ダーク・ファンタジー小説

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Nem・e・sis -ネメシス- [気付いたら1200参照]
日時: 2016/03/19 23:43
名前: NATTU (ID: qQixMnJd)

 こんにちは! NATTUというものです!!

 実は小説書くの初めてでして、まるるるっと初心者だす!

 なので、暖かい目で見てくれたら助かります(汗)

 あと、アドバイスがあったら、遠慮なく言ってください! 助かりますから。

 ではでは行きましょう! 楽しく書けるかな〜?

Re: Nem・e・sis -ネメシス- [300参照感謝!] ( No.52 )
日時: 2015/04/11 00:41
名前: NATTU (ID: Gd7LnyXy)


 よっし! 今日はいっぱい書くぞぉ!!

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  13.

 
 「・・・、そうか。じゃあ、俺が部隊に入らなければミーニャが略式裁判かけられて死刑になりかねないと。」

 「正確にはなりかねないじゃなくて、まず間違いなく決定。」

 最早夜になろうとする時間帯。棺田は、ミーニャの環境について軽く説明を受けていた。それは棺田の想像を斜め上の方向に凌駕するものだった。

 「くっそ! んだよそれっ!! 半ば強制的に行かなきゃいけねぇってことかよふざけやがって!!」

 「・・・・・・え?」

 ミーニャはキョトンとしていた。まさか棺田がそんなことを言ってくるとは思わなかったのだ。ミーニャは少し不自然そうに棺田を見つめる。

 「なんで?」

 「は?」

 「だって、おかしいでしょ? あなたは・・・、あなたは昨日出会ったばかりのこの私を。普通なら放っておくよ。だって自分の身の選択だよ? 普通なら不利益しか生まないこの命令、即答で否定するものでしょう? なのに・・・。」

 そこまで言って、棺田からため息が聞こえる。それも深い方のため息だった。そして真顔で答える。

 「はあぁ。馬鹿かお前! 昨日出会ったばかりだからだろうがよっ!!」

 ミーニャに電流のような衝撃が上から下に走っていく。その答えは、少なくともミーニャが待っていた答えだった。

 「知り合っちまった。しかも下の名前で呼び合う中になってんだ。これはもう・・・、赤の他人なんかじゃねぇ。」

 軽く頬を指で掻きながらそっぽを向いて呟く棺田の姿に、ミーニャは息を呑む。顔を赤くしたのは自分が思ったことに対して照れを隠すための衝動的な発動ではなく、正真正銘、その次の一言を素直に受け入れるための自発的な確信行為だった。

 「・・・正臣君・・・。」

 「俺達は・・・、友達の関係になったんだよっ!!」

 「ですよねぇっ!! そんなこったろうと思いましたよ正臣のばかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 そしてミーニャの左手から平手打ちが飛んでくる。勢いの乗ったその平手打ちは、棺田の顔に吸い込まれるように迫ってくる。

 「うわぁっ!!?」

 棺田は後ろに下がり回避しようとした。しかし、何故か棺田は瞬間的に回避しようとした体をストップさせ、向かってくる平手打ちを右手で受け止めようとする。
 そしてそれが幸いし、何とか回避しようとした後の二度目の大惨事(だっただろう)を回避しつつ、攻撃を止めることに成功させる。

 「ッッッ!!」

 「落ち着け、なんで怒ってんだよ?」

 「〜〜〜〜ッ!! 知らないっ!!」

 「知らないってお前なぁ。」

 そう言って棺田はミーニャの顔を見つめ、話を続けた。

 「友人が自分のせいで殺されそうだってのに、はいそうですかって捨てれるわけねぇだろがい。」

 「正臣・・・。」

 ミーニャは目を見開き、そして目じりに涙を浮かべる。

 「あなたって人は・・・。いいの? あなたの生活が急激に変わるのよ? 今までのような日常になんて戻れない!! 自分の身が五体満足でいられないことだって起こるかもしれないのよ!? そして、恐らくもう二度と、日常には戻れないのよ!? あなたはそれでいいのっ!!? もっとよく考えてよっっ!!」

 ミーニャはいつの間にか強く瞑っていた目を開き、棺田の顔を見上げる。しかしそこまで説得されても、棺田の表情は笑顔だった。

 「これは、もう決めたことだ。俺の決断だよ。文句は言わせない。それにな、俺にとってどんなところも最早日常なんかじゃない。こんな能力を持っている時点でもう日常なんて二文字、俺の中にはないさ。
 ・・・実のところ、この家に帰る前まで、答えはNOだったんだ。でもよ、お前の状態を知っちまった。少なくとも友達になったお前を犠牲にしてまで生きていこうとは全く思わない!」

 ッッッ!!

