ダーク・ファンタジー小説

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Nem・e・sis -ネメシス- [気付いたら1200参照]
日時: 2016/03/19 23:43
名前: NATTU (ID: qQixMnJd)

 こんにちは! NATTUというものです!!

 実は小説書くの初めてでして、まるるるっと初心者だす!

 なので、暖かい目で見てくれたら助かります(汗)

 あと、アドバイスがあったら、遠慮なく言ってください! 助かりますから。

 ではでは行きましょう! 楽しく書けるかな〜?

Re: 絶対能力者ネメシス ( No.37 )
日時: 2015/04/05 22:28
名前: NATTU (ID: 6EsOEaHj)

 
 *  


 刺当と棺田の戦闘から三十分後。ちょうど刺当が棺田に対して二撃目の電撃を放っていた頃。
 ミーニャは、愛染と霧坂の住んでいる基地(一般住宅)で目を覚ました。

 「ん? ・・・あれ?」

 「あ? ミーちゃん起きた? まったく〜、びっくりだよ。怪我して帰ってくるんだもん。」

 「愛染さん・・・。」

 そうして左横で様子を伺っていた愛染さんを左手で少し遠ざけ、ゆっくりと体をベッドから起こす。

 「・・・そうですか。また、あなたの世話に・・・。」

 そうミーニャが言うと、愛染は手を軽く振りながら、軽い微笑を浮かべる。

 「いやいや、もう慣れてるからいいのよ。それにミーちゃんが無事でよかったしね?」

 「・・・ありがとうございます愛染さん。」

 ミーニャは愛染に礼を言うと、ミーニャは辺りを見渡す。

 そう。やっぱり正臣君はいないのね・・・。

 「・・・。」

 「心配? それとも不満?」

 「え、え!?」

 不意に愛染に心の内を見透かされたようなことを言われて赤面してしまうミーニャは、顔を俯かせた。

 「私のせいであんなことになってしまって・・・、油断をしたせいで、あの人にまた! 怖いことをさせてしまった・・・。これじゃあ前と何も変わってませんよ・・・。」

 ミーニャはそう言って片目を瞑った。その後ろから、愛染の暖かい腕が、自分の首周りにまわされる感覚をミーニャは感じる。

 「あなたは変わってるわ・・・。それこそ、あの頃とは別人よ。棺田君だってわかってくれてるはずよ。・・・まぁ、あの子が覚えていたら、の話なのだけれど。
 けど、今回はさすがに危なかったわね。下手したら即死するような状態で攻撃を受けたのに、咄嗟の判断力はさすがね。」

 「正臣君から、聞いたんですか?」

 すると、愛染はコクコクと擬音が付くような可愛らしい動きで首を上下させる。すると、愛染はその後小悪魔のような笑みを浮かべた。

 「な、何ですか?」

 「ふ〜ん? ま・さ・お・み・君、かぁ?」

 「っっっ!!!?」

 さすがに耐え切れなくなったのか、あまり触れてほしくない部分を決して触れられたくない人に触れられたため、赤面爆発状態に入ったミーニャは、愛染の顔に枕を全力で打ちつける。

 バフッ!!

