二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 【オリキュア】メモリアルプリキュア!
- 日時: 2017/08/01 23:00
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
初めましてかこんにちは!愛です!
本日からはメモリアルプリキュアというオリキュア小説を書きたいと思っています。
基本テンションとノリに任せて書くのでグダグダすると思いますが、楽しんでいただけると幸いです。
それでは、よろしくお願いします。
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- Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.67 )
- 日時: 2017/10/14 10:18
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
第11話「メモリア交換!?杏奈とリコルンが入れ替わる!?」3
学校の敷地内に入ると、すぐに鞄の中に入って教室に向かわせた。
チャックは開けた状態で、外のことが分かるようにしておく。
軽く挨拶などは交わしたようだが、なんとかボロが出ない内に教室に入った。
教室に着くと、すぐに私の席の引き出しから教科書類を全て出し、その中に小さな体を滑り込ませた。
やっと一息つける……。大きくため息をついていると、机の外から声がした。
「この教科書類はどうするリコ?」
「あー……私がロッカーにしまっておくよ。授業で必要になったら取って来てあげる」
「ありがとう瑞樹ちゃん」
私の言葉に、瑞樹ちゃんは「いえいえ」と言って、歩いて行く。
その姿を見送りつつ、私は引き出しからチョコンと顔だけ出して、リコルン……もとい、自分の顔を見上げた。
「リコルン、大丈夫?」
「分からない……リコ。これからどうすれば良いのか……」
「うん、私も。でもさ、なんとかするしかないよね」
私の言葉に、リコルンは不安そうに顔を歪ませた。
不安だよね……私もだよ。
互いに同情し合っていた時、教室の扉が開いた。
「杏奈さん……大丈夫ですか?」
星華ちゃん!?
引き出しの中に隠れていないとダメだから確認は出来ないが、この声は明らかに星華ちゃんだ。
見ると、リコルンの顔が明らかに引きつる。
うわぁ、リコルン今一番困ってる……!
瑞樹ちゃんは……まだ私のロッカーに教科書とかを入れてくれてる!
やけに丁寧にしまおうとしているため、こちらの状況を把握している様子は無い。
困惑していた時、星華ちゃんは続けた。
「さっき、顔色悪そうだったので……具合でも悪いのかなって」
「だ、大丈夫っ……だよっ?」
なんとか語尾を誤魔化すリコルン。
見ているこっちがヒヤヒヤする……誰か助けて!
「なんか、今日の杏奈さん、変ですよ? あの、私、杏奈さんの力になりたいんです」
星華ちゃんが良い子すぎて辛い件。
しかし、今私に発言権は無い。引き出しの奥で息を潜めるしか無い。
そんな間に、話は進んでいく。
「ほ、本当に大丈夫……だよ。リk……私、は、平気、だから……」
「なんかぎこちないですよ? まぁ、平気って言うなら、無理には聞きませんけど……」
そこまで言うと、少しだけ間が空く。
僅かに聴こえる衣擦れの音……ポケットから、何かを取り出しているような……?
「あの、これ……!」
「これは……?」
「私が好きな飴なんです。……私、辛くなったら、甘いものを食べるんです。モデルとして失格ですけどね」
自虐的な言い方で笑う星華ちゃん。
見えないけど、今、恥ずかしそうに笑っている星華ちゃんの顔が浮かんだ。
……この目で見たい!
