ダーク・ファンタジー小説

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逆十字の聖魔戦争
日時: 2017/04/30 01:07
名前: そーれんか (ID: qESkNdgF)

吸血鬼、人間の血を飲む怪物と呼ばれる生き物。耳が尖っており、吸血鬼かどうかはすぐ見分けられるが人間はごくまれに耳が尖っているものを産む。その人間は迫害され、捨てられ、最終的に魔術師になるケースが多い。

魔術師、元人間や吸血鬼など、様々な種族が魔力をもち不死身になった生き物をまとめてそう呼ぶ。元人間、と言うのは魔力をもった際に人間の記憶を忘れる為。吸血鬼はそうならない。他に精霊族や人狼族など色々な種族がいる。

聖戦士、神と人間によってつくられた通常の人間より遥かに強力な術を手に入れた吸血鬼と魔術師を消す為だけに存在する部隊。


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初めまして!そーれんかです。去年から妄想してたやつを小説書く練習がてら書こうかなと思ってます。語彙力のない中学生なので至らぬ点が多いだろうとは思いますがアドバイス等宜しくお願いします_(:3」∠)_
追記
宗教に対する批判的なセリフがありますが、決して実在する宗教を批判する意図で作った訳ではありません。そこはご理解頂けると幸いです。グロテスクな所も少なからず登場します。苦手な方はお控え下さいm(*_ _)m
登場人物を移動させました。そして題名もはっきり決まったので変更しましたヾ(:3ヾ∠)_

登場人物
>>66 異端側
>>67 聖戦士側

Re: 紅の吸血鬼と黒の魔術師と白の聖戦士 ( No.72 )
日時: 2017/05/08 01:26
名前: そーれんか (ID: qESkNdgF)

とうとう500hit!ありがとうございます(*・ω・)*_ _)コメアド大募集してるので気軽に書き込んでくれると嬉しいですヾ(*‘ω‘ )ノ
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天国と地獄の狭間にある世界、獄界。そこで最高審判者閻魔によって天国か地獄の判決を下される。とコハルの故郷紅白国の古書に記されている。
だがコハルが言うには閻魔はただの死者が"俺が一番偉いやつになる!"というような事を言い出して定期的に変わり、コロコロ変わるため自由な雰囲気だという。古書に書かれているような厳格な雰囲気は毛頭ないらしい。そこでコハルは閻魔に頼み多少の条件付きで現世に戻ってきたとの事。
「ほほ。チキとやら、やるではないか?焦らなくて良いのだ。ゆっくりと着実に進む方が伸びるのだぞ」
刀を鞘に収めチキの頭を撫でる。チキは久々に撫でられ笑みをこぼす。
「マスター、後何人?」
杖に乗って飛んできた死鬼は唐突に暗めの表情で聞く。
「おぉ、今日はだいぶ片付けたからの...あと一人じゃ」
そう言えば先程より足元が透けているような、と思いつつチキは死鬼の方を見る。
「...マスター、外出禁止」
「何故じゃ?」
「聖戦士を倒す事くらい僕一人で十分なんだよ」
死鬼は背を向け屋敷へと戻っていく。どこか寂しげで悲しげだった。
「素直じゃないのう?わちきに成仏されたくないと思っているなら言えば良いものを!はっはっは」
コハルは死鬼の意図を読んでいたのかカラカラと笑う。
「...じゃが、やはり現世とお別れするのは寂しいものじゃの。ここは死鬼の言うことを聞いておくとしようか。ほれチキよ、戻ったらわらび餅をご馳走しようか」
「わぁ...!ありがとうございます!」
あぁ、また太るなと苦笑しながら屋敷へと戻っていった。
崖にぽつんとある桜の樹の花びらは、十分すぎるという程に鮮やかで、十分すぎるという程に育っていた。儚い桜の面影は一切なくただ血を欲する妖桜と化していた。

Re: 紅の吸血鬼と黒の魔術師と白の聖戦士 ( No.73 )
日時: 2017/04/08 11:41
名前: そーれんか (ID: qESkNdgF)