 「んぶっ!?」

 そのまま後ろに倒れてしまう愛染はしかし、笑みを絶やさなかった。

 「よかったじゃな〜い? 距離は縮まったようで?」

 「う、うるさいっっ!!」
 
 そのまま怒声を浴びせて立ち上がると、急いで家を出るために玄関に向かって歩く。

 「あれぇ? もう帰っちゃうの〜?」

 そう言った愛染の方へ振り返るミーニャは、顔を未だに赤くしていた。

 「傷を治してもらってありがとうございました!! それでは!!」

 そしてミーニャは踵を返そうとしたが、

 「ちょっと待ちなさい、ミーニャ?」

 予想外の、さっきまでのふざけた口調が嘘のようなまじめな声を聞き、ミーニャは動きを止める。そして愛染の方へまた振り返る。

 「もう一つ、重要な話があるの。」

 そこには、いつもの愛染里美ではなく、新日本国陸軍上層部第一戦闘部隊暫定第七位、『治癒魔法』の使い手である愛染里美第一科学研究室室長兼科学部門首長がいた。

 「・・・はい。」

 さすがに空気を察したのか、ミーニャは先ほどまでの赤面を急激に覚ましたように隠し、愛染の目を見つめた。

 「さっき、第一位からの連絡があったわ。」

 ミーニャの背中に数滴の冷や汗が流れる。

 「第一位、『羽蝶』ですか?」

 「そうよ。用件は・・・、棺田正臣の試験についての詳細決定と、相手ね。」

 そして冷や汗は、更に勢いを増す。

 「・・・それで?」

 「まず、詳細の方から。日時は四月八日午前零時。だから今もう始まってるわ。」

 その時、ミーニャは驚愕の表情を浮かべ、次に焦りの表情を浮かべた。

 「なっ! 何で!! いくらなんでも急すぎますっ!!」

 すると愛染も苦笑いを浮かべ、両手を挙げる。

 「私もそう言ったけど、決定事項だと言われたわ。」

 「そ、そんな!?」

 「そして、大変なことがもう一つ。」

 すると今度は、愛染の方が先に焦りの表情を浮かべる。それを見たミーニャの鼓動は次第に早くなっていく。

 「戦う相手、つまりは試験監督者なのだけれど、」

 ミーニャの冷や汗は、額からも流れ始めていた。

 「刺当連夜第三位。・・・『静電気操作』よ。」

 「!?」

 ミーニャは、ものすごいスピードで玄関から飛び出すと、そのままがむしゃらに棺田を探す。

 そんな、そんなそんな! よりによって第三位と!? 上は何を考えてるの!! 正臣君がいくらどんな攻撃をかわせると言っても、それには必ず限度というものが存在するはず! なのに・・・!!

 「なんでっ! はぁはぁ! 相性が、悪すぎる!!」

 ミーニャはそのまま走り続けた。周り一帯を全て探そうと言うのか、走りに一切の迷いがなかった。
 ・・・その時、

 バリャアアアアアアアアァァァァッ!!

 「っ!? この音は、・・・あっち!!」

 そのまま踵を返すと、反対側で鳴った雷鳴の方向へ走り出す。全力疾走で酸素が足りなくなってきた頃、ようやく到着したそこには、

 「はぁっ! はぁはぁ。 これは?」

 

////////////////////////////////////////////////////////////////////

 どうもこんばんわNATTUです。

 わたしもそろそろ進級確定したので実家帰りです。よかった〜あはは。

 というわけで、しばらくは書けませんのであしからず。

 今回はミーちん中心でした。意外な過去はまた今度書きますね? さぁ、ひっつーと一体どんな関係なのでしょうか? 必見ですね!!

 ミーちん> どうやったら正臣君を私の手中に・・・。

 ひっつー> ミーニャ・・・、何を言ってるんだ?

////////////////////////////////////////////////////////////////////




 
 

 

 

Re: 絶対能力者ネメシス ( No.38 )
日時: 2015/04/05 22:42
名前: NATTU (ID: 6EsOEaHj)

 そこでは、両手に握っている光る棒二本を左右上下に振り回している刺当がいる。
 刺当はなにやら苦々しい表情を浮かべながら棒を振り続ける。確かに振る先はしっかりと次の状況を的確に読んでいるような迷いのない剣筋だった。が・・・。

 「くっそ!!」

 その剣筋が悉くかわされる。・・・いや、棒の方が刺当の狙っている男をかわしていた。それはまるで柔らかくなったバナナのようにスムーズに、その男の体の体表面付近を滑るようにして曲がっていく。

 「これは・・・、一体? それにあれって・・・。」

 刺当と対峙している男が、雲で隠れていた月明かりで段々と姿が見えてくる。
 見たことのある茶髪、細いワイシャツの袖から出ているこれまた細い両手、そして細い胴体のラインと細い足、そしてワイシャツには、あちらこちらに焦げ後と埃と切り傷がある。眼は垂れ目気味で、顔の輪郭は常人のそれと比較してやや引き締まり気味のその姿は、ミーニャが良く知る人であった。

 「正臣、君?」

 しかし、第三位と対峙しているその当事者は、ミーニャの知っている人間であり、ミーニャの知らない人間でもあった。
 瞳の奥からは何も感じ取れなく、かわそうという意思がまるで見られない。まるで全てをあきらめているような目線は、襲い掛かってくる二本の光る棒ではなく、真っ直ぐと刺当を見つめている。

 あれは、・・・本当に・・・?