「えっと……」
「一応辛くなった時用に、他にもお菓子はあるんですけど……私はこの飴が、一番元気が出るんです。だから、杏奈さんにも元気になってほしくて……」
「……ありがとう。大事に食べるね」
リコルンの返答に星華ちゃんは納得したようだ。
その証拠、星華ちゃんの足音だと思われるものが遠ざかって行ったから。
すると、ロッカーに教科書類を入れ終わった瑞樹ちゃんが、こちらに駆け寄って来た。
「ごめん、意外と手こずって! それより、今の生意気モデルなんじゃ……!」
「えっと、うん……」
「うわ、マジか……大丈夫? 正体バレなかった?」
瑞樹ちゃんの言葉に、私は「大丈夫だよ」と答えておいた。
星華ちゃんの優しさに、ちょっとジーンとしただけだから。
- Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.68 )
- 日時: 2017/10/14 15:13
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
第11話「メモリア交換!?杏奈とリコルンが入れ替わる!?」4
<リコルン視点>
後宮星華に絡まれてからは、特にトラブルに巻き込まれることなく、授業が始まった。
一時間目の国語。二時間目の数学。三時間目の家庭科。四時間目の体育。
……どれを取っても、かなり怪しいレベルになってしまったような気がする。
国語では書道をしたのだが、書道の仕組みが分からず墨汁とやらを直接筆にかけようとして杏奈に止められた。
数学では意味不明な数字と文字の羅列に固まった。
家庭科では針で何度も指を突き刺し、他の人の布と自分の布を縫い付けたりしてかなり迷惑を掛けた。
体育では競技のルールが分からずひとまずボールを持って走ろうとしたら止められた。どうやらボールを手で持ったらいけない競技だったようだ。
そんなこんなでなんとか昼休憩になり、リコルン達は屋上に上がったのだけれど……。
「もう、疲れた……」
そう言って、杏奈は地面に倒れ伏せた。
しかし、こうして人間の身になって自分の姿を見ると、中々不思議な感じだ。
メモリー王国は周りが自分と似たような生物しかいなかったし、他の異世界でこうして自分を客観視できる機会など中々無かったから。
それに、と少し考える。
こうして杏奈の体になってみて分かるのだが、人間の女子中学生というものは、かなり忙しい。
数学など、あれだけの数字と文字の羅列を見たら、頭が痛い。
あと家庭科で何度も針で突き刺した指が痛い。
体育で体を動かしたから、全体的に倦怠感がこの肉体を襲う。
……こんな中で、二人はプリキュアとして戦ったりしていたのか。
慣れというものもあるかもしれない。
しかし、少なくとも、自分にこの二人の真似は出来ないだろう。
このようなハードスケジュールをしていても尚、笑顔でいられる二人って……。
「……二人はすごいリコ」
「ふぇ? 何が?」
突然言ったからか、杏奈は不思議そうにリコルンを見る。
それに笑いながら、杏奈の頭を撫でた。
「二人が今までこんな忙しいことをしていたなんて、知らなかったリコ」
「うーん……もう慣れたし、忙しいとは思わないけどね」
瑞樹の言葉に、杏奈もコクコクと頷く。
いや、リコルンから見れば、この生活に慣れているというだけで充分凄い。
今までそんなことも知らずに、無茶振りをしたり、ワガママを言ったりしていた。
「リコルン?」
今までの自分の所業に反省しながら頭を撫でていると、杏奈が不思議そうに顔を覗き込んで来た。
おっと、どうやら考え込んでしまっていたようだ。
慌てて笑いつつ、「なんでもないリコ」と返した。
その時屋上に上がる扉が開いたので、慌てて杏奈を背中に隠す。
「あ、やっぱり瑞樹ここにいた。探したよ〜?」
それは、杏奈や瑞樹のクラスメイトの女子の一人だった。
どうやら瑞樹に話があったようで、笑顔で歩いて来る。
下手なことを言わない内に、リコルンは杏奈を背中に隠したまま後ずさった。
「……なるほど。プリキュアをからかうとはこういうことか」
その時、そんな言葉が聴こえた。
咄嗟に振り向くと、そこには、ロブメモワールのラオベンがいた。
「ラ……ラオベン!」
「え、誰?」
驚いた様子でラオベンを見る女子生徒。
その時、ラオベンが女子生徒に向かって手を翳す。
すると、世界が白黒に染まり、女子生徒の頭上に巨大な時計の針が現れた。
数瞬後、その時計の針から空間が裂けて、中からワスレールが飛び出す。
ワスレールはそのまま記憶世界と同化した現実世界を破壊しながら、進んでいく。
「なんでこんな時に……! あ、杏とリコルンは、ここで待っていて!」
瑞樹はそう言うと、ラブメモリーウォッチを構え、「プリキュア! メモリアルコンバージョンッ!」と叫んだ。
すると、一瞬彼女の体を光が包み、プリキュアの姿へと変わる。
「過去を束ねる、一つの夢! キュアパースト!」
そう叫び、パーストはワスレールの元へと駆けてゆく。
しかし、彼女一人で倒せるだろうか……。
杏奈の顔を見ると、彼女も不安そうにパーストを見ていた。
「……どうしよう……このままじゃ、パーストが……」
「……杏奈は、ここで見ていてほしいリコ」
そう言って見ると、杏奈は目を驚いた顔で見た。
当然だ。でも、このままパースト一人で戦わせるくらいなら……。
震える足でなんとか立ち上がり、ラブメモリーウォッチを構えた。
「プリキュア! メモリアルコンバージョンッ!」
- Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.69 )
- 日時: 2017/10/14 17:54
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
第11話「メモリア交換!?杏奈とリコルンが入れ替わる!?」5
<杏奈視点>
「今を輝く、一つの光! キュアアデッソ!」
そう言ってポーズを決めるリコルンに、私は息を呑んだ。
まず、変身できるのか……いや、それどころじゃない。
私はなんとかリコルンの元に小さな足で駆け、その足に掴まった。
「ま、待ってリコルン!」
「大丈夫リコ。杏奈の分まで、戦うリコ」
そう言ってリコルンは立ち上がり、ワスレールと戦っているパーストの元に駆ける。
リコルンはたまにフワフワと空を飛んでいるけれど、どうやって空を飛んでいるのだろう……。
試しに力を込めて見ると……あ、背中の方に力を込めたらなんだかフワフワ浮かび始めた!
