二次創作小説(新・総合)
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- AfterBreakTime#CR 記憶の軌跡【完結】
- 日時: 2021/08/11 22:27
- 名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: ADnZqv8N)
どうもです、灯焔です。
自作品でも表明しました通り、逃走中のゲームパート以外の場面をこちらに連載いたします。
コネクトワールドの住人達がどんな運命を辿っていくのか。物語の終末まで、どうぞお楽しみください。
※注意※
・登場するキャラクターは全て履修済みの作品からの出典です。かつ基本的な性格、口調等は原作準拠を心掛けております。が、表記上分かり易くする為キャラ崩壊にならない程度の改変を入れております。
・原作の設定が薄いキャラクター等、一部の登場人物に関しては自作設定を盛り込んでおります。苦手な方はブラウザバックをお願いいたします。
・誤字、脱字、展開の強引さ等ございますが、温かい目でお見守りの方をよろしくお願いいたします。
・今までのお話を振り返りたい方は、『逃走中#CR』の過去作をご覧ください。
・コメント等はいつでもお待ちしておりますが、出来るだけ『場面の切り替わりがいい』ところでの投稿のご協力をよろしくお願いいたします。
また、明らかに筋違いのコメントや中身のないもの、悪意のあるもの、宣伝のみのコメントだとこちらが判断した場合、返信をしないことがありますのであらかじめご了承をよろしくお願いいたします。
<目次>
【新訳・むらくもものがたり】 完結済
>>1-2 >>3-4 >>5-6 >>7 >>8 >>9-13 >>19-20 >>23-27
【龍神が願う光の世】 完結済
>>31 >>34-36 >>39-41 >>42-43 >>47-56 >>59-64
【異世界封神戦争】 完結済
>>67-69 >>70-72 >>73-75 >>76-78 >>79-81 >>82-83 >>86 >>87 >>88-90 >>93-98
<コメント返信>
>>14-16 >>17-18 >>21-22 >>28-30
>>32-33 >>37-38 >>44-46 >>57-58 >>65-66
>>84-85 >>91-92 >>99-100
- #CR08-5 現を取り戻すために ( No.2 )
- 日時: 2021/03/15 22:00
- 名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: bUOIFFcu)
現地に向かっていた面子もメインサーバへと帰還し、いざ作戦会議開始。
ポップンを守る為、メフィストと決着をつける為。各々の思いを胸に、いざ。
------------------------
~運営本部 メインサーバ~
ミミ「ミミニャミ、只今戻りましたー!」
ニャミ「MZDを助ける為に、作戦を練るんだったよね?早くやっちゃおう!」
サクヤ「おかえりなさいませ皆様。こちらも会議の準備は整っております故、いつでも始められます」
前田「神様を救う為にも、僕達が全力を出し切らねば、ですね!」
ミミニャミ率いる音無町に調査に向かっていた面子がメインサーバに戻ってきました。先程の大典太の放送を受け、書庫にいたメンバーも既にメインサーバへと戻ってきています。
彼女達と軽く話をした後、サクヤはパン、と手を一度叩いてから早速本題を話し始めたのでした。
サクヤ「さて。これからえむぜさんを救う為の本格的な作戦を練りたいと思うのですが……。まず、彼を唆したであろうメフィスト関連に関して、何か追加で分かったこと等ありますでしょうか?」
ヴィル「あぁ。そのことなのだが……。恐らく、今あいつはあの子の近くにいる可能性が高い。それだけは確実に言える」
アクラル「メフィストがエムゼの近くにぃ?!何の目的があって……」
ヴィル「彼奴の思考など読みたくはないが……。彼奴なりにあの子を利用しようとしている可能性も考えられる。今、あの子は母親らしき人物と、亡霊のミミニャミと共にいる。軽くだが、母親を見かけた時に魔力を調べてみた。
―――結果はお察しの通り。メフィストの魔力で出来た『紛い物』だったよ」
ルキナ「紛い物……」
ジャック「魔力を近くに循環させてるってことは、近くで監視してる可能性が高いってことか。直接殴れれば、こんな面倒なことしなくていいんだがな……」
ニャミ「出来るならあの時やってるよ!」
ミミ「そーだそーだ!そっちの方がMZD早く助けられるもん!」
アカギ「落ち着け…。それが出来ない以上、こうして作戦を今練っている訳なんだからな…」
サクヤ「はい。逸る気持ちは分かりますが、一旦落ち着いてください。それで……書庫で何かわかったことはあるのですか?」
『回りくどいことをせずに直接助けに行きたい』と、ジャックも本音をポロリ。その言葉に乗っかるようにミミとニャミが自分の気持ちを吐露します。早く助けて、元通りの元気なMZDが見たい。誰しもがそう思っていました。
しかし、相手は街ごと別のものにしてしまう力を使っている以上、一筋縄ではいきません。彼も考えつかないような奇襲を考えねば、こちらにも被害が確実に出るでしょう。最悪、メフィストに直接MZDを消されてしまっては意味がありません。
話を進める為、サクヤは書庫に言っていたメンバーに何か情報が無いか探りを入れました。すると、早速ソティスが自慢げにサクヤに先程見つけた『手記』を渡したのでした。
ソティス「見よ青龍よ!このわしが、あの小童を助ける為の手がかりを見つけてやったぞ!」
クルーク「小童…。……ソティスちゃんっていくつなの?」
アクラル「まー、確実に俺やアカギよりは上だなぁ」
サクヤ「手記……?こちらには何が?」
クルーク「これ……。別の世界の神様の日記なんだ。それで……。文章に、『ポップンは25回目で終わった。世界は滅びた』って……」
ニア「……成程?街で道化師様がお見えになったあの亡霊……。それが、その日記に記載されているミミ様、ニャミ様というお考えですの、ね?」
マルス「多分。日記の文章から考えるに、彼女達は『自分の世界を取り戻すために』この世界の神様を狙っているみたいなんだ」
大典太「『自分の世界を取り戻す』……。……別れが、それほど辛かったものだったんだろうか」
サクヤ「…………」
大包平「だが、これで彼女達が音の神であるあの少年を狙う理由が分かった。―――だが、俺達が何をすべきか、までは見えてこないな」
ミミ「あっ!そのことなんだけど……。このチラシ、見てもらってもいいかな?」
日記の内容を知ったサクヤ、表情には出しませんが苦い顔をしています。内容を聞いて共感したのか、それともそのことについて『何かを知っている』のか―――。その場は流れてしまいましたが、サクヤが何かを隠している可能性はありそうですね。
あの世界に降り立っているミミニャミの正体は分かったものの、MZDを助ける為の策には繋がらないと大包平が一喝。そんな言葉に、ミミは『心当たり』を話すのでした。
サクヤ「チラシ、ですか」
ニャミ「そろそろ戻ろうって時に、急に空から降って来たんだよねー。あの街人なんてMZDを攫った人達以外誰もいないし、なーんか怪しいと思ってさ。持ってきちゃった」
サクヤ「拝借してもよろしいでしょうか?……おろろ、これは」
前田「主君。何か心当たりがあるのでしょうか?」
サクヤ「これを制作したのは―――『ゼウス様』で間違いありません。チラシから、とてつもない神の力を感じます」
ミミ「え、えぇーーーーーっ?!」
アクラル「ジジイもこの騒動知ってたってことなのかよ?!それにしては回りくどいことしやがるが…」
