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【オリキュア】メモリアルプリキュア!
日時: 2017/08/01 23:00
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

初めましてかこんにちは!愛です!
本日からはメモリアルプリキュアというオリキュア小説を書きたいと思っています。
基本テンションとノリに任せて書くのでグダグダすると思いますが、楽しんでいただけると幸いです。
それでは、よろしくお願いします。

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Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.42 )
日時: 2017/09/21 21:56
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第7話「正体がばれる!?杏奈と星華急接近!」5

 降り立った場所は、野球のグラウンドのような場所だった。
 辺りを見渡して見ると、高校生くらいの男の人達が野球をしているのが見える。
 もしや、これがあの男の人の思い出……?
 そう思っていた時、世界が白黒に染まり、停止する。

「ッ……! もう!?」

 私達はすぐに立ち止まり、上空に視線を向ける。
 直後、巨大な針の部分から空間が裂けて、野球ボールのような見た目のワスレールが出てくる。
 私はすぐにラブメモリーウォッチを構え、瑞樹ちゃんに向かって叫ぶ。

「瑞樹ちゃん! 行くよ!」
「う、うん!」
「「プリキュア! メモリアルコンバージョンッ!」」
「今を輝く、一つの光! キュアアデッソ!」
「過去を束ねる、一つの夢! キュアパースト!」
「「取り戻せ! 愛のメモリー!」」
「「メモリアルプリキュア!」」

 そう名乗った直後、野球ボールのような何かが地面に着弾する。
 最初は的から逸れたのか、とぼんやりと考えていた。
 しかし、すぐにパーストに襟を掴まれ、後ろに引っ張られる。
 息が苦しくなる感覚に顔をしかめた時、地面に着弾した野球ボールが爆発した。

「なッ……」
「やっぱり爆弾か……止まったままの私達に攻撃して外すなんて、変だと思った」

 パーストはそう言いながら私の襟を掴んで後ろに引っ張り距離を取る。
 大分意識が遠退きそうになっていた時、ようやく襟から手を離された。
 気道が確保され、私は膝をついて咳き込む。

「ケホッ、ケホッ! パースト、流石に荒っぽいよ」
「ごめんごめん。咄嗟だったからさ」

 軽く笑いながら言うパーストに嘆息しつつ、私はすぐに立ち上がり、ワスレールを睨む。
 すると、ワスレールは雄叫びをあげ、またもや野球ボールをぶつけてくる。
 すぐに二人で横に跳んで躱すと、高速で目の前を野球ボールが通り過ぎ、壁にめり込む。
 数瞬後、壁が爆発し、瓦礫が飛び散る。

「着弾して、時間を置いて爆発するタイプか……どうする?」
「どうする、って……あの球速は中々速いから当たったら痛そうだし、だからってこのままじゃ容易には近づけないし……」

 パーストの言葉に、私は歯噛みする。
 どうすればいい……どう、すれば……。
 その時、地面に落ちている金属バットが目に入った。

「そうだ!」

 私はすぐに金属バットを掴み、ワスレールに向かって構える。
 そんな私を見て、パーストは顔色を変えた。

「ちょっ……アデッソ、正気!?」
「正気だよ。ボールを打ち返して、あのワスレールにぶつける」
「無茶だって! それより、時間を掛けてワスレールの体力を奪った方が……」
「私は少しでも早く終わらせて星華ちゃんに会いたいの!」

 そう声を張り上げると、パーストは口を噤む。
 私はそれに息をつき、改めてバットをワスレールに向ける。
 挑発されたからか、ワスレールは怒り、すぐにボールを構える。

「来い!」

 私はそう叫び、バットを構えた。
 すると、ワスレールの口から野球ボールを模した爆弾が飛んでくる。
 かなりの速度だが、私はそれに狙いを定め、バットをぶつける。
 プリキュアの力での補正が掛かり、ボールは高速で打ち返され、ワスレールの口に入る。
 数瞬後、ワスレールの口の中が爆発した。

「おぉ……ナイスショット」
「よし……一気に決めるよ! パースト!」

 私の言葉に、パーストは慌てた様子で頷く。
 そして、二人で手を繋いだ。
 口の中での爆発に戸惑うワスレールの頭上に行き、二人で手を構える。

「「プリキュア! シャインドリーマー!」」

 そう叫び繋いだ手を掲げた瞬間、五線譜の輪がワスレールを囲う。
 そして、光が出て、ワスレールを浄化していった。

Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.43 )
日時: 2017/09/22 22:11
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第7話「正体がばれる!?杏奈と星華急接近!」6

 男の人の記憶世界から出ると、すぐに瑞樹ちゃんと二人で彼の体を支えて、細い路地から出る。
 放っておいてもすぐに目を覚ますハズ。
 だから本当は放置でも良いのだけれど……まぁ、人間としてそれは流石にどうかと……。
 というわけで瑞樹ちゃんと頑張って男の人を休ませられる場所に運んでいた時、Adessoから星華ちゃんが出てくるのが見えた。
 まずい!

