ダーク・ファンタジー小説
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- Wild but Safe! 危険だが安全!
- 日時: 2013/07/16 19:15
- 名前: 哩 (ID: aTTiVxvD)
きらめく水底にそれを見つけたとき、何かとても素晴らしいものかと思った。
思わず体が反応して、落ちているものに飛びついてしまう癖が出て、泉に飛び込んだ。
心臓が激しく跳ね動き、酸素を余計に消費していく。
ただ僕はぎゅっと口を結んで酸素がなくなって行くの我慢して深くもぐり続けた。
水深が深くなるにつれて水中に差し込む太陽の光がカーテンのようにひるがえる。
僕がオーロラを知っていたなら、きっとオーロラだと思ったことだろう。
だがあいにく僕にはオーロラなど、どこか遠くのことについての知識は全くない。
あるとしたら床の磨き方や、窓の拭き方、いずれも奴隷として雇われて必要なことしか僕は知らない。
だから必死に深い底にもぐって、拾い上げたそれが何なのか、僕はまだ知らない。
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Wild but Safe! 目次
第一部 『 Wild but Safe 』
前編:>>001-018
中編:>>019-055
後編:>>056-77
Cast:>>78
第二部 『 Lunatic but Stability 』
前編:
中編:
後編:
第三部 『 Separat but Resumpt 』
前編:
中編:
後編:
流血表現有
部の最後にCastが乗ります
- Re: Wild but Safe! 危険だが安全! ( No.43 )
- 日時: 2013/05/11 10:35
- 名前: Ruyy (ID: S8AJBgfb)
お久しぶりです!
これは続きが気になりますね〜!
そしてマクバーレンさん、
何気にアリストのこと心配してる…!
こういう感じの関係(?)大好物です(^ω^)
- Re: Wild but Safe! 危険だが安全! ( No.44 )
- 日時: 2013/05/11 12:07
- 名前: 哩 (ID: 9KPhlV9z)
Ruyyさんこんにちは!
ギルバートが出てくる小説はもう更新しないのですか?
グットラックが意外と好きなんですがw
マクバーレンは一応アリストのこと外見的に気に入ってるから・・・心配?してるのかなぁ
- Re: Wild but Safe! 危険だが安全! ( No.45 )
- 日時: 2013/05/11 12:29
- 名前: 哩 (ID: 9KPhlV9z)
司祭が恐れで震えているのがアリストには感じられた。司祭も怖いのか。
つかまれた腕が司祭の手を通して震える。
目の前にはつながれた腹をすかせた悪魔、アリストをじいっと見つめている。
司祭が片腕で悪魔のつながれた鎖に手を伸ばす。鎖の音が響く。
最初に右手の鎖をはずすと、ねこ科の肉食獣がやるように爪を突きたてたその指をアリストめがけて振り下ろす。
だが司祭がさっと動いてアリストをかばいつつ、聖水をいつもより多めに顔にぶちまけた。
「なっ・・・この司祭が!」
エリオスの声とは思えないほどの低い声で悪魔がうなり声を上げる。
アリストは気絶しそうになったが、自分が上げる悲鳴のおかげで意識を保つことが出来た。
悪魔は自由になった右手の甲で顔中の水分をうんざりしたようにぬぐって司祭を憎しみの瞳でにらむ。
「まて、ちゃんとくれてやるが、まだまて」
司祭は深呼吸すると、腰が抜けて座り込んでしまったアリストを一瞥してから左手の鎖に手を伸ばした。
じゃらりと蛇のように鎖が床に落ちると、悪魔は縛られていた手首をさすって、子供がするように爪をかんだ。
- Re: Wild but Safe! 危険だが安全! ( No.46 )
- 日時: 2013/05/11 13:12
- 名前: 哩 (ID: 9KPhlV9z)
椅子にもっとも縛り付けている腰の金具に手をかけながら、司祭は言った。
アリストはその間中司祭にやめてくれと懇願するように悲鳴を上げているが、司祭は耳を貸さない。
「アリストを召す時に、エリオスの体から出てくれ」
するとエリオスの顔をした悪魔が小首を傾げて目をしばたく。
アリストを眺めてから、司祭を見つめる。
「子ヤギを喰うには体があったほうが便利だが・・・まさか、俺に実体で現れろと?」
言うと司祭は慌てて首を振り否定する。真っ青の顔が色がなくなるほどに蒼白になっている。
「本当の姿などで現れなくて良い!エリオスにしたように、アリストに憑依して喰らってほしいのだ。喰い終わったら次の子供をつれてくる」
「そうすると、かなりグロテスクな状況になるが・・・まぁ変わんないか」
司祭は額の汗をぬぐうと、ポケットの中身を軽く叩いた。
大丈夫まだある。きっと成功する。
失敗しても最後の子供になるまで、チャンスはある。
子供たちには悪いが、こんなエクソシストにでも祓えない悪魔を葬り去るには・・・
「いいだろう。ただ、去るときは実体に戻って去るからな」
悪魔が了承したので、司祭はほっとした。そして腰の留め金を完全にはずすと、床にへたりこんだアリストを立たせた。
そしてアリストの後ろに立ち、背中を押しながら悪魔の方へと押しやった。
「それでは—」
エリオスがふっと意識を失って眠りに落ちたように動かなくなる。
かわりにアリストの泣き叫ぶ声がピタリととまり、その口から一言。
「—戴きます」
声が漏れた。
- Re: Wild but Safe! 危険だが安全! ( No.47 )
- 日時: 2013/05/11 13:52
- 名前: 哩 (ID: 9KPhlV9z)
悲鳴が消えた。
修道女の祈りの下から絶え間なく聞こえていたあの声が、ピタリと止むと、マクバーレンは思わず立ち上がった。
修道女達や聖職者の祈りが一段と大きくなる。
と、背後から肩を叩かれて振り返ると、一人の修道女が声を潜めてささやいた。
「あんたは—」—さっき司祭様に呼ばれて何か取りに行った修道女じゃないか?
言おうとすると、修道女はマクバーレンをさえぎって言う。
「どうぞ祈ってください、悪魔が退治されることを」
「—?さっきは哀れな子ヤギのために祈れと・・・?」
だが修道女はそれ以上何もしゃべらずにふところから一振りの刃物を取り出した。
「えっ」
何処にでもあるようなナイフではない。果物を切る用の小さなものでもない。
修道女が取り出したその刃物は刃渡りが三十センチはある大変危険極まりない包丁で、肉屋にしか置いていないものだ。
コレで刺されるかと思ったら、そうではないらしい。
「これをお持ちください。悪魔を退治するためには必要なものなのです」
一応受け取ると、その修道女は一端後ろを向いて不思議な壺のような容器を持ってきた。
のぞきこむと、透明な液体が入っている。
一人で抱えられる程度のこの壺を、見回してみると全員持っていた。
「聖水の入った神聖な壺でございます。その時が来るまではその刃物を浸して置いてください」
「はぁ・・・」
何をすればいいかわからず、一応刃物を聖水に浸してつぼを抱えて立っていると、扉の向こう側からうなり声が聞こえてきた。
「それが狙いか、お前もろともこの町の連中を食い尽くしてくれる!」
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