彼女がチラシに触れた瞬間、想像以上の神の力が溢れてきました。明らかに『人の』作ったものではない。更に、こんな強力な神の力をいとも簡単に込められるのは―――知っている限り、ゼウスだけでした。
名前を出した瞬間、一部で驚きの声が上がります。そりゃそうです。騒動を知らなくて当然の人物が関わってきていたのですから。アクラルが悪態をつきますが、それをフォローするようにサクヤは続けました。
サクヤ「メフィストが大胆に動いている以上、神として直接手出しをすることができないのでしょう。しかし、彼を野放しにしておけば必ず自分にも災いが降りかかる……。ゼウス様は、自らが出来る範囲でこの事態を解決する為手を差し伸べてくださったのでしょう」
ニア「―――手を差し伸べてくださっただけでも感謝するべきではありますわ、ね…?もしミミ様がたではなく、メフィストが先に見つけてしまっていた場合……。悪用されてしまう危険性もございましたもの」
三日月『ふーむ。確かにあの全知全能の神の力も感じるが……。俺にはもう1つ、別の霊力も感じるなぁ。これは―――童子切かな?』
大包平「何?!」
三日月『うん、うん。確かに童子切だ。忘れもしない。あの豪傑で勇ましい霊力。酒吞童子を斬った猛勇な刀のものだ』
大包平「そうか……。奴は今天界にいるのだな!俺の見立て通りだ。東の横綱と言われるあの刀がそう簡単に折れる筈がない!」
大典太「……興奮しているところ悪いが。見つかったとして、無事でいる保証はないと思うぞ。……鬼丸のこともある。邪気が童子切にも及んでいないとは言い切れないだろう」
大包平「ふん。貴様も天下五剣と数えられているのだから、童子切の強さについては知っているだろう。あの刀はそんな柔な刀ではない。そう簡単に邪気に呑まれてたまるものか!」
大典太「……あんたがそう思うなら、そう思えばいい。―――俺は無事でいるとは思えんのだがな…」
大包平「相変わらず陰気だな大典太光世。貴様はもう少し前向きに考えることを覚えろ!!」
大典太「……鬼丸の専売特許を取るなよ…」
大包平「何?!貴様、この俺が『はいはい大包平くんそこまでだよぉ~?サクヤ、そろそろ本題に戻ってくれる~?たぶん。あの全知全能の爺がぼくたちだけにチラシを落としてるとは考えにくいんだよね~』」
チラシから感じたゼウスのものとは別に、童子切の霊力も感じると三日月は言葉にしました。そこに興奮する大包平でしたが、行方不明になっていた鬼丸が現在どうなっているのかを目の当たりにしている大典太は『童子切も無事だとは考えにくい』と慎重な考えを持っている様子。
尚も変わらず塩対応の大典太に大包平が掴みかかろうとしたところで、話を戻そうとごくそつくんが無理やり止めました。サクヤはその勢いのまま、彼の言葉に続けて考えを述べます。
サクヤ「恐らく、ゼウス様はえむぜさんの側にもチラシを配っている可能性が高い。となると……。メフィストはこの状況を利用して、我々を叩く為来るかもしれません。えむぜさんと接触をしたい我々にとっても、それは好都合と言えるでしょう」
アシッド「あぁ。この『ラジオ体操』を使わない手はない。ヒスイは絶対に行きたがる。彼を拒否してしまっては、あちらの作戦が総崩れになる可能性も考えられるからね。彼の選択肢は、『家族総出で村雲小学校へ向かう』ことで間違いないだろう」
大包平「それで、どうするんだ。戦える者を総動員し、敵の首領を叩き潰すのか」
大典太「……大勢が同時に動いたらこちらの動きが読まれる可能性がある。怪しまれたら『村雲小学校に来ない』可能性もあるからな」
サクヤ「はい。ですので、潜入は引き続きミミさん、ニャミさん、ヴィルさん、ジャックくん、莉愛さん。それと、えむぜさん接触後すぐに彼らから離れられるように、ごくそつさんと大包平さん、ルキナさんが彼らの近くで待機してください」
ごくそつ「おっけ~。このぼくが開発した最高の武装をしていくからね~!」
大包平「少年を救出後、我々が敵を攪乱しその間に帰還という訳だな。その場でねじ伏せられないのはいささか不満ではあるが、そう決めたのならば従うまでだ」
三日月『まぁ、叩いてもいいんだが。逆上されて人質を取られてしまっては意味がないからなぁ』
ルキナ「あくまでも最初の目的は『神様の奪還』。それを忘れないようにしないといけませんね」
ミミ「どんな理由があっても……。わたし達の世界のMZDを絶対に渡すもんですか!ちゃんと話し合って、MZDを返してもらわないとね」
ニャミ「うん。異世界の存在だったってあたし達なことに変わりはないんだし、ちゃんと話せば分かってくれる筈だよ!」
ニア「……うふ?『ちゃんと』お話しできれば、ですけれど、ね?」
アカギ「作戦遂行する前から不穏な発言は慎めよニア…。お前の悪いところだぞ…」
ニア「あら…申し訳ありません、わ? 私、皆様が知っての通り『邪神』ですの。正義の心とは縁離れた存在でして、よ?」
アクラル「バディものだったら絶対に仲間にならないタイプだなオメー」
サクヤの指示で、音無町に明日の早朝向かうのは引き続きミミニャミと彼女の護衛2人、案内役の莉愛。そして、接触後の動きをスムーズにする為に、ごくそつくん、大包平、ルキナが待機することになりました。
MZD達と接触後、素早く彼を奪還。ごくそつくんの武器で錯乱し相手の視界を塞いだ後、本部まで直行で戻る作戦になりました。叩くにしても、まずは敵からMZDを引き剥がさないことには始まりませんものね。
早速、明日の早朝に備え解散した直後でした。ヴィルヘルムが個別に話がしたい、とサクヤと大典太を呼び出します。
ヴィル「あぁ、すまぬな。―――あの子を奪還した後、単独行動を許可してほしいのだが」
大典太「……単独行動?何を考えている?」
ヴィル「一度戻ったとはいえ、結局はメフィストを潰さねばあの街は元には戻らない。彼奴を確実に潰す為……準備がしたい」
サクヤ「準備、ですか。具体的にはどんなものなのでしょう?」
どうやらMZDを救出した後、ごくそつくん達とは別行動をしたいとのことですが……。理由を聞いても、『メフィストを確実に叩く為準備がしたい』としか返ってきません。具体的な内容を伏せる彼に、少し不穏な予感が頭にちらつきます。
他言しないと伝えても、彼は首を横に振るばかり。誰にも話したくない内容そうで……。
サクヤ「―――これ以上問い詰めても平行線を辿るだけですね。分かりました。許可しましょう」
ヴィル「あぁ、感謝する。なに、貴殿らに危害を加えるようなことは一切しない。約束しよう」
大典太「(……『貴殿らに』か)」
サクヤ「ですが、ヴィルさん。今は貴方も我々の仲間です。だから―――。くれぐれも、無茶は絶対にしないでください」
ヴィル「…………。―――仮にも『世界を破壊した』道化師に向かって『無茶』とは。言ってくれるじゃないか青龍」
大典太「軽口をたたくようなものなのか?」
ヴィル「だが、大丈夫だ。肝に銘じている。あの子の為にも。ミミやニャミの為にも。無茶はしないさ。―――それでは、明日早いので私も休むとしよう。貴殿らも遅くならないうちにな」
サクヤ「は、はい」
口が達者なんだか何なんだか。ヴィルヘルムはそのまま言葉を捲し立てた後、休養を取りに自室へと戻ったのでした。
再びメインサーバに取り残された1人と一振。―――お互いに、『嫌な予感』がしたことは理解していました。
大典太「……主。あの口ぶり。あいつには警戒しておいた方がいいかもしれない」
サクヤ「彼が約束を破るような方には見えないので、信じたいところですが……。嫌な予感が、どうにも拭えません」
大典太「…………」
胸の中を渦巻く嫌な予感。本当にならないといいのですがね。
とにもかくにも、明日の早朝。MZD奪還の為本部が遂に動き出します。……無事に、救出できますように!
