コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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記憶をなくした少女*
日時: 2015/07/27 15:23
名前: 梅乃 ◆8DJG7S.Zq. (ID: bOX/HSBq)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2a/index.cgi











こんにちは!移転しました。





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Re: 記憶の無い少女へ*.。・゜*.。・゜*.。・゜ ( No.5 )
日時: 2014/03/22 10:30
名前: 環奈 ◆8DJG7S.Zq. (ID: ysgYTWxo)

 第一話 揺れた時刻 to3 君が居た日
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街中だから 墓場なんてその辺になく、来るだけで時間がかかってしまった。

「——此処」
誰もいない墓場だった。

どうして僕がこんなに墓場に来たがったのか。それは——…

「…」
一回り小さい墓。
僕の妹の琴の墓場だ。

あまりに早すぎる死に、絶句するしかなかった。

単刀直入に言うと、僕の妹は、大地震で瓦礫に飲まれて死んだ。
その日から僕は、軽くとも日本の内で 地震が起きたら必ず墓に来る。

もちろん来なくてはならない日や、修正会・盆・両彼岸の日は必ず家族で来る。

「よいしょ」
僕は背負っていた鞄を降ろすと雑巾で墓石・墓誌・灯篭・外柵等を拭き、雑草を刈った。
丁寧に。除草剤を使わずに、琴の第二の家をきれいにしてやった。

「——」
白い菊の花を飾り、琴が好きだった、お母さんの手作りのおにぎりを数個一緒に供える。

ひとつは祖母の作った梅干しのものと、もうひとつはお母さんが作ったあさりしぐれ

僕のおやつだったのだが、琴に譲ることにしたのだ。
どちらも琴が好きなものだ。

一緒に美甘とお茶を供え、線香も、その場から離れて火をつけると供えた。

墓前で手を合わせた。

「—琴、元気か?。僕はまだ、あの時のこと忘れることはないよ。」

甦ったりしないかな。
あの屈託ない笑顔や、記憶としてしか残っていない思い出だけが頭をよぎる。


今喘いでも もう遅かった。


もう妹は、「思い出」に化かしてしまった。

Re: 記憶の無い少女へ*.。・゜*.。・゜*.。・゜ ( No.6 )
日時: 2014/03/22 14:32
名前: 梅乃 ◆8DJG7S.Zq. (ID: ysgYTWxo)

 第一話 揺れた時刻 to4 冥影の中で
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「また来るよ。」
僕はそうっと告げると、置いた おにぎりや花などの供え物を片づけ、足早に立ち去った。