「今行先輩! 何してるんですか!?」
「ゲッ。生意気モデル」

 そう言ってあからさまに顔をしかめる瑞樹ちゃん。
 彼女の反応に、星華ちゃんもムッとした表情を浮かべる。
 け、喧嘩はやめて……。

「な、何って……気絶している人がいたから、どこかで休ませようと……」

 ひとまずそう言ってみると、星華ちゃんは目を見開いて私と男の人を交互に見る。

「そんなの、救急車でも呼んで放置で良いじゃないですか……なんで、わざわざ……」
「だ、だってそんなの可哀想だもん……少しでも私に出来ることがあるなら、やってあげたいかな?」

 私の言葉に、星華ちゃんはポカンとした顔をした。
 その時、「んぅ……」という重たい声と共に、男の人がゆっくりと目を覚ました。

「あ、起きましたか?」
「え? あ、うん……あれ、俺何してたんだっけ……」
「さっきそこの細い路地で倒れていて……大丈夫ですか?」

 私がそう問いかけると、頭を押さえつつ、男の人は頷く。
 それからすぐに私たちから離れ、頭を下げた。

「迷惑かけてごめんなさい。それから、心配してくれてありがとうございます。多分、もう大丈夫なので」
「……気を失っていたなら、念のため、病院行っておいた方が良いですよ」

 星華ちゃんがそう呟くと、男の人は星華ちゃんの方を見る。
 しばらく見つめてから、パァァァと目を輝かせた。

「わ、もしかしてモデルの後宮星華さんですか!?」
「え……」
「わぁ、本物だ! あ、俺、星華さんの大ファンで! あ、今日出た雑誌もちょうど買ったばかりで……」

 そう言って男の人は持っていた鞄からレジ袋を取り出し、一冊の雑誌を取り出した。
 それは、私も毎月買っている雑誌だった。
 そういえば今日発売か……後で買いに行かなくちゃ。

「えっと……」
「あの、よ、良かったら、サインを……!」
「……良いですけど」

 星華ちゃんはそう言うと、雑誌を受け取り、ポケットからペンを取り出してサラサラとサインを書く。
 恐らくこういうことは初めてではないのだろう。
 やがて、サインを書き終わると、その雑誌を男の人に渡した。
 直筆のサインを本人から貰ったりしたものだから、男の人はかなり緊張した様子で頭を下げ、去って行った。

「すごいなぁ、サインをせがまれるなんて……やっぱり私とは住む世界が違うや」

 つい、そう呟いた。
 すると、星華ちゃんは私の方を見て、優しく笑った。

「えぇ……確かに、私と今行先輩は住む世界が違いますね」
「ほえ?」
「……今日、一緒にいてみて気付きました。今行先輩は、ごく普通の良い人なんだ……って」
「えっと……?」
「私は今行先輩の生活を壊したくありません。……だから、その時計に関する詮索も止めます」

 その言葉に、私と瑞樹ちゃんは同時にラブメモリーウォッチを付けた手を背中に隠した。
 星華ちゃんはそれに可笑しそうにクスクスと笑ったが、やがて、恥ずかしそうにモジモジしつつ、目を伏せる。

「そ、それで、ですけど……もし、今行先輩が嫌じゃなければ、その……わ、私と、友達になってください……」

 頬を少しだけ赤く染めながら言われた言葉に、私はしばし固まる。
 憧れていたモデルさんは、蓋を開けてみれば、ただの可愛い後輩ちゃんだった。
 それがなんだか微笑ましくて、私はクスッと笑ってしまった。

「な……なんで笑うんですか!?」
「フフッ、ごめん。……私の方こそ、お願いしたいくらい」
「本当ですか!?」

 嬉しそうに言う星華ちゃんの言葉に、私は頷く。

「うん。ずっと憧れていた星華ちゃんと友達になれるんだよ? 私、今一番幸せ」

 私の言葉に、星華ちゃんは嬉しそうに笑う。
 それから、手を差し出してきた。

「それじゃあ、改めて……よろしくお願いします。今行先輩」
「杏奈、で良いよ。星華ちゃん」

 私はそう言いつつ、手を握り返す。
 すると、星華ちゃんはしばらく視線を彷徨わせた後で「じゃあ……杏奈、さん」と言って、はにかんだ。
 その時、瑞樹ちゃんが近くにいないことに気付く。
 いつの間に……まぁ、生意気モデルとか言っていたしね。気に食わないのかも。
 瑞樹ちゃんも星華ちゃんと仲良くしてほしいなぁ……。