 正臣君、と心中で思う間もなく、戦いは次の展開に移る。
 棺田が刺当に攻撃を仕掛け、刺当を圧倒しだすという一方的な展開。見ているだけでも速いと実感できる刺当の剣劇は、その全てが棺田を迂回するようにして曲がっていき、代わりに棺田の拳が、刺当に当たっていく。

 「ングッ!!」

 小さく呻く刺当はしかし、剣筋を変えようとせず、棺田に応戦する。
 しかし棺田は、そんなのはお構いなし、といった表情で前に突っ込む。

 「こ、これは・・・。」

 さすがに汗数滴を垂らして視線が釘付けとなってしまったミーニャは、この状況を異常と考えていた。

 「ありえない・・・。これはもう、身体的に避けるなんて次元じゃない・・・。」

 それはまるで、棺田自身が、相手の行動を避ける等と言ったようなものというより、運命を避けているような次元に、見ている限りだと限りなく近かった。

 「でももしそれが本当の正臣君の力なのだとしたら・・・、これはもう、手には負えないレベルにまでなってきてる・・・。あの『羽蝶』や『頭脳』と同格か、それ以上の能力者・・・。」

 自分の口で言うことで体が反応したのか、鳥肌が急激に立ち始める。それは、『羽蝶』と『頭脳』という、二人の能力を見たものだけが味わえる恐怖なのだろうか、ミーニャは半歩後退った。
 そうこうしている内に、刺当は、棺田の足元でしゃがみ込みながら、アッパーを繰り出そうとしていた。

 「でも、それは・・・。」

 きっとすぐさまかわされ、刺当はカウンターをもろに食らってしまうと思ったのだろう。ミーニャは目を反射的に一瞬瞑ってしまう。
 
 ガァァァァァッ!!

 鈍い音が辺りに撒き散らされる。あまりにも強烈なその音は、少し遠くで見ていたミーニャにもはっきりと聞こえていた。
 そしてミーニャは、恐る恐る目を開け始める。あんな正臣君を見たくはない、という反面、どこまであの子はその才能の片鱗を見せるのかという、ある種の興味に引かれながら。

 「・・・、え?」

 ミーニャの目に映った光景は意外、というより、異常であった。
 アッパーは決まっていた。棺田の顎にしっかりと当たったのか、棺田は、後ろに大きく飛んで行くようにして後退し、その後、地面に仰向けに伏せった。  
  