西の空だけに黄昏の町が光っていた。

「———…」
琴が。甦ればいのに。
琴と居た思い出が胸の中にありすぎて、消えることも許されない。

バイブの振動が感じられて、ポケットからケータイを取り出した。

「もう六時過ぎか」

∮∮∮∮∮

「いつもえらいわねえ…!陸くーん!お兄ちゃん来たよー!」

「あ、いいえ。」
僕は、笑顔で言う保育園の先生に、軽く会釈をした。

ここは星苑保育園で、一番末っ子の弟の陸が通っている。
大体の人はお母さんが迎えに来るのだが、陸は違って、僕が迎えに来る場合が多い。

「あー!おにーちゃん!遅いよ〜」
遊んでいたオモチャを片づけると、残っていた数人の友達に、ばいばーいと元気に友達に手を振って、鞄を持って駆けつけて来た。

「うん、ごめんな。陸」
いいよ。と笑顔で陸は言った。
何となく、あまり両親の恵みに包まれていない陸が可哀想に思えてくる。

「さよならー!」
陸が、先生に言った。

「さようならー」
先生も返し、僕も言う。

「あと四人で、ぼく独りになっちゃうところだったよ」
と陸が言った。
僕が迎えに来るのが遅いんで、教室に残っている人が少ないと言いたいのだろう。

「ごめんごめん。今日は陸の好きなコロッケ作るから、許して。」

「ほんとー!!たべたーい コロケ食べたい!」
と騒ぎ出す陸と手をつないで、

「コロッケ、だよ。」
と言った。

「あのねー。藍花ちゃんはコロケきらいなんだって」
陸が言った。

「ふーん。美味しいのになあ」
僕が言う

「あとねえ、星哉くんは、ピーマンすきなんだって!すごいよね!」
陸が無邪気に笑った。

「すごいねえ!。陸も食べれるようになるといいね」
「うん」
∮∮∮∮∮

「頂きまーす・・・」
「いたあきまーす!! おにーちゃん、おいしー!」

「まだ食べてないだろ…!あと、いただきます。だよ」
僕は優しくコロッケを小さく一口サイズに選り分ける。

「…お、あんがい 美味しくできたかも」
僕は、夕食を作り終え、陸と二人で食べ始める。
蠅帳とサランラップにかかったご飯が三つある。

姉と両親の分だ。
両親は共働きで、僕は琴が居れば四人きょうだい。

一番上の姉は僕より二つ上の高校一年生の沙和。
優しいし色々やってくれるけど、勉強と部活で忙しい。
その次が僕で、その次は、生きていれば小学五年生の妹、琴。
末っ子は僕より八歳年下の陸。

一番上の姉から考えたらものすごい年の差。

「ん」
ふとケータイを覗くと、優希や隆志、幼馴染の志乃と、最近仲良くなったあい子等や色々な人からラインが着ていた。

(食べてからでいいや)
僕はケータイを躊躇してそばに置くと、さきほど琴に供えたおにぎりを口に運んだ。

Re: 記憶の無い少女へ*.。・゜*.。・゜*.。・゜ ( No.7 )
日時: 2014/03/22 11:16
名前: 梅乃 ◆8DJG7S.Zq. (ID: ysgYTWxo)

 第一話 揺れた時刻 to5 沈んだ双眸
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「寝たか——…」
陸に本を読んでやり、すぐ寝つき始めると、僕は陸の傍から離れて勉強を始める。

陸はとくべつできたヤツで、ぐずることも少なく、いいのか悪いのか手がかからない弟だった。

それに比べて両親の方がそれまた育児放棄して 手がかかる。

「ただいまー」
ドアが開く音がして、僕はシャーペンを置いた。

(父さんか母さんか。それとも姉さんか。)

静かに席をたつと玄関のほうまで行ってみる。

「ああ、蓮。まだ起きてたんだ?。」
まだ、というか。もうすぐ九時なので、まだ少しくらい起きていても大丈夫だと思うのだけど。

「うん。お帰りなさい」
僕はそう言うと、言うだけ言って部屋に戻る。

何となく今顔を合わせたくなかった。

∮∮∮∮∮
「なんだコレ・・・・・・」
僕は今、難問にかかっていた。

テスト前でもないので、学校の宿題はないが、一応、成績維持のために、自主勉強を、市販のドリルを使ってやっていた。

塾をやることは、この生活では不可能だし、やりたくもないので、市販のドリルで済ませているのだ。

(これ絶対、テストとかで出るヤツなんじゃないの——?)

僕は、悩みに悩んで十分。だいたいは、飛ばすんだけどこれはいくら飛ばしても明日の頭でも無理そうだった。

(こういう時は—…)
せっかく居るんだし、姉さんでも頼ってみるか。

階段を下りてみると、リビングに明かりがついているのが見えた。
僕はドリルとノート、筆箱を持って向かった。

「姉さん居る—?」
すると、すぐそばの食卓で姉さんが振り向く。

「ん?蓮かー!どうしたの?」
姉さんも勉強をしている風だった。

姉さんは、いまどきの高校生と違ってあまりスマホなどのラインやゲームを触らない。
それでも、友人関係だとかそういうものが崩れていない人気者なのだから凄いと思う。

「えーっと…。勉強、わかんないところあったんだけど、教えてくれる?。」
向こうの都合もあるだろうし、遠慮がちに言うと、姉さんは軽々と了承してくれた。

「いいよ。蓮、頭いいから、わたしのが分かんないかもしれないけど」
そんなわけない。
有名な公立の共学校に通う姉さんの成績は、弟の目から見ても良いと思う。

ある意味、今まで両親が全てを姉さんに託していたのだから、今は羽のばししてもらいたい。

「これなんだけど…」
僕が見せると、ああ、これね。と姉さんは頷いた

「これ、わたしも苦手だったよー」
と、分かりやすく教えてくれる。

Re: 記憶の無い少女へ*.。・゜*.。・゜*.。・゜ ( No.8 )
日時: 2014/04/07 15:34
名前: 梅乃 ◆8DJG7S.Zq. (ID: ysgYTWxo)

 第一話 揺れた時刻 to6 黄昏の先に
∮———————————————————∮

「おはよー」
「あ、おはよう!」
僕はいつも通り、クラスへ入って行く。

僕のクラスは、男女関係なく仲良くする人が多いから いつも賑やかだ。
すると僕の席の近くで、最近仲良くしているメンバーが群がっていた。

「えー、月代は料理得意だから……。「えー、わたし?春遥ちゃんのが上手だよー「あー、近江ちゃん?」
隆志が笑って志乃を指差す。
前から少し感づいては居たけど、隆志は…志乃に好意持ってるんじゃないかと思う。

