二次創作小説(新・総合)

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AfterBreakTime#CR 記憶の軌跡【完結】
日時: 2021/08/11 22:27
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: ADnZqv8N)

どうもです、灯焔です。
自作品でも表明しました通り、逃走中のゲームパート以外の場面をこちらに連載いたします。
コネクトワールドの住人達がどんな運命を辿っていくのか。物語の終末まで、どうぞお楽しみください。



※注意※
 ・登場するキャラクターは全て履修済みの作品からの出典です。かつ基本的な性格、口調等は原作準拠を心掛けております。が、表記上分かり易くする為キャラ崩壊にならない程度の改変を入れております。
 ・原作の設定が薄いキャラクター等、一部の登場人物に関しては自作設定を盛り込んでおります。苦手な方はブラウザバックをお願いいたします。
 ・誤字、脱字、展開の強引さ等ございますが、温かい目でお見守りの方をよろしくお願いいたします。
 ・今までのお話を振り返りたい方は、『逃走中#CR』の過去作をご覧ください。
 ・コメント等はいつでもお待ちしておりますが、出来るだけ『場面の切り替わりがいい』ところでの投稿のご協力をよろしくお願いいたします。
  また、明らかに筋違いのコメントや中身のないもの、悪意のあるもの、宣伝のみのコメントだとこちらが判断した場合、返信をしないことがありますのであらかじめご了承をよろしくお願いいたします。



<目次>
【新訳・むらくもものがたり】 完結済
 >>1-2 >>3-4 >>5-6 >>7 >>8 >>9-13 >>19-20 >>23-27

【龍神が願う光の世】 完結済
 >>31 >>34-36 >>39-41 >>42-43 >>47-56 >>59-64

【異世界封神戦争】 完結済
 >>67-69 >>70-72 >>73-75 >>76-78 >>79-81 >>82-83 >>86 >>87 >>88-90 >>93-98

<コメント返信>
 >>14-16 >>17-18 >>21-22 >>28-30
 >>32-33 >>37-38 >>44-46 >>57-58 >>65-66
 >>84-85 >>91-92 >>99-100

Re: AfterBreakTime#CR 記憶の軌跡 ( No.57 )
日時: 2021/05/03 16:21
名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: bD140njr)

どうも、前回のコメント返信を見て『メフィストの形見ってそういうことか』となった柊です!

この状況では知っていればつい浮かびますよね、ヨモツヘグイ。別ジャンルで調べ物してた時に知りました←
調べるにしても本体がどこにあるか分からない以上、知らないふりして調べるのが一番ですね。大胆に動いたらぽっきり、なんてことあり得そうです。怖い。
ふぎゃあああああああああああああぉああいあああああああああ秋田きゅん!!秋田きゅんだぁあああああああああ!!可愛いよ秋田きゅん可愛いよ!!!!!!!!秋田くんと大典太が二人で体育座りしてたらぶっ倒れる自信あります←
握手したらソハヤと同じようなことが…もしかして…?
秋田くんいつかお散歩いっぱいしようね…ひん…可愛い…。
大典太と秋田くんに癒されていたら白いローブに身を包んだ刀剣男士が複数。国広でも長義でもない、と…口調からして長谷部かなと思ってしまいました。
って蔵に!? おやめになりまして!?←
大典太ぁああ…!!

サクヤさん…気持ち分かります…。そうですよね、道化師たちは捻じ曲げられた魂。助けられるものなら助けたい。でも、多分できないんですよね…辛い…。
150年分の邪気…!! そんなのがとんでもない速度で…確かにこれは急がねばなりませんね。
危険な任務に、サクヤさん一人で…大典太のために。
アクラルさんの分かりやすさにくすりとしながらサクヤさんの決意にじぃんとしております…。
前田くんと指切りして、いざ、ですね!

秋田くん…よく分かります。一つ悩むとどんどん増えていきますよね…。
やっぱり大典太との握手の後で本丸に違和感を感じているようですね。ってソハヤ!!
主から直接攻撃されたってそれ相当やばいですよね!?
本体は天界に…その上、あの白いローブの刀剣男士たちは…自分が何者かも分からなくなって…刀剣男士によってはめちゃくちゃキツすぎる…!!
ソハヤから説明受けて動こうとした矢先にー!!
ううう、ソハヤ…かっこいいぞ、無事でいて…!

ベリトと鬼丸はやはり鬼丸が斬っても斬っても治ってしまう…厄介な…!!
ベリトの自我も本体でないからなのか薄れて、鬼丸も鬼丸でアンラの邪気で…でも気力だけで自我を保てる鬼丸、すごいです。さすがとしか言いようがありません。
大包平ー!!!! 良かった、間に合ってくれて!
ベリトがサクヤさんに向かって攻撃しますが、防がれていますね。いいですね!
サクヤさんが大典太の元へ。…鬼丸も、みんなも頑張ってください…!
…あの本丸にいる刀剣男士たちの本体は天界。仕方ないことですが、今回助けることができないのが辛い…。
これでは、御神刀や霊刀と呼ばれる刀剣男士でも完全に抵抗するのは不可能かもしれませんね。
アンラの考えは分かりませんが、残った道化師たちも使っていたのですね…。ゆっくりさせてやってほしいのに…!
ソハヤー!! 傷だらけですが無事で…無事? いや何にせよよかった無事で!←
というか一振で一部隊分の刀剣男士倒したんですか!? 強っ!!
自分が知らないうちに自分を忘れていく…想像したくないほど、恐ろしいですね…。
ソハヤたちが自我を保っていられたのはやはりそういう理由がありましたか。…今回大典太が囚われなければ、ソハヤと秋田くんも白いローブの刀剣男士たちみたいになっていたのでしょうか…。最悪だと思っていた結果が、こういう形で少し良い方向に働く。でも最善ではない。何だか少し皮肉ですね。
ソハヤの言うケジメとは…。
ぴえん、こんな状況でも秋田くんが可愛い。
秋田くんに鍵を開けてもらい、大典太が囚われている蔵へ突入…!