それを維持して、フワフワ〜と空を飛んで二人の元に行こうとした時、ワスレールが雄叫びをあげて二人の体を殴り飛ばした。
「パースト! リコルン!」
リコルンの体の状態でこの名前を呼ぶのはおかしいかと思ったが、今はそれどころじゃない。
フワフワと飛びながらなんとかリコルンの元に飛んで行き、地面に足を付けて倒れ伏す自身の体を揺すった。
すると、リコルンは私の顔を見て、「杏奈……」と呟いた。
「大丈夫!? すごい怪我……」
「だい、じょうぶ、リコ……」
そう言ってリコルンは立ち上がろうとするが、すぐに体を地面に打ち付ける。
確かにプリキュアは力も上がるし、耐久力だって上がるが、今まで自分で戦ったことが無いであろうリコルンにとってはかなり痛いだろう。
しかも、私なんかと違って、リコルンは今まで数多くの異世界を渡って、ロブメモワールの侵攻を止めようとしてきた。
私達なんかとは比べ物にならない人生経験の数の中での、初めての戦い……初めての、痛み。
きっと、かなりショックが強いハズ。
中学一年生の頃、学校の体育でソフトボールをした時に、ボーッとしていて人が投げたボールが胸に当たったことがある。
ただの打撲だったのだが、恐らく心臓の辺りに当たったからか、ショックで蹲り泣いてしまったのだ。
実際の痛みはそこまでではない。当たった箇所が箇所なので病院には行ったが、湿布を渡されてそれきりだ。
しかし、嗚咽を漏らしながら号泣して、しばらく保健室で胸を氷で冷やした。
初めての痛みや、予期せぬ痛みとは、それだけ辛いものなのだ。
だからこそ、今、リコルンは苦しんでいるのだろう。
なんとか守ってあげようと差し出した手は……小さい。
あぁ、そうか……。
リコルンはこの小さな手で、数々の異世界を守ろうとしてきたんだ。
でも、守ることは出来ずに……ただ、ロブメモワールに全てを奪われていくのを、ただ見ていることしか出来なかった。
「リコルン……私、全然リコルンのこと分かってあげられなかった……」
「杏奈……?」
「杏……どうしたの……?」
リコルンとパーストがそう尋ねてくるのを聞きながら、私は小さな手に拳をつくる。
「リコルンは……ずっと、こんなに無力感を感じていたんだね……こんなに……」
それ以降は、言葉にすらならない。
リコルンが、「杏奈……」ともう一度私の名前を呼び、私の手を大きな人間の手で包み込んでくる。
温かい……私はその手に小さな獣の手を乗せ、撫でた。
その時、ワスレールがこちらに近づいて来る足音が聴こえた。
「……今の私には、リコルンを助けることも……一緒に戦うこともできない……」
「杏奈、何を……」
「でも、私だって、二人の力になりたいッ!」
そう叫んだ瞬間、胸元がカッと光った。
何があったと思うと同時に、目の前に、光り輝く桃色の針が現れた。
これは、前に巨大時計から生まれた……!
「なんでここに……鞄に入れていたのに……」
「まさか、杏奈のメモリアと、想いの力が反応して……?」
リコルンの言葉を聞きながら、私は桃色の針を握る。
すると、リコルンが付けているラブメモリーウォッチが、反応するように淡く光った。
これは……!
