ダーク・ファンタジー小説
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- 逆十字の聖魔戦争
- 日時: 2017/04/30 01:07
- 名前: そーれんか (ID: qESkNdgF)
吸血鬼、人間の血を飲む怪物と呼ばれる生き物。耳が尖っており、吸血鬼かどうかはすぐ見分けられるが人間はごくまれに耳が尖っているものを産む。その人間は迫害され、捨てられ、最終的に魔術師になるケースが多い。
魔術師、元人間や吸血鬼など、様々な種族が魔力をもち不死身になった生き物をまとめてそう呼ぶ。元人間、と言うのは魔力をもった際に人間の記憶を忘れる為。吸血鬼はそうならない。他に精霊族や人狼族など色々な種族がいる。
聖戦士、神と人間によってつくられた通常の人間より遥かに強力な術を手に入れた吸血鬼と魔術師を消す為だけに存在する部隊。
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初めまして!そーれんかです。去年から妄想してたやつを小説書く練習がてら書こうかなと思ってます。語彙力のない中学生なので至らぬ点が多いだろうとは思いますがアドバイス等宜しくお願いします_(:3」∠)_
追記
宗教に対する批判的なセリフがありますが、決して実在する宗教を批判する意図で作った訳ではありません。そこはご理解頂けると幸いです。グロテスクな所も少なからず登場します。苦手な方はお控え下さいm(*_ _)m
登場人物を移動させました。そして題名もはっきり決まったので変更しましたヾ(:3ヾ∠)_
登場人物
>>66 異端側
>>67 聖戦士側
- Re: 紅の吸血鬼と黒の魔術師と白の聖戦士 ( No.56 )
- 日時: 2017/03/02 02:02
- 名前: そーれんか (ID: qESkNdgF)
「あの海に沈んでったのは何人目かな」
ルナテは煙草を口にくわえ火をつける。
アピクはよろめきながらも立ち、ルナテを睨みつける。血に塗れた身体には瓦礫の欠片が深々と刺さっている箇所もあった。その箇所からは血は止まることを知らず流れ続けている。
「死ね」
「そんな掠れた声で言われてもね。それにあれだけ吹っ飛ぶようじゃ私に触れることすら容易じゃないさ」
余裕の表情で煙草を吸い、灰を落とす。灰は砂に埋もれ最初から無かったかのようになる。
「自分が知りたい事を知れないままこの灰のように消えたいか?」
「...お前に何がわかる」
「何って...全て。空想じゃない現実を全て知っているよ。生い立ちから全部全部」
そう言って吸い終わった煙草を地面に落とす。落ちた瞬間砂のようにサラサラと散ってしまう。
「.....まぁ、今は話す気はないよ。私が話そうと思える日が来たなら全て話そう」
付近の扉を開く。先が見えない異空間にある屋敷に繋がる道は不気味な色合いをしていた。
「お前は...何がしたい?」
屋敷へ戻ろうとするルナテを呼び止め、問いかける。
「自分が満足する事をしたいだけさ」
そう言い残して扉を閉じた。
途端に地面が海にどんどん浸かっていく。
「.....はぁ。満潮の時間か?バカ娘を探すのに潜るつもりだったから別にいいが」
頭の血を拭い、海へと潜っていった
- Re: 紅の吸血鬼と黒の魔術師と白の聖戦士 ( No.57 )
- 日時: 2017/03/03 02:50
- 名前: そーれんか (ID: qESkNdgF)
忘却の海は暗く濁っている。その海は永遠に温かくなることは無い。
温かい記憶より、暗い記憶が多いせいで温まる隙すらも与えない。
こんな所に沈んでしまえば何もかも冷えきってしまうだろう。息はできるが、長時間も沈んではいられない温度だ。
「.....」
チキはもがくことをやめる。もがいてももがいても沈むばかりだから。それならいっその事沈んだ方がいい
".....!"
声が聞こえる。耳から聴こえるのではない、頭に直接届く声。
"俺は異端なんかじゃない!"
"まだ言うか?証拠は沢山あるというのに"
"それは偽の証拠だ!"
"偽の証拠という証拠は?魔女...いや、お前は男だったな。妖術師よ"
"違う...違う...俺は...そんなんじゃない..."