 ミーニャは黙ったまま顔を下に向ける。最早涙を隠しきれなくなったためか、赤面が全体に広がったための隠蔽行為か、定かではないが、少なくとも驚きすぎて、呆れが上ってきたのは、半月型の口元で十分わかることができた。

 「それにな、ミーニャ。」

 そして棺田はミーニャの左手を放し、その握っていた右手をそのまま優しくミーニャの頭の上にポンッと置く。

 「何も変わらない。・・・変わらないよ、俺の生活はな。変わるとしたらそうだな・・・、避ける相手がトラックや人から、化け物の攻撃に変わっただけのことだ。」

 そして棺田はミーニャの頭の上から手を退けると、そのまま玄関に歩く。

 「さぁ行こうぜ? 案内してくれんだろ? だったらさっさと済ませようぜ。」

 もう・・・、この人は、本当に・・・。

 ミーニャは顔を上げて、棺田の玄関に向かう後姿を見つめる。

 「変わって、ないよ・・・、正臣。」

 「ん? なんか言ったか?」

 そしてミーニャは棺田の後ろ姿を追うことにした。昔から、何一つ変わることなく、ずっと遠くから見ていた、今目の前にある少し標準より細く見える、でもこの上なく頼りになる背中を。

 「なんでもない! 今行く正臣君!!」

Re: Nem・e・sis -ネメシス- [300参照感謝!] ( No.53 )
日時: 2015/04/11 01:19
名前: NATTU (ID: JD.ktzjt)



 *


 棺田とミーニャは、またしても愛染霧坂宅に来ていた。

 「・・・、なんで?」

 「いや、連れてくるように言われてたからとしかいい様がないよ、はは。」

 苦笑いを浮かべるミーニャは、そのまま家に入り、棺田もそれに同行する。しかし、玄関を開けた辺りで、棺田の体が反応し、玄関の袖あたりに定位置を置く。

 ドンッッッ!!

 「オゴフッ!!!?」

 すると不思議なことに、扉が途中から強引に開き、中から物体が飛来。そのままミーニャに突撃する形で外に投げ出される。

 「あちゃあ〜。」

 完全に傍観を決め込んでいる棺田は、ミーニャに対し心中で合掌しつつ、顛末を見届けることに勤める。

 「ミ〜〜〜〜ちゃ〜〜〜〜〜んっ!! あぁ、ミーちゃんの匂い!! しゅごい!! しゅごしゅぎる!!! ふんっふんっ!!」

 「きゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーー!!! 止めてください変態!!」

 しかし愛染は決してミーニャから離れようとせず、芳香の吸引に勤める。抱きつく力が半端ではないのか、ミーニャは剥がす事ができずヤキモキしていた。

 「変態上等ッ!! ミーちゃんだけの変態なの私は!! だから私は、私はぁぁ・・・、んはああぁぁぁ!!」

 「きゃああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 しかし、何と言うか、こう・・・。

 棺田は少しその光景を見ないように勤めていた。
 青色のフードを着ていながら黒ミニスカートに黒白のストライプニーソを履き、ミーニャに跨ぐ様にがっちりとしがみついているその姿は、棺田のポジションから見てしまうと下着が見えかねないほどの際どいポージングだった。

 「・・・、はぁ。」

 先に入ろう・・・。

 棺田はそう思うと、玄関に入り、そのまま家の中に上がりこむ。そのまま左に曲がり、リビングに着くと、紫色のカーディガンと長いキャロットを着た霧坂がコーヒーをソファに座って啜っていた。

 「・・・来たね?」

 「・・・はい。」

 霧坂は笑顔を浮かべると、少しずつ笑みを薄めていき、そして棺田にたずねた。

 「覚悟は、できたのね?」

 「・・・、まぁ、できたと言うよりは、無理矢理した、という感じでしょうか?」

 「そう・・・。」

 そして霧坂はコーヒーをテーブルに置く。そして霧坂は、棺田の胴体にしがみつき、そのまま顔を胴体に埋める。

 「なっっ!?」

 「なら、今から婚姻届を出しましょう!!」

 「どこからがその話なんですかっ!!?」

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 もう眠い。今日はこの辺にしときますか・・・。長く書けんかったな、ははは。