 「え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?」

 刺当がそんな素っ頓狂な声を出すのと同時、ミーニャは目を見開いていた。信じられない、と言ったような顔をしながら。

 「なん、で・・・。正臣君・・・。」

 なぜかわさなかったの? あんな攻撃、体を後ろに引くだけのやり取りで正臣君なら容易にかわせるはずなのに・・・。

 そんなことを考えていたミーニャは、刺当の視線に早めに気付いた。

 「おい茶乙女! 出て来い・・・。」

 「・・・、なんで気付いてんのよ・・・。」

 渋々と木陰から出るミーニャと刺当の距離は三十メートルちょっと。どう考えても気付ける距離ではないはずだが、刺当は、確実にミーニャの姿を捉えていた。

 「視線があれば気付く。・・・知ってんだろ茶乙女姉。」

 「ほんっとに、つくづく気持ち悪いサブ機能付いてるわねあなたは。」

 「生まれついて持った観察的直感だ。言われても困る。」

 ミーニャはため息をつきながら、仰向けのまま気絶してしまった棺田の元へと走っていく。すると、刺当は少し眉をひそめた。

 「その男を・・・、助けに来たのか?」

 そう言うと刺当は、切り飛ばされたネクタイを緩め、外す。対してミーニャはまじめな顔で即答した。

 「そうよ。正臣君に死なれたら困るもの。試験監督があなたってなったらなおさらよ。」

 刺当はふんと鼻を鳴らすと、そのままその場を足音をまったく消すようにして去ろうとする。

 「刺当連夜!」

 ミーニャは去ろうとした男のフルネームを叫ぶ。刺当はそんなミーニャの方へ振り向く。

 「・・・なんだ?」

 「・・・・・・、正臣君は、棺田正臣は、不合格、なの?」

 そう少し聞きづらそうにして聞き込むミーニャに対し、刺当はまたしてもふんと鼻を鳴らすと、舌打ちをしながら前にまた進みだす。

 「死んでない時点でわかってんだろうが、・・・合格だ。・・・俺の負けだよ・・・。」

 そう言って、刺当は姿を消した。

 
 *


 「で、気絶してたあなたをここまで運んで、寝かせて、私はずっとここにいました。」

 ミーニャの話が終わり、棺田はテーブルの上に肘を乗せながら頷いていた。

 「へぇ、そうか。色々と世話になったんだな俺は。」

 そう言って棺田はミーニャに対して頭を軽く下げる。

 「い、いいのよそんなこと!! あっ! それよりも、あなた、学校があるんでしょう?」

 棺田が時計を確認すると、針は七時四十分を刺していた。

 「やばっ!! 遅刻しちまうっ!? 早く行かないと!!」

 そう言って急いで準備する棺田は、動きを止めた。

 「そういえば、お前はどうすんだ? ミーニャ?」

 「っ!! へっ!?」

 改めて食器を片付けようとしたミーニャは、不意に声をかけられ食器を落としそうになったが、ぎりぎりのところでその状況を回避する。

 「大丈夫か?」

 「だっ、大丈夫!! そ、それで! 何!?」

 顔を少し赤めながら食器を流し台に運ぶミーニャに、棺田は多少冷や汗を流さずにはいられなかったが、とりあえず時間に押され考える余裕がないため、話を続ける。 

 「だからさ、この部屋にいるのか? って話なんだが?」

 「あ、ああ、そのことか・・・。」

 「??」

 半分ほっとして、半分がっかりしたようなミーニャの表情に疑問を浮かべる棺田。はっとしたミーニャは、こほんっと小さな咳払いをして、質問についての解答、というよりも更なる質問をぶつける。

 「この部屋にいて、いいの・・・?」

 「愛染さんの家に行くんなら、それでも構わないが、俺はまだ聞きたいことがあるから、できる限りは、ここに残ってくれれば助かるんだけど?」

 棺田がそう言うと、ミーニャは目を少し輝かせているように見開き、身を乗り出すようにして棺田に近づくと、声を少し荒げるようにして首を勢いよく縦に振る。

 「いい! わかった!! 絶対居る!! あなたが帰ってくるまで絶対!!!」

 あまりにも必死で肯定するミーニャを、棺田は少し引き気味で流しながら、鍵を渡しておくことにした。

 「これ、カードキー?」

 それは、2050年代になった今全ての家で使われている何とも質素な何処にでもある普通の部屋のカードキーだった。恐らくはこの家の鍵であろう。しかし、ミーニャの掌の上に乗ったそれは、ミーニャから見ると暗闇の中で光っている太陽のようなものだった。

 「なくすなよ? あと、出かけるときは手紙くらい残してから行けよ? じゃあ、もう時間ないから行くな? じゃあ。」

 ギィ・・・ガチャンッ! ピィーー!!

 ドアの開閉音とロック音が響いた後も、ミーニャはそのまま立ち尽くしたままだった。
 そして何分経ったのだろうか、ミーニャは不意に両手を自分の頬に思い切り叩く。
  
 ピシャンッッ!!

 「・・・よしっ!」

 景気のいい音を頬を叩いた両手から鳴らし、気合を込めた声を上げると、部屋を見渡し、とりあえずやれることはやっておこうと決め、取り敢えずは洗濯物からまとめだすミーニャだった。

Re: 絶対能力者ネメシス ( No.39 )
日時: 2015/04/05 15:47
名前: NATTU (ID: Kw9QCOws)



第三章 入隊


 道立遷都学園(どうりつせんとがくえん)。北海道の中腹付近にあるそこそこ大きな町にある小中高の一環校。学力はそこそこの進学校であり、やや大きく構えているその学園は、今日も登校日といういやに憂鬱になりそうな日を向かえ、学園の正面玄関からの通学路はいやにざわついている。

 「棺っ田正臣くーーーーん!!」

 通学路の途中、棺田の後ろから、有り余らしてもてあましていたような女性の元気な声が響く。

 「んぁ?」

 だだだぁーっといったような擬音語が似合いそうな走り方をしてくる少女は、そのまま突進でもしそうな勢いで棺田の背中に飛び込もうとする。
 
 「ひゃっ!?」

 しかし、棺田は後ろも見ずにくるっと右足を軸にして右回転に一回転することで突進をかわす。すると素っ頓狂な声を上げた少女は、勢いを完全に流される形となり、何もないところに突っ込み、そのまま床に顔から滑り込んでいく。

 「・・・お、おい・・・。」

 前のめりに伏せった少女に棺田は少し音量を下げて声をかけると、すぐさま起き上がり、棺田の目の前にすくっと立ち上がる。

 「うぉっ!?」

 「やあ正臣! 昨日ぶりー!」

 心配とは裏腹に、少女は少しすりむいた顔を見せ、満面の笑みを浮かべながら挨拶をしてくる。
 彼女の名前は真鍋紫(まなべゆかり)。棺田と同じクラスの一年B組であり、幼稚園から一緒の、所謂幼馴染の一人、というやつである。黒髪で少し長い髪。前髪から覗く目はビー玉のように丸くて綺麗な青色で、笑ったときの顔がまるで太陽のような女の子であると昔から近所では評判であり、笑顔を絶やさずに一日を過ごしているため、入学早々に男子生徒からも一目(色欲満載の目線ではあるが)置かれている少女である。

 「あ、ああ、大丈夫か?」

 挨拶を首を頷くようにして応答し、ポケットからハンカチを取り出した棺田は、先ほど自動販売機で買ってきたミネラルウォーターでハンカチを濡らし、真鍋の顔にある汚れを取る。