「リコルン! これ、使って!」
「えっ……」
「良いから!」
私の言葉に、リコルンは「わ、分かったリコ!」と言い、その針を抓む。
その瞬間、ラブメモリーウォッチが強く光り、時計の文字盤を覆うガラス板が縁ごと開き、針がある部分が剥き出しになる。
戸惑いながらも、リコルンは時計の長針に合わせるように、桃色の針をはめ込んだ。
- Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.70 )
- 日時: 2017/10/14 21:02
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
第11話「メモリア交換!?杏奈とリコルンが入れ替わる!?」6
桃色の針をはめた瞬間、ラブメモリーウォッチの光がさらに強くなる。
それに、ワスレールがたじろいだのが分かった。
「なんだ、この光は……!」
ラオベンの声がする。
私はそれに短い腕で目元を覆いながら、様子を伺う。
「もしかして、これ……」
リコルンはどうやらどうすれば良いのかを察したようで、ラブメモリーウォッチの針を回すネジ部分を引っ張った。
次の瞬間、桃色の針が高速回転する。
グルグルと回転した針からさらに強い光が漏れて、やがて、パァンッと弾けるような音と共に棒状の何かが出て来た。
慌ててリコルンが受け止めると、それは……剣のようなものだった。
「ロングソード……?」
パーストが真面目な顔で言う。
とはいえ、確かにこの見た目はロングソードと言うほか無いか。
桜色の両刃に、柄はショッキングピンク。
刃は七色の宝石で彩られ、その根元の辺りには丸い窪みがあり、真ん中に細い突起がある。
「これは何リコ……?」
どうやらリコルンもこの剣の情報は無かったようだ。
不思議そうにしているリコルンを見ていた時、なんとか立ち直ったワスレールが歩いて来るのが見えた。
「リコルン!」
「分かってるリコ!」
咄嗟にリコルンは立ち上がり、ロングソードを振るった。
すると、それだけでワスレールの体が削れ、僅かにメモリアらしき光が漏れる。
それを見て、パーストは「おぉぉぉ!」と歓声をあげる。
「カッコいい!」
「え、そう……?」
どうやらパーストにはそういう系統のものへの憧れがあったようだ。
ロングソードと銘打ってはいるが、片手でもなんとか振れるようで、リコルンはそれを扱ってワスレールを牽制する。
「リコルンそのままぶった切れ〜!」
「いやぁ、自分の見た目をした人が、化け物を滅多切りにしているのを見るのは……」
パーストの指示に、私はそう言いつつ顔をしかめた。
すると、リコルンは「じゃあどうすれば良いリコ!」と文句を言って来た。
どうしろって……と思ったところで、リコルンの手首に巻き付いたラブメモリーウォッチに目が行った。
「あっ……リコルン! あの、ピンクの針をその剣の丸い穴にはめてみて!」
「え、あ、分かったリコ!」
私の言葉に、リコルンは慌ててラブメモリーウォッチから桃色の針を外し、突起にはめ込む。
すると、腕時計用の針だったため小さかった針が輝き、その窪みに合う大きさの針に変化する。
その時、ワスレールが攻撃をしてきたため、リコルンは「うわわッ」と慌てた様子で避けた。
しかし慌てていたからか、指がロングソードにはめた針に触れた。
そこから一気に高速で時計の針が回転し始め、すぐにリコルンは動きを止める。
「今を輝く大いなる光! アデッソソード!」
……こういう掛け声って、傍から見たらかなり痛いね。
しかも自分の顔だから笑えない。
ていうかこれ、次回から私がやるの?
やだー……。
「杏、変な顔してるけど……?」
「あー……うん。大丈夫」
そんなやり取りをしていると、リコルンがロングソードもといアデッソソードを持った手を上に掲げ、構える。
それから大きな円を描くように剣を回し、一個の大きな丸ができる。
いや、あれは……時計?
手を出して、ちょうどその手が円の中心にくる位置で止めると、尚更十二時をさす時計に見えた。
その位置から手首や指先だけ使って、さらに剣を一周させると、白い丸が剣の動きに合わせて桃色に染まっていく。
全てが桃色に染まった時、その光が剣に集まり、ピンク色の眩い光を発する。
「今を輝け! プリキュア! アデッソルーチェ!」
そう叫び横薙ぎに切ると、真一文字の光がワスレールに向かって飛んでいく。
光がワスレールを捕らえると、時計の文字盤のようなものが現れて、空中でワスレールを固定した。
リコルンは胸の前で剣を構えると、柄にあるピンク色の針を指で停止させた。
すると、ワスレールを固定していた時計が、ワスレール諸共爆裂し、消えて行った。
- Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.71 )
- 日時: 2017/10/14 22:39
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
第11話「メモリア交換!?杏奈とリコルンが入れ替わる!?」7
<セフト視点>
ワスレールが消えたのを見て、俺は少し驚いた。
まさかあの状況でパワーアップして、ワスレールを倒すとは。
このまま様子を見ていても、これ以上面白い展開は望め無さそう。
仕方なく、俺は指を鳴らし、二人のメモリアを元に戻した。
「どうしたんだ? 急に指なんて鳴らして」
隣でピアノを弾いていた紫音は、手を止めてそう聞いてきた。
彼の言葉に、俺は「なんでもないよ」と答え、笑って見せた。
<杏奈視点>
一瞬、視界が揺らぎ、気付いた時には視界がものすごく高くなった。
自分の体を見ると、手には長めの剣が握られていて、服や手はキュアアデッソのものだった。
それはつまり……!