 

Re: Nem・e・sis -ネメシス- [300参照感謝!] ( No.54 )
日時: 2015/04/20 10:04
名前: NATTU (ID: QpYqoTPR)

 
 「え!? だめ?」

 「駄目に決まってるでしょう!?」

 棺田はがっしりと胴体にしがみつく霧坂をはがす為に、限界まで力を出して霧坂の胴体を押しやる。

 「きゃっ!! もう・・・、大胆ね? ぽっ。」

 「ぽっじゃないですよ、顔赤らめて何言ってんですか!!」

 「そうだよあやちゃん? 棺田君も困ってるじゃない?」

 そこでミーニャとの戯れを終了したのか、愛染は満面の笑みで棺田の後ろに立っていた。

 「あんたに言われたくないわよ愛染さん。ミーニャちゃんを見てみなさいよ。顔真っ赤よ?」

 そう言う霧坂の目線に従って棺田は後ろに立っている愛染の隣に立っているミーニャに視線を寄せる。ミーニャは顔を赤面で隠すようにうつぶせており、足を少しもじもじさせていた。

 「・・・、ごちそうさまでした。」

 「ここで撃ち抜いてもいんだよ? 正臣君・・・。」

 あ、調子乗りすぎたか?

 笑いながら言っているところを見ると、中々本気のように見えるミーニャの反応に、棺田は苦笑いを浮かべるしかなかった。

 「そういえば愛染さん、今日は犬耳付けてないんですね? 飽きましたか?」

 「そういう日もある! それだけよ。」

 「否定はしないんですね・・・。」

 この人は、よくわからん・・・。

 棺田は咳払いをし、話題を元に戻す。

 「それで、これからどうするんです?」

 愛染はニコニコと表情を崩さず、ミーニャはやはり納得いかないという顔をし、霧坂は無表情を演じる。三種三様の表現が空気に流れている中、早速口を開いたのは愛染だった。

 「前に話したでしょ? ゲートを開けるのよ〜? もう審査はしたからね〜。主に刺ちゃんが〜。」

 愛染はそう言うと、リビングの奥側にある扉のドアノブに手をかけ、そのままドアを開け放つ。
 そこには・・・、

 「・・・・・・、ん? なにこれ?」

 棺田は困惑する。ドアを開けても、その奥は暗闇に包まれていた。いや、夜だから当然かもしれないが、少なくともリビングの電気がついているから、その部屋に何の家具があるかぐらいは目に入るはず。しかしその部屋は、

 「暗っ!!」

 目の前が真っ黒の闇に染まっていた。光をも飲み込むその暗闇は、この世に存在しているところとは思えないような異様な空気を放っていた。

 「ほら、行くよ? あやちゃん、留守番よろしくね?」

 「はいはい、わかったよ。遅くならないでよ? 私先に寝てるからね?」

 「わかった! それじゃあ行こうか!」

 えっ!? 展開早くない!?

 「一週間ぶりかな、慣れないなぁやっぱ。」

 ミーニャさんまで一般常識のように言ってるけど!?

 棺田が更に深い困惑を抱えている中、ささっと愛染は飛んでいくようにして暗闇に飛び込んでいく。

 「ちょっ!?」

 そのまま愛染の姿が見えなくなり、音も何も聞こえなくなる。

 ん? 床に穴でも空いてんのか? 床に足がつく音が聞こえないんだけど!? 

 棺田は暗闇の底に対して疑問と懸念のまなざしを送る。すると不意に背中に手が当たる感触を感じた。

 「大丈夫大丈夫。飛び降りるだけ、死にはしないから。」

 ミーニャは少しいたずらな笑みをしながら、棺田の背中を軽く押し込む。

 「ちょっ! ちょっと待て!! 死にはしないって、少なくとも怪我はするってことなのか!?」

 「・・・・・・・・・。ま、どーんと行こっ!」

 何今の間!? こえぇよ!!