『ルナテ?いるかしら?』
ノウラはドアをノックし開ける。常に血が飛び散っている部屋は鉄の臭いで充満している。普通ならこの時点で吐き気を覚えて入らないだろうがノウラ達はそれが当たり前かのように入っていく。水たまりのように床にかかった血を踏む。ビチャビチャとなんとも気色の悪い音を立てている。
「ん、ノウラとクトかい?何の用だ?」
ルナテは紅く染まった羽ペンを置きくるりと振り向く。赤黒く変色したインクは白き羽を赤黒く塗りつぶしていた。
『いえ、特に緊急の用はないのだけれど。今日は月が綺麗だからワインでも飲もうかと思って』
そう言ってノウラはすっと瓶を取り出す。
「月が?なんでまた?いつもと変わりないだろう」
『変わりないことはないのよ。一秒前の事ですらどうしたって完全に同じ事は出来ないの。それに...』
ノウラはクスクスと笑いクトの方を見る。クトの一つ目はキラキラと輝きルナテを酒に誘う。
「.....た...ァィ....は..ね...?」
クトはたどたどしく話す。
「.....!なんだ、少し席を外していただけでこんなにも成長するものなんだな」
ルナテの表情が一気にほころび、狂った笑顔ではなく純粋に嬉しい気持ちを表す笑顔を見せる。
ルナテはクトを撫で、ノウラも撫でる。クトはよほど嬉しかったのかその場を飛び跳ねる。
『るっ...ルナテ!?私は撫でられてもクトちゃんみたいにぴょんぴょん跳ねたりはしないわよ!』
ノウラはムスッとした表情でルナテを見る。
「嬉しくないのか?」
『いや...その...そういう訳じゃないんだけど.....ううう!グラス持ってくるから!外に出て準備しててよー!!』
顔を真っ赤にし勢いよくドアを開け走っていく。やれやれ、とルナテは半ば呆れ顔でクトの手を引き外に出る。
空を見上げ月が一番見える場所を確認する。
「.....どこも木々で見えないじゃないか...やっぱり屋根がいいか」
クトを抱き抱え背中の翼を羽ばたかせた後一気に屋根へと飛び上がる。
「ここならいいんじゃないか?多少風が強いしゴミがあるが...」
クトは何も言わずにゴミを拾っている。かなりの速さで綺麗になった屋根を見てルナテは思わず目を丸くする。
「.....で.....き...た...!」
ドヤ顔でルナテを見る。たどたどしいとは言えちゃんと喋れたことに二重でルナテは驚く。
「短い単語なら喋ることが出来るのか?凄いな、クト」
いつもの面影はどこへやら、子を褒める親のように優しかった。
『お待たせ。ルナテ、クトちゃん!持ってきたわよ』
「またすぐ外出するんだから、程々にな。二人共着いてくるんだよ」
『わかってるって。乾杯!』
グラス同士を軽くぶつけチンと鳴らし、赤いワインを飲み始めた。

『紅い空に漆黒の月ってのも悪くないんじゃない?』

Re: 紅の吸血鬼と黒の魔術師と白の聖戦士 ( No.74 )
日時: 2017/04/12 01:21
名前: そーれんか (ID: qESkNdgF)