「どうしたの?」
僕が首を突っ込むと、志乃が言った。

「わ!。蓮!……びっくりしたあ。おはよう!!」

「あ、ああ。おはよう」
僕は返す。

「なんだ!蓮かよ〜!。」
「ははは、おまえか!」
と、優希と隆志も笑って 僕の肩をバンバン叩く。

「いっ、痛た!」
あまり痛くはないのだけど、思わず反応してしまう。

「あ、ごめん。」
優希が我に返って、僕に言った。

「もー!びっくりさせないでよね。」
あい子も向かいで呆れたような目で見た。

「いや、僕はびっくりさせた覚えはないんだけど……。」
はははと五人で渇いた笑いを浮かべると、僕は言った。

「で、何の話してたの?」
そう言うと、優希が言った。

「今度の土曜日の休み、俺らで花の瑞公園に行かないかと思って。」
(花の瑞!)

僕が、琴の墓参りに行くときに、通り過ぎる場所だ。

「どうしたの?行けない?あたしは五人で行きたかったなー!」
あい子が言う。

「あ、うん。——……」
(……大丈夫かな。)
家のことがあるからわからない。

「たぶん行けると思う——……けど、聞いてみるね。」
本当は行きたい、けど……。
自分の中では、たぶん無理 の考えが上回っていた。

「よし!じゃあお昼休みに計画練ろうぜ。」

「そうだね〜♪」
隆志がやる気満々で立ち上がり、志乃もうれしそうにうなずいた時、

ガラガラ

と、戸が開く音がした。

「席につけー!!」

「お、やべ!せんせーじゃん!」
優希と隆志は、自分の席へ駆けていく。

「よかったー!五人で行けるね」
と、志乃とあい子が話していた。

∮∮∮∮∮
帰り道だった。

僕の気分は逆に重くなってしまった。

(よかったー!五人で行けるね)

その言葉が頭をよぎる。

五人で行けるのかな。
って思ったら申し訳なくなった。

期待されるぐらいだったら、無理かもって言った方がよかったのかもしれない。

お昼休みに計画は練ったのだが、持ち物から集合時間スケジュールまで、あい子がきれいに決め立てた。

学校帰りに星苑保育園に寄るのだが、陸にまで察されたくない。

(——姉さんに、聞いてみるか…?)
母さんに訊く前にとりあえず姉さんにと思ってケータイを出す手を止めてしまった。


(結局、きっと。)

ダメって答えしか、帰ってこないんだろうなあ。

Re: 記憶の無い少女へ*.。・゜*.。・゜*.。・゜ ( No.9 )
日時: 2014/04/01 15:28
名前: 梅乃 ◆8DJG7S.Zq. (ID: ysgYTWxo)

 第一話 揺れた時刻 to7 報われぬ翼
∮———————————————————∮

ピピピッ

僕のケータイが着信を知らせた。

—————————————————————————————
受信者:姉さん
—————————————————————————————
題名:沙和です。
—————————————————————————————
本文:いつも蓮には面倒かけてるし、たまには遊びに行きなよ!
って言いたいところなんだけど、知ってるかな?
お母さんのケータイに、保育園から電話があったらしいの。たぶん陸のことね。
かけなおしてもつながらない。行く所だろうけど、出来るだけ急げる?
     -END-
—————————————————————————————


「え……?」
もう一度、文を読み返した。

いつも蓮には面倒かけてるし、たまには遊びに行きなよ。
→行きたい。

お母さんのケータイに、保育園から電話があったらしいの。
→今向かう途中の星苑保育園から?

かけなおしてもつながらない
→何かが起きた?

