ダーク・ファンタジー小説
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- 逆十字の聖魔戦争
- 日時: 2017/04/30 01:07
- 名前: そーれんか (ID: qESkNdgF)
吸血鬼、人間の血を飲む怪物と呼ばれる生き物。耳が尖っており、吸血鬼かどうかはすぐ見分けられるが人間はごくまれに耳が尖っているものを産む。その人間は迫害され、捨てられ、最終的に魔術師になるケースが多い。
魔術師、元人間や吸血鬼など、様々な種族が魔力をもち不死身になった生き物をまとめてそう呼ぶ。元人間、と言うのは魔力をもった際に人間の記憶を忘れる為。吸血鬼はそうならない。他に精霊族や人狼族など色々な種族がいる。
聖戦士、神と人間によってつくられた通常の人間より遥かに強力な術を手に入れた吸血鬼と魔術師を消す為だけに存在する部隊。
ーーーーーーーーーー
初めまして!そーれんかです。去年から妄想してたやつを小説書く練習がてら書こうかなと思ってます。語彙力のない中学生なので至らぬ点が多いだろうとは思いますがアドバイス等宜しくお願いします_(:3」∠)_
追記
宗教に対する批判的なセリフがありますが、決して実在する宗教を批判する意図で作った訳ではありません。そこはご理解頂けると幸いです。グロテスクな所も少なからず登場します。苦手な方はお控え下さいm(*_ _)m
登場人物を移動させました。そして題名もはっきり決まったので変更しましたヾ(:3ヾ∠)_
登場人物
>>66 異端側
>>67 聖戦士側
- Re: 逆十字の聖魔戦争 ( No.82 )
- 日時: 2017/05/09 04:18
- 名前: そーれんか (ID: qESkNdgF)
「マスタぁぁぁぁあ!!何菓子袋開けてんだよ!!」
「おお死鬼や。腹が膨れなくてな、にしてもこのあられ美味しいな」
コハルはポリポリとあられを食べ続ける。床に散乱した菓子袋がどんどん増えていく。
「そりゃ霊なんだからお腹いっぱいになるわけないでしょ!?」
「そうかそうか。死鬼や、食べるかえ?」
コハルは笑顔であられを差し出す。半分かじったものを。
「いらないよ!!.....ん、外から何か聞こえる」
死鬼は慎重に窓側に行き状況を確認する。
"アオフクレーラー"
「あり、大軍だね...420と。チキちゃんは寝かしときたいしマスターは無理だし...僕一人かぁ」
頬を掻き、息を整える。
「死鬼や、敵か?わちきは出たらいけんのじゃろ。弟子の力を見ておくとするぞよ」
「そうして。絶対にマスターは出てこないでよ!!」
そう言い残して死鬼は窓から飛び降りる。コハルは降りたのを見届けた後クスクスと笑い出す。
「ほほ、可愛いものよ。わちきが居なくなるのがそんなに寂しいのか。だが...この屋敷が死鬼一人だけになるのもそう遠くないかもしれぬの」
ーーーーーーーー
『生ける異端に聖裁を!』
聖戦士達は死鬼を見つけるなりこう叫び攻撃を仕掛けてくる。聖戦士はハンマーなどの近接武器だったり弓などの飛び道具、傷を回復する杖をそれぞれ一つ持っている。
「寝言は寝ていいな!僕はそんな聖裁を受けるつもりはないからね!」
"五芒星・アルプトラオム"
「さあまずは眠ろうか。そして君達が大好きな寝言を好きなだけ言うがいいさ!あの世でね」
聖戦士達は次々がくんと膝を地面につく。ここで大半は脱落していく。眠ったら最後悪夢に囚われ目覚めること無く逝く。眠らなかった者も絶え間なく続く睡魔に襲われ感覚が鈍っていく。
「...にしてもおかしいなぁ。この大軍で聖騎士が一人もいないのは...いや、別の所にいるからわかんなかったんだよね」
「せいかーい」
木の上から聞いたことのある声の主が飛び降りてくる。
「あっ、ネメシスちゃんだ」
「わぁ!ちゃん付けされたのは久しぶりだよ。嬉しい...訳あるか!」
ネメシスは魔術の影響を受けることなく攻撃していく。
「さっすが聖騎士、これ位の魔術じゃ効かないもんなんだね〜」
「いやぁ近距離の魔術を無理やり広げて広範囲にしたって弱くなるに決まってるでしょー?」
"全術強制解除"
ガラスが割れるようにパンと音をたて全ての術が解除される。既に眠ってしまった聖戦士はもうどうしようもないが眠りかけていた聖戦士は睡魔が一気に解かれ再び攻撃を仕掛けてくる。
「げっ...あんまり減らせなかったじゃないか!」
死鬼がぐちぐち言っているとネメシスは震えながら睨みつけている。
「私達の同胞をモノ扱いするあんた達の精神が私は一番気に食わねぇんだよクソッタレがぁ!!」
"暗闇に映る聖女"
「うわっ!」