- #CR08-6_1 これが、夢ならば ( No.3 )
- 日時: 2021/03/16 22:18
- 名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: bUOIFFcu)
作戦決行の早朝。大切な人を救う為、音無町へと再び赴くミミ達。
そんな彼女達を画面越しに見守りながらも、サクヤは嫌な予感が払拭できないのでした。
------------------------
~音無町 村雲小学校前~
ミミ「―――ここが、『村雲小学校』って場所の前なんだよね?」
ニャミ「それにしては……むむむ。外観は全然違うけど、なーんかラピストリア学園に雰囲気が似てるんだよねここ」
ミミ「MZDが昔通っていた学校だから、ラピストリア学園を造るときに参考に……って、それはないか。MZDは学校に行ってないはずだもんね」
ジャック「あいつが嘘ついてなきゃな。トラックの事故で死ぬまで、勉学は全部施設でやってたって」
莉愛「本来の歴史なら、彼がこの学校に普通に通って……成長を遂げていた筈なのよね」
ヴィル「―――そう、だな。神々に目を付けられたばかりに、あの子の人生は狂った。……思ってはいけないと理性で抑えてはいるが、やはり苦しんだ分……幸せになってほしいという願いがある」
ニャミ「でも、ヴィルさん!MZDがこのままメフィストに幻を見せ続けられているのは違うと思う。MZDにもさ、MZDなりの『幸せ』ってものを……きっと見つけたいんだと思う。夢の中じゃなくてさ。現実で」
夜は明け、早朝。サクヤ達の見送りを受けたミミ達は、再び音無町へとやってきていました。無人のつぎはぎだらけの街。今度こそ、MZDを救う為に。なお、ごくそつくん達は別ルートを通って待機中です。
村雲小学校の前まで移動してきた一同は、どこか寂しげな校舎を見て各々感想を口にします。ラピストリア学園に似ているのは―――。もしかしたら、少年が抱いた『夢』の1つだったからなのかもしれませんね。
莉愛が物陰から校舎をこっそりと見やります。どうやら既に向こうが到着していないかを確認している様子。
莉愛「まだ誰もいないみたいね……。きっとごくそつさん達は別の場所で待機している筈だし、私達が一番乗りね」
ニャミ「うん。集合時間にはまだ早いからね。えーと、今の時間は……」
ジャック「朝の6時15分だ。チラシに書かれてやがったのは6時30分。……あと15分で来るはずだ」
ミミ「校庭と言えば、部活にいそしんでいる学生の皆さんが朝から声がけをしているイメージがあるから、これだけ静かだと不気味なんだよね……」
ヴィル「街は彼奴等と我々以外いないのだから当然だろう。―――さて、怖がっていないで校庭で待つぞ。動かなければ、助けられるものも助けられないからな」
ニャミ「正念場、ってやつだね」
あまりの静けさに不気味さを覚えるミミ。そんな彼女を優しく諭しながら、一同は校庭の中へ。無人なのだから当然なのですが、聞こえてくるのは大地を踏みしめる砂利の音だけ。早くトリコロシティの賑やかな音を取り戻さねば。改めてそう思ったのでした。
校舎の前あたりまで移動し、向こうの出方を伺うことにしました。―――恐らく、自分達以外に人間がいるならば……何かしらアクションを起こすだろうと思ったからです。
そのまま少し待っていると、向こうから5つの人影が。予測通り、MZD達が校舎にやってきました。ここまでは作戦通り。
ミミ「こっちに誰か近付いてくる!」
ニャミ「慌てないで。落ち着いて待とう」
そのまま動かずに待っていると、人影は少しずつ大きくなっていきます。遠目からぼんやりとしか確認できなかった影が、はっきりと見えてきます。
校舎への道を辿った彼らは、自分達と同じ存在がいることに気付き足が止まります。うさぎと猫の少女は少年を守るように立ち塞がり、こちらを睨んでいます。少年と母親はぽかんとした顔で、不思議そうにこちらを見ていました。そして―――。
『……この街には私達以外いないはず、だったのだがね。『コレ』も君達が用意したものなのかい?』
莉愛「そんなのどうだっていい。こんなに大きな街なのに、人気が全くないのはおかしいわ。何を考えているの?」
『それはこっちの台詞だよ。わたし達の邪魔をして、何を企んでいるの?!』
ミミ「MZDを攫ったのはそっちでしょ?!お陰で今物凄く大変なことになってるんだから!早くMZDをこっちに渡しなさーい!」
ジャック「おい、ミミ……!」
『あたし達の目的の為にMZDが必要なの!そもそもMZDだって帰りたくないって思ってるよ!幸せなままでいたいはずだよ!!』
ニャミ「幻を見せられるどこが『幸せ』なの?!一時的に幸せな幻想を掴んだって、いつかは解けちゃうんだよ?!それが分からないの?!」
『あ、あなた……』
『今すぐこの子を連れて家まで戻ってくれ。この子をあいつらは狙っているんだ!!』
ジャック「やっぱり逃がすと思ってた……。思い通りにことが運ぶと思ったら大間違いだ」
あれよあれよという間にミミニャミ同士の言い争いが始まってしまいました。早くMZDを助けたい気持ちが逸ってしまった結果なのでしょうが、ヴィルヘルムはあまりいい顔をしていませんでした。
混乱している中、少年と母親に男性が早く学校から逃げるように伝えたのか、門から出ようとしている姿がありました。しかし―――。
『くそっ……!!』
『で、出られない……?!』
ヴィル「―――焦りは最高のスパイス、という訳だ」
ジャック「優雅に例えてる場合かクソ上司。隙は今しかないんだぞ」
ヴィル「あぁ。折角繋いでくれたチャンスを無駄にするものか」
門には何か障壁のようなものがあり、外に出ることが出来ません。そう、実は―――。
ごくそつ『ミミちゃ~ん、ニャミちゃ~ん!きょひょひょ!上手くあいつら引っかかってくれたみたいだねぇ~!』
ニャミ「え?」
ミミ「ニャミちゃん!あれ見て!」
大包平『敷地内に囲み込むように罠を張ってくれ、とそちらの上司殿から頼まれてな。あいつらが逃げ出せないよう敷地を跨いだ時に、逃げるのを阻止する為にとな』
莉愛「それじゃあ―――!」
ミミニャミの元にごくそつくんから通信が。恐らく自分達を見て逃がすと判断したヴィルヘルムから、秘密裏に罠を張るように頼まれていたのでした。彼らは現在見えない障壁に囲まれ、外に出ることが出来ません。その隙にMZDを引き剥がしてしまおうという魂胆なのでしょう。
頭でやっと理解できたその時でした。ヴィルヘルムの声が耳に届きます。
『ミミ、ニャミ!!今だ!!!』
今しかチャンスはない。彼女達は考えるより先に、MZDの元へ走り出しました。
『させるかッ―――!!』
男は少年に向かって走る彼女達を止める為、腕を掴もうとします。しかし―――。
ジャック「『させるか』はこっちの台詞だ!!」
腕に衝撃が走ります。ジャックの蹴りが命中したのです。後ろの打撃音も気にせず、ミミとニャミは少年の元へ向かってひたすら走り続けます。
もう少し。もう少しで助けられる。だから待ってて。その思いを胸に―――。
一方。腕を蹴られた男は、負傷した場所をさすりながらジャックを睨んでいました。すぐにヴィルヘルムも合流し、男と対峙します。
ミミとニャミを傷付けようとしたことから、既に正体は割れていました。
ジャック「テメェの正体は既に分かってんだ。さっさと正体を現しやがれ、『メフィスト』!!!」
『…………』
ヴィル「あの邪神に何をされたのかは知らぬが―――。こんな大それたことをして。貴様。何を企んでいる?」
『―――『企んでる』? ……ふ、ふ、フフフフフ………』
莉愛「な、何なの……?!」
ジャックに名前を言われ、押し黙る男。続けて放たれたヴィルヘルムの言葉に反応し、くすくすと不気味に笑い始めます。その様子に莉愛の額にも冷や汗が流れます。
『ふ、ふ、フフフ……ふは…… はは、ははは………
は、ははは、アハハハ………!!!
