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【オリキュア】メモリアルプリキュア!
日時: 2017/08/01 23:00
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

初めましてかこんにちは!愛です!
本日からはメモリアルプリキュアというオリキュア小説を書きたいと思っています。
基本テンションとノリに任せて書くのでグダグダすると思いますが、楽しんでいただけると幸いです。
それでは、よろしくお願いします。

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Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.7 )
日時: 2017/08/08 20:42
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第2話「過去を束ねろ!キュアパースト誕生!」1

「さて……」

 部屋に戻った私は息をつき、窓を開く。
 周りに誰もいないことを確認し、私は「コアラさぁん!」と呼んだ。
 すると、少しして、フヨフヨと小動物が飛んでくる。

「コアラさん! こっちこっち!」
「リコルンはコアラじゃないリコ!」

 文句を言いながら、小動物は入って来る。
 ひとまず抱きしめて窓を閉め、カーテンを閉める。
 それから私は小動物を解放し、一度息をつく。

「それで……えっと、どこから聞けば良いのか……」
「自己紹介が遅れたリコ。リコルンの名前はリコルンリコ」
「えっと……りこるん……?」
「そうリコ! 君の名前は何て言うリコ?」
「あ、私は今行杏奈。よろしくね、リコルン」

 私がそう言いながら手を差し出すと、リコルンは「よろしくリコっ」と言って私の手の上に小さな手を置く。
 しばらく握手を交わし、手を離した後で、私は「それで……」と口を開く。

「えっと、色々聞きたいことが多すぎて、何から聞けば良いのか……」
「何から聞きたいリコ?」

 リコルンの言葉に、私は腕を組む。
 とりあえず聞きたいことは……。

「えっと、まず、この時計……らぶめもりーうぉっち……だっけ?」

 朝、パパから貰った時計を示しながら言うと、リコルンは大きく頷いた。

「そう! ラブメモリーウォッチリコ!」
「えっと、これは何なの? 私、ただ店にあったものを貰っただけなんだけど……」

 私の言葉に、なぜかリコルンはムスッとする。

「それは、リコルン達がいたメモリー王国に代々伝わる伝説の時計リコッ。それを使って、伝説の戦士、プリキュアに変身するリコ」
「それが、昼間に変身した、キュアアデッソ……?」
「そうリコ」
「じゃあじゃあ、昼間のあの男とか、化け物とか、あとあと、前原さんの胸にできた変な世界は何なの?」
「一度に聞いたら困るリコ」
「あ、そっか……」

 無意識に乗り出していた身を慌てて引っ込め、私は姿勢を正す。
 それにリコルンはコホンと一度咳払いをして、続ける。

「まず、昼間の奴は、ロブメモワールっていう軍団の幹部の一人、ラオベンリコ」
「らおべん……? ていうか、ロブメモワールって?」
「ロブメモワールっていうのは、人々の記憶に詰まったメモリアっていうエネルギーから、ワスレールっていう化け物を作り出し、その人たちの記憶世界を破壊して、メモリアを悪に染めてロブメモワールのラスボスの……」
「待って。知らない単語多すぎ」

 ノリノリで話すリコルンを慌てて止める。
 それに、リコルンはハッとして、少し考え込んでから言う。

「えっと、まずメモリアっていうのは……その人にとってどれだけその記憶が重要なのかを示す値みたいなものリコ。それが高いほど、その記憶から生まれるワスレールっていう化け物は強くなるリコ」
「ほぇぇ……」
「そして、そのワスレールを使って、アイツ等は人々の記憶世界を壊して、そこに込められたメモリアを悪に染めて、ロブメモワールのラスボスのボウキャークを復活させようとしているんだリコッ!」

 身を乗り出して言うリコルンに、私はポカンと口を開けて固まった。
 まるで漫画とかアニメみたいな話……そう簡単に信用できない。
 でも、昼間のこともあるし、きっと本当なんだと思う。

「……もし、私にそんなすごい力が本当にあるなら……私、頑張るよ!」

 私が拳を作りながらそう言って見せると、リコルンは「ありがとうリコ!」と嬉しそうに言った。

Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.8 )
日時: 2017/08/09 20:23
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第2話「過去を束ねろ!キュアパースト誕生!」2