 「ま、正臣っ!? いいよぅ別に〜!」

 「馬鹿言うな! 顔に汚れがあっちゃあ女性としてだめでしょが。」

 棺田がそう言うと、真鍋は腰を多少くねらせ、棺田に対して上目遣いをする。

 「わぁ! 正臣やっさし〜! 抱きついてあげよっか?」

 「茶化すな紫。さっさと学校行くぞ?」

 そう言いつつ、真鍋の顔を拭き終わった棺田は、ハンカチをポケットにしまいこみ、登校を開始する。

 「ちょ、待ってよ正臣〜〜!!」

 棺田と後から元気に走ってくる真鍋は、そうして学校の校門前にたどり着く。
 すると、校門前では、腕章をつけた生徒達三人が、通ってくる学生に対して持ち物検査をしていた。

 このご時世何処の学校にも持ち物チェック用に玄関前にセンサぐらいつけているのに。なんで目で確認しようとするかねぇ。

 そう思いながら、腕章を付けた生徒の一人の前に進んでいく。

 「お! 正臣ぃ! おはっす!!」

 進んでいった先の目の前に立っていた腕章をつけた男が棺田に声をかけ、陽気に挨拶をしてきたのを見て、棺田はため息を吐かずには居られなかった。

 「はぁ、こんなことして意味あんのかとお前も思わないか? 羽真。お前、生徒会長に進言してこいよ。生徒会副会長だろお前も?」

 棺田がそう言うと、羽真と言われた男は、肩をすくめて棺田に対して首を傾げる。
 
 「俺だって好きでこんなことをしているわけではないし、第一昨日今日でいきなり生徒会の副会長になった新入生の俺にいきなり恒例行事を改正できるだけの権利が持たされてるわけないだろう。」     

 少しため息交じりに答える男は、羽真半蔵(はまはんぞう)。棺田と真鍋の幼馴染の一人であり、幼稚園の頃には三人でよく遊び、棺田にとっては、男友達の中で一番信頼でき、一番素直に話すことができる親友であり、今に至っても真鍋を含めた三人とよく行動をする男。
 こちらも黒髪だが、短髪にしており、眼鏡をかけた姿は、まるで野球をやっていて、かつ頭がいい某かける系のアニメ映画に主人公の親友として出てきそうな雰囲気を醸し出している。しかし それも当然であり、現にこの学園の中等部から高等部への進級時に学生全員が同時に受ける学力テスト(進級にはあまり関係はないが、国語、数学、理化学、地理学、日本史、世界史、英会話の七教科での合計が210点以下なら退学が確定する)で、羽真は全教科平均97点(特に国語、数学、理化学、地理学、英会話、英語ではすんなりと満点を取っている)でダントツの一位という驚異的な結果をたたき出す。そのせいで進級直後から、学園始まって以来の秀才であり、また新入生総代として生徒会の一員に、それも副会長になってしまった不幸な(本人はまったく望んでいなかったため)青少年である。

 「ま、だろうな〜。ま、がんばれ? で半蔵、荷物の点検だろう?」

 そう言って棺田は手提げの学生鞄を羽真の前に出す。

 「ああ、そうだったな。じゃ、拝見拝見〜。」

 棺田の鞄の中身を確認する羽真は、今回の授業はレクリエーション二日目であるために筆記用具しか入ってなかった棺田の鞄を見ても何も言わず、そのまま鞄のチャックを閉め棺田に返す。

 「ほれ正臣、問題なし。てか新入生は今日もレクリエーションだけだから、筆記用具以外を持ってくるやつのほうが珍しいだろうけどな?」

 「ま、それもそうだな。」

 多少ため息混じりに棺田は羽真から鞄を受け取ると、次の真鍋の点検が終わるまでとりあえずその場で待つことにした。

 「じゃあ紫。お前も見せろ?」

 「へぃ?」

 しかし、真鍋は羽真が手を真鍋の目の前に出したところで、真鍋は奇怪な声を上げた。

 「へぃ? じゃねえよ。お前の番だって紫。」

 頭に疑問符を浮かべるようにして問う羽真は、更に少し前に手を促し、早く鞄をよこせとジェスチャーをする。
 しかし、真鍋は急にあたふたとし始め、そして鞄を自分で抱きかかえる。

 「わ、私は、正臣の言うことに、一理あると思うなぁ?」

 「「はぁ?」」

 いきなり何を言い出すんだこいつは、見たいな顔をして棺田と羽真は揃って声を出す。

 「だって、ねぇ? 入学三日目で早速荷物点検なんて、って言うより、学校にはセンサが付いているのに、何でわざわざこんなことをしているのってことを! 私は問いたいわけであって!!」