 そしてミーニャは棺田の背中を少し強めに押して、棺田は体にかかる重力のベクトルが下に向かっていくのを体で感じ取る。

 「あ! ああああばかあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・。」

 「・・・・・・・・・、よし。」

 ミーニャは棺田がしっかりと落ちていったことを声の大きさから判断し首を縦に振ると、

 「よっと。」

 ミーニャもまた、暗闇の中に飛び込んでいった。

 

 *



 「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 高速で流れる風景は何も見えず常に暗いまま。最早棺田は落ちているのか浮いているのかわからなくなっていた。

 「こ、これ!! どうなるの!! ええええええ!!!??」

 しかし終わりはすぐに見える。下にはネットが敷いてあり、斜めに少し傾いていた。

 「そ、そうか!! あれでどうにかなるのか!! なんだよ、じゃあ安心だな。」

 しかし、そんな安心とは裏腹に、ネットに叩きつけられた棺田は、斜めにネットが傾いていたため、そのまま斜めにバウンドするように斜方投射される。そしてそのまま壁に衝突する。

 バンッッ!!!

 「ンブッ!!!?」

 そのまま下に下がっていき、尻餅をつくように地面に着く。

 「痛ッ!! いてぇ!!!? なんだあれ!! なんでネット斜めに配置してんの!? 無駄じゃん!!!」

 そう叫びながら棺田はネットを見上げてあることに気付いた。

 「あれ? 真っ暗なのにネットは見える?」

 その時、上から白いひらひらとした物体が落下してくる。もちろん正体も知っており、ネットがあるから問題はないのだが、このままだと白いひらひらは棺田と同じ運命を辿ってしまうことになる。

 「ミーニャっ!!」

 しかしそんな心配も無用で、

 「ふんっ」

 ミーニャは少し踏ん張る声を出しネットに落ちる。そのまま棺田と同様に斜めに飛んでいくが、壁に激突することはなく、その壁に両足をつけようと体を捻り、壁に両足をつけると、そのまま勢いを殺したように垂直に床に降りてくる。
 スタンッという軽快な音を着地時に鳴らし、棺田の顔を見て申し訳なさそうに目をそらす。

 「こうしないと壁に激突するんだよね。」

 「先に言えよおい!! いや、言われても俺にはあんな芸当できねぇけどよ!!」

 「ほらあんたら、何馬鹿やってんの〜? 行くよ〜〜。」

 いつの間にか後ろにいた愛染(待っていたようだが棺田はいたのに気付かなかった)がそう催促を促す。そのまま愛染は暗闇の中から見えないはずのドアノブを握る。

 「え? どっから出したんですか!?」

 「ん? 慣れだよ慣れ。」

 それで片つくんだな・・・こわ。

 そして愛染はドアノブを回す。

////////////////////////////////////////////////////////////////////

 どもどもNATTUです。

 お久しぶりですね!! ちょっと忙しかったのでおくれましたよ〜。

 やっと基本情報技術者終わったぁぁ!! これからは楽しいライフが俺を待ってるぜ!!!

 というわけで今日はこの辺で。毎回思うのですが、こんな駄作をみていただき、ほんとにありがとうございますっ/(o^。^o)/ あ、なきそ。

 挿絵ほんとに入れたい。書きたいけどどうしよう。ホームページでも作ってそこに貼り付けてこっかな・・・(=。=|||)

Re: Nem・e・sis -ネメシス- [300参照感謝!] ( No.55 )
日時: 2015/04/20 11:24
名前: NATTU (ID: QpYqoTPR)


 諸事情で今日は学校行ってません、あは(^_^;

 と言うわけで、時間ないので、今日はやりたかったあらすじの方を書きたいと思います。



////////////////////////////////////////////////////////////////////

 2050年代初頭。棺田正臣の戦いは恐らくこの時から始まっていた。

 たとえ何者が襲いかかろうともそれに恐れることもなく。

 たとえどのようなことが起こったとしても、決して臆することなく。

 たとえ自分の身がどうなろうとも大切な人を守ろうとする行動。

 棺田正臣という少年の物語は、茶乙女ミーニャという少女との出会いから針を回し始める。とても濃厚な三年間の物語で棺田の全ての話がついてしまう程の、壮絶な物語。

 ネメシス09という薬物と棺田の接点、棺田の能力、自然発生型と自己誘発型の能力者、全てがそして、棺田に答えを求めてくるとき、棺田はどういう行動を起こしてくるのか。

 そして棺田もまた、自分の秘密を知っていくことになる・・・。

 この物語は、棺田の高校での異常であるが正常であった三年間の時間を描く、異能力バトルファンタジー。

 

///////////////////////////////////////////////////////////////////

 ふう、満足満足〜(o^。^o) ザナルカンドにて、いい曲だね〜、私、FF10 KHは大好きですっっ!!!