−−−

「今回のメモリアの溜まりが悪いぞ……どうしたんだ、ラオベン」

 項垂れながら帰って来たラオベンに、赤い、獣人のような見た目をした男……デロべはそう言った。
 彼の言葉に、ラオベンは「仕方ないだろ!」と言う。

「またプリキュアが現れたんだ! 折角前のプリキュアがいなくなって、メモリアを溜めやすくなったというのに……!」
「あら……またプリキュアが?」

 ラオベンの言葉に、青い、うろこみたいな肌をした女、シッパーレは驚いたように声を出す。
 そして顎に手を当てて、「プリキュア……ねぇ」と言って舌なめずりをした。

「面白そうじゃない。だったら、この私、シッパーレ様が相手してあげようかしら」

−−−

「それじゃあ、先生が合図したら、教室に入って来てね」

 先生の言葉に、私は「は、はい!」と返事をした。
 すごく緊張する……。いよいよ転校初日。
 上手くクラスに馴染めるかなぁ……ていうか、友達できるかなぁ……。
 いや、一応昨日前原さんとは仲良くなれたし……でもぉ……。

「私、今一番、緊張してる……」
「それじゃあ入って来て」
「はひぃッ!」

 先生の声に返事をすると、裏返った声が出た。
 うぅ……初っ端からやらかしたぁ……。
 とはいえ、まだやり直しは効く。
 私は一度深呼吸をして、教室の扉を開け、中に入る。

 一歩踏み出した瞬間、右手と右足が同時に出た。
 ヤバい。クラス中から視線を超感じる!
 頭の中が真っ白になるのを感じながら、私は一歩ずつ歩いて行く。

「杏!」

 その時、聞き覚えのある声がして、私はハッと顔を上げた。
 見ると、そこには見覚えのある青髪の少女がいた。

「ま、前原さん!?」

 ついそう返事をした瞬間、クラス中がどよめいた。
 まさか、前原さんと同じクラスになれるなんて……。
 この学年は五組あるらしいから、実質、五分の一の確率だ。
 だからほとんど諦めていたのに……。

「今行さん。名前、黒板に書いてもらって良い?」
「あ、ハイ!」

 先生の言葉に私は慌てて返事をして、チョークで黒板に名前を書いていく。
 なんとか名前を書いて、私はすぐに前を見る。

「それでは、今日からこのクラスに転入してきた今行杏奈さんです。今日から皆さんと一緒にこのクラスで過ごします」
「い、今行杏奈です。えっと、よろしくお願いします」

 そう挨拶して、私は頭を下げた。
 すると、すぐに前原さんが大きな音で拍手をするので、私は顔が熱くなる。


「今行さんっ」

 朝のHRが終わった後で、早速数名の女子に話しかけられた。
 ちなみに私の席は、出席番号の関係か、一番廊下側の前から二列目の席だった。
 前原さんは割と窓際の方だから、少し離れてしまった。

「は、はいッ」
「そんなにかしこまらないでよ〜。ねぇ、今行さんって、前原さんとはどういう関係なの?」
「えっと……昨日、外でたまたま出会って。それから仲良く……」
「なるほどねぇ」

 私の説明に、女の子達は返事を返す。
 その時、私の背後に誰かが立つのが分かった。
 振り返るとそこには、なぜかムスッとした表情で立っている前原さんの姿があった。

「前原さん……?」
「ちょっとぉ。杏は私のなんだから、あんまり話さないでよ〜」

 ムゥッとした表情で言う前原さんに、私に話しかけてきた女の子達は「何それ」と笑う。

「今行さんは皆のものでしょ」
「そうだよ〜。瑞樹ばっかり独占はずるいぞ〜?」
「むー……杏と一番に仲良くなったのは私なんだからなぁ」

 謎の対抗心を燃やす前原さんが可笑しくて、私は、気付いたら「あははッ」と笑っていた。
 そんな私の顔に、全員がキョトンとする。

「あはは……あれ?」
「今行さん……笑ったら超可愛い!」
「へ……!?」
「うんっ。やっぱり、杏は自然な方が良いよっ」

 ニヒッと笑いながら言う前原さんに、気付いたら、私も釣られて笑っていた。
 そっか……先ほどのやり取りは、それが狙いで……。
 そう思っていた時、前原さんに肩を叩かれた。

「そうだ。昼休憩は、校舎を案内してあげるよ」
「本当?」
「おう。私に任せときんしゃい」

 そう言って得意げに胸を叩く前原さんに、私は「よろしく」と答えた。

Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.9 )
日時: 2017/08/09 23:10
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第2話「過去を束ねろ!キュアパースト誕生!」3