<瑞樹視点>

 杏に、何も言わずに離れて来てしまった。
 今の心理状態で彼女と一緒にいることは辛かった。

 別に、後宮星華のことは嫌いじゃない。
 ただ、彼女を見る時の杏の顔が気に入らないだけ。
 すごくキラキラしていて、私には向けたことないような……眩しい顔をするんだ。
 ……あの二人が、仲良くならなければ良いのに……なんて……。

「やだな……今の私、最低だ……」

 そう呟きながら、私は近くの塀に凭れた。
 杏があの子に憧れていることは分かっている。
 だから、あの二人が仲良くなれば、結果的に杏だって幸せ。
 それは分かっている……分かって、いるんだ……。

Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.44 )
日時: 2017/09/24 17:39
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第8話「月光に響くヤキモチピアノ?奏でろ友情のワルツ!」1

 夜になり、私はベッドに仰向けになって寝転んだ。
 瞼を開くと、リコルンが顔を覗き込んできた。

「杏奈、今日も一日お疲れ様リコ」
「ん〜。ありがとリコルン」

 私はそう言いつつ、リコルンの頭を撫でた。
 その時、なんとなく、星華ちゃんのことを思い出した。

「……ねぇ、リコルン」
「リコ?」
「……後宮星華って……知ってる?」

 そう聞いた瞬間、リコルンの顔つきが明らかに変わった。
 明らかに動揺の色を浮かべ、冷や汗らしきものを流す。

「……リコルン?」
「し、知らないリコ」

 そう答えられるも、その表情で言われても信用できるわけがない。
 逃げようとするリコルンの体を掴み、強引に目を合わせる。

「本当に知らないの?」
「知らないリコ〜。それがどうしたリコ〜」
「……同じ学校の一年生なんだけど、その子……プリキュアのこと、知っているみたいなの」

 私の言葉に、リコルンは目を逸らす。
 すぐに私はリコルンの体を掴み、顔を寄せる。

「記憶世界って、外からは見えないハズだよね? 私達の戦いって、外にいる人には見えないハズだよね?」
「そ、そうリコ……」
「じゃあなんで星華ちゃんはプリキュアのことを知っていたの?」
「分からないリコ〜」

 リコルンの言葉に、私は口を噤む。
 もしかしたら、リコルンにも言いたくない理由があるのかもしれない。
 だったら、無理強いするのは良くない。
 ……だけど……。

「リコルン。今一番怪しいよ」
「知らないリコ」

 プイッと顔を逸らしながら言うリコルンに、私は頬を膨らませた。


<瑞樹視点>

 リビングにあるピアノを弾いていると、扉が開き、兄貴が入って来た。
 私はそれを無視して、ひたすらピアノを弾く。

「ただいま、瑞樹。……何か嫌なことでもあった?」
「……別に。何でも無い」

 そう言いながら、私は鍵盤を叩く。
 兄貴はそれにクスクスと笑って、ピアノの横に立つ。

「ベートーベンのピアノソナタ第14番。月光。良い曲だけど、悲しい感じの響きだよね」
「……」
「瑞樹は昔から変わらないなぁ。何か嫌なことがあると、いつもこの曲を弾いてるよね」
「……」
「それで、嬉しいことがあると……」
「あーもう! うるさいなぁ!」

 ダーンッ! と両手で鍵盤を叩きながら、私は立ち上がる。
 兄貴を睨んで見せると、彼は肩を竦めた。

「何?」
「何、じゃないよ。……いちいちうるさい」
「ごめん……でも、瑞樹に何かあったのなら、力になりたくて」
「大きなお世話! 兄貴には関係ないから!」
「で、でも……」

 戸惑った様子で声を漏らす兄貴に、私は「もう放っておいてよ!」と叫んで、リビングを出た。
 自室に戻り、勉強机の前に座り、しばらくぼんやりと俯いた。
 しかし、だんだんと冷静になり、頭が冴えて行く。

