一度両親に感謝しねばならぬだろう。そして、都合をよくしてくれた校長にも(ここの校長は、女好きだという噂がある)。
 さて。ここまで喜んでいては、俺がMだと勘違いされかねない。ということで、定義しておこう。「チョーク投げは痛い。美女がやるからこそ我慢できるが、禿げた野郎にやられたら、腸が煮え繰り返るほど腹が立つ」と。
 この定義に沿えば、高川先生が美女だから、俺は我慢できる、ということになる。最も、その通りだ。
 しかし、我慢できたから、その先生の怒りが収まるかといえば……そういうことではない。

「こら、聞いてるんですか!? 返事しなさい!」

 あまりの痛さを我慢しようとして俯いているうちに、またもう一本新品のチョークが投げられる、ということもある。こんな時は最悪だ。大体が一本目より威力が強い、と相場で決まっているのだから。

「いってぇっ!!」
「授業を聞いてないのが悪いんでしょうが!」

 最もなことをいわれて、返しが思いつかない。でも、授業って面白くないから仕方ないのに……。
 そう思ったが、高川先生に嫌な奴だと思われるのは嫌だから、「すいません」と素直に謝っておいた。周りからクスクスと笑い声が聞こえたが、気にしてはいけない。
「ん、よろしい」と先生が機嫌を直した所で、俺は椅子に座る。
 授業中にボーッとしているだけでチョークをくらうってのも、よくよく考えれば酷い話だ。
 そう思いながら、俺は額や髪などについた白い粉をパタパタと払っておいた。
 そして、今度は怒られないように、とシャーペンでひたすらノートに文字を書き連ねていった。
 そうこうしているうちに、あっというまに授業は終わり、俺のお楽しみの時間は刻一刻と迫って行った。

Re: 太陽の下に隠れた傍観者【参照1000記念SS公開中】 ( No.83 )
日時: 2014/08/23 08:44
名前: 紗倉 悠里 ◆kvgzsaG21E (ID: MgUgGnIS)

 そして、遂にやってきた放課後。
 俺は、ワクワクしつつ、教室を出た。周りのクラスメートに「なあ、夜人! 帰りにどっか食いにいかね?」と誘われた。「俺には、お前らと食いにいくよりも楽しいことがあるんだ。すまないな」と言うわけにはいかずに、ちょっと用を済ませてからついていくから、校門あたりで待っててくれ、と言っておいた。
 俺は、高川さんとのことと、真人との約束とがあるからな。

 バックを片手に、校舎裏へ。てっきり高川さんはもう来ているものだと思っていたが、まだ来ていないらしい。可愛らしい高川さんの姿はなく、あるのはただ、伸びっぱなしの雑草だけだったからだ。
 とりあえず、高川さんを待とう。女の子を待つというのも、これまた青春あるあるの一つじゃないか。いくらでも待つぞ、俺は!
 最初は、高川さんの着替えを覗いたから、これからリンチをかけられるのではないか、と恐れていた俺だが、多分それはないだろうという結論に辿り着いた。理由は、俺の勘だ。青春男子の勘は高確率で当たる、ということを何かの本で読んだことを思い出したのだ。絶対、高川さんは俺に告白しに来たに決まっている。高川さんが俺に惚れていなければ、『白野くんだからいいけど……』なんてことは言わないだろう。まぁ、これはただの俺の自惚れでもあるのだが。

 しばらくはじっとして待っていたが、高川さんはなかなかこない。まだHRが終わってないのだろうか。
 十分程経ったが、まだ来ない。流石に暇になったから、隣においてあったバックからスマートフォンを取り出した。ロックを解除して、ゲームアプリを開く。

 これは、俺が最近ハマっているゲームで、「Die Application」という名前だ。Dieというのは、「死ぬ」じゃなくて、「サイコロ」という意味。
 このゲームは、サイコロを使ったボードゲームで敵と戦うのだが、これがとても面白い。まずはサイコロを振って、出た目の数だけ進む。そして、止まったターンにいる敵と戦う。ターンの数字が大きくなるごとに、この敵もどんどん強くなっていく。
 戦い方も、簡単だ。またサイコロを振って、手持ちのモンスターの攻撃力×出た目の数のダメージを敵に与える。モンスターは、一匹しか連れていくことができない決まりになっている。例えば、俺の手持ちのモンスターの攻撃力が【1700】だったとしよう。そして、出た目が【5】だとすれば、【1700×5】で、【8500】のダメージを与えることができる。一発で敵が倒れるのをみるのは、とても痛快だ。

 このゲームの面白いところは、キャラクターデザインが可愛いこともあるが、何よりこの爽快さだと俺は思っている。なかなか、1ターンでこんなにダメージを与えられるゲームはないだろう。その上、無課金でこのクオリティなのだ。
 課金すればもっと楽しめるだろうが、俺はまだ高校生だからそれはできない。少し残念だが、仕方ないことだ。

 しかし、俺は最近このゲームをあまりやっていなかった。前言を覆すようだが、最近は楽しくなかったのだ。なぜならば、どんどん俺自身のランクが上がっていくに連れて、敵が強すぎて倒せなくなっていったのだ。
 しかも、その強い敵は、なぜかロリータファッションのツインテールっ娘だった。こんなの、可哀想で倒せるわけないじゃないかっ!