っ アッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!』
笑い声と共に、闇に包まれる男。薄くなった黒い霧から現れたのは―――。
莉愛「な、なに、これ……?!」
ジャック「―――っ!」
ヴィル「なんて……禍々しい姿なのだ……」
『よォ。人間風情が……『神』になった俺を貶めよう』って……?!』
既に『道化師』ではない。人ならざる『力』を纏った、『邪神』がそこにいたのだから―――。
- #CR08-6_2 これが、夢ならば ( No.4 )
- 日時: 2021/03/17 23:03
- 名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: bUOIFFcu)
一方。メフィストの邪魔を振り切り、遂に少年―――『MZD』の元まで辿り着いたミミとニャミ。目の前の少年は、何が起こったのかさっぱり理解できない表情をしていました。思わず母親にしがみつきますが、母親は人形のように表情を無くしています。メフィストが本性を見せたから。動かせなくなったのでしょう。
ミミ「MZD!その人は幻なの!お願い、思い出して!」
『……誰?ぼくの知ってるミミとニャミじゃない』
ニャミ「あのあたし達は……えっと、その、うーん……。と、とにかく!今MZDはあたし達のことを忘れてる状態なんだよ!悪い計画に利用されそうになってるの!だからあたし達が助けに来たんだよ!」
2人で必死に言葉をひねり出し、どうにか自分達のことを思い出してもらおうと話をします。しかし―――。少年にとっては、彼女達は『唐突に現れた、自分の知っている人物のそっくりさん』。そう簡単に話が聞いてもらえる状況ではありません。
それを分かっているのか、怒ったような表情で再び亡霊のミミニャミが立ち塞がります。
『もうちょっとで計画が終わるんだから。邪魔しないで!』
ミミ「邪魔しないでって……!自分達が何をしようとしているか分かってるの?!この世界のMZDを自分達の世界に連れて行っちゃったらどうなっちゃうのか!」
『知ってるよ。この世界のポップンキャラは全員消えちゃうんでしょ?でも、そんなのあたし達には関係ない。それよりも、あたし達の世界の方が大事なんだから』
ニャミ「『あたし達の世界の方が大事』って……。それはこっちも同じだよ!!異世界の為にあたし達が消える義理なんてない!!ポップンを蘇らせたいなら、別の方法―――。異世界を巻き込まない方法だって考えられたはずでしょ?!」
『そんな甘い考えを持ったままなんだね、この世界のわたし達は―――。そんなだから『ポップンミュージックの時代は終わった。25回目で終わりにしよう』って言われたんだよ?!わたし達の気持ちが分からない癖にそんなこと言わないでよ!!』
ミミ「他の人に迷惑をかけることが『甘くない考え方』なの?!そんなのは違うよ!違う!!間違ってる!!!」
お互い、自分の世界の目的の為に話をしますが……。中身は平行線を辿り、解決へと進みません。―――もう話し合いでは解決出来ないと決断したのか、ミミとニャミはMZDに向かって手を伸ばします。同じ顔の少女達に邪魔をされても、少年を―――。長い長い間、付き合ってきた『友達』を取り戻す為に。
ミミ「MZDーーー!!!」
ニャミ「お願い、返事をして!!!あたし達のこと思い出してよ!!!」
もう少し。もう少しで手を繋げるのに。ほんのちょっとの距離が、彼女達にとってはあまりにも遠いものに見えました。
そして―――。そう思っていたのは『彼女達』だけではありませんでした。
『―――あぁ。もう駄目だ。駄目だよ。きっと思い出してしまう』
『あたし達とは繋がれなかったんだね。なら―――『消えてもらうしかない』』
「―――えっ?」
唐突に目の前で抑え込まれていた気配が消えた。このまま真っすぐ進めば、少年の手を繋げる。でも。繋いだら『全部が終わる』。背後に迫る危機感と、そんな気配を彼女達は感じたのでした。
背後を振り向いてはいけない。でも、振り向かなければならない。恐る恐る2人の少女は振り向きます。そこには―――。
彼女達をすっぽり覆う程の、巨大な『闇』が存在していたのだから―――。
ジャック「な、何なんだよあれ?!」
メフィスト「チッ……。もう少し我慢できる奴らだと思ってたんだがなァ」
ヴィル「やはり彼女達を唆していたのは貴様だったのか。貴様にとってはあの子は邪魔な存在。そして―――あの子達にとっては『必要な存在』。利害が一致したから、協力するふりをしていたのだな」
莉愛「酷い……!」
メフィスト「酷い?それはこっちの台詞だぜ。テメーらのせいでとんだ目に遭ったが……。ま、そのお陰で今俺様は『神』になれてるんだからいいんだけどさァ。
お前ら、そんなにのんびりしてていいのかよ?『JOKER』さんよォ。あの闇の正体が何なのか、テメーには分かってんだろ?」
莉愛「え……?」
ヴィル「―――っ」
ジャック「上司!なんだよあれ?!早くしないとミミとニャミが!!!」
ヴィル「…………。―――っ!!」
一方。ミミニャミが向かった方向に広がる大きな闇。彼女達に近付いているものだとすぐに気付き、メフィストに正体は何なのかを問い詰めます。
すると。彼は、勝ち誇ったようにヴィルヘルムに向かって『お前ならこの闇の正体が分かってるんだろう』と吐き捨てました。早く助けないと、と迫るジャック。
しかし―――。上司はその言葉を無視し、その場から消えてしまいました。何が起こったのか理解できないジャック、そして莉愛。
広がる『闇』。その恐ろしさを知っているような。そんな気がしながらも、近づけませんでした。助ける気持ちより、『恐怖』が勝ってしまったのだから―――。
『『永久』に消えちゃえ。そうすればMZDはあたし達の世界に一緒に来てくれる』
『話し合えれば分かってくれると思ってたけど……。そうじゃなかった。結局異世界は異世界。自分のことしか考えない』
ミミ「それはお互い様でしょ?!こんなことして、自分の世界のMZDが悲しい思いをするとか思わないの?!」
『思う訳ないよ。もう―――いないもん』
ニャミ「(いない……。やっぱり、本部で見せてもらった日記のあたし達って……)」
ミミとニャミに迫る大きな闇。どこからか自分達と同じ声が、『邪魔だから消えてくれ』と囁いてきます。それでも諦めるわけにはいかない。自分達の世界を、MZDを、自分達のポップンを守る為に。
ですが。目の前に迫る巨大な『闇』。自分達を呑み込もうとするそれに、為す術がありませんでした。
『でも、もう関係ないよね。あなた達はもう消えるんだから』
『これが、自分の世界の神様を守ろうとして動いたキミ達の末路だよ。こんな終わり方なら、『知らないまま消えた』方がよっぽど幸せだったんじゃない?』
ニャミ「そんなことない!!あたし達はMZDを絶対に助けるし、この世界も消したりなんかしない!!この世界の『ポップンミュージック』は、絶対に守る!!!」
ミミ「あなた達がいくら自分達のポップンを蘇らせようと思ってても……わたし達もそれと同じくらいこの世界のポップンを守りたい気持ちは強いんだ。だから……!!」
諦めない。でも。この巨大な闇をどうすればいいのか。何も持たない自分達に為す術など―――ない。
『最後まで諦めないところは、尊敬するよ。異世界のわたし。でも―――あなた達は何もできない』
『いつも守ってもらってばかり。だから―――自分達に危機が訪れても、何一つ守れない』
いくら避ける能力に長けてたって、自分達を包み込む闇には抗えない。このまま消えるのか―――。
せめて、せめて真っ暗闇の中で消えたくない。少女達は思わず目を、瞑る。
―――何か、自分達の頭に暖かいものが置かれた気がした。
でも、目を開けてはいけない。そんな気がした。
目を開けても開けなくても一緒だ。自分達は先程見たあの闇に呑まれるのだから。
『 』
――――――えっ?