大典太は手も封じられて、って…分かってはいましたがこんな短時間でそこまで影響が…!!
負けないで! 大典太負けないで! 一瞬自分で某ネタバレ次回予告思い出しましたが今回はそんな風になってもらっちゃ困る!!←
貴方は!! 大典太!! 光世!! です!!!!!!!!!←
サクヤさんとの別れの記憶。嫌がりもしますよね…。でもそれが今のサクヤさんを作ってくれたんですね。
マシュマロ食べる三日月に少し吹きました。これもしかして数珠丸に口に突っ込まれました?←
指切り。前田くんともしていましたね。何だかエモい←
でも容赦なく記憶は奪われていく。そんな時に…サクヤさんキターーーーー!!
とうとう、気持ちを伝えましたね。なんか涙腺毎度毎度ぶっ壊れるんですがメンテナンスしなきゃ←
そして…正式な契約来ましたーー!!!!!! 心の中がカーニバル!!←

ソハヤ!! 無茶するんじゃありません!!←
ベリトもベリトでソハヤが他の刀剣男士巻き込むって言っているけれどキミの場合は世界巻き込んでるからな!?←
大典太ぁああああああああああ!! かっこいい、かっこいいぞ!!
ケジメ付けるって言っても破壊されたら元も子もないというのに…ソハヤらしいです。
ソハヤ、秋田くん…! どうか彼らも救われますように…! 今はダメでも、いつか…!

ベリト(分身)との戦いもだいぶ圧されていますね。正直、何度斬っても斬っても復活する相手なんてどんな人でも神でもモノでも、いずれは、ってなりますよね…。
大典太とサクヤさん帰還! それと同時にベリトの魔力も道化師のものだけに…!
ベリトの過去…そんなことがあったんですね。どうか、どうか安らかに眠ってほしいです…。
ポケモンたちも元気になって、一件落着ですね。
うん、やっぱり大典太はそう聞けばしょげますよね。今回…というか昔から不可抗力だから気にしなくてもいいんですが、優しいからできないんでしょうね。…正直、ふとこの街にヤヤコマとかバチュルとかいたら…って考えてしまいました←
おおっ!? 数珠丸がアカギさんに託されましたね! 契約はまだしないようですが、いつかアカギさんと契約するのか、それとも別の人と契約するのか気になります!

鬼丸はここで別れるようで。確かにそうですね。大典太の件がなければ来ることもなかったでしょうし…少し寂しいですが。
でも、鬼丸が…!! 時間切れ…次、会う時は…。
もし何とかするとなると、アンラ自体をどうにかしないとならないのでしょうか…。それとも、本当にどちらかが…。
辛すぎる…。

それではこれにて、次回も楽しみにしております!

Re: AfterBreakTime#CR 記憶の軌跡 ( No.58 )
日時: 2021/05/03 21:57
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: KRYGERxe)

どうもです。灯焔です。
思いって言葉にしないと伝わらないんやでと日々申しています通り、感想って他人に『自分はこの作品にこう思っていますよ』って伝えるチャンスなんですよね。好意的な意見も批判的な意見も等しく、です。時たま『批判=悪口や誹謗中傷』と勘違いされている方を見かけますが、冷静に周りが見えなくなる恐ろしい行為だと私は思うのです。個人的にはね。
ですので、私自身はどんな意見でも素直に受け止めるようにしております。それで自分の描く作品がもっとよくなると思えば批判も素晴らしいアドバイスですよ。あ、悪意のある批判は立派な誹謗中傷ですので、そこも勘違いなさらぬよう。



>>柊 様

 どうもです。コメントありがとうございます。
 光世さん、この状況での食べ物は自分が帰れなくなるとでも思ったのかついつい言葉にしてしまいました。ソハヤなりの気遣いなのは彼も分かっているんだと思います。ですが、自分とソハヤは違う存在。こちらに向けられる行為を甘んじて受けてはならないと思っているようですね。
 そんなことをしている間に秋田くん登場。そして柊さんが毛利くんと化した。私も秋田くんが短刀の中では最推しですので気持ちが分かります。ふわふわした桃色の頭を撫でてあげたいよふぎゃああああああああ。です。
 秋田くんも光世さんと握手したら不思議な感覚が。光世さん、もしかして契約してない状態で……?
 平和な時間が続くと思いきや、唐突に現れた白ローブを深く被った刀剣男士達。長谷部かもしれませんし長谷部でないかもしれません。誰なのかはきっと中身を見たソハヤと霊力で何となく察した秋田にしか分からないと思います。でもいち兄ではないのは確かだ。
 作戦開始の合図かのように蔵に連れていかれる光世さん。果たしてどうなってしまうのやら。

 光世さんの元へ向かう為作戦を練り始めた彼女達でしたが、サクヤは道化師も『被害者』だと思っている様子。5回目の時に明かされた真実を垣間見れば…悲しすぎる。
 鬼丸さんと同じ量の邪気が光世さんに一気に注がれる。速度も量も半端ねぇ。急がなければなりません。そして、作戦を立てた後前田くんとサクヤは指切りをしました。これが後ほど大事な伏線になってくるのですね。

 ところかわって幻の本丸では、真相を知り刀剣破壊されそうになっていたソハヤとそれを見た秋田が協力して行動を始めます。主から直接攻撃を受けたということは、相手も本格的に動き始めたということですからね。
 白ローブの刀剣男士は、この本丸の邪気に染まりすぎて自分が何者なのか分からなくなっていました。彼らは『刀剣としての誇りも逸話も忘れてしまったただの刀の付喪神』です。自分が何者か分からなくなってしまえば、誰かに下側せるのは容易というものです。怖い。

 鬼丸さんはベリトと斬り合っていました。しかし、斬っても再生を繰り返すベリトの能力で苦戦を強いられていました。更に鬼丸さんには邪気が入り込んでいる為更なるハンデ付き。それでもまだ戦えているのは彼が『天下五剣』だからなのかもしれません。
 そうしているうちに大包平が先陣を切って一同が到着。サクヤをあの場に向かわせる為共同接戦が始まります。彼らの助力もあり、サクヤは無事光世さんの捕らわれている幻の本丸へ向かうことが出来ました。無事に助かりますように…!