「またやっちゃった……」

 額に手を当て、私は息をつく。
 またやらかした。
 どうしてまた失敗してしまうのだろう。
 もう、兄貴には特に恨みとか抱いてないのに。

 そこまで思い出すのは、生意気モデルと一緒に楽しそうに話す杏の顔。
 彼女の顔を思い出した瞬間、私は、自分の胸が痛くなるのが分かった。

「何なの……これ……」

 そう呟きながら、私は頭を抱えた。

Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.45 )
日時: 2017/09/26 19:15
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第8話「月光に響くヤキモチピアノ?奏でろ友情のワルツ!」2

 翌日。通学路をのんびり歩いていると、後ろからこちらに駆けてくる音がした。

「瑞樹ちゃん! おはよ!」

 そう言って杏が隣に並び、嬉しそうに笑う。
 彼女の顔を見た瞬間、胸に鋭い痛みが走り、私は目を逸らした。

「おはよう、杏」
「……? どうしたの? 瑞樹ちゃん。なんか、不機嫌そうな顔してるけど」
「ッ……」

 どうやら顔に出ていたようだ。
 私はすぐに無理矢理笑顔を浮かべつつ、手を振ってみせた。

「な、なんでもないよ!」
「ふーん……あ、そういえばね、昨日、あの後で星華ちゃんと友達になったんだよ!」

 ズキッ……。
 またもや胸が痛み、私は無意識に自分の胸を押さえる。
 そんな私の様子を知ってか知らずか、杏は嬉しそうに続ける。

「星華ちゃんから友達になりたいって言ってくれたんだよ? あの星華ちゃんから。もう夢みたいだよね。未だに信じられないけど、連絡先も交換しちゃって」

 嬉しそうに話す度に、二つに結んだ茶髪が揺れる。
 頬が少しだけ紅潮し、足取りが少しだけ軽くなる。

「……そうなんだ」
「えへへ、昨日の夜もちょっとだけ通話したんだ〜。あ、そういえばね、星華ちゃんってLIMEのアイコンは……」
「ずっと憧れていたんでしょ? 良かったね。仲良くなれて」

 これ以上あの生意気モデルとの会話を聞かされるのが嫌だったので、私は遮るようにそう言った。
 突然遮ったからか、杏は少し驚いたような顔をする。
 しかし、すぐに笑顔に変わり、頷いた。

「うんっ! もうさ、私、今一番幸せだよ!」
「そっか……あっ、私、そういえば今日早く行ってやらないといけないことがあるんだった! ごめん、先行くね!」

 私はそれだけ言って、すぐに走り出す。
 なんで胸が痛いんだろう……。
 杏が他の子と話す時は全然こんなこと無かったのに、なんで、あの生意気モデルにだけ……。


<杏奈視点>

「瑞樹ちゃん……行っちゃった……」

 遠ざかっていく後ろ姿を見つめながら、私は呟いた。

「杏奈さんっ」

 その時、名前を呼ばれた。
 振り向くと、そこには星華ちゃんがいた。

「あっ、星華ちゃん! おはよう」
「おはようございます! ……あれは、前原先輩、でしたっけ」

 星華ちゃんはそう言いながら、瑞樹ちゃんの方に視線を向ける。
 彼女の言葉に、私は頷いた。

「うん……なんか、早く行ってやらないといけないことがあるんだって」
「そうなんですか……」
「……避けられてる、とかじゃないよね……」

 自分に言い聞かせるようにそう呟くと、星華ちゃんは「どうなんでしょうね〜」と言って瑞樹ちゃんの方を見る。

「でも、多分大丈夫だと思いますよ?」
「そうかなぁ」
「はい。だって、杏奈さんは前原先輩のこと大好きじゃないですか。昨日通話した時も、最終体に前原先輩の話ばっかりになっちゃって」
「そう?」
「はい。きっと、あの人にも杏奈さんの気持ち、伝わっているハズですよ」
「そうかなぁ……」

 私はそう呟きながら、もう一度瑞樹ちゃんの後ろ姿に視線を向けた。
 まぁ、大丈夫だとは思うんだけど……。

「……じゃあ、もしかしたら、何か問題事に巻き込まれてるのかも。ごめん。私、行くね!」
「えっ? ちょ、杏奈さん!?」
「ごめん! またね!」

 本当はもっとゆっくり話したかったけれど、背に腹は代えられない。
 後ろ髪を引かれる思いで、私は瑞樹ちゃんを追いかけて、走り出した。

Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.46 )
日時: 2017/09/26 21:41
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第8話「月光に響くヤキモチピアノ?奏でろ友情のワルツ!」3

<瑞樹視点>

 音楽室に鳴り響く、ベートーベンの交響曲第五番第一楽章。運命。
 激しい音楽が腹に響き、私の胸の奥の苛立ちを打ち消していく。
 醜い。たかが一年生如きに嫉妬してしまう自分が醜い。
 でも、仕方ないじゃないか。だって、あの生意気モデルは、杏の憧れの人だよ?