……駄目だと思っていた。でも、何もない。
恐る恐る、目を開ける。
「あれ……?」
さっきまであった『闇』が、ない。助かった?誰かが、助けてくれた?
でも、すぐに目を開けたことを後悔することになるのだった。
ニャミ「ミミ、ちゃん」
ミミ「…………」
目線の下は―――地面。そこに、『あってはならないもの』があった。
それを、思わず拾う。それは、彼が大切にしていたものだった。
ミミ「…………」
『…………』
中心がひび割れたペンダントを、拾う。自分達を守ってくれたのだとすぐに気付いた。
また、守られたのだ。でも、今回は違う。『消えた』。そう頭の中で理解した瞬間―――。
『う……う、うわああああああああああああああああ!!!!!!!!!!』
ずっと、ずっと。我慢していた声が。口から漏れ出た。
自分と同じ姿をした少女の悲しみを、少女達は理解が出来ませんでした。それ程、自分達を形作った『記憶』も消えていました。
ただ、『このままではMZDが全てを思い出してしまう』。その考えで頭が支配されていました。
ジャック「…………」
莉愛「ミミ!ニャミ!!」
その行動に、動けずにいた2人も動き出します。今はメフィストのことを気にしている場合ではない。一番頼りにせざるを得ない人物が消滅したのだ。であれば。自分が動かなければ、確実に彼女達がやられる―――。
助けようと駆け出した瞬間。向こうから障壁を突き破る音と共に、1台の車が校庭に侵入してきました。
ごくそつ「クソ上司の部下!それに莉愛ちゃん!急いでミミちゃんとニャミちゃんを回収して車に乗せて!!」
ルキナ「ここから逃げましょう!相手が『永久』の力を使ったと本部の方から連絡がありました!このまま再び使われてしまっては、確実にまた誰かが犠牲になります!!」
ジャック「『永久』―――。…………。―――何やってやがんだあのクソ上司!!!」
大包平「悔やむのは逃げてからにしろ!今の錯乱もいつまで持つか分からん。早く!!!」
莉愛「わ、分かった!」
ごくそつくんが本部から連絡を受け、ミミとニャミを連れて逃げるように頼まれたのです。何が起こったのか敵側も理解できていなかったらしく、動きが止まっている今しか逃げるチャンスはない。この隙を逃せば、確実に次の犠牲者が出る。
莉愛はジャックの手を無理やり引き、座り込んでいるミミとニャミの傍まで駆け寄りました。
莉愛「ミミ、ニャミ。とにかく今は逃げるわよ」
ニャミ「う、うん。でも、ミミちゃんが……」
莉愛「感傷に浸っている場合じゃないの!相手は今何が起こったのか理解できていないみたいなのよ。だから、逃げるなら今しかないの。このまま座り込んでいたら、今度は確実にあなたがやられるわ」
ジャック「……車はすぐそこだ。走る気力が無くても走れ」
ニャミ「あたしは大丈夫。ミミちゃんの手を引っ張ってでも連れて行くから」
とにかく、車に乗ってこの場を離れなくては。ニャミは放心状態のミミの手をしっかり繋ぎ、停めてある車を確認。そこに向かって真っすぐ走っていきました。
既にごくそつくんがエンジンをかけていた為、待っていた大包平の助力でその場にいた全員が乗り込みます。
ごくそつ「全員乗ったね?それじゃあ~~~~、とりあえず一旦撤収~~~~~!!!!きょひょひょひょひょひょ~~~~!!!」
奇怪な笑い声と共に車は反対側の障壁を突き破り、猛スピードで校舎から離れていったのでした……。
―――『邪魔者』が校舎から逃げてから数刻後。錯乱が収まり、男は辺りを見回します。
メフィスト「…………。―――まさか『JOKER』が自分から倒れてくれるとはなァ。やっぱりあいつは心変わりしてやがった。自分の目的の為なら、いくらでも命を費やせる―――。そんな奴になってた。
―――あぁ。これで手間が省けたなァ。あの餓鬼を始末する手立て……。この『世界』に縛られている以上、あいつらをぶっ潰すことはできねぇ。だから、世界を壊してあいつらを潰そうと考えていたが……。こりゃあいいや。
―――この場で潰そう。この『世界』も。『神』も。あの邪神ごと全部。
跡形もなく ぶっ壊そう』
邪神は妻『だったもの』を自らに取り込み、その場から姿を消したのだった。その場に残されたのは、『永久』を創り出した少女達と……一部始終を見ていた、少年だけ。
少年は、泣いていました。理由は分からない。けれど、この状況は―――。引き起こしてはならなかった。心のどこかで、そう思えてならなかった。とても『悲しい』気持ちで少年の心は満たされていました。
そんな彼を見つめながら、取り残された少女達も口を開きます。
『このままじゃ思い出しちゃうね。あのひとも……。もうわたし達なんてどうでもよさそう』
『うん。思い出しちゃったら……MZDは、きっとあのあたし達の元に帰る。絶対にそうする。それだけは、絶対に阻止しなくちゃ。阻止、しなくちゃ……あたし達の世界が……』
『でも、どうすれば―――』
どうすれば、自分達の世界を蘇らせられる?どうすれば、MZDをこちらの存在にできる?どうすれば、どうすれば、どうすれば。
考えて、考えて、考えた後に―――。彼女達は、1つの答えを導き出しました。
『そうだ。『永久』をMZDの中に埋めちゃおうよ。そうすれば、永遠にあのわたし達のことを思い出さなくなる』
『あたし達を『ミミニャミ』だって思ってくれる……!ずっとずっと、一緒にいられる―――!』
無防備な少年にゆらゆらと近付く影。そして―――。彼を守るように、まるで幽霊のように。その姿は……消えた。
~運営本部 メインサーバ~
アクラル「何をしてくるか分からねぇ。本部も守りを固めろ!万が一襲われでもしたら被害が甚大になるぞ!」
マルス「手分けして本部の警備にあたるよ。今後の見通しは……」
アクラル「…………。妹があんなことになってりゃ、今は無理だろ……。とにかく、本部の管理はしばらく俺が代理でやる。みんな、とにかくしばらく持ちこたえてくれ」
クルーク「分かった。……ちゃんとみんなでハッピーエンド、迎えられるよね?」
マルス「そうなるかどうかは、ぼく達にかかっているんじゃないかな?……なら、出来ることをやらないと、ね」
運営本部でも、画面越しに小学校での一部始終を見ていました。現在は無人の校庭が映るばかり。まるで、一連の出来事が『最初から何もなかった』かのように―――。
メフィストが本格的に動き出してしまった今、いつ本部が襲われるかも分かりません。拠点を守る為、素早くメインサーバから警備に立つ一同。
そんな中―――。椅子に座って、机に向かって項垂れている神が1人。
サクヤ「…………」
大典太「……主。気をしっかり持ってくれ。あんたのせいじゃない」
サクヤ「違う…。私が、私が許可をしたから……。あの時、無理にでも止めていれば……!」
青龍は震えていました。自分の判断ミスが、味方の犠牲を生んだのだと。そう、頭の中が支配されていました。いくら大典太が『違う』と支えても、彼女が言葉を拒否しているのでは意味がありません。
サクヤ「また…繰り返した。私は……私には……やはり、壊すことしか……!」
大典太「…………」
アシッド「……ふぅ。何か、隠していることがありそうだね?その顔つきだと」
アクラル「―――あー。うん、どこまで隠し通せるかって思ってたけど……。もう、限界っぽそうだな」
アシッド「ニアもアカギも警備の方に回した。幸い、君とマエダ以外に人は捌けている。……サクヤの気分が落ち着いたら、事情を聞かせてくれないか」
大典太「……本人の過去を、抉ることになってもか」