 昼休憩になり、私は前原さんに連れられて校舎を回った。
 移動教室などを中心に、色々見て行く。
 やがて、ほとんどの教室を回り終え、残るは私達の教室がある棟とは別の棟の三階の突き当たりである、音楽室だけだった。

「ここが音楽室ね」

 前原さんはそう言いながら扉を開ける。
 中に入ると、穴ばかりの壁に、後ろの方には楽器が並んでいて、王道の音楽室って感じがした。
 キョロキョロと周りを見ていた時、黒いグランドピアノに目が行った。

「おぉ……ピアノ……」
「あぁ、うん。まぁ、音楽室だからね」

 前原さんはそう言うとピアノの前に立ち、一つの鍵盤を叩いた。
 ポーンという軽やかな音が響き、教室の空気に余韻を残す。

「……そういえば、前原さんって、ピアノ弾いてたの?」

 なんとなく気になり、私はそう聞いてみた。
 昨日見た前原さんの記憶世界では、前原さんらしき少女が、ピアノを弾いていたから。
 もし弾けるなら、折角だし聴いてみたいなぁ、なんて……。
 そう思っていた時、前原さんの顔が徐々に曇っていくのが分かった。

「ま、前原さん……?」
「……なんでそんなこと聞くの?」

 震えた声。悲しそうな声。
 負の感情が詰まっているであろうその声に、私は、言葉を詰まらせた。
 すると、前原さんは唇を噛みしめ、両手を鍵盤に打ち付けた。
 ダーンッ! という大きな音が響いて、私はビクッと震えあがってしまった。

「ッ……」
「……ピアノなんて、弾けない……私はもう、ピアノなんて……」
「前原さん……」

 私が恐る恐る聞くと、前原さんはハッとして顔を上げた。
 怯えている私の顔を見て、彼女の顔は、徐々に青ざめていく。

「あ、ははは……変なところ見せちゃったね……」
「あ、いや、えっと……」
「……それじゃあ、教室戻ろっか」

 笑顔で言う前原さんに、私は小さく頷いた。
 すると、前原さんは明るく笑い、私の手を握り歩き出す。
 前で揺れる青い長髪を見つめながら、私は恐る恐る口を開いた。

「あの、前原さん……」
「……杏。なんで、あんなこと聞いたの……?」
「えっ……」

 突然の質問に、私は言葉を詰まらせる。
 流石に、貴方の記憶世界に入った時に見ました、なんてトチ狂ったことは言えないからなぁ……。
 逆に、もし同じことを言われたら、事情を知らない状態だったらきっと引く。
 友達辞めるレベルで引く気がする。

「えっと……なんとなく……あ、ホラ、真っ先にピアノの所に向かったし」
「……あぁ、そういうこと」

 なんとか誤魔化すと、前原さんは私に背を向けたままそう返事をした。
 彼女の返事に、私は俯く。

「……ごめんね。ピアノ、弾けなくて」
「ううん……こっちこそ、急に変なこと聞いてごめん」
「良いよ。平気」

 前原さんはそう言って、私の手を握る力を強くする。
 私はそれに何も答えられなくて、俯いた。
 彼女はそれ以上何も言わずに、私の手を引いて、少しだけ、歩く速度を速めた。

Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.10 )
日時: 2017/08/10 18:52
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第2話「過去を束ねろ!キュアパースト誕生!」4

 それからは特に何事もなく、放課後になった。
 鞄の準備をしていた時、机の前の方をポンポンと叩かれた。

「ふぇ……?」
「杏。一緒帰ろ」

 顔を上げると、前原さんがそう言ってニヒッと笑った。

「え、でも……」
「実は、私の家も『Adesso』の方向なんだ。だから、ちょうどいいかなって」
「なるほど」

 そう納得すると、前原さんは「行こうか」と行って笑う。
 私はそれに頷き、鞄を背負って彼女に続いて教室を出た。

「それで、新しい学校では上手くやっていけそう?」
「うん。前原さんのおかげで、クラスにもすぐに慣れること出来そうだし」
「私のおかげかぁ……ハハッ、嬉しいな」

 照れたように言う前原さんに私は苦笑しつつ、靴を履き替える。
 それから玄関を出ようとした時、「おーい」と背後から声を掛けられた。
 振り返ってみると、そこには、こちらに手を振って来る女生徒の姿があった。
 えーっと……。