きらびやかな装飾が施された教会。まさに神を崇めるに相応しい場所...とはうってかわって普通の一軒家に簡素な祈りの場。一般人が見てもただの信仰者としか思われないくらい一般人に近い生活を人身の部隊は送る。
「あ、一頁〜三頁〜今日の晩御飯なぁにぃ〜?」
床でゴロゴロ寝転がりながらあやとりをする聖経四頁を聖眼一頁は苛立った顔で無視し調理を続ける。聖臓三頁は最初から聞いてないみたいだった。
「お前...十分おきに晩御飯聞くなんて鶏かよ...知ってるか?鶏って三歩進んだら物事忘れんだぜ」
聖肉二頁はサラダ味のスナック菓子を食べつつ話す。御飯前に食べるな、と聖血七頁からすぐさまツッコミが入り渋々菓子を戸棚にしまう。
「.....」
聖骨六頁は無言で鏡とにらめっこをしている...と思えば眼鏡を拭いたり自身の骨を見ていたりする。
「そういえば五頁、その骨よく折れないですのね。剥き出しになってるから折れそうですのに」
聖心五頁はひょっこり顔を出し、大人びようとして妙に変になった喋り方で話しかける。
「神経が通ってないから感覚がないだけでそこまで変わらないわ。それに、こっちの方がヒビが入ってもすぐに修復できる。案外こっちが楽かもしれないわね」
「ハハハ。六頁、質問いいかな?」
むくりと起き上がり二頁のポケットから飴を奪いとり口に含む。
「口に入れて喋らないでくれますか?」
心底嫌そうな顔で四頁を見る。へらへらと笑った四頁の顔が無性に腹が立つ。
「いいじゃん飴だし。んでま質問だけど...確か中世時代生まれだったよね?」
「そうですね。それだけですか?食前の歯磨きをしないといけないので行っていいですか」
勢いよく立ち上がり乾いた音を鳴らしながら洗面所へと行く。
「いや待って待って...あー...うーん」
バタンとドアを閉められ、不機嫌なのが部屋にいた全員に伝わる。
「だから聞き出すのは早いって言ってるだろ。自然に話すまで待たないと」
七頁がやれやれと息を吐く。
「だって気になる...ん?二頁なんで震えてんの?」
ソファに座って俯きプルプル震えている二頁を見て四頁は顔をのぞき込む。
「お...俺の.....苺みるく味...楽しみに.....してたのに.....グズッ...」
ぼろぼろ泣いている二頁を見て七頁はきっと四頁を睨む。
「......えーっと...」
四頁は満面の笑みでガリッと飴を噛み、逃げ出す。その音に反応した二頁はテーブルに並べられていたフォークを持ち四頁を追いかける。
「いいですの?放っておいて」
「食べ物の恨みは恐ろしいからな」
その場にいた四人は大きく頷いた。



シャコシャコと歯を磨く音だけが響く洗面所。口を水で洗い流しついでに顔を洗う。
雫が落ちる自身の顔が映る鏡をじっと見る。中世時代の事なんて欠片くらいしか覚えていない。あるのは過去の名前、青年と一緒にいてその青年と処刑された事くらい。そしてその青年と敵対して再開する事、相手はわかっていないようだったが。初めて再開した時は懐かしく、恐怖で攻撃すらままならなかった。だがあいつに同胞を沢山消されもう諦めた。感情も焼き捨て、記憶も焼き捨て、身体も焼かれて。何もかもあいつに押し付けた。そしてあいつを倒すだけしか生きる意味がなかった
「...詫びが来世なら、復讐は今世でやらないと」
...少しいい匂いがする。もう完成の頃合か?
顔を拭いて洗面所の電気を消し、部屋へと戻っていった。

Re: 紅の吸血鬼と黒の魔術師と白の聖戦士 ( No.75 )
日時: 2017/04/20 02:27
名前: そーれんか (ID: qESkNdgF)


PM 23:35

現在地 教会 13階

ドタドタと足音か廊下から聞こえる。何事かとヒューイが扉の方に向かいドアノブに手を伸ばす。
「うわぁぁん!!!ヴィシャがぁぁぁ!!」
「ぶっ」
ヒューイが開く前にバァンと勢いよく扉が開き、ヒューイはその場にうずくまる。
「ヒューイちゃん!?」
スレイが慌てて駆け寄る。ヒューイは鼻血を出しているのか鼻のあたりからポタポタと血を流していた。
「あっ、ヒューイさ...鼻血!?ど、どうして...!?」
慌てふためく聖人を見て後ろからゆっくり歩いてきたヴィシャは鼻で笑う。
「せーと、ばっかちーん。せーとがいきおいよくとびらあけるからー。ばーかばーか!」
「え、えぇっ!ぼ、僕のせい...!?すすすすみません!!ごめんなさい!神様に懺悔してきますぅぅぅ!!!」
止める間もなく今にも泣きそうな顔をしていた聖人は祈りの場へと走っていった。
「全くヴィシャ様!聖人様を弄くり回すのも程々にして下さいとあれほど言っているでしょう?現に無関係の人にまで悪影響を及ぼしているのですから!」
純白の羽が光に反射されキラキラと輝いている。それでいてふわふわとした羽を持つ再興天使はヒューイの前へ歩み寄る。
「えっと、上を向かずに下を向いたままで.......」
再興天使が自身の羽をひとつむしり鼻を優しく撫でる。少しくすぐったかったがすぐに血は止まり、痛みも引いていく。
「治っ.....た...?」
ガーゼで顔周りの血を拭き取り、雑巾で床を拭く。
「治ったみたいですね。よかった」
まるで自分の事のように治った事に安堵し微笑みかける。
「.....あ、ありがとう...」
「いいえ。私はこれくらいしかできないのですから。あら、もうこんな時間...月星隠者様と聖人様を待って消灯しましょうか」