 幻の本丸。刀剣男士の本体は全て『天界』という場所にあることが明らかになりました。その為、今回助けることが出来るのは目の前に本体がある光世さんだけ。ソハヤも秋田くんもこの空間が崩れれば一緒に消えるほかありません。
 そして、傷だらけのソハヤをサクヤは発見します。写しとはいえ徳川の愛刀。何とかなりますって!←
 光世さんが触れたことにより、ソハヤ&秋田くんの邪気が少し祓われていたようですね。プレロマの時の鬼丸と一緒。やはり光世さんは邪気を『病魔』と同じく祓う能力を持っていたんですね。……その、異常な霊力が為に。
 サクヤによる応急処置が終わった後、蔵に向かうサクヤとは逆に『けじめをつけに行く』と走って行ってしまったソハヤ。果たして彼のいう『ケジメ』とは?
 一方サクヤは蔵の前で隠れている秋田を発見し、協力し合い光世さんが捕らわれている蔵を見つけ出します。秋田が鍵を開け、遂に蔵に突入…!暗闇から引きずり出してやって!

 一方。蔵にぶち込まれた光世さんは赤縄で手足を拘束され、自分が何者かを思い出せないところまで邪気が回り込んでいました。内に秘める霊力が多いからこそ『濃い』邪気を受けてしまったのかな…?
 自分が何者かすら忘れてしまった男。そんな彼に一筋の光がともる様に、大切なことを思い出します。『未来でサクヤの刀になる』。彼は昔、そう願っていました。再度顕現されてからずっと忘れていたこと。
 それすらも消し去ろうとする邪気に抵抗する彼に、遂にサクヤ到着。お互いの本当の気持ちが伝わり合い、無事本来の契約を果たすことができました。根っこが優しい臆病な1人と一振だからこそ、手を繋げたのかもしれませんね。イエーイ。

 ソハヤはケジメ…。『主』との決着をつける為単身乗り込んでいました。なんて無茶な。刀剣破壊寸前のところで光世さんに助けられ、事なきを得ます。
 しかし、主が消滅したことでこの世界の『核』も消え、どろどろに溶けていく幻に沈んでいく一同。それでもサクヤと光世さんを助けようと、ソハヤと秋田くんは最後の力を振り絞って彼らを幻の空間から追いやったのでした。―――かれらが未来で自分達を助けてくれることを信じて。

 ベリトとの決着も遂につきましたね。本体を倒したので、分身も再生能力を失い鬼丸に首を跳ね飛ばされました。最後の最後に人間としての記憶を思い出したベリト。好きなことを否定され、ひとりぼっちになってしまった哀れな少年だったんです。もしかしたら残りの道化師『タナトス』も…?
 ポケモン達が元気を無くしていた原因が自分にあったことでしょんぼりする光世さんでしたが、周りは『気にするな』と言ってくれました。光世さんがやりたくてやったわけじゃありませんからね。
 そして、サクヤの機転で数珠丸恒次がアカギに。サクヤの持っている武器はこれで大典太光世一振となりましたが大丈夫なのか。そして―――アカギと数珠丸さんにも絆が芽生え始めそうな予感?

 事件が解決した為、鬼丸さんは一同と別れることに……なったのですが、既に邪気が身体を巡り切りそうなところまで来ているようで…。彼を救う為には何をしたらいいんでしょうか。次回をお楽しみに!




 予告通り、本日より後日談編を更新いたします。
 暖かいコメントありがとうございます。執筆の励みになります。

#CR09-16 世界を巻き込む戦いの前奏曲 -1 ( No.59 )
日時: 2021/05/03 22:04
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: KRYGERxe)

~運営本部 住居区 サクヤの私室~



数珠丸「そうでしたか…。お互いの気持ちがしっかりと伝わったようで私も安心しております」

石丸「いやいや、数珠丸さんの言う通りだな!はっはっは!無事にサクヤさんと大典太さんがお互いに分かり合えて嬉しいぞ!」

サクヤ「数珠丸さんも石丸くんも三日月さんも、今回はご迷惑をおかけし申し訳ございませんでした」

大典太「……すまない。俺が出ていったことでこんなに大事になるとは思わなくてな…」

三日月『話を聞いたところによると、大典太は帰還途中にあの連中に捕まったようだからなぁ。まぁ、不運だったと思うのが筋か。その不運のお陰で青龍殿も自分を見つめ直すきっかけになったのだし、終わり良ければ総て良し、ということだと思うぞ』

サクヤ「今回ばかりはその言葉通りです…」



 ユウリとカブがエンジンシティへと戻ってからひと段落した一同。サクヤは数珠丸達に改めてお礼を言おうと、彼と石丸くんを私室に案内し話をしていました。大典太もいくらか吹っ切れたようで、本部を無断で出ていく前よりも少しだけ…顔の陰りが減ったような気がしました。
 数珠丸も三日月も、大典太が攫われたと分かった時は気が気でなかった様子。霊力の強い刀が悪用されるのもそうですが、彼らは一緒に幽閉され、切り離された空間で一緒に過ごした仲。そりゃあ心配もするでしょう。安心しきったように三日月が言葉を発したのでした。



三日月『実は大典太が悪用される可能性があると数珠丸から話を聞いた時、ひやひやしたぞ。唯でさえ俺達の霊力は他の同位体を凌駕しているのだ。それが原因で世界に悪影響が出てみろ。刀剣男士の肩身が狭くなる。そして……俺達の居場所は、この世界にも無くなってしまう』

