ダーク・ファンタジー小説
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- 逆十字の聖魔戦争
- 日時: 2017/04/30 01:07
- 名前: そーれんか (ID: qESkNdgF)
吸血鬼、人間の血を飲む怪物と呼ばれる生き物。耳が尖っており、吸血鬼かどうかはすぐ見分けられるが人間はごくまれに耳が尖っているものを産む。その人間は迫害され、捨てられ、最終的に魔術師になるケースが多い。
魔術師、元人間や吸血鬼など、様々な種族が魔力をもち不死身になった生き物をまとめてそう呼ぶ。元人間、と言うのは魔力をもった際に人間の記憶を忘れる為。吸血鬼はそうならない。他に精霊族や人狼族など色々な種族がいる。
聖戦士、神と人間によってつくられた通常の人間より遥かに強力な術を手に入れた吸血鬼と魔術師を消す為だけに存在する部隊。
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初めまして!そーれんかです。去年から妄想してたやつを小説書く練習がてら書こうかなと思ってます。語彙力のない中学生なので至らぬ点が多いだろうとは思いますがアドバイス等宜しくお願いします_(:3」∠)_
追記
宗教に対する批判的なセリフがありますが、決して実在する宗教を批判する意図で作った訳ではありません。そこはご理解頂けると幸いです。グロテスクな所も少なからず登場します。苦手な方はお控え下さいm(*_ _)m
登場人物を移動させました。そして題名もはっきり決まったので変更しましたヾ(:3ヾ∠)_
登場人物
>>66 異端側
>>67 聖戦士側
- Re: 紅の吸血鬼と黒の魔術師と白の聖戦士 ( No.21 )
- 日時: 2017/01/24 01:25
- 名前: そーれんか (ID: qESkNdgF)
「かっ...」
無慈悲にも撃たれその衝撃で飛ばされてしまう。先程の聖騎士の攻撃をはるかに超えるダメージを負っているのにチキは気が遠のくどころか痛みで意識がはっきりとする。
「な...なん...で...」
「はっ、そんなことも知らないのか?あの神の加護を受けた本物と今のものは全く違うね。あれはただ魔力が俺の記憶によって結晶化された偽物だ。...永く生きてきてこれ程無知なんだなんてな。」
「お、お嬢様をバカにするのもそれくらい...」「ヒッ...」
キッとミサが睨みつけるもアピクの冷たく暗い眼に見られ何も言えなくなってしまう。
アピクはチキの方に顔を戻し人差し指でチキのおでこをつつきながらこう言う
「いいか?魔術は記憶、想像、魔力がないと使えない。いくら魔力を持ったとて記憶と想像が出来なければ無力な邪魔者だ。なんで人間や精霊族や人狼族が魔力を持った際に記憶がすべて消えるか知っているか?」
ルアイリは静かに話を聞いている。汚れた地面を拭きながら。
数秒たっても答えられないチキにだろうな、とアピクは言う。
「記憶力が無いからだよ。魔力を持った際に全ての記憶がリセットされる。吸血鬼は300年前の出来事を事細かに話せるほど記憶力があるから消えないんだ。名前も、昔の記憶も残したまま。」
アピクはルアイリの方を振り向く。
「ルアイリも、名前は新たにつけられたもの。昔の名前なんて思い出せないんだよ。」
少し悲しげな目でまたチキに視線を戻す。
「ねぇ...兄様。」
あっという間に傷が塞がったチキは流れ出ていた血を拭きながらアピクに問いかける。
「兄様の種族って...なんなの?吸血鬼や精霊族にしては耳も尖ってないし...人狼族のように特別な感じでもない。人...なの...?」
「はん、それを知ってどうする?お前が得する話でもない。」
「...。」
アピクは自分の事について喋りたがらない。他の魔術師たちは自分の事をペラペラ喋るだけにチキは不思議だった。
ドッ
あの嫌悪感が再び部屋に充満する。いや、今の方が数倍きつい。今度はミサとスオは倒れアピクもルアイリも膝をついてしまう。
今度の嫌悪感の発生場所は剣と槍...を所持していたヒューイとスレイだった。
「よくも...」
「よくも母さんと父さんを!!」
ヒューイが叫ぶ。剣を握っているせいかヒューイから嫌悪感だけでなく恨みのオーラが留めなく放たれていた。
「うわぁ〜ん!この聖戦士達は休ませてくれないのね〜!師匠〜すこ〜し静かにさせてあげないと〜」
「ふぅ...糞ガキ共、永遠に喋れないようにしてやる。」
「ちょっと師匠〜やりすぎ〜せめて大怪我くらいにとどめとかないと〜」
気持ちが悪い空気の中でもルアイリとアピクは平静を保っている。
「おいバカ娘、そこのチビメイドを連れて外に出てろ。邪魔だ。」
チキは無言で頷き外に出る。今この状況で残ったとしても嫌悪感でほぼ動けない為足でまといになるのはすぐ考えがついた。そこまでチキは馬鹿じゃない。
「あ、ここにいた。」「ほんとだ、でも罠かもしれない」「主よ、今から異端を討伐いたします...全ては神の御心のままに...。」
「!?」
大人数の聖戦士達が、部屋の外にいたチキを見つける。聖戦士達は武器を取り、チキに襲いかかってきた。
- Re: 紅の吸血鬼と黒の魔術師と白の聖戦士 ( No.22 )
- 日時: 2017/01/25 01:18
- 名前: そーれんか (ID: qESkNdgF)
また...守られた。
守るって、誓ったのに。
自分の弱さに涙が出る。
私は誰も守れやしないのか...?