"それだけ釘が刺さっても喋っていられるのは悪魔と契約したからだろうが!見え見えの嘘で生き延びようとするな"
".......ぁ"
最後に何を言ったかわからないまま声が途絶える。魔女狩り、言ってしまえばこの戦争も魔女狩りの延長戦。異端を殺していく、ただそれだけ。
魔女狩りはただの村人も大勢殺されている。この戦争は村人だった人達が武器をとって攻撃したばかりに返り討ちにあって死んでいく。
チキは思う。どうしてこんな事になるのだろうか、と。今も昔も血で血を洗って、行き着く先に何がある?この戦争で得られるものは?頭を回転させても何も出ない。無意味だ。チキ自身は親を殺された事による復讐の為。じゃあ、もしチキが殺した聖戦士に家族がいて、その家族がチキに復讐しようと武器を取ったら?そしてチキが死んだとして、ミサとスオは?きっとその聖戦士を殺そうと武器を取るだろう。ほら、永遠に終わらない。でも、復讐をやめろと言われたら絶対にできない。
チキは静かに目を閉じる。何も考えないように、考えたって無駄な気がしたから。
ーーーーー
「!?!?!?」
何かに触られ、驚いて目を開く。
「あんな海の中で寝るなバカ娘」
びしょ濡れの服を乾かしながら不機嫌そうな顔でアピクは言う。
魔黒屋敷に帰ってきた。自分は一体どれだけ寝ていたのだろうか?なんて思いながら掛布団をめくる。
「あれ...?何この服?」
「うんうん、似合ってる似合ってる!やっぱり僕のセンスは最高だね!ほら褒めろ!この天才死鬼様をな!」
死鬼は扉からひょっこりと顔を出しチキに向かってドヤ顔をする。
「死鬼さん...ありがとう」
チキは素直にお礼を言うと死鬼は顔を真っ赤にする。
「やっ、やーだーなぁー!ありがたくその言葉受け取ってあげるよ!」
「...こういう奴が一番イライラする」
「ちょっとアピク聞こえてるよ」
ため息をつき死鬼はベッドに腰掛け、チキの顔を見る。
「な...何...?」
「四人目に会ったんだって?」
ヘラヘラした顔とは一変、真面目な顔で問う。
「四人目...あの吸血鬼の...?」
「そうそう。何も言われなかった?」
「特に...」
「ふーん。ならいっか!にしてもこのベッドふかふかだなー」
死鬼は顔を元に戻しベッドをギシギシとならす。
幾度かギシギシしたり跳ねたりしていると、背後からクッションを投げつけられる。
「ここは俺の屋敷だ。俺をイラつかせるだけならば早々に帰った方が身のためだぞ?」
にっこりと笑うアピクだが、死鬼に対する殺気は十分に伝わってきていた。
「たまには五芒星と六芒星に囲まれた生活から抜け出してもいいじゃないかケチー」
「だからと言って俺にストレスを与えるな...所でジンリンは?」
死鬼は渋々立ち上がり、そして大あくびをした。
「ミサちゃんとスオちゃんと夢幻白昼屋敷に戻ってった。やらせたい事があるからってさ」
「ジンリンがいるなら何とかなるだろうな。あっち側は比較的弱いと聞くし」
アピクは椅子に腰掛け籠に入った林檎をチキと死鬼に投げ渡す。
「僕としては白昼屋敷にも行きたくないんだよね...大きくなる屋敷とか怖い怖い」
林檎を食べながら死鬼はまたため息をつく。
沈黙。林檎をかじる音だけが部屋に響く。
「...ねえ死鬼さん、兄様、この戦争はいつになったら終わると思う?」
まだ一口もかじられてない林檎を見つめチキは言う。
「いつになったらねぇ...どっちでもないかな」
「え?」
「この戦争はどっちかが滅びるまで終われないんだよ。だから終わるって事はどっちかが消えてなくなるんだ。どっちが勝っても負けても虚しいだけ。得るものはつかの間の喜び。けど終わらないと失うものはどんどん増えていく。現に増えたでしょ?...だからわかんないんだよなぁ」
アピクは何も言わず林檎を食べ続けている。特に反論する様子がないから、きっと同じ考えなんだろう。
「...わかんないなぁ」
そう言って、チキは林檎を一口かじった。
- Re: 紅の吸血鬼と黒の魔術師と白の聖戦士 ( No.58 )
- 日時: 2017/03/04 01:44
- 名前: そーれんか (ID: qESkNdgF)
ルナテは単眼の怪物を撫で、椅子に座る。二つ空いた席に座るものは誰もいない。
いつものように煙草に火をつける。ふうと息を吐きまた単眼の怪物を見る。
「お前の名前はなんだっけなぁ...あ、思い出した。クトだったね」