アシッド「それでも隠し続けるならば、私は力づくでも聞き出すがね?―――私の見解では……。サクヤ、そしてアクラル。君達は、『あの日記の出来事に関わっている』そう読んでいるのだが」
アクラル「―――悪いけど、俺は『記憶』に関しては何も話せることはねぇぞ」
前田「主君が落ち着いてからになりそうですが……。僕達には、何ができるのでしょうか」
アシッド「それを鑑みての事情聴取さ。なぁに。『過去を受け入れ、前を向く』。―――それもまた運命だとは思わないか?」
メインサーバから人が捌けた後、アシッドが遂にサクヤの過去について踏み切りました。……もう、多言無用の約束を果たすことは出来ない。大典太は彼女のことを思い、胸を痛めました。
―――サクヤの過去。彼女がどういう選択を取るのか。大きな分岐点となってきそうですね。
- #CR08-7 恐れるべきは過去か、未来か ( No.5 )
- 日時: 2021/03/18 23:29
- 名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: bUOIFFcu)
音無町での出来事を画面越しに目の当たりにし、取り乱すサクヤ。
なんとか気分は落ち着いたようですが……。もうそろそろ隠し通せる頃合いではなさそうです。
------------------------
~運営本部 メインサーバ~
前田「主君、大丈夫でしょうか……」
大典太「……何を言っても逆効果なら、今は見守るしか選択肢はない。悔しくは、あるがな」
アクラル「つーか、光世もサクヤのことちゃんと気に掛けるようになったじゃねーか。顕現したばっかりの頃なんて『どうせ』って口癖のように言ってたのに」
大典太「……主に仕えているのだから、気に掛けるのは当然じゃないのか」
アクラル「悪かった。悪かった。言い方を間違えたからそんな仏頂面で睨むな圧が飛んでくるから!!」
前田「大典太さんの怖い顔、効果抜群ですね!」
アシッド「(ポケ○ンかな?)」
人が捌けたメインサーバでは、サクヤを落ち着かせるため数人が待機をしていました。何を言っても取り乱す今のサクヤの状態では、話を聞くにも聞けませんからね。
今は黙って、彼女が落ち着くことを待つ。それが最善の選択だと判断していました。どこかずれた雑談を続けていると、コツコツと静かな足音がこちらに聞こえてきたのが分かりました。
サクヤ「申し訳ありません。取り乱してしまいました。もう大丈夫です」
アクラル「『もう大丈夫』って……。こちとら全然大丈夫じゃねーんだけどな」
前田「しかし、今は主君が落ち着いたことに僕は安心しています。良かったです」
アシッド「あぁ。何よりだ。君と話がしたくて私はここに残ったのだからね。……今回のあの校舎での出来事で、何か君の過去を刺激してしまったように私は思えるのだが。―――何か、心当たりが?」
アクラル「うげっ。いきなり本題に入るのかよ」
アシッド「なに、急いで話をするつもりはないよ。人もほとんどここから捌けているしなぁ。―――隠し通すのはもう無理だと思った方がいい、サクヤ」
サクヤ「…………」
サクヤがいつも通りに戻ったことを受け、早速アシッドは自分が聞きたい本題を彼女に投げつけました。それでもサクヤは言い淀んでいます。それ程、自分の心に傷を作っている出来事。口を割らないのも分かりますが……アシッドは続けます。『もう隠し通すのは無理だと思った方がいい』と。
その言葉を受けてもなお、黙り込むサクヤ。……そんな彼女に、冷静にアシッドは話を続けます。
アシッド「恐らく、君が取り乱すトリガーとなったのは……。例の手記に書かれていた『龍神』の話なんだろうが」
大典太「……主」
サクヤ「…………。もうそこまで、推測しておられたのですね。ならば……最早隠し通す意味も理由もありません。正直にお話しします。
あの日記に記載されていた『龍神』。あれは……。私と兄貴が分かれる前の『神』なのです」
アクラル「…………」
サクヤ「兄貴が何も知らないのは当然です。ゼウス様に『もう破壊するのは嫌だ』と力を2つに分ける時、龍神としての記憶は私が全て受け継いだのですから。
その代わり、私は兄貴に『感情』を渡しました。それがなければ―――。破壊衝動に呑まれることも、世界を壊すことも。大切な人達を失うことも。ないと思いましたので」
アシッド「そう、か。そうだったのだな」
遂にサクヤが『日記の『龍神』は自分とアクラルだ』と口を開きました。今まで大典太にしか明かしてこなかった秘密。身内であるアクラルにすら話してこなかった真実。その言葉を聞いて、アシッドは小さく頷きます。そして……『成程』と一言小さく答えたのでした。
アシッド「これで合点が行った。あの全知全能の神が君を守ろうとするのも納得だ。確かに竜族は破壊衝動が強い。天界にいた頃、よく上位の神から口酸っぱく聞かされていたよ。
『龍神』と呼ばれるくらいなのだから、その衝動は計り知れないものだったのだろうね」
サクヤ「はい。そして―――恐らく、その日記に描かれている世界こそが『カーディナルワールド』にあったポップンの世界。確かに、私が滅ぼしてしまった世界です」
アクラル「でも、まだわかんねーよ。それと、さっきの映像と何が関係してんだ?サクヤが怯え出したのはあの亡霊のミミニャミが闇……。『永久』を出した後だろ?」
大典太「……実は」
アクラルが納得がいっていない顔つきで更に質問を投げかけます。その消滅してしまった『本人』から、サクヤと大典太は1つ頼みごとを受けていました。それを許可したから、こんなことになったのだと。
自分のせいで仲間を消滅させてしまった。それで、サクヤは取り乱したのだと。大典太がかいつまんで話すと、アクラルはやっと納得のいった表情になったのでした。
アシッド「しかし。私が君と初めてあったあの日。サクヤは全く表情を動かしていなかった。私も『何と話しているんだろう』と不気味に思ったものだよ。だが、サクヤ。君は今、感情が少しずつ生まれている状態だ。だから、自分が大切だと思う者が奪われ……取り乱した。
それは確かに消した筈の君の感情だ。何がトリガーになって新たに生み出されたかは分からないが…。もう、過去に囚われて『自分が感情を持つべきではない』と思うのはやめた方がいい。
きっと、それを続ければ。今の自分も、これからの君も否定することになる。永遠に苦しむことになるぞ、サクヤ」
サクヤ「……それでも。それでも私は感情を得るわけにはいかないのです。感情を得たが最後、いつ破壊衝動に呑まれるか分かりません。それは青龍の称号を受け継いだ今でも同じ。兄貴と力を分け合ったとはいえ、私が龍族では無くなった免罪符にはなりません。
自分のせいで、もう大切な人達を失いたくない。沢山の仲間との出会いを通じて、余計そう思ったのです。だから―――。私は否定し続けなければならないのです」
アクラル「…………」
アシッド「それに、サクヤ。君が今の自分を否定することは―――。きっと、君に仕えようと、主命を果たそうと思っている『いのち』の否定にも繋がると私は思うのだが。
―――いつまでも蓋をして、否定し続けて。解決することはあるのかい?……サクヤ。そろそろ、自分と向き合った方がいい。私はそう思うのだがね」
サクヤ「……どういうことなんです?」
アシッド「私からはっきりと言ってしまえば君の成長にならないだろう。それに―――そちらさんにも同じような理由で近づけない気持ちがあるのだろう?