私は虎の威を借る狐のような存在。お嬢様に依存して...あの魔術師が邪魔だと言うのも無理はないかもしれない。
.....強さって何なんだろうか?ただ力があればいいのか?...わかんないなぁ。わかる日が来るといいのだけど。
「姉さん!」「スオ...?」
「よーやく起きた...」「「んぎゃあ!」」
ミサ達が座っていたすぐ近くに弾かれた鈍器が床にめり込む。あと数センチズレていたら直撃していただろう。
「お、お、お嬢様は!?」「チキならそこだよ。お姉さんが元気になったら守ってねだって、チキが言ってた。もー元気になったよね?」「う、うん...」
ある程度槍を扱えるようになったチキだがやはり振り回されたりして攻撃が当たらないことがある。
「うぐぐ...完璧に扱えるようにならないと...」
聖戦士は大分減ったもののまだ数十人は残っている。体力もかなり削られていてとてもじゃないが倒しきる自身がなかった。
「お嬢様!」「お姉さん起きたよー」
「ミサ、スオ!大丈夫?」
「お嬢様...私達は大丈夫です。でも...私...足でまといじゃ...」
チキはきょとんとする。
「足でまといなわけないじゃない。兄様は言葉遣いが悪いだけなの。本当は優しいのよ?」
そう言ってチキは柔らかく微笑む。
「んじゃ、続きは紅茶でも飲みながらゆっくり話しましょ?」
ミサは少しだけ救われた気がする。そしてスオと共に短刀を構えた。
ーーーーーーーー
一方、アピク達は先程直したはずの部屋をまたボロボロにされていた。
「こんの...糞ガキ!この俺の屋敷を二度も壊しておいてタダで済むと思うなよ!」
「し、師匠〜...どっちかっていうと師匠の方が被害出してるのよ〜?だってさっきから魔像出しまくってるけどあの力凄いじゃないの〜。」
「.....。魔像も改良が必要かな...」
アピクは少ししょんぼりした声で呟く。
どちらもかすり傷などは負っているものの、特段大きな怪我を負っている様子ではない。
「糞ガキ、お前は親が嫌でこっち側に来た癖に目の前で殺されると手のひらをひっくり返すのか。」
「そりゃ...目の前で惨殺され、それも...異端に殺されるなんて...!」
ヒューイは涙を流しながら話す。
「...チキも同じ目にあってんだがな。」
「そんなこと...しりませんよ...異端の事なんか...」
「じゃあ俺も知らないね。俺達からすればお前達は異端だ。異端のことなんて知ったこっちゃない。」
段々とヒューイの武器を握る力が強くなる。苛立ちか、はたまた別の何かか、それはヒューイ自身にもわからない。体の内から何かがこみ上げてくる。
「黙れ...黙れ異端!お前は...お前達さえいなければこんな事にならなかった!!戦わずに...平和に過ごせた...」
「ヒューイちゃん...」
「なんで...なんで...私は普通に生きたかっただけなのに...!」
ぼろぼろ大粒の涙をこぼしながらヒューイは叫ぶ。ずっと黙っていたスレイも悲しげな表情になる。
「あぁそうか。それがお前が思っている事か?笑わせるな!!」
「し、ししょ...っ...」
ルアイリはアピクを止めようとするが途中でやめてしまう。歯を食いしばって、こぼれそうな言葉を出さないようにして。
「お前達人間がした事は何も教わってないのか?中世時代に魔女狩りと称して沢山の同胞を殺して、普通の人間も無理矢理魔女に仕立てあげられて!戦争をせず平和に過ごしたかったのは吸血鬼も魔術師も一緒だ!だがそんな発言をしていた奴も残らず殺してしまったじゃないか!」
「!?」
一瞬ヒューイ達はたじろぐ。アピクのあまりの気迫に。
「異端の言う事なんて...信じられないよ...」