クトと呼ばれた単眼の怪物は煙草を吸うルナテを見る。その目は自身の名前を思いだしてくれたという嬉しさを表していた。
「ーーーーー...ァ...テ...ス...」
「無理に喋らなくていい。お前の言っていることは分かるからな。...まだ封印されて数十年だろう。安心するといいさ。この封印だって空想だった事にすればいい...」
ルナテは微笑み、煙草の灰を落とす。
「さて...ノウラ、あれの状況は?」
どこからともなく人間が現れる。ノウラと呼ばれる女はトントンと書類の整理をし、数枚をルナテに手渡す。
"魔繰病の患者一覧表"
魔繰病ーー魔術師及び魔力に覚醒したものがなる病。記憶が改変された際などに異常が起き、正常に魔術を扱うことが出来なくなってしまう。症状例としては魔術が暴走する、発動できなくなる、魔術を忘れる等、様々である。その際身体に負担がかかる為他の魔術師より力が劣る場合が多い。
『ルナテ、患者が二人増えているわ。でも...どうして片方は魔力に覚醒してすらいないの?発病することは無いはずなのだけど...』
ノウラが書類を見つつ問う。
「...意図的に発病させただけさ、どちらもね。少しデータが欲しいんだ。吸血鬼と魔術師の混血は貴重だからね」
ルナテはクスクスと笑いながら三本目の煙草に火をつける。
『意図的...?可能なの?』
「勿論さ。魔術師の血さえあれば少なからず魔力は受け継いでいる。そこを弄れば簡単に発病させられる」
『...悪い御方』
クスッとノウラが笑う。書類をまとめ、ファイルに閉じていく。
「現実と空想は表裏一体...かもしれないね」
ポツリとルナテが呟く。ノウラは聞き返したが二度も言わなかった。
- Re: 紅の吸血鬼と黒の魔術師と白の聖戦士 ( No.59 )
- 日時: 2017/03/06 01:47
- 名前: そーれんか (ID: qESkNdgF)
「へぇ...それじゃ聖戦士達とは少し別の部隊って事ですか?」
「そうですの。聖戦士、聖騎士などは教会側に所属していて、部隊は教会側とは情報を交換するのみでほぼ関わりがないですの」
聖心五頁は瓦礫を片付けながら話す。時々服が引っかかって転けるが仕方ないと言っていた。
「でもスレイ達はこの教会の一室で寝たりしてるよ?」
「ハハハ。全ての部隊が関わり薄いという訳じゃないよ。僕はよくわからないけど君達のいる部隊は関わりが結構あるんじゃないかな。ハハハ。」
聖経四頁は何もせず笑いながらどこかに隠し持っていた棒つき飴を同じく何もしていない聖肉二頁と食べる。
「お前らは動け」
聖血七頁が二人の頭をゴツンと殴る。殴られた拍子に持っていた菓子を落としてしまい砂利などで汚れてしまった飴を見る。聖肉二頁の目がうるうると涙目になっているのが良く見えた。
「はいそこまで。喧嘩する暇があるなら片付けをしろ」
聖眼一頁が背中をドンと押す。そして聖経四頁の飴も落ちてしまう。
「ハ...ハハハ...なんて事だ...味噌味の飴...」
「何だその味!?」
がっくりと肩を落とす聖経四頁が好んで食べていた飴の味を知り聖血七頁と聖眼一頁は目を丸くする。
「あの、片付けをしろと言っている本人が片付けないのは問題だと思います。黙々とやっている聖臓三頁さんを見習ってください。あ、私の骨にヒビが入りました。治すのでさっさと片付けて下さい」
聖骨六頁に冷たい目で見られ男達は付近の片付けを始める。
「ったく、あの魔術師は力加減というものができないのか...?コップが粉々じゃないか」
コップだったガラスの白い粉を手に取りふうと息を吹きかける。
「ハハハ。敵のアジトに来て手加減しないものはいませんよ。それにあの魔術師壊しに来てたみたいだし。ハハハ」
「身内を殺しただけで感情的になるのは人間と同じですね。私達だって覚えきれない程殺されたというのに。やはり魔術師の記憶力は感情に左右されやすくなるのでしょうかね。ちょっとした事でも覚えてるみたいだし」
他愛もない話をしながら片付ける。
時間というのはあっという間で、日が昇ったと思えばもう沈んでいった。
こうやって命の蝋燭を少しずつ溶かしていって、火が消えるときには形なんて何もない。命の蝋燭は個々に決まっているんじゃない。早死するものは蝋燭が途中で事故などによって折られ火が無理やり消されただけ。長生きするものは折られることなくちゃんと溶かしきった証。
それでも、形は残らない。
全部無にかえる。
虚しい。
目の前で肉塊になった親や同期のことを思う。
私もいつかこうなるのだろうか?