数珠丸「恐らく、敵方もそれを分かっての襲撃だったのだと思われます。現に時の蔵から鬼丸殿と童子切殿が奪取されています。……我々の霊力の特異性には既に気付いているかと」

大典太「……そうでなかったら放置しているだろうからな…。主。天界から何振か落ちた、と兄弟は言っていたんだったな?」

サクヤ「はい。確かにこの耳で聞きました。恐らく、その『天界から落ちた刀剣』というのが前田くんと大包平さんのことを指しているのだと思われます。探せばもっといるのかもしれませんが…」

石丸「天界から落ちたから、あの本丸に閉じ込められることも無かったという訳だな?」

大典太「……あぁ。あの幻の空間は消滅した。今、兄弟達の意識がどうなっているのかは知らんが…。せめて、安らかに眠りについていることを俺は祈りたい」

三日月『『れすといんぴいす』というやつだな』

石丸「それでは死んでしまうので駄目だぞ三日月くん?!」

三日月『はっはっは。そうであったか。外国の言葉というものは難しいなぁ。……俺もお前達のように顕現できていたのなら助太刀にも参上できたのだがな』



 会話の折り、三日月はふとぽつりとそんな言葉を零します。語尾が下がっている為、相当気にしていることなのでしょう。数珠丸まで顕現してここにいる今、行方不明の童子切を除けば『完璧に』顕現出来ていないのは自分だけ。そのせいで他の刀剣達や石丸くんに負担を強いていることを悔いていました。
 そんな彼の言葉に石丸くんも続けます。どうにかして三日月を顕現させてあげたい。そんな気持ちがいつしか彼の胸にも湧き上がっていたようです。



石丸「サクヤさん。三日月くんの意識だけが目覚めて結構な時が経ったが…。未だ完璧な顕現には至っていない。何か理由があるのか?数珠丸さんのように『邪神の邪気で妨害を受けていた』とか」

数珠丸「そうであれば…。私が顕現したタイミングで三日月殿も人間の姿を取れていなければおかしいということになりますね」

三日月『あぁ。あの邪神が関係していないとは俺も思っている。原因は別のところにありそうだが…青龍殿と同じような解決方法ではないような気がするのだがなぁ』

大典太「……俺と違って、あんたは既に主と正式な契約をしてそれだからな…。考えられる理由としては、『主の霊力が足りていない』もしくは『顕現するだけの絆が足りていない』どちらかだと思うんだが」

三日月『絆が足りていない、か。やはり俺の中にまだ渦巻いている『人間への疑念や哀愁』が権限を邪魔しているのかもしれんな』

サクヤ「だとすれば、数珠丸さん以外の刀剣は貴方と同じような目覚め方をしなければおかしい。三日月さんのパターンはイレギュラー、レアケースだと思って解決策を練った方がいいかもしれませんね」

石丸「それでも、僕は三日月くんが大典太さん達のようにしっかりと顕現できるまでずっと待っているぞ!なんたって、君の主なのだからな!はっはっは!」

サクヤ「霊力の問題でも…なさそうですよね。光世さんが大包平さんに霊力を送るのに失敗した時、代理で石丸くんを介して霊力を送ったのですよね?」

三日月『あぁ、そうだ。普通の人間では到底無理なことを成し遂げた。『霊力不足で顕現出来ない』という可能性も潰していいだろうな』

大典太「……そうか。どうせ俺は碌な可能性を追えない刀だよ…」

数珠丸「三日月殿の顕現の話に関しては、まだ時間がかかりそうですし…。我々も何か手がかりを探してみます」

大典太「……手がかり、か」

サクヤ「光世さん。何か気がかりでも?」

大典太「……鬼丸のことを、少しな」

三日月『鬼丸かぁ。話によると、あの場から消えるように立ち去ってしまったのだよな』

サクヤ「…………」



 話の道中、大典太は鬼丸が去って行ったあの表情を思い出していました。脳裏にこびりついた、何か覚悟めいたものを見せた鬼丸の顔。まるで『大典太が自分の首を落としてくれる』と期待しているかのような、複雑な顔。天下五剣が全振で過ごす為には、鬼丸の問題は絶対に解決しないとならないもの。しかし……。彼にあんなことを言われた手前、どうすればいいのか大典太には分かりませんでした。思わずしょんもりとしていると、サクヤが心配そうに顔を覗かせてきました。



サクヤ「鬼丸さんも本意ではない筈です。そうでなければ、一緒に酒を呑む約束などしませんでしょう」

大典太「……それは、そうなんだが。―――『時間切れ』だと。あいつは去り際に『俺かあいつ、どちらかの首が地面に落ちるのを覚悟しろ』と言った。俺はそんなことの為にあいつとまた会いたい訳じゃない」

数珠丸「ご自分でも理解されていらっしゃったのでしょうね…。もう、自分には時間が残されていないのだと。それを承知で、我々に協力を申し出た。次に相まみえる時が敵同士だとは…私も考えたくありません」

三日月『ふーむ。俺のことよりまず先に鬼丸を何とかせねばな。俺のことはどうにでもなるが、あいつに関しては…下手をすれば『折れねば』救うことが出来んかもしれん。―――絶対に避けなければならないことではあるが』

大典太「……俺だって折りたくない」

石丸「何とか鬼丸さんの邪気を祓う方法は無いのかね?!勿論……鬼丸さんの刀を折る、以外の方法でだ!」

サクヤ「うーん…」



 石丸くんの必死な訴えに一生懸命案を考えるサクヤ。しかし…鬼丸の場合、大典太やおそ松のようにはいかない。それは彼女も分かっていました。彼らとは根底から条件が違うのだと。それ程、彼を蝕んだ『時間』というものは長すぎました。苦しい顔をしながらサクヤは静かに彼に答えを口にします。