たぶん陸のことね
→災害が起きたわけでもあるまいし陸以外何もしでかさないだろ。
僕は重くて動かない足を、速めて保育園まで向かった。

∮∮∮∮∮

「…す、すみません!!」
息切れして、はあはあと、陸の教室まで階段を駆け上がってくる。

「あ!お兄ちゃん!!」
何時もの先生じゃない人に話しかけられて、思わずコケそうになった。

しかもここは陸の教室じゃないし、陸の担任の円花先生以外、僕のことを知る人は少ないはずだ。誰だろう。

「わたしは、もも組の先生なんだけど、「陸、どうかしたんですか!」
教室の中に、人影はあまり見えない。

陸は、ゆず組だから、もも組の三つ向こうの教室だ。

「……それが……」
深刻そうな顔で、その先生は言った。

「————」
僕は顔をうかがう。

「……陸くん、行方不明になったんですって。」

「——————はあ?……いやあの、冗談はやめてくれませんか。」
保育園なんて、先生の目があるのだから、行方不明なんて尋常じゃない。

「い、いえ冗談じゃないわよ」
その先生の顔をうかがって、僕は本当なのだと思った。

(どういうことだ?)
陸が行く場所なんて検討もつかないし。

「……それって、どういうことなんですか。」
僕が言うと、先生は、落ち着いて。と言うと、教室の中へと僕の肩を押した。

「今、円花先生たちが、必死に捜索しているところよ。」
先生はそう言うと、僕を促した。

「ここ座って、もも組はバスで帰る人が多いから、もう開いているのよ。私は、水野。とりあえず、あなたはお宅へ電話なさい。無理ならメール。」

「そうか。」
僕は、とりあえずお母さんにメールを入れ、姉に電話をすることにした。
思えば、姉にメールの返事をしていないし。

水野先生は、円花先生に連絡するそう。「僕がきた」それを。

———————————————
送信者:此花蓮
———————————————
タイトル:Re:陸
───────────────
添付ファイル:
———————————————
本文:陸が行方不明になった。
いま、円花先生たちが、必死に
捜索してるって。あ、冗談じゃ
ないって!
     -END-
———————————————

「…送信。」
僕は次に姉さんに電話をかけた。


「…もしもし……」
数回にわたるコールが流れた。

「お「もしもし!」

「かけになった電話番号は、電波の届かない場所にあるか、電源が入っていないため、かかりません。」

虚しくトーキー(自動音声ガイダンス)が流れた。
一応メールを入れ、ケータイを閉じた。

「いいわね…。落ち着いて聞きなさいよ。」
僕は頷いた。

「今日は水曜日だったから、給食を食べた後、しばらく外で遊ぶことができたの。」

「それでみんな、そのあとのお昼寝の時に寝ちゃったんだけど、円花先生が体調を崩されたみたいで、緊急で、横のクラスの うめ組の優太先生と、事務の人がちょくちょく見に来ることになった。」
僕は頷いた。

「だけど、うめ組の先生が入った時に、陸くんと、星哉くん、そして、藍花ちゃんが布団に、居なかったの。すぐに優太先生が来て報告してきたわ。円花先生も、今も結構高い熱があるんだけど、捜索してる」
そんな。

保育園でそんなこと有り得ないとしか。。

「これ、———僕、どうすれば良いんですか。」
星哉と藍花、最近よく陸が仲良くしているのか話に出てくる。

「あなたは明日も学校があるから、とりあえず帰りなさい。捜索は、わたしたちに任せて。何かがあったら連絡するわ。わたしも、あなたを待って此処に居たのよ。」
そう言われ、渋々頷くしかなかった。

「——はい。」
(どうすれば…)
∮∮∮∮∮
それでも僕は、先生の目を盗んで保育園の教室や、トイレなど、周りを調べてみる。

皆がほぼ帰ったからなのと、それからあと陸が居なくなったので、教室に先生はほぼいない。

「陸?」
僕は、教室の暗い影を見つけて、覗き込んだ。

「———!」
それは、黒い熊のぬいぐるみだった。
わりと大きく、陸と同じくらいの一抱えの大きさだ。


(なんだ 陸じゃないのか。)

「あーら!あなた陸くんのおにいちゃんねえ。似てるからわかるよ。」

「わっ、園長先生!」
僕は、後ろから話しかけられてぞくっとした。

陸と僕のことは、園長先生は、ちゃんとしっていてくれて、僕が迎えに来ることも、了承してくれている。

「———・・・・す、すみません。すぐ、帰ります」
僕が仰け反った時、園長先生はにっこり笑った。

「陸くん、きっとすぐ見つかるわよ。あなたは早く帰りなさい。ほら、理事長先生に見つかるよ。」

「は、ハイ!ありがとうございます。失礼します」
思わず声を出してバタバタと階段を下りていく。

(ああ、怖かった。)
怒られんのかと思った。


「陸—。兄ちゃんだぞ。居たら返事しろー!!」
僕は、家路を陸を呼びながら歩いた。

「りーくー……居なくても返事しろー」
ケータイに、連絡が来ることはない。


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