お互いがお互いを分かり合えなければ、『本当の絆』を結ぶことなど到底できやしないのさ」
前田「どういうことでしょう…?」
大典太「(―――まさか)」
サクヤ「少し…考えさせてください。答えが見えてこないのです」
アシッド「あぁ。ゆっくり考えると良い。―――これも君を成長させる『運命』なのだから。先人からのアドバイスだと思うといい」
アクラル「先『神』の間違いじゃねーのか?」
アシッド「そう思うならば、今ここで元の姿に戻ってもいいのだがね?本部が破壊しかねんが」
アクラル「そういやお前相当デケー神だった。本気じゃないから戻ろうとするな」
アシッドはサクヤの本質―――そして、サクヤと大典太が交わしている『アレ』に関しても何か勘づいている様子。彼女達の今後を考えて、お互いに乗り越えないといけない障壁がある、と彼は遠回しにアドバイスしたのでした。
その言葉を聞いて、サクヤはまだピンと来ていない様子。感情が生まれていることも、過去に怯えそれを否定していることも。いずれは、乗り越えないといけないことだとは分かっていても。―――彼女にはまだ、時間が必要なようです。
前田「大典太さん。アシッドさんの先程のお言葉…どういうことなのでしょうか?」
大典太「……俺にも向けて言っているような感じがした、が。―――俺も、人のことを言っていられる場合じゃないのかもしれないな…」
前田「大典太さん…」
大典太も、その強い霊力で小鳥を殺してしまったりと、自分の霊力で人を傷つけてしまうことを恐れていました。
似た者同士の主従。彼らが心から通じ合う日は―――一体いつになるのでしょうかね。
- #CR08-8 信じるべきは一筋の希望 ( No.6 )
- 日時: 2021/03/19 22:00
- 名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: bUOIFFcu)
本部の警備にあたってしばらくした頃。本部に怪しい影が近づく気配は一切ありませんでしたが、予断を許しません。
そんな中、クルークが『違和感』をサクヤに話します。それは、現状打破の『希望』の一歩となるのです。
------------------------
~運営本部 エントランス~
マルス「……とりあえず、30分くらい見回りを交代でしてきたけど…。特に誰かが襲ってくる気配はなさそうだね」
クルーク「メフィストなら、もっと本格的に道化師達を動かしてきそうだと思ったんだけど…。読みが外れたのかなぁ」
マルス「それか、最低限の人数で動いているか。あの街で行動を起こしてしまえば、本部諸共潰せると考えているのかもしれないね」
エントランスでは、本部総出で拠点の見回りを行っていました。メフィストが本格的に動き出した今、いつ本部が襲撃されるか分かりません。もしかしたら襲撃されない可能性もありますが、最悪の手を取られて何も出来ないようなことがあってはたまったもんではありません。
最大限の警戒を強めていましたが―――。敵陣らしき影は、いつになっても現れる気配がありません。クルークがそのことを不思議に思い近くにいたマルスに問いかけます。すると、彼は『最低限の人数で動いているのかもしれない』と持論を述べるのでした。
クルーク「警戒を緩めちゃいけないけど…。ボク、ちょっと確かめたいことがあるんだ。マルスさん、一緒にメインサーバまで行ってくれませんか?」
マルス「確かめたいこと?何なんだい?」
クルーク「さっき闇に呑まれたヴィルヘルムさんのことについてです。彼のことについて、そういえば神様から前に話を聞いていたのを思い出して。それで、もしかしたら『ボク達が気付けてなかったことに気付けるかもしれない』と思って…」
マルス「なるほど。―――わかった。アカギ殿に連絡してから行こう。黙って持ち場を離れて大事になったら大変だからね」
どうやらクルーク、ヴィルヘルムが消滅したことについて違和感を覚えているようで。そのことをマルスに話すと、彼は小さく頷いた後、一緒にメインサーバへと向かってくれると言ってくれました。仲間の真摯な行動はすぐに信じて行動する、流石はカリスマSランクの持ち主。
善は急げとばかりに行動を急かすマルス。背中をポンポンと優しく叩かれ、クルークはびっくりしながらもアカギにそのことを伝え、メインサーバへと歩いて行ったのでした。
~運営本部 メインサーバ~
クルーク「あの、サクヤさん!すみません、今お話大丈夫でしょうか?」
サクヤ「およ、クルークくんにマルスさん。警備の方は大丈夫なのですか?」
マルス「それについてはアカギ殿に断ってあるから大丈夫。クルークが、どうしてもきみと話がしたいからって。ぼくは付き添いだよ」
アクラル「『話』?」
クルーク「はい、実は……」
メインサーバへと2人が顔を出すと、早速入口近くでサクヤと目線が合いました。警備は大丈夫なのかと聞かれたので、アカギに断ってから来たことを説明。クルークはすぐに自分が気になっていたことをサクヤに話したのでした。
クルーク「前、神様に教えてもらったことがあるんです。『自分の魂は、ヴィルヘルムさんの呪縛のせいでこの世界に縛られている。だから、呪縛が解けない限り両方の魂が消えることはない』って。
だから……あの時、闇に呑まれちゃって混乱して何も考えられなかったんですけど。―――後で冷静になって考えてみたら、神様の呪縛が解けていなければヴィルヘルムさんは無事なんじゃないかなあって」
アシッド「ふーむ。確かにどこかでそのような話を聞いたことがあったような気がしたが…。もしヒスイの呪縛が無事ならば、ジョーカーの身体は消えても『魂』はどこかに残っている、君はそう言いたいんだな?」
クルーク「はい。なので…もしご迷惑でなければ、なんですけど。さっき村雲小学校で映った場面をもう一度確認したいんです。街での映像はちゃんと録画されてるはずですよね?」
アクラル「あぁ。毎回大掛かりな作戦実行する時は、必ず録画するようにしてるから―――。調べればその時の動画が残ってるはずだぜ」
マルス「じゃあ、確認すれば―――」
アクラル「あぁ。見えるかどうかはわかんねーけど、一抹の望みはあるかもしれないってな」
大典太「……待ってくれ。その呪縛……『邪神』になったあいつなら簡単に解けるんじゃないか?」
クルークが話したのは、以前書庫でMZDに教えてもらった呪縛の話でした。これがあるから、魂が消滅できないのだと。消えゆく世界を永遠に見守るしかないのだと、どこか諦めたような、悲しそうな目で彼は話していました。
本当は他言無用にしてほしいと本人から言われていたのですが、緊急事態。話すことで事態が進展するのであれば、話さなければならない。そういう思いを抱き、クルークはサクヤにこの話をする決断をしたのでした。