サクヤ「光世さんやおそ松くんのように、悪いものを入れられた期間が短ければまだやりようは充分あります。しかし…鬼丸さんは、アンラの邪気を150年も受け続けた状態。プレロマで一時的に一部弾き飛ばし正気を取り戻すには至っても、完全に邪気を祓うことは出来ないでしょう」

大典太「……現に鬼丸も言っていたからな。『俺が祓う邪気の量が、樹海都市の時よりも減った』と。―――それは、鬼丸の霊力が邪気と混じり合って、完全に染まってしまったと考えてしまってもいいんだろう。
    ……あの場所で正気を失った鬼丸の太刀を受けた時、あの場所で受けた時とは全く太刀筋も違った。完全に呑まれる寸前だったんだろう」

石丸「それは分かっている。だが…!鬼丸さんを完全に救う方法が『鬼丸国綱を折る』ことだなんて…!」

数珠丸「そういう表現をしなかったのは彼が戦に使われた刀であったことが大きいのでしょうが…。鬼丸殿は何を思ってそんな発言をしたのでしょうか」

三日月『それが分かれば苦労はしないのだが…。恐らく、青龍殿と大典太の元を去ったのも…。大典太に刃を振るってしまった罪悪感と、邪気に呑まれた自分がこれ以上お前達を襲わないようにとのあいつの気遣いだと俺は思うぞ。……それでも。俺も考えは主と同じだ。鬼丸を折る以外の方法で、あいつを救いたい』

大典太「……俺も、考えてみる。だが…どうしたらいいんだ」

サクヤ「光世さん。皆さん。私の方でもなんとか鬼丸さんに入り込んだ邪気を他の方法で祓うことが出来ないか探して見ます。光世さんと鬼丸さんは…『盟友』というご関係なのでしょう? ならば、尚のこと光世さんにそんな選択肢など取ってほしくありませんから。
    ―――貴方の主として。そして……貴方の未来を共に歩む者として」

大典太「……主。ありがとう」




 大典太を気遣ったのか、優しい声でそう告げるサクヤ。彼はそんな主の言葉に少しだけ肩の荷が下りたような気がしました。しかし…あの鬼丸の覚悟を秘めた表情。やはり、その顔が脳裏から消えることはありませんでした。
 皆と協力して探しても、最終的には鬼丸と斬り合うことになるだろう。大典太は…そんな覚悟をしなければいけない時が近付いてきていると、心の中でそう思ったのでした。

#CR09-16 世界を巻き込む戦いの前奏曲 -2 ( No.60 )
日時: 2021/05/04 22:00
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: KRYGERxe)

~第二鉱山~



 声が反射する程の空洞が広がる第二鉱山。いつもならばポケモンと修行に明け暮れているトレーナーがいる筈ですが、今回の騒動により鉱山には現在人が寄り付いていません。その中をずる、ずると足を引きずりながら歩く男が一振。片側に伸びている角は伸びきってしまっており、肩で苦しそうに息をしながら鉱山の中を歩いていました。
 男―――鬼丸国綱は重い身体を動かし、より早く人のいないところに移動しようとしていました。自らが『鬼』に成り果ててしまったら、きっと誰かを傷付けてしまうから。その気力を支えとし、何とか踏ん張っていました。



鬼丸「(さっき大典太にも話したが…。確かにあいつの太刀でおれの邪気が少し祓われたのは事実だ。だが、その量が明らかに減っている。あいつの霊力が青龍と繋がっていることはおれでも分かる。だから……大典太の霊力が減ったなんてことは考えられない。
    ……おれの邪気が巡り切ったと考えるのが自然か)」



 あの時勢いでその場を去ったのは、サクヤと大典太にこれ以上刃を向けない為の鬼丸なりの気遣いでした。しかし、それは失敗だったかもしれないと彼は頭を悩ませます。
 彼が身体を引きずりながら歩く道には、鉱山で働く作業員とポケモンの姿が点々と存在していました。あんな騒動があっても仕事は仕事。流石に『誰もいないわけがない』ところまでは頭が回らなかったようで。ちらりと作業員がいるであろう場所を見やりますが、そこに見えるのは一緒に働いているポケモンと―――『鬼』。自分が斬るべき獲物。もしポケモンと一緒に仲睦まじく話していなければ、もし人間が単独で仕事をしていたのならば。……自我を次に失った時に斬ってしまう。
 それだけは絶対に避けなければならない。その考えを胸に、彼は人気のいない場所を目指して歩き続けていたのでした。











 ―――しばらく歩き続けた先。鬼丸の目にふと『立ち入り禁止』という看板が見えました。その近くは鉱山の岩や瓦礫が酷く、流石にポケモンを連れている作業員でも怪我の可能性がある為立ち寄れないエリアのようです。鬼丸はそれを逆手に取り、『人がいない』場所だと判断。せめて、鬼になるなら人知れず鬼になろう。そう考え、立ち入り禁止の道の向こうへと進んでいったのでした。



鬼丸「(……あれか。あの瓦礫が道を塞いでいるのか)」



 その道を進んでいると、目の前に瓦礫の山が見えました。道を塞ぐように積み重なっており、確かにこれでは人が安全に通ることが出来ません。鬼丸は看板の意味を理解したと同時に、ここで休むことを思いつきました。看板の向こうならば人が来ることも無いだろう。そう考え、少し身体を休ませることにしたのでした。
 瓦礫の近くまで歩き、岩壁を背にしながら倒れ込むように座る鬼丸。背中にごつごつとした硬い感触が伝わり気分が少々悪いものの、休める場所が見つかっただけありがたいもの。腰を下ろしたと同時に大きなため息が彼の口から漏れ出たのでした。



鬼丸「150年…長かった。おれだって望んでいた。五振と青龍とくだらない話をする未来を。―――少し、変わったのはあいつらだけじゃない。分かっていた筈なのにな。
   たらればの想像だけが浮かびやがる。……おれ達に『幸せ』を望む権利すら与えてはくれないというのか」