 「はいはいわかったわかった。」

 羽真は熱弁している真鍋を軽く流し、真鍋が抱えていた鞄を軽く引っ手繰ると、中の確認に入る。

 「あ、ああああ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」

 真鍋は悲鳴にも近い形で大きな声を上げながら、羽真が点検しようとする自分の鞄を取り返そうと躍起になるが、身長差からだろうか取り返すことはできず、そのまま中を確認される。

 「い〜〜〜〜〜〜や〜〜〜〜〜〜〜っ!!」

 中に入っていたのは、筆記用具ともう一つ、綺麗に梱包された箱が入っていた。

 「これ・・・は? チョコか??」

 羽真は疑問符を更に二つほど浮かべる羽真は、鞄の中から件の箱を取り出す。

 「すっっっぺらんちょふぇ!!?」

 その時、またしても奇怪な声が聞こえたかと思えば、ものすごいスピードで羽真の手にあった箱が消えた。

 「うわっ!?」

 「何だっ!?」   

 そして先ほどまで真鍋が居た場所を二人が驚愕した顔で振り向くと、

 「「・・・・・・、何処行った・・・?」」

 そこは最早誰もいなくなっており、巻き上がる砂埃だけが舞っていた。

 

Re: 絶対能力者ネメシス ( No.40 )
日時: 2015/04/06 15:54
名前: NATTU (ID: .g3iy5Ut)

 *


 「疲れたよぅ。」

 レクリエーションが終わり、午前中から放課後となった遷都学園高等部一年生は、昼休みの段階から玄関で屯していたり、そのまま帰宅する学生がいたり、教室で喋っていたり、はたまた学食で普通に食事をしていたりで、まちまちだった。
 そして真鍋、棺田の二人は、教室で喋っている組の方だった。

 「何でこんなので疲れてんのさ。午前中で終わっただろ?」

 棺田は、机で突っ伏してる真鍋を見てため息をつきながら、窓の外を確認する。
 窓の外では、グラウンドで昼休みの空き時間を使ってサッカーをしている集団がいた。恐らくは三年と二年の集団だろう。わいわいと楽しそうに運動をしている集団を、棺田は細い目を更に細めながら見つめる。

 ・・・ふん、なんで思い出すんだ。

 棺田は、昨日の件を思い出してしまう。昨日だけで三回も戦闘を行っているのだ、常人では考えられずまた、生きていることがまず、不可能なものなのにもかかわらず、全てにおいて生き残り、最後の一つ以外は、自分の手で事象を抹殺しているのだ。普通ならイカれてしまってもおかしくはない。
 現に今も、棺田は心情で昨日のことがフラッシュバックしていた。
 
 「正臣、どうしたの? 難しい顔、って言うよりは、苦しそう、苦々しい顔をしてるけど?」

 「んぁ? そうか?」

 「なんだ正臣、なんか悩み事か?」

 二人に心配され、内心少し照れくさくもなった棺田は、少しの笑顔で返す。
 
 「いや、どうってことないさ。それより半蔵、生徒会は?」

 羽真はそこでハッとした顔で時計を確認する。

 「十二時三十三分!! まずっ!!」

 そこで席を勢い良く立ち上がり、急いで教室を出ようとする羽真は、そこで振り返ると、真鍋の手を取る。

 「お前も来い!!」

 「え!? なんで!!?」

 「お前に連行手配が出ている!! 今朝のあれでな!!」

 「え!? あれまだ続いてるの!!?」

 真鍋は驚愕の顔を浮かべ、力が入らないのか、手を解こうにも羽真に引きずられていく。
 
 「というわけで正臣、今日は悪いが一人で帰ってくれないか? こいつのこともあるから少し遅くなる。」

 「わかった。じゃあな二人とも。」

 「あれ? 私のことは確定? つれてくの確定!?」

 真鍋の声は無念にも霧散し、そのまま生徒会へ羽真によって引きずられていった。

 「・・・帰るか。」


 9


 帰り道、棺田は一匹の猫と出会っていた。
 黒猫は目の前を横切ると不幸が起こると言われているが、棺田はそのようなことを信じてはいなかった。

 「・・・おいで?」

 棺田はそう言ってしゃがみ込んで黒猫に右手を差し伸べると、黒猫は棺田のほうに向かおうとしたが、黒猫はそのまま走って去ってしまった。

 「・・・ふう。行くか・・・。」

 棺田は立ち上がりそのまま再び帰路に着こうとするが、そこで先ほど走り去っていった黒猫が目の前に見える。黒猫は棺田の方を一回振り返り、そのまま曲がり角を曲がっていく。