ーーーー
この時間に祈りを捧げる一般人はいない。だから基本聖戦士達が寝る前の祈りとして使っている。
「あれ、今日は聖戦士も聖騎士もいない...?」
使っているのなら開いているはずの扉がしまっている。聖人は重い扉を力いっぱい開いた。
「...月星隠者さん?」
「...その声.....聖人ね.....」
明かりをつけず真っ暗な室内にただ一人月星隠者が長椅子に座っている。
「どうして真っ暗な場所で...?」
「.....月にも星にも隠れる場所は.....暗闇しかないの.....光は...月と星の力を増幅させる...私が暗闇から祈る事で光を強くさせて暗闇を濃くするの...私の存在意義はそれだけ...」
目を閉じたまま聖母像を見る。いくら暗くても、目が見えなくても聖母像の柔らかく美しい笑みははっきりとわかる。
「本来異端側に属してもおかしくない立場なのに...ここに居られるのも聖母様のおかげ...」
「月星隠者さん...」
「ところで聖人は何をしに...?」
それを問われはっと聖人は思い出す。
「そ、その...ヒューイさんに怪我させてしまったから...」
「.....大方ヴィシャが絡んでいるでしょう...聖人は悪くない...」
ため息をつきながら言う。大体わかるのが本当に呆れ返る。
「僕が怪我させたのに悪くない訳ないんですよ。僕は罪深き男ですからね」
月星隠者が一瞬固まる。
「.......聖人.....罪深き男の意味.....知ってる...?」
「え?普通に罪を背負いすぎた人の事じゃ...?」
「.......なんだかごめんなさい...時間も時間だし戻りましょうか.....」
聖人はなにがなんだかわからないまま手を引かれ外へと戻っていった。

Re: 紅の吸血鬼と黒の魔術師と白の聖戦士 ( No.76 )
日時: 2017/04/24 04:30
名前: そーれんか (ID: qESkNdgF)

閲覧600!!!感謝しかないですヽ(;▽;)ノ
ーーーーーーーー
はっと目が覚めた。スオはもう起きているのか、布団が綺麗にたたまれていた。いつも陽が射すのはなんだかな、と思いながら布団をたたみ寝癖を整え部屋を出る。
「...」
ミサは呆然とテーブルに並べられた食事を見つめる。
「あの...」
「〜〜?何かしら?」
「何かしら?じゃありませんよ!なんですかこれ!?クッキーにケーキにチョコにプリン!?寝る前ならまだしもこれが目覚めたすぐあとの食事だとでも!?」
スオも最初はパクパク食べていたものの、気分が悪くなってきたのかテーブルに突っ伏している。
「〜〜...あ!ごめんなさい、私と貴方達の食事量は違ったわよね...」
「いやそれを差し引いてもおかしいですから!今までこんな食事で生きてきたんですか!?」
ジンリンが座っている近くには皿がたくさん積み重ねられており、短時間でどれだけ食べたのかがはっきりとわかる。それを見るだけでも吐き気がする。
「〜〜〜?えぇ、そうだけど。というか元々食べなくても生きていける種族だし好きなものを食べていた、の方かもしれないわね」
しゃべりながらもケーキをひとつ、またひとつと口に頬張る。
「.....」
ミサは引きつった顔でジンリンの食べっぷりを見る。大食いの人でもここまでは食べられないだろうという量を寝起きで食べているのだから。
一方スオは変わらず魂が抜けたかのように微動だにしない。
「肉とか野菜はないのに...お菓子はなんであるんですか?」
と、ミサは疑問をジンリンにぶつける。というか喋っていないと本当に吐きそうだった。
「〜〜〜。そうねぇ、ハーブとかならあるわよ?それに小麦とかお菓子の材料は全て賄ってる」
食事の手を止め、口元を布で拭く。
「それに元々ここは精霊族の住む森に建てられた人間の住処を奪って造ったところよ。そこにいた家主の家畜と小麦畑を使っているの」
ただ吐き気を抑えるためにした質問が唐突に重い話になってしまい少し次の言葉に詰まる。
「〜〜〜。そうねぇ、吐き気がするんだったのよね?なら吐き気がしなくなるくらい気分の悪い昔話でもしようかしら。あ、ご飯もまずくなるから食べ終わるまで待ってね?」
と言い残った数皿のケーキをぺろりとたいらげる。片付けをさせに幻影を呼び、幻影は皿を一度に全て重ね皿を揺らすことなく片付けに行った。
「あー美味しかった。久々の話し相手ね!嬉しいわ〜♪」
気分の悪い話なのに話すことが嬉しいのか、少しミサには理解不能だったがそのまま椅子に座り耳を傾ける。
「むかーしむかし.....