「あれ、みっちゃん。みっちゃんも今帰り?」
「うん。瑞樹と今行さんも?」
「んー。まーね」

 前原さんはそう言って私の肩を組む。
 その様子に、みっちゃん? は苦笑した。

「良いなぁ瑞樹は今行さんと仲良くて。私とも仲良くしてよ」
「え、あ、私は大歓迎だよ!」
「本当? あ、私は山田美穂。よろしく」
「あ、うん。よろしく」

 山田さんが差し出した手をしっかり両手で握って、私はそう答えた。
 すると、前原さんがムーッとした表情をする。

「何よ瑞樹」
「いや、杏が私以外と仲良くするのはなんかなぁ……って。杏と一番最初に仲良くなったのは私なのに」
「あはは……でも、私は前原さんと一緒にいるのが一番楽しいよ」

 そう言って見せると、前原さんは「本当?」と聞き返してくる。

「うん。本当。まぁ、やっぱり、皆より一日早く仲良くなったし、昨日はずっと一緒だったからかな」
「なるほど……んー。それなら良いや」

 前原さんはそう言って私の腕を抱く。
 それに、山田さんが呆れたように笑う。
 その時、「あらあら」という声が聴こえ、私達は足を止めた。

「プリキュアの周りには良いメモリアの持ち主が集まるのかしら?」
「誰……」

 そう漏らしつつ、私は咄嗟に前原さんと山田さんの前に立とうとした。
 しかし、それより先に前原さんが前に歩み出て、目の前に立つ魚みたいな青い女の人を睨む。

「何ですか? 変な見た目して……警察呼びますよ」
「フンッ。勝手にしな。すぐ済ませるから」

 そう言うと青い女の人は手を掲げる。

「危ないッ!」

 咄嗟に私は叫び、前原さんの体を突き飛ばした。
 すると、彼女の鞄が地面を跳ね、中から教科書やら筆箱が散乱する。
 その時、その中にラブメモリーウォッチがあるのを見つけた。

「あれは……!」
「っつぅ……みっちゃん!」

 前原さんの叫びに、私は咄嗟に顔を上げる。
 すると、そこでは胸元に時計の針のようなものが現れ、目から光が無くなっていく山田さんの姿があった。
 やがて、女の人が手を引っ込めると、山田さんは倒れ、彼女の胸元が裂けて異空間のようなものが出来る。
 それに女の人は舌なめずりをして、中に入っていく。

「なッ……! みっちゃんに触るなッ!」

 前原さんはそう叫ぶと、掴みかかるように女の人に吠える。
 私は咄嗟に彼女の体を抱きしめ、押さえる。
 その間に女の人は山田さんの体の中に消えていき、その裂けた部分は閉じて行く。

「みっちゃん! みっちゃんッ!」
「ッ……! 前原さんは、すぐに先生を呼んできて! 私がここで見ておくから!」

 そう言いつつ鞄からラブメモリーウォッチを取り出そうとしていた時、その腕を掴まれた。

「嫌! 杏を一人にしていたら、何か起こりそうだから!」
「で、でも……」
「先生を呼びに行くなら、一緒に行くよ」

 真面目な顔で言う前原さんに、私はしばらく迷った後で、彼女の腕を握り返す。

「じゃあ……私に付いてきて」
「えっ……」
「あ、一応、あの時計……持ってきて」

 私がそう言いつつ地面に落ちるラブメモリーウォッチを指さすと、前原さんは不思議そうな顔でその指さした方向に視線を向ける。
 そして地面に落ちているラブメモリーウォッチを見て、「えっ……」と声を漏らす。

「なんで、これ……」
「急がないと……早く拾って」

 そう言いつつ手を差し出すと、前原さんは頷き、慌てた様子でラブメモリーウォッチを拾い、私の手を握る。
 私は一息つき、先ほど針を合わせておいたラブメモリーウォッチを掲げた。
 すると、山田さんの胸元が裂け、異空間が広がる。

「わ、何、これ……」
「前原さん……私の手、離さないでね!」

 私はそう言いつつ、彼女の手を引いて、山田さんの胸元の部分に足を踏み入れる。
 すると、体が強く引っ張られ、私達はそのまま吸い込まれていった。

Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.11 )
日時: 2017/08/10 22:58
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第2話「過去を束ねろ!キュアパースト誕生!」5

<瑞樹視点>

「うわぁぁッ!」

 穴から落ちた私は、その場に尻餅をつく。
 すると、綺麗に着地した杏が「大丈夫!?」とこちらに振り向き、手を差し出してくる。
 それに私は「大丈夫、大丈夫」と返事をしつつ、彼女の手を握り、立ち上がる。

「それで、ここは一体……」

 そう言いつつ辺りを見渡してみると、それはどこかの広い公園だった。
 周りで色々な人が遊んでいる中、一人の少女がフリスビーのようなものを構えているのが見えた。
 そしてその上に、何か、黒くて巨大な時計が……。

「あれは、みっちゃん……?」

 よく見ると、それはみっちゃんだ。
 今より少し幼いけど、結構みっちゃんの面影がある。
 そういえば、去年飼っていた犬が死んだって……。
 じゃあこれは、みっちゃんの記憶の中……?