 では今日はこの辺にしましょうか。なんか変なのかいちゃったなぁ(^_^;

Re: Nem・e・sis -ネメシス- [300参照感謝!] ( No.56 )
日時: 2015/04/29 20:12
名前: NATTU (ID: 6EsOEaHj)

 14.

 そこは白い部屋だった。
 そこそこ広いその部屋は、丸い形状の部屋。周りにはドアが十二個等間隔に配置されてる。1から12まであるその部屋は、一個一個でドアのデザインが異なっていた。例えば、1と書いてあるドアには蝶のシルエットが。2と書いてあるドアには脳のシルエットが刻まれているなど、さまざまである。
 そして中央には、テーブルとソファが三つ設置されており、女の人一人と男の人二人座っていた。

 「・・・ん? 何?」

 棺田は混乱する。まさかあんな目の前まで真っ暗になる部屋から、まさかこんな清潔感がある色をした部屋に出るとは、さすがに意味がわからなかったみたいである。

 「お、ミーニャじゃん! 一週間ぶり〜!」

 するとソファに座っていた女の子が、ソファから身を乗り出し、ミーニャにしがみつこうとして飛ぶ。放物線に飛んでくることなく、そのまま魚雷のように一直線に飛んできたその女の子の姿に、棺田は先ほどの愛染を彷彿とさせた。

 「うぇ!!?」

 そのまま腹で直接受け止めた形も、やはり愛染のときの一件と殆ど同じであったことを確認した棺田は、愛染のときと同じような溜息をつき、周りを見回す。

 白い、部屋・・・。なんか妙に落ち着かないなぁ。

 棺田がそのまま一回り部屋を観察すると、不意に目の前のソファに座っていた男と目が合う。
 その男は黒髪でスーツ姿、金色の目をしており、20代前半のような外見をしていた。

 「さ、刺当連夜!!?」

 「ちっ、うっせぇな。騒ぐんじゃねぇよ。」

 声を裏返した棺田にそう言うと、刺当はソファから立ち上がり、棺田に向かって歩いてくる。

 「え? え!?」

 何!? ここでまた戦うの!? もう勘弁してくれよ!!

 棺田は刺当を真正面に見ながら、体を半歩下げた。額から流れる冷や汗は、昨日の一件を思い出してのことだろうか。
 そしていよいよ刺当が棺田の目の前にやってくると、刺当は棺田に握ったままの右手を差し出す。

 「・・・は?」

 棺田はぽかんとした表情で刺当の右手を見ると、刺当の握っていた右手からバームクーヘンが出てくる。

 「・・・はぁ??」

 さすがに困惑が最高潮まできた棺田は、意味がわからないと言ったような声をあげる。すると刺当は強引に棺田の左手にバームクーヘンが一つ入った袋をねじ込んだ。

 「やる。俺はこれ食えねぇから。」

 そして刺当は何事もなかったかのようにソファに戻ると、テーブルに置いてあったティーカップを持ち、中に入っている紅茶を啜る。

 な、なんだったんだ??

 頭の上に?マークを三つほど浮かべる棺田は、腕を組む。
 するとさっきまでミーニャに突っ込んでいた魚雷娘が、いつの間にか横に並んでいた。

 「あれがサッシーなりの挨拶よ。ああやってバームクーヘンあげるの、ああ見えて間食家なの。本当に食べれないのよ? 彼。」

 「うわっ!!」

 驚いた棺田は、女性が立っている方向と真逆の方向に後退る。色々とわけがわからなくなり焦っている棺田には、これ以上ないほどの不意打ちだった。
 藍色のロングヘアで前髪をそろえて切ってあり、流れるように下に伸びる後ろ髪は光を帯びるように綺麗だった。瞳は黒く、美人、というよりは可愛いという部類に入る顔立ちで背は棺田と同じくらい。スタイルは良いほうで、ロングスカートから少し映る細足が白く伸び、少し大きめの胸を携えていた。

 「そんなに驚くことないじゃない。私だってびっくりしちゃう。」

 ニヤニヤと笑ってるところを見ると、絶対嘘だよこの人!!

