ダーク・ファンタジー小説

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バラと猫と女 -あたかも自分は無罪の様に-
日時: 2013/06/22 09:54
名前: 利佐 (ID: LuHX0g2z)
参照: ——まだ、ゆめをみているようです。

 【かのじょはゆめみるさつじんき】

 
 醜い音と共に、誰かの胸から大量の真紅。
 痛みに悲鳴を上げた女は、痛みに顔を歪ませながら悲鳴をやがて断末魔へと変えていく
 毎日嗅いでいる金属のような匂いは、いつもよりも一層濃くなって彼女の鼻に襲い掛かる。

「……やっぱり、嫌い。血の匂い嫌い。」

 手に持っていたナイフにもやっぱり“それ”が付着して、ぽたぽたと倉庫の床に赤い花火を描き出す。嫌悪するような目線を送って、自ら捨てる様に床へと落とし、鼻をつまんだ。
 血の匂いを好く人など、この世に何人いるのだろう。そう言う人が居るとは聞いたことはあるけれど、いったいどういう神経しているんだろうか。きっと、性格が歪んだ狂人なんだろう。と、殺人鬼は思った。

 と、“殺人鬼”は思った。

「……片づけなきゃ。」


 足音一つ立てず、ゆっくりとした足取りで、血塗れの女の許へとその子は歩く。黒革のコートを着て、フードで顔は見えないが、呟いた声は子供のような声だった。そして自らの手で殺めた女を無表情で見降ろしていた。その表情を変えないまま、血のついていないまだ綺麗な床に傅くと、顔の前で手を組んで俯いた。誰にも聞こえない小さな声がこういった。「どうか安らかに……」
 そう、これは祈り。死んでしまったその人が天上で幸せになりますようにと、心のままに願う。神妙に切り替わったその顔は、ふざけているとも思えない。ほとんど表情が見えなくても、真剣に祈っているとわかる。
 祈るくらいならば殺さなければいいものを、彼女にはそれは無理というものだった。

 ——彼女の名は白猫。自らの自由を夢見て何人もの人を殺す、無邪気で可憐な殺人鬼。命令があれば、どんな人材であろうが殺すことが出来る。だって、殺さなければ、彼女の身の自由は約束されないのだから。

 今夜の殺人現場を知っているのは、この殺人鬼と、窓から指す満月のみ。あの月だけが彼女の所業のすべてを知っている。だが、彼女が何を思ってこんなことをしたのかまでは、きっと知らないままなのだろう。
 
 死んだ女の遺体から何かを取り外すと、ナイフを拾って彼女は出て行った。

 

——————————

 駄文投下を申し訳ございません。利佐と言います。
 カキコに来るのは実に2年ぶりでございます。が、知っている方もだいぶいなくなっているようで……。
 久々に小説を書いてみたいと思います。感想や指摘などくれると嬉しいです。

 ※フィクションです。実在する団体、事件等とは一切関係がありません。架空です。


 Cinderella=利佐

Re: バラと猫と女 -あたかも自分は無罪の様に- ( No.1 )
日時: 2013/06/22 09:48
名前: 利佐 (ID: LuHX0g2z)
参照: ——目録です。

【目次】

>>0 挨拶 & 【 かのじょはゆめみるさつじんき 】
>>2 【“あんこくせろん”】
>>3 【しろねことかいぬし】
>>4>>7 【かいぬしからのめいれい いやーなおつかい】
>>10【ひー いず あ ぶらっく きゃっと】
>>13>>17【むかしのゆめ】
>>18【むかしのはなし】
>>22【けいやく と じゃんまりあ】
>>23【がくぶち の なか の ひと】

>>26【※作者がこの小説のキャラについて語っております】

>>30【ひー いず ぺいてぃんぐ】
>>33【 おちゃめ 】
>>36>>41【 かめれおん 】
>>46>>52>>57 【うつくしき さつじんとは】

Re: バラと猫と女 -あたかも自分は無罪の様に- ( No.2 )
日時: 2013/04/27 08:34
名前: 利佐 (ID: LuHX0g2z)
参照: ——愛さえも忘れたわけじゃないです。

 【“あんこくせろん”】

 5月5日日曜日、男が或る新聞の記事を眺めていた。

 某国某都市。3〜5歳程の年齢の幼児を見境なく殺す犯行などで報道やメディアに名の上がっていた或る殺人鬼が、昨日、廃墟となっていた倉庫の中で死体となって見つかった。胸からは紅い血。真赤なソレは滝のように流れ、床に歪な模様を作っていた。目を開けたまま、ショック死した様に固まっていた。彼女の身体には、胸から腹にかけて裂いた様な痕が見つけられるという。殺されたのは何人もの幼児をナイフなどで殺傷していたカティヤ=ベルトリーニ被告。一体彼女に何があったのか——

「——……だって。遺体の血とか遺体の処理とかいろいろやるべきだった気がもするけれど、まあいいんじゃないの。」

 咥えていた煙草を口からだし、プハァッと白い煙を吹いた。
 呑気な調子は変わることなく、硬くなった背中を思いっきり伸ばした後机に突っ伏す。報告の場だというのに緊張感の欠片もない。それが皆の慕ういつもの彼だった。頼り無い雰囲気のある彼だが、今のこの発言は頭の悪い解釈をしない限りは、どう考えても普通の中年(しかし、彼の実年齢は不詳である)の台詞ではなかった。