「……来る……」

 杏の言葉に、私は顔を上げる。
 すると、黒い針がちょうど六時半を指し、そこから空間が裂けて、中から毛むくじゃらの巨大な化け物が現れる。
 よく見ると周りの景色は一瞬でモノクロに変わり、私達以外動いていない。

「な、何これ……!」
「ッ……! 前原さんは、私より前に出ないで!」
「え、でも……!」

 そこまで言った時、杏が腕を構えているのが見えた。
 腕時計の、針を回すネジを摘まみ、彼女は口を開く。

「プリキュア! メモリアルコンバージョンッ!」

 その叫びと共に、彼女の体を光が包み込む。
 一瞬目を瞑り、次に目を開いた時、目の前にいたのは知らない女の子だった。

「今を輝く、一つの光! キュアアデッソ!」

 ……は?
 呆然としていた時、キュアアデッソと名乗った女の子はこちらを見て、微笑んだ。

「前原さん……ビックリした?」
「は、え、ほえっ……?」
「……私が、山田さんも救って、前原さんのことも守るから」

 恐らく、目の前にいるのは杏だ。それは分かった。
 しかし、やっぱり思考が追いつかない。
 呆然と立ち尽くす私を置いて、彼女は化け物の方に向かって走り出す。

「はぁぁぁッ!」

 そう叫び、化け物を殴る。
 すごい……。自己紹介の時に緊張で固まっていた彼女とは段違いだ……。
 呆然としつつ、私は自分の手を見た。
 ……私は、なんでここにいるんだっけ……。
 私は確か、みっちゃんを助けたかっただけなのに……。
 でも、助けているのは杏一人で、私はこうして見ているだけ。

『瑞樹ちゃんの演奏も綺麗だけど、お兄さんと比べるとまだ……ねぇ……』
『おい。やめてあげなさい。アイツは天才なんだ。瑞樹だって充分プロになれる逸材だ』
『そうですけど……』

 ……まただ。
 自分がしたいことを、自分より上手くできる人間が現れる。
 そうやって私の存在意義はどんどんなくなっていくのが怖くて……だから私は……———。
 と、そこまで考えていた時、杏が化け物に掴まれ持ち上げられるのが見えた。

「ッ……! 杏ッ!」
「だい、じょうぶ……! 私が、前原さんを、守るん、だ……!」

 彼女の言葉に、私は、彼女に言われて持ってきた腕時計を見つめた。
 いつの間にか私の近くに落ちていたこれは、杏とお揃いの腕時計。
 さっき、杏はこれを使って変身をしていた。
 だったら、もしかしたら、私も……!

「杏ッ!」
「はいッ!?」
「私も……これで、変身できるかなぁ!?」

 その言葉に、杏は驚いたように目を見開く。
 しかし、すぐに頷いた。

「できる!」
「どうするの!?」
「針を十二時で合わせて、プリキュア、メモリアルコンバージョンって叫ぶの!」
「分かった!」

 その言葉に、私はすぐにネジを回して、十二時に合わせる。
 あとは、叫ぶだけ……!

「プリキュア! メモリアルコンバージョン!」

 そう叫んだ瞬間、腕時計が光って、私の体を包み込む。
 学校の制服が一瞬で薄手のワンピースになり、周りを小さな時計が舞う。
 目の前に舞う小さな時計二つに、それぞれ片手ずつ突っ込んでいくと、針が回転して十二時になり、白い手袋へと変わる。
 足を突っ込んでみると、同じように針が回転して、ブーツに変わる。
 それから、頭上から大きな時計が落ちてきて、針の中心部分に私の頭が来る位置で少しずつ私の体を貫通していく。
 髪は鮮やかな水色になり、頭の上の方で一つ結びになる。
 長さ自体も長くなって、膝くらいまで伸びる。
 それから、服装も水色と青のフリフリした服になった。
 何が起こっているのか理解するより前に、私の脳裏に、一つのセリフが浮かんだ。

「過去を束ねる、一つの夢! キュアパースト!」


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