彼の話を聞いて、それならばとすぐに記録を漁り始めたアクラル。その話を聞いた大典太は1つの可能性を提示します。『メフィストは今邪神なのだから、彼の呪縛を解くのは簡単ではないか』と。
―――しかし、その言葉にはサクヤが優しく否定の言葉を並べたのでした。
サクヤ「それはないと考えて良さそうです。もしメフィストがヴィルさんの呪縛を解けているならば、既にえむぜさんの命はないものと思った方がいい。と、いうことは…。彼の呪縛を解く方法が分かっていない、もしくは彼には解けない。どちらかだと思います。
そもそもが、あの呪縛は『ヴィルさんでも解けない代物』です。いくら邪神となったメフィストが関わり、異世界のミミさん、ニャミさんが『永久』の力を得ていたとして…彼の呪縛を解くことは不可能だと思います」
大典太「……そう、か。あいつが邪神にされて日が浅いのも俺達にとっては有利に運んだのかもしれんな」
マルス「うん。もし自分の力を解析できる時間と、それを考える余裕があったんだったら―――。きっとぼく達に為す術はなかった。ただ、あいつがやることを固唾を呑んで見るしかなかっただろうね」
アクラル「どれどれ~?……おっと、あったあった。この動画ファイルに残ってる。サクヤ、中央のモニターに今から映すぜ。再生速度は?」
サクヤ「えむぜさんが現れた辺りまで飛ばして、そこから0.5倍速で確認しましょう」
クルーク「大丈夫、大丈夫だ…」
話し合っている間に、アクラルが『動画の準備が出来た』と声をかけてきました。中央のモニターに映すよう指示し、その場の全員がモニターの近くに集まります。
アクラルが動画ファイルを操作し、ミミ達とMZDが鉢合った時間まで早送り。そして―――。
サクヤ「兄貴。ここから0.5倍速でお願いします」
アクラル「分かった。なんか見つけたら言ってくれ。一時停止してスクショ取るわ」
前田「ミミさんニャミさん同士が言い争いを始めましたね…」
アシッド「この辺りで、メフィストが正体を明かしたのだったね」
ゆっくりと流れる動画をしっかり見つつ、あの場で何があったのかを再確認する一同。そして―――場面は、異世界のミミとニャミが『永久』でこの世界の自分達を消そうとするシーンまで流れました。
動画の中では『永久』を生み出した影響で強風が吹き荒れています。―――と、その時。前田がとある場面を見た瞬間、アクラルに動画を一時停止するよう要求。
前田「アクラル殿!動画を止めてください!」
大典太「……どうしたんだ前田。何か見つけたのか」
前田「はい。強風で服が少しずれるのを確認しました。一瞬ですが、神様の胸元が見えました」
サクヤ「分かりました。兄貴、すぐに画面のスクショを撮って、えむぜさんがいる部分を拡大してくれますか」
アクラル「オッケー。了解!」
静止画面を拡大し、MZDが写っている部分を見やすくします。すると―――。確かに前田のいう通り、強風に煽られて心臓部分が少しだけ見えていました。そして……そこにあったのは。
クルークが話に聞いていた、『u』のような黒いタトゥーのようなものが。『呪縛』が、確かにそこには写っていたのです。
前田「ありました!アルファベットの『u』のような文字が少しだけ見えます!」
アシッド「―――そう、か。ならば……彼は完全には消滅していないことが確定したね。……やはり、取り乱す必要などなかったんだサクヤ」
サクヤ「……あの件はもういいではありませんか。ご迷惑をかけて申し訳ありませんでした…」
大典太「……だが。あいつは何故そんな回りくどいことを―――あっ」
前田「大典太さん?」
大典太「―――そうか。だから『彼奴を確実に潰す為』か…」
サクヤ「何か、分かったことがあるのですか?」
呪縛が解けていないということは、ヴィルヘルムはどこかで生きていることが確定しました。身体は消滅してしまった為、恐らく魂のままあの街のどこかにいるのでしょうが…。
からかうようにサクヤをあしらうアシッドの後ろで、大典太はその『彼』に言われたことを思い出しました。そう。『単独行動を許してほしい』と申し出た真意を。薄々感付いたのです。
大典太「……主。あの男は作戦遂行前、『メフィストを確実に潰す為、準備をしたい』と言っていた。もしかしたら―――この消滅も、奴の『作戦』なのではないか?」
クルーク「えぇ?! 作戦?! でも、どうしてそんなみんなを心配させるようなことを…」
サクヤ「『貴殿らに危害を加えるつもりはない』と、彼は言っていましたね。それと、自らの身体の消滅がどう関わり合っているのでしょう…」
大典太「…………。―――『死んだ』と相手に思わせることが『準備』なのか?」
前田「え?」
アシッド「確かに、敵味方全てに『自らの消滅』を大袈裟に見せつければ…。その後は、誰にも気付かれず行動が出来る。皆『死んだ』と思っているのだからな。
恐らく、今はメフィストを潰す為の『準備』とやらを着々と進めているのだろうよ。我々の理解に及ぶところではないがね」
サクヤ「だとすると、下手に彼の援護はしない方がいいでしょう。ヴィルさんが生きていることも、この場だけの共有事項とします。話が外に漏れてしまった場合、彼の『準備』に影響が出ても困ります」
あの男、一体何を考えているんでしょうね。自らの消滅をカモフラージュしてまでメフィストを確実に潰す、とは。もしかすると、大典太が随分と前にサクヤに口出ししたように、本当に彼の内には『彼の思っている以上に恐ろしい闇』が隠されているのかもしれません。
―――となると。自分達に出来ることは。ミミ達を援護すること、その一択です。
サクヤ「クルークくん。マルスさん。アカギ達にもうしばらく本部の警備を頼むよう伝言をお願いできますか」
マルス「……分かった。ここに残ってもぼく達が出来ることは何もなさそうだからね。伝言を伝えたら、そのまま警備に戻るよ」
サクヤ「ありがとうございます。―――我々はミミさん達の援護をいたしましょう。ヴィルさんが何を考えているか知る由もありませんが…事態が動き出してしまった以上、彼らがえむぜさんに危害を加えることは確実でしょう。完全には止められなくとも、被害を最小限に。そして―――確実にえむぜさんを救出し、メフィストと決着を付けますよ」
大典太「……あぁ」
アシッド「そうだな。邪神もどきが過去を捻じ曲げ、世界を滅ぼすなどあってはならない。そんな『運命』、私は認めるわけにはいかない。―――必ず止めよう。この世界の未来の為にも」
改めて決意を胸にし、各々持ち場へと戻ります。今度こそ。誰の犠牲も出さず、MZDを助ける。そして―――コネクトワールドの『未来』を守る為。サクヤ達は動き始めたのでした。
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