ダーク・ファンタジー小説
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- Wild but Safe! 危険だが安全!
- 日時: 2013/07/16 19:15
- 名前: 哩 (ID: aTTiVxvD)
きらめく水底にそれを見つけたとき、何かとても素晴らしいものかと思った。
思わず体が反応して、落ちているものに飛びついてしまう癖が出て、泉に飛び込んだ。
心臓が激しく跳ね動き、酸素を余計に消費していく。
ただ僕はぎゅっと口を結んで酸素がなくなって行くの我慢して深くもぐり続けた。
水深が深くなるにつれて水中に差し込む太陽の光がカーテンのようにひるがえる。
僕がオーロラを知っていたなら、きっとオーロラだと思ったことだろう。
だがあいにく僕にはオーロラなど、どこか遠くのことについての知識は全くない。
あるとしたら床の磨き方や、窓の拭き方、いずれも奴隷として雇われて必要なことしか僕は知らない。
だから必死に深い底にもぐって、拾い上げたそれが何なのか、僕はまだ知らない。
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Wild but Safe! 目次
第一部 『 Wild but Safe 』
前編:>>001-018
中編:>>019-055
後編:>>056-77
Cast:>>78
第二部 『 Lunatic but Stability 』
前編:
中編:
後編:
第三部 『 Separat but Resumpt 』
前編:
中編:
後編:
流血表現有
部の最後にCastが乗ります
- Re: Wild but Safe! 危険だが安全! ( No.23 )
- 日時: 2013/04/29 18:51
- 名前: Aira+ (ID: H6B.1Ttr)
はじめまして
文才あふれる小説ですね… とっても面白いです。
題名のインパクトに引かれてきたのが正解でした^^
私も小説書いているんでよろしければきてください。
続き、とても楽しみにしています。
- Re: Wild but Safe! 危険だが安全! ( No.24 )
- 日時: 2013/04/29 19:08
- 名前: 哩 (ID: oPz3AGB4)
教会の中は空っぽだった。やはり誰もいない。
表の純白とは違い、内部は少し茶色味の入った大理石で出来ており、まっすぐ祭壇がある通路から脇に、ずらずらと石の柱が規則正しく立っている。
その石の柱の中央に、木製の礼拝椅子が三列に分かれて並べられている。
天井は高く、きっとそこから落下したら命はない。
窓から差し込む日差しが入り口のアリストから、一番端の厳かな祭壇までを光の道のようにつないでいる。
「・・・司祭様?いらっしゃるんでしょう?」
アリストは入り口から一歩も足を踏み出さずにそうっと声を出した。
か細い声は外のくぐもった鐘の音には負けるが、教会内部に染み渡るように響いた。
だが、その声に反応して現れる司祭や修道女は誰一人としていない。
鐘の音はまだ止まない。
こつこつと革靴の音を響かせて、アリストは身震いしながら祭壇まで歩く。
光の道をこわごわと進み、祭壇の前につくと膝を折ってひざまずいた。
祈るように両手を組み合わせ、息を呑んで祭壇の上に掲げられている大きな十字架を見上げる。
真っ白の穢れ無き石でできた十字架は重く押し黙ったまま、鐘の音に耳を済ませているようだ。
アリストには目もくれない。助けもくれない。
困ってしまったアリストは、とにかく鐘楼へ向かうことにした。
硬い石の床から立ち上がり、せめて鐘を鳴らす人の姿を見たかった。
鐘は一人でにはならないはずだから。
- Re: Wild but Safe! 危険だが安全! ( No.25 )
- 日時: 2013/04/29 19:07
- 名前: 哩 (ID: oPz3AGB4)
お客様二号目が!!
題名は立ち読みした英会話の本で、「非農薬野菜です!」という意味で使われてたんですよ。
でも英語圏の人からすると題名通り「危険だが安全」なんです。
小説かいてるんですね!是非とも見にいきますw
- Re: Wild but Safe! 危険だが安全! ( No.26 )
- 日時: 2013/04/29 19:40
- 名前: 哩 (ID: oPz3AGB4)
鐘楼はこの教会のてっぺんにある。故に、長い階段をへとへとになるまで登らなくてはいけない。
だが恐怖で疲れなど感じられなくなっていたアリストは鐘楼へと続く長い石造りの階段に足を乗せた。
大丈夫。この階段が終わればきっと人がいる。鐘を鳴らしているはずだ。そうしたらなぜ街がこんな事になっているのか聞こう。
心を落ち着けて一気に階段をかけ上ろうとした瞬間、アリストは恐ろしさに思わず心臓を止めた。
体中の毛が逆立つのを感じる。
なぜ、今まで気づかなかったのだろう。
この鐘のせい?
アリストは心底聞き間違えであってほしいともう一度耳を済ませた。
神聖な鐘の音の合間に、何か、不吉な物音が聞こえてくるのだ。
谷底から異常な生き物が嗚咽を発するような声が遠くから聞こえてくる。
この世のものとは思えない、酷く恐ろしい声だ。
「司祭様・・・司祭様!嫌だ・・・怖い—!」
アリストは緑色の目に涙をたっぷり溜めて、階段を駆け上がった。
教会は神聖な聖域じゃないのか?!
教会の中にいれば安全じゃないのか?!
なぜあんな化け物みたいな声が、教会の中で聞こえるんだ!
がたがた震えながら無我夢中で螺旋を書く階段を登り続けると、ぱっと視界が開けた。
それと同時に鼓膜を揺るがす鐘の音がすぐ傍で聞こえる。
屋上へ出たのだ。
- Re: Wild but Safe! 危険だが安全! ( No.27 )
- 日時: 2013/05/01 01:58
- 名前: 哩 (ID: TwnK.bTA)
この教会の屋上は、とても高い。
やり状に屋根が空に突き出ているが、鐘楼の在る一角には五メートル四方の屋上がある。
その四角い屋上にはふちに柵が取り付けられており、その柵の一つ一つにも十字架が掘られている。
何処もかしこも神聖なのだ。
鐘がうるさい。
アリストは両耳を顔をしかめながらふさぎ、小走りに鐘の音目指して進んだ。
絶対に鐘突きの聖職者がいるはずである。
鐘の下にいて、鐘の下から伸びる大きな太い縄を力いっぱい引っ張って鐘を鳴らしているのである。
「司祭様ー!司祭様ー!!」
アリストは鐘の音に負けないように声を張り上げながら進んでいく。
するとようやく鐘の全体像が見えてきた。
大きな銅色の鐘のすぐ下に、男が身体を揺らしている。
必死で鐘を鳴らしているのだ。
アリストはほっとして、すぐに駆け寄った。
「おじさん!おじさん!!」
どんなに叫んでも男は振りむかず、アリストはその白い服にしがみついてやっと振り向かすことに成功した。
男は驚いたように目を見開き、すぐさま口を開いた。
「こんなところで何やってるんだ。ここは危険だ。すぐに家に帰って家中の戸口に鍵をかけなさい」
いうなり、男は胸元に下がっていたクルスを右手で持ち上げ、左手でアリストのために加護の十字を切った。
そして再び鐘を鳴らそうと紐に手を伸ばす男に、アリストはなおも食い下がった。
コレを聞かずにはいられまい。
「一体どういうことなの?教会は聖域のはずでしょ、なのになんでバケモノの声がするの?おまけに町中は人がいないし、一体何が起こったっていうの?教えてよ、教会はなぜ安全じゃないの!」
アリストが叫ぶように言うと、男は十字を震える手で握りながら言う。
「この教会で今、悪魔に憑かれた男が司祭様と戦っているからだ」
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