スレイが呟く。
「あぁ、みんなそう言う。平和を望んでいると言っても信じられず殺されるだけ。もう平和を望む輩なんているもんか。どっちかが消えるまで戦い続けるだけさ。」
「んもう師匠...あんまり熱くならないでね〜?」
ルアイリは珍しくため息をつく。
ヒューイはギリッと歯ぎしりをした後剣を持って高く飛び上がった。
「...冷静でいられなくなった時、勝敗はつくんだがな。」
アピクは深いため息をついた。
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アピクの会話を書くのが一番好きです(:3_ヽ)_(作者の本当にどうでもいい一言)
- Re: 紅の吸血鬼と黒の魔術師と白の聖戦士 ( No.23 )
- 日時: 2017/01/26 01:34
- 名前: そーれんか (ID: qESkNdgF)
そろそろ私が出向こうか。
どうやら聖騎士二人が死んだらしい。約立たずだな。本当に。
「魔術師一体にどうしてあそこまで手こずれるんだ。」
「し、しかしネメシス様。あの魔術師は四大魔術師でもあり元老の一人であり...」
ネメシスと呼ばれる女は緑色の目で聖戦士を見る。まごまごする聖戦士を見て舌打ちをした。
「ふぅむ...では我が直々に殺ろうではないか。万が一殺せなくとも、確実に深い傷を負わせてやろう。」
「ね、ネメシス様...では...!」
聖戦士の表情が明るくなる。だがハッとした表情ですぐキリッとした表情に戻る。
「ネメシス様...どうかパワーにはお気を付けて...。」
「あぁ。」
短い返事をしてネメシスは窓から外へと飛び出した。
「...ネメシス様は大胆だなぁ...せめて補給していけば良いのに。」
「.....ネメシスは居ないの?」
「!貴方様はーー」
ーーーーーーーー
「何こっち側に持ってきてんだバカ娘!」
部屋にアピクの怒号が響き渡る。チキが聖戦士に攻撃された拍子に扉が壊れてしまい、そのせいで部屋に聖戦士がなだれ込む。
「し、仕方ないでしょ!一斉に攻撃されて避けられるわけ...!っく!」
絶え間なく聖戦士の攻撃が続きチキ達は息が荒くなる。
「はっ、はっ...お嬢様...ふひー...ご無事ですか…?」「お姉さんの方が心配なんだけどね...ふひぃ...きゃっ!危なっ!」
ミサとスオは小柄な体で攻撃を軽やかに避ける。
「ああああああ!!」
ヒューイとスレイは何かに取り憑かれたように攻撃をやめない。それにあわせて剣も威力を増していた。
「も〜これなら書庫の片付けしてた方がよっぽど楽だわ〜。」
ルアイリは頭に手をあてやれやれと呟く。
窓から強い光が差し込む。あまりの強さに敵味方どちらも目をくらませてしまう。
ー我はネメシス。聖騎士No.3、ネメシスだ。
そう聞こえたすぐ後に地響きが起きる。その地響きは下からのものではなく、上からの凄まじい力で起きたものだと知るのは目を開いた数秒後だった。
床の一部が崩れ落ちそこに居た聖戦士は奈落の底へと落ちてしまう。
「ネメシス...?」
「おや、そこの小娘。我を知らないと言うのか。ククク...つい最近の出会ったばかりではないか。」
チキは記憶を辿る。
"吸血鬼、魔術師、両方消す事が出来るなんてこれ以上の幸福はない"
「...!!」
「久しぶりだなぁ?小娘。今回はお前の愛する親に会いに行けたらいいな!」
親を殺した、四人の聖騎士の一人だった。
「今回も...両方消すことが出来るなんて幸福だ!!」
ーーーーーーーー
追加登場人物
ネメシス
緑色の神に緑色の目をしている。一人称が我。数少ない聖騎士の一人。好戦的で凄まじいパワーだが、使いすぎると何かが異変が...?