 思わず、吐き捨てるようにそう呟く鬼丸。彼も望んでいました。五振で平和な未来を過ごすことを。あの蔵ではなく、美しい世界の縁側で。のんびりと茶でも嗜む『幸せ』を。そんな小さな希望すら望むことは許されないのか、と。
 政府に顕現され、彼らの都合で幽閉され、彼らの都合で捨てられ―――。当時の鬼丸には『怒り』の感情しかありませんでした。もし人間に会ってしまったら、この怒りをきっとぶつけるだろう。憎しみを晴らすかのように。だけれども…時の蔵で老人に助けられてから。あの龍神が落ちてきてから。自分達は少し変わった。それは鬼丸自身でも感じていました。怒りに支配されていた自分が、他を気遣うなど…。前までは考えられないことでした。


 ―――ただ『幸せに過ごしたい』。それだけなのに。何故邪魔をする。……苦しみながらもそう呟く彼の元に……。足音は聞こえてきたのです。









『幸せとは何なのか。刀の付喪神にも考える頭はあるのだから、各々思うことは違うのではないか?鬼丸国綱よ』

鬼丸「―――!!」









 聞こえてきた、聞きたくなかった声。あいつから逃げていたのに、こんな場所で見つかるとは。逃げようにも身体が重く思うように動けない。鬼丸はその声の方向を向くことしか出来ませんでした。
 目線の先にコツコツとした靴音と共に現れる禍々しい気配。鬼丸を見下しながら現れた『邪神』は、滑稽だと苦しむ彼を鼻であしらいつつ言い放ちます。



鬼丸「…………」

『探したぞ鬼丸国綱。我の手をここまで煩わせるとはな。流石は『天下五剣』と言ったところか。しかし―――貴様の友を守る為に、自らが犠牲になる道を選ぶとはな。滑稽で仕方がない』

鬼丸「戯言を言うな。おれは大典太を守る為にあの場に行ったんじゃない。おまえの手先になって苦しまれるとおれの夢見が悪かっただけだ」

『その『夢見』とやらももうじき見られなくなると自分でも分かっていたのに、か?大典太光世が仮に我の手先になった場合、貴様の邪気が完全に染まる速度は明らかに落ちていた筈だ』

鬼丸「どうだかな。その様子だと大典太を邪気に染めた後に、おれを回収しに来そうだったがな。天下五剣とはいえど刀の一振や二振、おまえの手にかかれば堕ちるなんて一瞬だと自分が一番分かっているだろ」

『よく分かっているじゃないか。大人しく我の手先になっていればいいものを、あの天下五剣が邪魔をしおってからに…。お陰でとんだくたびれもうけだった。道化師も大したことが無かったからな。しかし―――こうして貴様を回収出来たことだけは収穫、と言っておこうか』

鬼丸「―――おれが素直におまえの言うことに応じると思っているのか」



 大典太を犠牲にすれば鬼丸は邪気に侵されなかった。そんな甘言にも彼は騙されません。どうせ大典太を邪気に染めた後に自分に止めを刺すつもりだったのだろうと。邪神はそういう考え方をするのだろうと。分かっていました。だから、逃げた。
 せめてもの抵抗に自分の太刀に手をかけますが、それすらも読んでいたのか邪神は表情を変えず冷たく言葉を零したのでした。



『自分でも分かっているんだろう。我を斬る為に次に刀を抜けば、我の邪気が貴様の全てを染め上げるということを。自らが忌み倒すべき『鬼』になるつもりなのか?』

鬼丸「それでも、斬らねばならん障害は斬る。―――おまえのことだアンラ・マンユ。おまえの手で鬼にされるよりだったら、おれ自身で鬼になる。それだけの話だ」

『―――あくまでも主導権は自分にあると思っているのか。……あまり我を見くびるなよ』

鬼丸「………… ―――っ?!」



 鬼丸がアンラを斬ろうと太刀を抜き始めた瞬間でした。彼の視界が歪み、頭に割れるような痛みが襲ったのです。まるで頭を引きちぎられているかのような痛み。折れてしまった方がマシだと思う程の痛み。思わず頭を抱え蹲る鬼丸に、アンラの口角は上がっていました。この反応ですら、自分の掌の上なのでしょうか。
 ―――頭痛と共に襲ってくる黒い靄。鬼丸の記憶、視界、思考。全てを奪い去るそれ。視界が黒く染まっていくと共に、痛みは徐々に強さを増していきます。



鬼丸「ぁ……う、はっ……あぁ……ッ……!!」

『何故耐える。苦しみから解放されたいのだろう?我に委ねよ。闇を受け入れよ。自分を切り離せ鬼丸国綱。そうすれば楽になれる』

鬼丸「おま……え、など……に、ッ……あ、ぐぁ……!!」

『苦しむ姿を見るのも一興だが―――。いささか飽きてきた。貴様との追いかけっこもこれで終わりなのでなぁ。
 ―――せめてこれ以上苦しまぬよう、一瞬で終わらせてやろう』



 全て。全てが黒く塗りつぶされていく。『鬼丸国綱』としての逸話も。天下五剣と過ごした日々も。あの花火の思い出も。……天下五剣と歩んでいきたいと願った『幸せ』も。































 ぱちん。邪神が指を鳴らしたと同時に、糸が切れたように鬼丸は意識を失った。そのまま鬼丸は顕現を解かれ、その場にカランと本体だけが転がり落ちる。
 邪神は退屈そうに横たわる鬼丸国綱を拾うと、鞘に着いた土埃を手で掃った。彼女が触れた箇所から闇を放出していく太刀。鬼丸国綱は彼女の手に堕ちてしまった。それを表すかのように。



『もう少し頑張れば逃げおおせたのになぁ?あの青龍についていけば貴様も助かったかもしれんのに。―――まぁ、その時は彼奴の本拠地を襲撃して他の天下五剣諸共奪取する予定だったが…。残念だったな鬼丸国綱。
 貴様が望む『幸せ』『未来』。来ないさ。未来永劫。貴様がこれから見る未来は―――。友を斬る悪夢。そして、世界の破滅だ』