 棺田は不審者を見るような目つきに変えると、流石に困った顔つきになる女性。少し挙動を慌てさせながら女性はしかし、笑みを絶やそうとはしなかった。

 「き、君が棺田君でしょ?」

 「え?」

 いきなり自分の名前を言われ驚いてしまう棺田は、先ほど入ってきたドアの近くにいる愛染の顔を見る。

 「君のことは一応、部隊の全員に連絡済みだよ。だから君の事は、全員に根掘り葉掘り筒抜けだ。」

 え!? どこまで喋ったのこの人!! てか根掘り葉掘りってどこからどこまで!? てかこの人出会って数日の人のことどこまで知ってんの!?

 唖然としつつ愛染を見る棺田に、愛染はウィンクで答える。

 !! この人! 怖ぇ!!

 ウィンクの意味を悟った棺田は、顔に線を引いたような恐怖を味わう。しかし、棺田は決してネガティブ思考の持ち主ではない。

 そ、そうだ。きっと表面上だけ。うんそうだ。そういうことにする。

 棺田はこの後を考えないように、置き去りにした話題を引き戻す。

 「は、はい。そうですよ?」

 「そう・・・、君が・・・。」

 女性はそう言うと、棺田の周りを一周して、棺田の全体をジロジロと嘗め回すように見つめる。

 「な、なんですか?」

 女性は棺田の正面に戻ると、表情を明るくして困り顔の棺田を見る。

 「案外、普通ね!!」

 「はぁ!?」

 「体の線は少し細いけど、変わってるのはそれぐらい。あ、あと目つき悪いとこ?」

 「・・・・・・。」

 失礼だなこの人・・・。

 顔を引きつる棺田は、少しの苛立ちと困惑を抱える。何がしたいのか見えてこない棺田は、黙って聞いてるしかできなかった。

 「とてもサッシーの試験に受かるような子とは思えないんだけど・・・? まぁいいや!! これからよろしく! 私、舐越鍵葉(なめこしかぎは)ね!」

 そしていきなり自己紹介、か。

 いよいよ棺田は考えるのをやめようとしていた。考えたら負けだと考えたのだろうか、体は半ば脱力していた。

 「で、サッシーと座っているそこの人は渡辺・メトロノクス・瀬別(わたなべ・めとろのくす・せべつ)。どこかの国のハーフって言ってたけど、どこだっけせっちゃん。ブラジルだっけ?」

 「フランスだ馬鹿たれ! と言っても殆ど日本寄りだから、普通に渡辺瀬別(わたなべせべつ)でいいですよ。」

 渡辺瀬別と名乗った男はソファから立ち上がると、笑みを浮かべて棺田を見やる。肌の色が白く、鼻が少し高いところは両親の血を少し受け継いだのだろうか。少し短く切った髪は黒く、毛先に少し白色が混ざる。黒いTシャツを着て、青いジーパンを穿いているが、驚くべきはその身長の高さ。二メートルはありそうな長い身長。そして体のラインは太く、筋肉が見えていた。まるでインストラクターを彷彿とさせるその体は、どこかのアスリートかと思わせるものであった。

 「こ、こちらこそ。よ、よろしくお願いします。」

 「あぁ、敬語はやめてください。俺まだ十二歳ですし。」

 「十二歳!!!?」

 年齢詐称だよこんなの!! ぜってぇ見えねぇよ!!

 「そ、そっか。よ、よろしくね。」

 「はいっ!!」

 元気で屈託のない声と笑顔で返事をした渡辺は、真っ直ぐ入り口のドアの方に向かっていき、ドアを開ける。

 「ではでは、今日はこの辺で失礼させてもらいます! みなさん、いい夜をです!」

 バタンッ!

 渡辺は強めにドアを閉め、その後その部屋は少しの静寂に包まれた。

 な、なんだったんだあの子は・・・。

 棺田は少し引き気味にドアを見つめていたが、すぐに意識を違うところに持っていかれる。
 十二個ある内の一つのドアが開いたのだ。そこのナンバープレートには、

 「ん? にぎやかだと思ってきてみたら・・・、君が、棺田正臣君かい?」

 一号室、と記されていた。

 「あ、はい。そうですけど?」

 その男性はすごく大きかった。それは最早、先ほどの渡辺とは比べ物にならないほどの大きさだった。身長は恐らく二メートル後半はありそうな(この時代でのギネス世界記録は二メートル九十三センチ)大きさ。しかし体の線は細く、まるで爪楊枝を連想させるかのようなほど、身長と体のラインが不釣合い。目は垂れ目。スポーツ刈りの髪型で緑髪。しかし、何事にもやる気を示さなさそうな顔からでる言葉とは思えないことを言っているのも、また不釣合いだった。


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