 「?」

 なんだあの黒猫? まるで、俺があの黒猫に監視されている様な気がする・・・。

 棺田はそう思い、咄嗟に黒猫の後を追おうとするが、何故かその足が止まる。それは地面に足が縫い付けられたように右足が地面から離れなかった。それはまるで、誰かが行ってはいけないと言っているように。

 「帰ろう。ミーニャとの話もあるからな・・・。」

 そうして再び帰路に着く棺田。黒猫が曲がっていった交差点を真っ直ぐ行って学生寮に向かって歩く棺田を、

 「・・・・・・。」

 黒猫は曲がり角で静かにじっと見つめていた・・・。  

 
 10


 「ただいま。」

 五階建て学生寮"金切荘"二階の三号室。そこが棺田の住んでいる今の家であり、唯一の家である。

 「あ、お帰り正臣君。」

 玄関からリビングまでの廊下にある左右合わせて四つある部屋を素通りしリビングのドアを開けると、ミーニャは洗濯物を畳んでいた。

 「あ、ああ。・・・なにしてんだお前?」

 「い、いいじゃない、暇だったんだもんあんたが帰ってくるまで。」

 そう言ってミーニャはそっぽを向き、洗濯物を畳む作業を続ける。しかし今畳んでいるのが最後だったのか、畳む作業が終わったと気付くと、周りをきょろきょろとし、挙動不振になる。

 「? どうした?」

 「ふぇ!? な、何でもないよ!? と、兎に角!! お昼にしない!?」

 「何をそんなに焦ってんだ。まぁいいか。確かに遅くなったな。今作るよ。」

 棺田はそう言うと立ち上がり、キッチンに向かう。

 「えっ!? 私が____」

 「いいよ。この様子じゃあ部屋の掃除もしてたんだろ? 座ってな?」

 棺田は片手で制しながら、几帳面にもキッチンに置いてあったエプロンを手に取り身に着ける。

 「・・・んぁ、うん・・・。」

 ミーニャは素直にもその場に座って俯く。その潔さに少し疑問を感じるものの、棺田は簡単な昼食を作る。

 「冷蔵庫に食材あんまなかったからチャーハンになるけどいいか?」

 「う、うん・・・。」

 そしてミーニャはその後何も言わず、昼食ができるのを俯きながらじっと待っていた。・・・そして数分後。

 「ほらよ、できたぞ。」

 テーブルに出したご飯は、先ほど言った通りにチャーハンであった。卵に葱にウィンナーの細切りを使った家庭的なものであり、そしてその隣には、インスタントのコンソメスープを添えたものだった。

 「う、うんありがとう・・・。頂きます。」

 チャーハンを少量口に含むミーニャを見て微笑を浮かべながら、棺田は天井を見上げる。

 ・・・何を思っているのだろう俺は・・・。自分でも、わからなくなっている。
 昨日あんなことが起こって、挙句電撃を避けられず食らって人生初の痛みを体験した。
 なのに・・・。いや、だから、なのかな?非現実過ぎて未だに思考がストップしてるのか?

 棺田は自分の左腕を右手で抱くように掴む。

 いや、そうじゃない。冷静になっても頭がちゃんと回る。その自覚がある。・・・じゃあ、この感覚はなんだ? いつも通りだ・・・、おかしい。いつも通りなはずないのに。
 ・・・俺は、何を感じてるんだ? てか俺、朝からこればっか考えてる気が、

 「どうしたの正臣君?」  
 
 そこで顔を窺うようにして正面に近づいていたミーニャに遅まきながら棺田は気付いた。

 「ん? ・・・うわぁっ!!?」

 その時棺田は驚愕して、ミーニャの両肩を両手で抱き、押しのける仕草とその場で後ろに下がる仕草を同時に行おうとしたが、咄嗟に体が動かなかったのか、両手をミーニャの両肩に置いたところでそのまま後ろに倒れこんでしまう。
 ・・・ミーニャと共に。
  
 ドッッ!!

 「うわぁ! あっ大丈夫かミーニャ!?」

 半ばミーニャの両肩を抱く状態で状態で後ろに倒れてしまった棺田は、ミーニャの安否(ミーニャの重さで少し限界に近いということは置いておいて、)を確認する。

 「だ、大丈夫よ。ごめ・・・ん。」

 そこでミーニャの反応が止まる。何事かとミーニャの目を覗くと、ある一点に集中する形で凝視しているのがわかる。

 「?」

 棺田はそっとミーニャの見ている視線の先に注目する。
 ミーニャの左手は棺田の胸付近に触れており。
 右手がなんと、棺田の股間部分に置かれていた。

 「ッッッ!!?」

 即座にミーニャを自分のところから引き離そうとする棺田だが、俯いているミーニャの両肩を握っている両手に力を入れても離れる気配がない。

 なんでっ!? なんで離せないんだ!!?