 未だ彼等の存在は世間に公とはなっていない。なる筈も無かった。
 この間延びした中年率いる組織「暗黒世論」 
 ある条件のそろった人物を徹底的に潰すことを目的とした——実に良く在る犯罪組織だった。

 そう、彼はその組織の長。
 彼の存在は、暗黒世論の人間しか知らない。

「とりあえずお疲れさんでした。お嬢さんの活躍がまた俺たちを救ってくれましたとサ。お疲れさん、もう部屋に戻っていいよ。」

 まるで昔話を終えるような口調をして、目の前に傅いた人殺しに浅く微笑する。彼女は今回の任務を成功させた忠実な部下だ。彼女のことは高く評価しようと思っていた。
 だが彼女は一向に立ち去ろうとせず、ただ頭を下げ続けている。あれ、いったいどうしたんだ? そう思った5秒後、彼は急に思いだす。

「あ、『白猫』って名前だったんだっけ君?」

 頓狂にそう言い、頓狂にまた仰け反って手を叩き、大笑いをする。彼女は名前を呼ばないと返事をしてくれないんだった。それなのに「お嬢さん」なんて他人行儀な呼び方をするだなんて、なんだろう自分。超笑える。——と、こういった調子で彼はくだらない理由で馬鹿笑いをするのだった。笑いのセンスに関しては、社内ではだれよりも評判が悪かった。逆に「面白い」と取ってくれる個性派が少数いるが。「仕事は出来る人だから」と、割り切ってくれる者も居る。どちらも五分五分と言った感じだが。笑い続ける中、か細い声が発される。彼の豪快な笑い声にかき消されてしまったが。僅かな音だった。それに自分が笑っていたのもあったので、笑いすぎて出た涙を手の甲で拭いながら尋ねた。

「え? ごめん、何だってぇ?」

 か細い声がこう言った。

「私の名前は白猫。」

Re: バラと猫と女 -あたかも自分は無罪の様に- ( No.3 )
日時: 2013/04/28 23:06
名前: 利佐 (ID: LuHX0g2z)
参照: --いつの間にか独りになることなんて、良くあることじゃないですか。

 【白猫と飼い主】

 「私の名前は白猫。」

 彼女の薄い唇は、それだけ言うとまた口を閉じ、また黙り込んでしまった。
 何を思ったのか彼は立ち上がると彼女に近寄り、彼女の頭を覆っているフードをぱらりと取った。そのことに彼女は驚いたのか、ビクッと肩を跳ねさせる。そこには彼女の名前の理由を連想させるような色が広がっていた。
 私の名前は白猫——……ああ、そっか。そうだったそうだった。こいつの名前は白猫だ。俺が付けたんじゃないか。少しだけ屈むと、彼女の顎に手をかけて、御互いの目線を合わせるようにあげた。紅玉のような色をした丸くて光の無い目がこちらを向いている。まるで持ち主に見捨てられた人形の様な脆さを感じた。こいつが何人もの人を殺しているのか。何故か彼女に対して薄情な気分になってきて、嘲るような目で笑ってしまった。そのことに対して彼女は怯えたのか、小刻みに震えていた。勇気を出したように「あの……」と、小さな声を発する。「ああ、ごめん。」と微妙な反応をしてぱっと手を離す。

「白猫だっけか。」
「はい、白猫です。こんな頭だから……と、貴男が。」

 肩にかかるくらいまでの、いわゆるショートボブ。だがちゃんと手入れされている様子はなく、バサバサと毛先はいろんな方向を向いている。まるで子供の物乞いだ。だがその顔立ちは可愛らしく、造られたような美しさがあった。その眸の死んだような無気力さが、まだそれに拍車をかけているようでもあった。
 白い髪に赤い眸。彼女は所謂アルビノだった。その白い頭髪に由来して、彼が「白猫」と名付けられたのだった。もちろんのこと、コレは本名ではなく仕事をする時の「コードネーム」の様なものである。本名は彼女も知らなかった。——その名前は過去においてきてしまったのだから。

「……ああ、そうだったね。」

 「なつかしい。」と付け加えて、ふふ、と鼻で笑う。

「それじゃあ、白猫。お前の仕事は今日はもうないから、もう下がってよろしい。」

 彼にそう言われ「失礼します。」と、ひと言言うと、立ち上がって扉の方へ向かう。やっとこの緊張した空気の中から抜け出せる。まあ、彼があんな調子だから半分は和らげるのだが、いつも緊張するから終った時が一番ほっとする。この後、何もなければ私はさっさと眠れるんだ。

「あ、ちょっと待って白猫ォ……。」

 間延びした声が、背中まで響いてきた。嫌な予感が頭をよぎる。

「……はい。」
「12時間後にまたここに来てくれない? ……お前さんに聞きたいことがあるんだよねー。」

 何処から出したのか、彼は懐中時計を片手に持ち空に掲げながら眺めていた。予感が的中したようで。本当ならば「訊きたいこととは?」なんて言ってこの場で済ませてもいいもののそうもいかなかった。ボスの言うことは、ばかげていても絶対に何か意味があるのだから、口答えしたりしないで従わなければならない。だからいつでも白猫はこういう時、従順に“応える”

「……理解いたしました。……我らがジャンマリア。」

 彼は笑う。満足そうに。
 白猫は応える。貴男の為に。


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