「〜〜〜...どうしようかなぁ、屋敷の場所。やっぱり精霊族の森の付近がいいかなぁ」
四大魔術師になって間もない頃、ジンリンは一人森をふらふらと歩き回る。
「.......小屋?ここはもう精霊族の縄張りのはず...他の精霊たちはこんな場所を建てたりしているのかしら?」
"あら?新しい四大魔術師さんじゃない。私はここの森の長の精霊よ。よろしくね。んで、どうしたの?"
ジンリンが小屋を眺めていると褐色の肌をした精霊が話しかけてくる。
「あ、ここの小屋ってなんで建ってるのか知りたくて...」
ジンリンはそう聞くと精霊は疲れきった表情でため息をつく。
"...ふぅ...そこの小屋、私達に許可なく建てているのよ。人狼族や魔術師ならまだしも生粋の人間よ!本っっっ当に耐えられないわ!他の精霊達も嫌な思いしているの"
「人間が?なんでこんな所に...」
"お願い四大魔術師さん!あの人間をこの森から消してくれたらお礼はいくらでもする!"
うるうるとした目で手を握られ、断るに断れなくなったジンリンは、尖った長い耳をフードで隠し小屋の戸の前へと歩み寄る。
コンコンとノックし、中にその人間がいるかどうか確認する。
間もなくキィ、と扉が開く。出てきたのは夫婦だった。
「あら、お客さん?どうぞ入って」
言われるがままに小屋に入り茶を出される。
「あ、お構いなく.....」
ジンリンは遠慮するもいいから、と菓子も出される。
「嬉しいんです。お客さんが来て」
すると背後で二人赤子の鳴き声がし、女は二人の赤子を今日にあやす。ちらりと見えただけだがその赤子の耳は人間にしては異様に尖っていた。
「この双子を産んだら耳が尖ってたから捨てるか出ていけと言われてね。出てきたんだ」
男は苦笑しながらコップに入った水を飲む。
「...どうせ迫害されるならこういう所に住んだほうがマシだと思ったんだけど、やっぱり訪ねてくる者がいないのは寂しいね」
「.....あの...その...事なんですけど...」
ジンリンは申し訳なささを抱えながら重い口で話しかける。
「ここは...精霊族の縄張り。出て行って欲しいと精霊に言われて来たんです」
さっきまで笑顔だった夫婦の顔が一瞬にして真顔になる。
「...君はもしかしてあの婆の使いか何かかい?よくもまあ嗅ぎつけたもんだよ」
「えっ?い、いやそんな」
「とぼけなくていいのよ。お義母様の金で雇われたのでしょう?全く、そんなお金があるのならほかの事に使ってはいかがなものかしら」
男から椅子ごと蹴られ床へ倒れ込み、ジンリンは何が何だか分からないまま体を起こそうとする。
隙もなく眼前に銃口が当てられる。
「折角の来客だと思ったのに。そうだ、今日はステーキにしようか」
いくら不死身だって、痛い目にあうのは極力避けたい。ジンリンの記憶はそこで一旦途絶える。

ジンリンが我に返った時には、血塗れの服装に二つの死体と泣き叫ぶ双子の赤子だけの声が響く冷たい小屋に呆然と立ち尽くしていた。
いっその事赤子も殺してしまおうか、と一瞬思ったがまだ無実の子供まで殺そうという力はなかった。
小屋に火をつけ眠った赤子を抱く。精霊族の縄張りから離れた場所ヘ行き、赤子に魔術をかける。
"不死の魔術"を。


「というお話でしたとさ。どう?ミサちゃんスオちゃん?」
ミサとスオの二人は引きつった表情で、青い顔をしていた。


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