 その時、ミーニャの両肩が震えていることに気が付く。棺田は首を傾げながらミーニャの反応を探る。

 「・・・のよ。」

 「えっ」

 ミーニャの小声に棺田は何を言っているのかわからなかった。何か文句のようなものを言っているのはわかったが、はっきりとはわからない。

 「な、なんだ?」

 そう問いかけた直後、ミーニャは俯いていた顔を瞬間的に上げ、棺田の股間部分に触れていた右手を退け、そのまま拳を作る。

 「あんたは一体、何させてるのよ!!」

 ミーニャは拳を作った右手を思い切り上方向へ振り抜く。アッパーだ。

 「ンッ!?」

 棺田は、反応する前に顔を上に向け、そのまま後ろに倒れることでその攻撃を避ける、はずだったが。

 スッ!!

 ・・・え? 掠っ・・・た?

 そして棺田はそのまま後ろに倒れていきながら、意識を刈り取られていた。

 なん、で・・・?

Re: 絶対能力者ネメシス ( No.41 )
日時: 2015/04/06 15:40
名前: NATTU (ID: .g3iy5Ut)

 
 棺田はこの瞬間初めて、ボクサーが食らうとされる顎を掠めるパンチを受けることになった・・・。

 「・・・てなぁにさらっと終わらせようとしてんだぁぁらっしゃあぁぁぁい!!!」

 しかし、完全に意識を刈り取られることなく、途中で完全に意識を再覚醒させた棺田は、後ろに倒れこむのをミーニャの肩を放した手で支え、そしてそのまま起き上がる体でミーニャを押す形で退かす。

 「うぁっ!」

 そのまま今度はミーニャが後ろに倒れる形になる。棺田はそのまま後ろに少し下がると、起き上がるミーニャを見る。

 「あぶねえよおい!? 何すんの!?」

 「だってあなたが、セクハラをしてくるから、」

 「あなたが勝手に触っただけでしょうミーニャさん!?」

 理不尽だと言わんばかりの勢いで反論する棺田は、ミーニャの説得を試み始めていた。


 
 ・・・三十分後。



 「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。」

 「・・・、ごめん、なさい。」

 棺田の説得が功を奏したのか、ミーニャはやっとのことで自分が招いた事態だと理解する。しかし、棺田のこの怒濤の三十分間は一生忘れることのない押し問答だっただろうことは、棺田の顔に付着する大量の汗で容易に想像がついてしまう。

 「わかってくれたならいいさ・・・、はぁ。」

 「んぅ・・・。」

 そして治まった騒動を片付けるようにまたテーブルにつくと、すっかり冷めてしまったチャーハンとスープを棺田は見つめる。

 「温め直すか。」

 そう言って電子レンジに冷め切ったご飯を入れようとキッチンに赴く。

 「そう言えば正臣君。他に聞きたいこととかない?」

 「え? どういうことだ?」

 レンジの中にご飯を入れ温めスイッチを押しながら、棺田はミーニャの問いかけたことに対しての疑問を投げかける。

 「朝は、あなたが気を失った後の話をしたけど、そのほかに聞きたいことはある?」

 棺田は、考えていた。もし、次に聞けるような時期が来れば、あの刺当連夜のことを、そしてあの実験の真意を聞こうと思っていた。あれがただ単に能力の測定をするだけのために行われたことではないことはわかっていた。

 「ミーニャ、あの騒動は・・・」

 そのとき、棺田は思い出した。朝での会話と、刺当との応答で出てきていた一単語。『合格』の二文字。そして同時に連想される総合"試験"という言葉、その意味を。

 「まさかお前、いやお前ら。俺を・・・?」

 ミーニャは少し目を開いていた。驚いている様子だったがしかし、それもすぐに戻り、そして真っ直ぐと棺田を見つめる。

 「・・・うん、そう。私、いや私たちは、」

 「・・・。」

 そこで棺田は確信する。自分の思っていることが、まったくもって間違っていないことに。そしてそれは、棺田にこれから先怒濤の時間を過ごさせ、縛り付ける出来事となる。

 「あなたを、私たちの新日本国陸軍上層部第一戦闘部隊に入隊させる。あなたには、それだけの能力があるのだから。」

 棺田はそのままため息をついた。


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