 私は……杏の、一番の親友になりたい。
 兄貴への恨みは確かに消えた。
 しかし、やはり、誰かの一番になりたいと思う気持ちは変わらないのだ。
 プリキュアという共通の秘密を持った者同士。
 おまけに、杏はこんな私の為に、一生懸命兄貴と仲直りさせようとしてくれた。
 それに、杏は一度ヤキモチまで妬いてくれた。だから……油断していた。

 そんなところに、杏の憧れの存在である、生意気モデルこと、後宮星華が現れるのだ。
 不安にならざるを得ない。
 二人の距離はどんどん近づいて行くし、きっと、杏の一番は私ではなく、あのモデルに……。

「うぁぁぁ! ムシャクシャする!」

 そう叫びながら、私は両手の指で思い切り鍵盤を叩いた。
 すると、ダーンッ! という音が響き、ちょうど音楽室に入って来た人影をビクつかせ……って……。

「杏……?」
「あ、み、瑞樹ちゃん……」

 怯えたような目で言う杏に、私の顔が引きつる。
 まさか、杏を怯えさせてしまった……?

「あ、違うの杏! これは……!」
「だ、大丈夫! それより瑞樹ちゃん……何か、悩み事?」

 その言葉に、私は固まる。
 確かに、これは悩み事だ。
 でも、流石にこれを本人に言うのは……気が引ける。

「……杏には関係無いよ」

 口を割って出たのは、そんな言葉。
 私の言葉に、杏はショックを受けたような表情をする。
 しまった、と思うが、だからって、正直に言うわけには……。

「……そろそろ、授業始まるから……」

 言い訳のようにそう言いつつ、私はピアノの蓋を閉じた。
 そして彼女の横を通り過ぎて、音楽室を出る。
 すると、袖を小さく握られた。

「……瑞樹ちゃん」
「……授業、始まるよ」

 そう言いつつ彼女の手を払い、私は歩き出す。
 私を心配してくれているのにこの扱いは酷いと思う。
 でも、こんなこと、本人には言えないから……。


<杏奈視点>

「瑞樹ちゃん……」

 そう呟いて手を伸ばしてみるが、結局その手は届かなくて。
 私は腕を下ろし、その手を握り締めた。
 教室に行ってみると瑞樹ちゃんがいなかった。
 彼女が他に行く場所は、なんとなく、音楽室かなと思って来てみた。
 案の定そこに彼女はいて、ピアノを激しく弾き狂っていた。

「この感じ、何か、前に見たことあるような……」

 そこまで思って、私は気付く。
 これは……前に、瑞樹ちゃんにヤキモチを妬いた私だ。
 でも、なぜ彼女が私にヤキモチを?

「あれ、杏奈さん?」

 その時、名前を呼ばれた。
 振り向くと、そこには、星華ちゃんがいた。

「星華ちゃん……」
「どうしたんですか? 何か悩んでる風でしたけど」

 首を傾げながら聞く星華ちゃんに、私は頷く。
 まぁ、今のところ瑞樹ちゃんの次に仲が良いのは星華ちゃんだ。
 彼女に相談するしてみるか……。

「実は、瑞樹ちゃんが、ヤキモチ妬いてるっていうか……昔、瑞樹ちゃんにヤキモチ妬いた私に似ていて……」
「へぇ……」
「どうすれば良いのかな」

 私が聞いてみると、彼女は顎に手を当てた。
 しばらく考えた後で、ポツリと呟くように言った。

「じゃあ、前原先輩と一緒にいる時間を増やしてみたらどうですか?」

 その言葉に、私は首を傾げる。
 すると、星華ちゃんははにかみながら続けた。

「ホラ、最近杏奈さん、私に構ってばかりじゃないですか。だから、前原先輩と話す時間を増やしたらどうかなぁ、って。きっと、前原さんは、杏奈さんが自分から離れるかもしれないって、不安なんですよ」
「なるほど……よし。やってみる!」

 私が拳をつくりながら言うと、星華ちゃんはクスクスと笑った。
 しかし、いざやってみると言っても、何をすれば良いのか分からない。
 その時、一瞬、ピアノを弾いている瑞樹ちゃんの顔が浮かんだ。

「……そうだ!」

 良い事を思いつき声を上げると、星華ちゃんが「どうしたんですか?」と聞いてくる。
 私はそれに人差し指を口に当てて、笑って見せる。

「内緒っ」


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