武器がなく、体術で闘う。ネメシスと言う名は後からつけられたもの。本名が長すぎるため聖騎士になると同時に改名した。本名はグレース・アルカルミ・セーリア・クラウン・スイ・イアン・ルル・アーミリオン。親ですら本名を覚えられなかったというどうでもいい話をするが本名を本人の目の前で言うと殴られる。痛い。
- Re: 紅の吸血鬼と黒の魔術師と白の聖戦士 ( No.24 )
- 日時: 2017/02/01 00:48
- 名前: そーれんか (ID: qESkNdgF)
「ヒャッホー!成敗の時間だぞー!」
ネメシスは目にも留まらぬスピードで攻撃する。一発一発の威力がかなり重い。魔壁は次々とガラスが割れるような音を立てて壊れていく。
ヒューイ達も変わらず攻撃し続けチキ達は防戦一方となってしまう。
「う〜ん。こっちも反撃したいとこだけどっ...!今の状況じゃ無理があるかしら〜?師匠〜、他の魔術師は居ないの〜?」
「来てくれれば楽なんだがな。ま、かなり離れた距離に別の屋敷があるから無理な話だろうな。」
四大魔術師達は全員屋敷を持ち、中には別空間に屋敷をつくり滅多に姿を見せない者もいる。アピクは魔黒屋敷、一人は夢幻白昼屋敷、一人は月紅屋敷、一人は空想煉屋敷と言う名前の屋敷である。
「はーぁ。こんなに魔術を一日に使ったの...きっと俺だけなんだろうな...。」
そう言って壊れた壁を直しつつ新たな壁をつくる。
「お嬢様、お身体は大丈夫ですか?っぜー...ぜー...」「ふひー...紅茶飲みたいなー。」「スオはもう少し真面目にだ...な...ぜー...」
「ありがとうミサ。私は大丈夫。ミサもスオもキツくなったら兄様の後ろに行くのよ?」
「おい待てバカ娘」
余裕な会話をしているのが癪だったのか、ネメシスはただでさえ速い攻撃スピードをさらに速めていく。
「うるぁぁぁぁぁ!!!」
大きな音を立てて壊れ、壊れ、壊れ。壁の修復速度と創り出す速度が間に合わず、裸同然の状態になってしまう。
「どっ...せぇぇぇい!!!」
ネメシスは天井に足をつける。数秒後、天井が綺麗な十字架の形になってチキ達目掛けて落ちてくる。
ズズンと重い音が部屋に響く。砂埃などで一寸先も見えない。
「いっ......」
瓦礫が頭を直撃したチキは頭がクラクラしながらも重なった瓦礫をどける。
「お...おじょおさまぁ...」「足が潰れたー...」
ミサとスオは瓦礫に足を挟まれてしまっていた。慌ててチキが瓦礫をどける。
「兄様達は...?」
「チキー!そこに手があるー!」
「手!?」
引っ張り出すとルアイリだった。ほぼ全身瓦礫で埋められ目を回している。
「兄様...は?」
「口の中に砂利が入った...気持ち悪...」
「うわぁぁあ!?」
いつの間にか背後にアピクがいてチキは心臓が飛び出そうになる。
「なんだ、人を幽霊みたいに。」
「そ、そりゃあいきなり背後に立たれたら誰だってそうなるわよ!!所で兄様...頭から血流れてるけど大丈夫なの?」
「お前と一緒にするな。こんくらいかすり傷だ。服がボロボロになったのは辛いが...。」
アピクはグイッと血を拭う。
「ししょお〜あたまくらくらする〜...」
「はいはい軽傷軽傷。そのうち治る。」
砂埃が次第に消えていく。だがこの視界の悪さで追い打ちをかけることが出来たのではないかとチキは疑問に思う。
「はっはっは!われのちから、おもいしったか!」
その疑問はすぐに解決した。この部屋にいた全員が顔を引きつらせる。
「な...あ...?なに...あれ...?」
「こむすめ、われのすがたにおそれをなしたか?」
「え...いやあの...体...」
「からだ?とくにかわった.......え?」
ネメシスの体が幼体化し、言葉遣いも何もかもが幼くなっていた。
「...え...うそ...なんで!?もう!?うわぁぁぁぁあん!!」
見た目7歳程度にまでなったネメシスは、パタパタしながらその場をくるくる回る。その姿に、チキ達はいっそう顔が引きつった。