 そんな言葉を零した邪神の口元は笑っていた。これも計画のうちだ。天下五剣が斬り合うことを彼女は望んでいる。その結果、折れてしまっても構わなかった。彼らは『掌の駒』に変わりないのだから。
 ……その場から去ろうとする邪神は、ふと鬼丸が座り込んでいた場所に何か落ちているのに気付く。興が乗ったのか拾ってみると、微かにそれから『青龍の加護』を感じた。各々生き生きとした表情で写った、1枚の写真だった。
 写真を手に取った邪神の顔が歪む。いくら探しても鬼丸国綱が見つからなかったのはこの写真のせいだったのか。そして―――この写真が、彼が邪気を抑え込み正気を保つ『依り代』になっていたことにも邪神は気付いた。



『―――くだらん抵抗をしおって』



 忌々しそうにぱちんと指を鳴らすと、宙に舞った写真は端から黒い炎で燃えていった。跡形もなく塵になったそれは、宙に飛んでいくうちに鉱山の空気に溶けてなくなってしまった。思い出を自ら踏み荒らしていくように。次に目を覚ます時は、完璧に自分の傀儡として動かす為に。



『……この世界を守る四柱の神、か。―――その均衡が崩れる時…。この世界の人間どもはどんな悲鳴を上げてくれるのか。楽しみだ。―――この世界も、我が世界の礎となる時は近い』




 そんなことを呟きながら。邪神は静かに鉱山を去って行った。その場には最初から何もなかったかのように、静けさだけが残っていたのだった。

#CR09-16 世界を巻き込む戦いの前奏曲 -3 ( No.61 )
日時: 2021/05/10 00:20
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: xXhZ29pq)

~天界 オリュンポス大神殿~



 ―――ここは、神々が集う場所。『オリュンポス十二神』と呼ばれる位の高い神々が過ごしている場所。そんな場所に、その場には似つかわしくない怒号が鳴り響いていました。








『……ゼウス様!!!どういうことですの?!』








 玉座に座る老人に怒号を響かせている、金髪をシニヨンヘアに纏めている女性がいました。彼女の名は『ヘラ』。ゼウスの正妻であり、結婚や出産を司る女神です。彼女が夫にぷりぷり怒っているのは実は日常茶飯事なのですが……どうやら今回怒っている原因は『いつもの』ではないようで。
 ちなみにゼウス、かなりの浮気性でよく地上に降り立っては可愛い女の子を引っかけて遊び倒しているんだとか。そりゃ怒るわ。



ヘラ「ゼウス様。貴方様が顕現の手助けをなさった刀剣男士達に危機が訪れていたとは何事ですの?!だから言ったではありませんか!!わたくしは付喪神を外に出すなど反対だ、と!」

ゼウス「落ち着くのじゃヘラ。お前がここで怒っていても我々が手出し出来る問題ではない。アンラ・マンユが直接動き出したとはいえ、まだ天界自体が損害を受けたという訳ではなかろう」

ヘルメス「しかし…。まさか鬼丸国綱が単独で地上に逃げ出していたとは…。無事に邪神から逃れられているといいですけどねぇ」

ヘラ「一時的に逃げ出せたとしても、あの邪神が放置するはずありませんわ。頃合いを見て回収しに向かった道中で今回の騒動が起きてしまったのです。最初から顕現の手助けなどしていなければこんなことにはならなかったのですわ!」

ゼウス「しかしのう。邪神の力は侮れぬ。いくらあの場に人外が多く集おうとも、『異世界』にまで手を伸ばせはしない。常識の外から攻撃をしてくるような輩じゃ。―――手駒は多いに越したことはない。
    ……それに、顕現したお陰で青龍も自分を受け入れることが出来たのじゃからな。悪いことばかりではない」



 アンラが大典太に手を出したことは既に伝令の神、ヘルメスによってゼウス側に知らされていました。ヘラはそのことで自らに被害が及ぶと思い、付喪神の顕現をするべきではなかったとゼウスに進言していたのでした。
 しかし、そのお陰でサクヤが過去を受け入れられたのも事実。刀剣男士達も各々考え、前を向き始めている今。ゼウスは顕現の手助けをしたのを『間違った選択ではない』と思っていました。



ヘルメス「結果的には青龍殿が、その奪取された刀剣と『本来の契約』を果たしたことで事なきを得ましたが。あの刀剣と青龍殿に何か繋がりがあったんでしょうかねぇ?」

ゼウス「―――あったんじゃよ。あの幼子が時の狭間から戻ってこれたことも奇跡じゃが、まさか時の狭間で生きているいのちがいたと知ったことも驚いたもんじゃ。……ノーデンスに拾われたからこそ、神々にも様々な者がいるということを知ったのじゃろう」

ヘラ「ふんっ。いくら当時世界を滅ぼしたといえど、彼女はわたくし達よりとても若い神。その成長の芽を詰むことなどあってはなりません!―――もしそのことを、あの刀剣達が再び気付かせてくれたのであったら……。ま、まぁ。ゼウス様の選択は正しかった、ということになるのかしら?」

ゼウス「正しかったかどうかは今でも分からん。結局は戦いにまた巻き込もうとしておるんじゃからのう」

ヘラ「ところでゼウス様。アンラ・マンユは今どちらにいらっしゃいますの?地上で最後に見かけてから随分と時間が経ったようにも思えるのですが。拉致していたものが奪還されて、彼女も黙っていないと思いますわ」

ヘルメス「いえ。斥候の者からは連絡は何も。もし天界に戻って来たのであれば、彼らから一報来るはずですからね」

ゼウス「邪神…。今まで様々な異世界を自分の手で滅ぼしてきた、という話は聞くが…。この世界もその『ひとつ』に過ぎんのか。自らの欲を満たす為、どれだけの罪を犯すつもりなのじゃ…」