「はぁ……」

 小さくため息をつく。まただ。
『ゲームオーバー! コンティニューしますか?』という表示が出る。俺は、いいえを押す。コンティニューするには、ゲーム内で利用できるコインが必要なんだが、それは課金しないと買えない仕組みになっている。課金の他にも、ログインボーナスなどで手に入れることも可能ではあるのだが、そんなのはすぐに消費してしまう。

 何度かチャレンジしていたが、やっぱり勝てなかった。いつの間にか、スタミナも0になっていた。1ダンジョンにスタミナを10程消費してしまうから、スタミナもすぐになくなる。
 はぁぁ……と、また大きくため息をついた。最初は、すげぇ面白かったんだけどなぁ。そう思いながら、ゲームをやめてホーム画面へと戻った。

 ——その時だった。
 とんとん、と誰かに肩を叩かれた。高川さんだと思い、さっと振り返った。

「あの……白野くん、待たせちゃってごめんなさい」

 申し訳なさそうに軽く頭を下げるその人。どうやら、俺の天使こと高川さんが降臨したらしい。

「いやいや、俺も今来たところだよっ」

【第十七話 END】

Re: 太陽の下に隠れた傍観者【刺されると痛い。】 ( No.84 )
日時: 2014/06/24 21:51
名前: 紗倉 悠里 ◆kvgzsaG21E (ID: FpNTyiBw)

【第十八話】<痛い痛イ遺体> -白野 夜人-

「いやいや、俺も今来たところだよっ」

 手を左右に振りながら、大丈夫だってことをアピールする。すると、高川さんはふにゃりと笑って、

「それなら良かったです」

と言った。その笑みが可愛くて、つい手に持ってるスマートフォンで写真を取りたくなる衝動を抑えながら、高川さんに隣に座ってもらった。俺が座って高川さんが立ってるってのもやだし、二人で立ち話もなんかおかしかったから。まぁ、一番の理由は、高川さんを近くで見つめたかっただけだけどな。

「ね、ねぇ……その、話って……」

 隣に高川さんが座ったのを確認して、早速本題に入る事にした。だって、どうせ訪れるのは付き合うというハッピーエンドだろうし、早くても遅くても一緒だ。なら、早い方がなんかいい気がする。

「え、あ、はい! そ、それはですね……」

 みるみる、高川さんの顔が赤くなっていく。当たりだ、告白に違いない。つい、にやけてしまう。

「そ、その……目、瞑っててもらえますか? 私が開けてって言うまで」

 高川さんが、赤い顔のまま、俺の顔をまっすぐにみてそういった。ま、まさかのキス!? え、告白の前にキス?
 なんて、桃色の期待に胸を膨らませつつも、表情はもちろんクールに。冷静に頷いて、ゆっくりと目を閉じた。
 どんどん、高川さんが近づいてくるのを感じた。そして、次の瞬間、身体が暖かいものに包まれた。柔らかいから、多分高川さんが抱きついてくれてるんだろう、と察しがついた。キスじゃないのか、という気持ちもあったが、仕方ない。流石にまだ告白も受けてないしな、うん。
 本当は目が開けたかったが、まだ開けてと言われてないから瞑っていた。

「……スキ」

 耳元で、清らかで透き通った、可愛らしい高川さんの声が聞こえた。ほら、やっぱり告白だ。
 俺が、頬が緩むのを抑えながら、高川に話しかけようとした時だ。

「……アリ、だね」

 サク、と綺麗な音が鳴った。どこからだろう、なにか物が切れたような音がするのは。首を傾げつつ、目を開けた。

「え、ちょ……な……!?」

 視界に入るのは、俺の胸の辺りに突き立てられたナイフ。それを握っているのは、間違いなく高川さんだ。
 細かい装飾がなされているらしいナイフは小型で、高川の手にすっぽりと入り込んでいる。
 高川さんは、ニコッと天使の笑みを振りまいたまま、ナイフを左右に捻じった。
 俺の肉が、ぐちゃぐちゃと嫌な音を立てる。血も飛び散っている。ナイフの刃を血が伝っていき、高川さんの指にまで流れる。服に広がる黒みのかかった赤。痛みで、今にも意識が飛びそうだ。
 それでも、高川さんは、まるで無邪気で何も知らない子供のようにナイフを左右に捻じり続ける。
 
 あり得ない。もちろん、高川さんが俺にこんなことをするのもあり得ないのだが、それじゃない。高川さんは女子で、しかもこんなに小柄なのに……どこに、人間の肉を軽く切ることができるのか、と言うことだ。

 普通なら、もう意識が飛ぶはずなのに、俺の意識はまだしっかりしていた。内から広がる波紋のような痛みは、容赦無く俺を襲う。もう、早く死にたいと思ってしまうほどに。

「な、なんで……?」

 俺の喉から出た声は、か細く弱々しい、掠れた声だった。なんだか、恥ずかしい。それにしても、なんでこんなに意識がはっきりしているんだろう。

「んー、要らないから。それしか、理由なんてないだろ? ボクだって、誰彼構わず殺したりなんかしないさ」

 ニコニコ、と笑ったままの高川さん。だけど、声は高川さんのものじゃなかった。だって、高川さんの声はもっと高いから。透き通るような声だから。今みたいな、低くて女らしくない声なんて出せないはず。それに、ボクって……なに?
 
 


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