- Re: 紅の吸血鬼と黒の魔術師と白の聖戦士 ( No.25 )
- 日時: 2017/01/28 02:03
- 名前: そーれんか (ID: qESkNdgF)
「うわぁぁぁぁん!!」
とうとうネメシスは泣き出してしまい、チキ達は困惑する。
「えっと...これ...」
「なんでこうなるのぉー!そんなにちからつかったおぼえないのにー!!」
ぎゃんぎゃん喚く。この屋敷から離れても聞こえそうなくらいの声量で次第に耳が痛くなってくる。
「お、お嬢様、どうします?仕留めます?」「んーうるさいよー...」
「あんな見た目だからと言って躊躇してどうする。その内死ぬぞ?」
アピクはズカズカとネメシスの元へと歩み寄る。
「ひっ...まじつ...まじゅつし...」
「お遊びは終わりでいいか?」
「う...うぇ...」
「そしてそこの糞ガキ共、攻撃したけりゃしたらどうだ?気分悪いんだからさっさと終わらせてくれよ。」
「っ...!」
ヒューイは挑発に乗せられ剣を強く握り再び攻撃をする。
「はん、こんな挑発に乗るとは...やっぱりガキだな。ガキは教会で毎日毎日お祈りでもしてろよ!」
剣を掴みヒューイの体ごと投げ飛ばす。飛ばされた拍子に頭をぶつけてしまい、意識が朦朧とする。
「ヒューイちゃん!」
「っく...!この...ん?」
キラキラと輝く雪のような粒が降ってくる。紅と黒で染まった部屋に輝くもの。上には月の形をした輝くものと、そこに座る金色の長い髪の女。
「.....いた。ネメシス...今日は力少なくしてた.....」
目を閉じたままの女はまるで見えているかのように迷いなくネメシスの元へとたどりつく。
「ヒューイ........辛いけど...焦っちゃダメ...スレイも...落ち着いて...そんな武器に...頼らなくても...いいの。」
女神のような優しい微笑みでヒューイとスレイの方を向き、手を差し伸べる。
「かえろ...逃げだしても...神様はゆるしてくれるよ...神様は...全部許してくれるの。」
ヒューイ達はカランと武器を落とし、女の手をとる。
「魔術師...吸血鬼...必ずや神様が裁きを下します...神様の力は...人間の力でもあるのですから.....もう会うことはないと思いますが…私は神と月に隠れて生きる者...月星隠者と名乗っています...私が名を持つなど...おこがましいですがね...」
そう言って月光隠者は朝日に消えゆく星の様に姿を消した。ヒューイはずっとチキ達を睨んで。
「はぁ。また壊しやがって...。」
どっと疲れがでてくる。チキ達はヘタリと地面に座り込んだ。
「...にしても月星隠者だなんて、初めて聞く名前よ?」
「さっき神と月に隠れて生きる者って言ってたから〜、そのせいで見かけたりしなかったんじゃない〜?」
ルアイリは椅子に腰掛けた...と思ったら椅子の脚が折れてしまいドテっと尻もちをつく。アピクはやれやれとした表情になる。
「何にせよ敵がまた増えたって事だ。.....そうだ、あいつの元に行ったらどうだ?」
「あいつ?」
「夢幻白昼屋敷のあいつだ。お前は知らないだろうが、お前の母親があいつと親しかったはずだ。」
「場所は?」
「ルアイリに聞け。俺は行かない。」
アピクはぷいっと顔をそむける。
「うふふ〜。あのね、師匠はね、その人にとっっても好かれてるの。」
ルアイリは口を押さえ上品に笑う。アピクが睨んでいるのはすぐにわかった。
「とーにーかーく!お前等はルアイリについていけ!俺はあいつが嫌いだし屋敷を直さなくちゃいけないからな!」
「わ、わかったよ兄様...気をつけてね?」
「気をつけるのはお前の方だ、バカ娘。」
軽く準備をして、チキ達は魔黒屋敷にしばし別れを告げた。
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