ヘラ「ゼウス様…」



 アンラはまだ天界には戻ってきていないようです。鬼丸国綱を回収した後、まだ用事が残っているのでしょうか。そんな彼女の不可解な動きを読むことが出来ないゼウス。実際に世界が滅びていくのを目の当たりにした訳ではないので、アンラがどれだけの世界を自らの手で崩壊させたかは伝承での話でしか知ることは出来ません。
 しかし―――。彼女に好き勝手させておけば、この世界もいずれその『ひとつ』となってしまう。それだけは分かっていました。もしアンラが近々天界に戦を仕掛けるのであれば、地上にも間違いなく影響が出るだろう。―――サクヤ達を巻き込んでしまうことを、ゼウスは憂いていました。彼にとっては『手駒』でも、愛すべき子供達の一柱。平和に過ごしてほしいと願うのは当然のことです。



 ゼウスがため息をついたと同時でした。扉が勢いよく開かれる音が耳に入ってきました。思わずその方向を見て見ると、そこには槍と大きな丸い盾を持った、栗色のストレートの髪が特徴的な若い女性の神が立っていました。
 その表情は随分と卒倒したものであり、何かこちらに急ぎで伝えたいことがあるかのようでした。すぐに彼女を通し、ゼウスは話を聞くことにしたのでした。



ゼウス「何事じゃ、アテナ。お主は斥候の者とアンラの拠点を調査していたはずではないか」

アテナ「ゼウス様!邪神がたむろしているねぐらから―――巨大な『門』が現れ出でました。そのことを一刻もお伝えしたく、こうして参った次第です」

ヘラ「門…。もしかして、この世界と『異世界』とを繋ぐものですか?」

アテナ「そこまでは分かりかねますが…。もし邪神の手の者が準備を進めていたのであれば、その可能性は高いかと。そして、繋がっている『先』の世界は―――」

ヘルメス「アンラ・マンユが元々いた『悪の世界』でしょうねぇ。彼女が大々的に仕掛けてくると考えれば頷ける話です」

アテナ「門はまだ閉ざされていますが、その向こうから邪悪な力が漏れ出ています。少々の量でも位の低い神が活動を停止してしまう程の強さ…。もし『門』が開かれ、邪気が天界を覆ってしまったということになれば……。天界は瞬く間に邪神に情勢を許してしまいます」

ゼウス「天界から堕ちた邪気が地上を支配するのも時間の問題、か。……自らの考えで動いている『悪』に属する者共への影響も免れんであろうな」

ヘラ「ゼウス様。その『門』とやらの状態を見に行きましょう。アンラが戻ってくる前に先手を打てるよう調査をするのです!」



 女性の神―――『アテナ』の話によると、アンラがねぐらにしている場所に巨大な『門』が現れたのだと。門からは邪悪な力が漏れており、もし『門』が開かれてしまった時には天界を邪気が蹂躙するのだと。そう結論を付けました。
 一刻の猶予も許されない状況。ヘラはすぐに『門』を見に行こうとゼウスに進言しますが、彼はヘラが同行するのを拒否しました。



ゼウス「ヘラ。お主は言ってはならぬ。門を即時調査することは必要だが、それはワシとアテナ、ヘルメスで向かう」

ヘラ「どうしてですか?!わたくしも門の邪気に耐えられる位の神ですわ!ゼウス様、それは貴方様が一番お分かりになっているでしょう?!」

ゼウス「お主が行ってはならぬ。恐らく―――。このオリュンポス大神殿も近々戦場となる。天界の神々もいくら犠牲になってしまうか読めぬ。
    ヘラ。お主は青龍達の元へ赴き『近々天界で戦争が起きる』ことを伝えに行ってくれんか」

ヘラ「嫌です!!!わたくしの命はゼウス様と共にある、貴方様と婚約した時にそう誓いましたわ。わたくしも共に参り『ヘラ。行け。これは全てを司る神からの『命令』じゃ。逆らうことなど許さぬ』 ……くっ!」

アテナ「ヘラ様。申し訳ございません。貴方様のお気持ちは察するに有り余ります。しかし―――どうかゼウス様のお気持ちも汲み取ってくださいませ。あの方は無策でそんな言葉を口にするようなお方ではありません。
    ―――オリュンポスの神々が全滅などあってはならない。あの方はそうお考えなのでしょう」

ヘルメス「調査をしに行った足でそのまま帰らない、なんてことはないと思いますので心配はいらないと思いますよ。もし何かあっても我々がゼウス様をお守りしますので」

ヘラ「そんなの…そんなの……!」

ゼウス「十二神ですら全柱生き残れるか分からぬ。読めぬのだ、あいつの力は。大丈夫じゃ。調査をしたらすぐに戻ってくる。こちらから仕掛けることはしない。―――じゃが、彼奴は確実に動く。地上へ影響が出るのも時間の問題じゃ。
    ……地上の生命と力を合わせ、『邪』を退ける局面に立たされておるのじゃ」



 ヘラはそれでも自分もついて行くと言いましたが、ゼウスに『命令』されて言葉を噤んでしまいました。この天界での絶対神はゼウス。彼に逆らうことは出来ません。アテナもヘルメスもゼウスを必ず守ると進言しますが、ヘラの心の中に渦巻いた『不安』が消え去ることはありませんでした。
 そのままゼウスはアテナの案内に従い、大神殿を去ります。いつの間にか大神殿の大広間には、ヘラがぽつんと取り残されていました。



ヘラ「あの言い方…。まるで『自分達が犠牲になります』とでも言っているようなものですわ…。気に喰わない!どうしてわたくしはいつもいつも……!」




 歯を食いしばっても誰にもその怒りは届きません。胸に渦巻いている不安を抱えながら、彼女はゼウスの言伝をサクヤ達に届ける為大神殿を出ていき、地上へと向かうのでした。


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