「「戻った!」」
私とリコルンは、同時に声を発した。
すると、パーストは驚いた様子で目を丸くした。
「え、戻ったって……つまり、杏が杏で、リコルンがリコルンってこと!?」
「なんか余計にわけわからなくなってない?」
私が困惑しながらそう聞いてみると、パーストはしばらく困惑した表情をしていたが、「ま、いっか」と言ってヘラッと笑った。
その時、ワスレールが浄化されたからか、世界に色が戻り始める。
色々バレない内に学校の屋上に戻り変身を解くと、ちょうど瑞樹ちゃんに用があって屋上に来ていた女の子も意識を取り戻した。
それから話を聞いた感じ、どうやら用事とは体育の時に瑞樹ちゃんが忘れ物をしていたようで、それを直接渡したかったのだと言う。
それから女子生徒が去った後で、瑞樹ちゃんは軽く伸びをした。
「それにしてもさ、あの入れ替わりは一体何だったんだろうね」
「さぁ……でも、良い経験だったと思うよ。ね、リコルン」
私がそう言ってリコルンを見ると、リコルンは大きく頷いた。
それからリコルンは私達の目の前まで浮かぶと、ペコッと頭を下げた。
「杏奈、瑞樹。いつもありがとうリコ」
突然そんなことを言われ、私達はキョトンとした。
やがて、瑞樹ちゃんが「え、ちょっと……」と困惑した声を漏らした。
「急にどうしたのさ。リコルン」
「……今日杏奈と入れ替わって、二人は、いつもあんな戦いをしてる上に、あんなに忙しい学校生活を送っていることを知ったリコ。だから、その感謝を込めて……ありがとうリコ」
そう言って頭を下げるリコルンを、私は慌てて止めた。
「でも……」と困惑した様子で声を漏らすリコルンに、私は微笑んで見せた。
「もうずっと繰り返してきた生活だもん。……慣れちゃった」
「ん……そうだよ。そんな今更感謝なんてされたら、居心地悪いじゃんか」
ヘラヘラと笑いながら言う瑞樹ちゃんに、リコルンはまだ腑に落ちない様子の顔をしている。
だから私はそんなリコルンの頭を撫でて、笑って見せた。
「それにっ! 私の方こそ、リコルンが今まで辛かったってこと、分かったもん。これからも一緒に頑張って行こう?」
「杏奈……うんっ!」
笑顔で頷くリコルンを見て、瑞樹ちゃんが苦笑を漏らした。
「なんか、二人だけ仲良くなっちゃってんじゃん。リコルン私にも甘えて良いのよ〜?」
「瑞樹はたまに耳掴んで脅してくるから嫌リコ」
「そういえば飴あるんだけど」
「瑞樹大好きリコ〜!」
甘物に弱いリコルンは、あっさり瑞樹ちゃんに釣られてしまった。
しかし、飴か……そこで星華ちゃんに貰った飴を思い出し、制服のポケットに手を突っ込んだ。
すぐにそれは見つかり、透明の袋で梱包された星型の黄色の飴を取り出した。
「リコルン。私も飴持ってるよ」
「本当リコ!?」
「あげないけど」
「なッ」
最初はあげようかと思って声をかけたけど、折角星華ちゃんに貰ったんだからやっぱり大事にしよう、と思いとどまった結果、リコルンをガッカリさせてしまった。
瑞樹ちゃんはそんなリコルンを抱いて飴を舐めさせながら、「杏サイテ〜」と言ってニヤニヤと笑った。
最低と言われても……しょうがないじゃないか。
私は「ごめんごめん」と言いつつ、その飴を口に含んだ。
飴は普通のレモン味だったにも関わらず、すごく甘い味がした。
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