人間の記憶には限りがある、死んだ人の事なんか一々覚えてられない。忘れられる。あの人はいつどこで死んだ?どんな声だった?どんな髪色でどんな目の色でどんな身体でどんな顔でどんな性格だった?数年前に死んだ人の事を聞いて、全て思い出せる人がいるのだろうか?ほぼいないだろう。人間、ずっととどめている事なんて出来ないから。
いくら大切な人でも、月日が、経つと悲しさも薄れていく。そうやって存在が薄れていく。
「...悲しいなぁ」
ぽつりとヒューイが呟いた。
- Re: 紅の吸血鬼と黒の魔術師と白の聖戦士 ( No.60 )
- 日時: 2017/03/07 02:06
- 名前: そーれんか (ID: qESkNdgF)
「林檎おかわりー」
「...」
「林檎おかわりー」
「...」
「聞いてる?僕林檎欲しいんだけど」
そう言って死鬼は手を出す。
「何がおかわりだ殺すぞ糞野郎」
アピクは汚物を見るような目で死鬼を見る。死鬼の側には林檎の食べかすが数十個散乱していた。
「えー。僕林檎好きなんだから取っといてくれてもいいじゃんか」
「自分の屋敷で食え。何でわざわざ俺が取っておかなきゃならないんだ」
アピクと死鬼が喧嘩しているのを見ながらチキはゴミを袋へ捨てていく。
「バカ娘、こいつに捨てさせろ。働かざるもの食うべからずだ」
チキから袋を半ば強引に奪い取り死鬼に投げつける。
「ぐぶえっ」
と痛そうな声を出す。鼻の頭あたりが赤くなっていたので、林檎の一部が当たったのだろうとチキは思う。
「でも兄様、こういう食べ物ってどこから調達してるの?」
「ジンリンがつくってる。詳しくは知らん」
平然と言い放つアピクにチキは驚く。
「詳しく知らないもの食べてたの!?」
「別にいいだろ死なないし。腐れてたって、毒が盛られてたって、薬が沢山使われてたって、死ぬことはないんだから」
「...」
少し顔を逸らす。ルアイリの死で忘れかけていたが自分達は基本的に死なない種族だと改めて思い知る。いくら火に巻かれようが深い海底まで沈められようが雷に撃たれようが毒を盛られようが四肢切断されようが死なない。聖戦士達の攻撃を一定まで受けぬ限り、死ぬ事は絶対にできない。
「バカ娘、糞野郎の所行け」
唐突にアピクが話しかけついでにデコピンをする。
「?!」
「俺はやる事があるんだ。あんな奴に邪魔されたくない。糞野郎とどっか行ってろ」
「僕の扱い酷いよね。まぁ仕方ないけどさぁ」
ゴミ捨てから帰ってきた死鬼に仕方ないとはどういう事なのか、と問い詰めたくなるがぐっと堪える。二人の仲に割って入るのはあんまりしたくなかった。
「そんじゃ、僕も屋敷に戻るかな。そろそろ大丈夫だろうし」
そしてチキの手をとり、跪く。
「お姫様、僕の屋敷へ招待しましょう。どうぞ、何なりとお申し付けくださいませ」
色んな意味で少しドキッとする。こう見ると死鬼も美形な方なんだな、と思いつつ手を握り返す。
「気持ち悪っ...」
アピクは心底気持ち悪そうにしていたが。
「なんだよー。こんな事滅多にできないんだからいいでしょー?」
「俺の目の前でやるな」
「に、兄様!今度は死んだふりなんてしないでよ!」
「寝てただけだと言ってるだろうが!さっさと行け!」
とうとうアピクが怒りだす。死鬼は笑いながら魔黒屋敷の外に出ていった
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