眩い光に包まれ思わず目を瞑りかける。無理やり目を開けあまり見えない辺りを見回す。
いつの間にか目の前にいたネメシスが殺気を纏い殴りかかってくる。
魔壁を張る間も無い。いや、張れても自身の強度じゃすぐ割られる。
「...!」
"血醒月光・暗黒騎士"
槍が死鬼とネメシスの間に突き刺さる。
「死鬼さん...起こしてくれても良かったのに」
窓から真っ黒な闇に包まれたチキが槍の上に降り乗る。
「チキちゃん!?何その術は!?なんか話し方も違うし!」
「話はあとにしましょう、まずはこの庭を静かにさせましょう」
さっきまでとは変わって大人しくなり、槍も術も強化されていた。
「はははっ、チキちゃん。頼むよ!」
"五芒星・シュヴァルツゼーレ"
- Re: 逆十字の聖魔戦争 ( No.83 )
- 日時: 2017/05/10 03:25
- 名前: そーれんか (ID: qESkNdgF)
AM 3:26
夜中にふと目が覚めた。妙に喉が渇き、水を飲もうと居間へと足を向ける。
「.....ヴィシャ?まだ起きてたの...?」
「おー、月星隠者だ。いまめがさめただけだよ」
ヴィシャは目をかき、水を汲んだコップを月星隠者に渡す。
「.....そう.....」
「ねーねー隠者、にんげんはすき?」
唐突に質問され月星隠者は多少戸惑う。水をひとくち飲み、口を開く。
「.....好きでも嫌いでもないわ.....いや...正確に言うと好きになってはいけないの...私は隠れて静かに異端を排除するだけでいいの...」
ぐいっとコップに残った水を飲み干す。
「ふぅん...わたしはね、きらいだよ。だってやくそくをすぐにやぶるもん」
ヴィシャは変わらぬ笑顔で話し続ける。
「わたしね、むかしいもうとと孤児院でそだった...ってのはいったとおもうんだよね。それでここにきたりゆうがいもうとを殺されたから...なんだけど、もうひとつりゆうがあってね…」
月星隠者は無言のまま耳を傾ける。ヴィシャは笑顔を崩さなかったが鼻を少し赤らめていた。それでも話し続ける。
ーーーー
「お姉ちゃん聞いて聞いて!」
妹は姉の元へ嬉しそうに駆け寄る。
「あのね、彼氏出来たのっ!」
「かっ...彼氏?」
妹の後ろからひょっこりと顔を出した少年は照れくさそうに妹の手を握る。
「えっと...俺!絶対幸せにするから!結婚を認めてくだひゃっ!...さい」
姉はぷっと吹き出し、少年を撫でる。
「結婚...まだそんな年齢じゃないでしょー?でも、妹を幸せにするって誓えるなら許そう!」
「ぜっ、絶対幸せにする!」
何気ない幸せな光景。
この数秒後に絶望に直面するなんて誰が思ったろうか。孤児院は焼け、炎からは熱気に黒焦げになった何かと肉の焼ける臭いが押し寄せる。
空には吸血鬼らしき人物が高笑いをしながら燃える様を見ている。隣に一人いたが何もせずただじっと燃えゆく孤児院を見ていた。
三人は絶句し、その場にへたり込む。家が、人が、燃えている。妹と少年は手をしっかり握っている。
熱気でじわじわと地面も熱くなる。このままではいけないと確信した姉は二人を抱きかかえ近くの広場まで走り出す。
広場につく。いきなり走ったせいか足がつり、倒れ込むようにして中に入る。
「な、な、な、何あれ」
妹が歯をカチカチ鳴らしながら話している。いきなりの恐怖で震えてしまっている。少年も同様に震えていた。
空から一人、何もしていなかった人物が降りてくる。その目は死んでいて、何も写っていなかった。
「な、何...!?」
「...別に。逃げてる姿が見えただけだから、つい追いかけてきた」
男は肩についていた灰をはらいつつ淡々と話していく。
「お前が私達の家を焼いたの...!?」
震える少年と妹を抱きしめ、恐怖を表に出さないようにしつつ男に問いかける。
その質問をした途端、無表情だった男の顔が不気味な笑顔へと変貌する。
「悪いか?ただ僕は知りたかった事を知ろうと実験しただけ。人の肉の焼ける匂いが嗅げる機会なんてそうそうないからね...んで、君達が剣で斬られた時の感触が知りたいんだけど、協力してくれるかな?」
男は細身の剣を取り出しじわじわと三人の元へ寄ってくる。
「っ...うわぁぁぁぁぁぁ!!」
少年は涙目になりながら男の方へ石を投げる。頭の方に命中し男をふらつかせる。
「...ぅ...少年に石を投げられた時の痛みや感覚はこれ位なのか...ありがとう、少年くん」
少年はガタガタ震え涙をぼろぼろ流す。涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔で、怯えながら小さな口を開く
「つ...妻に手を出したら許さないからっ...!」
「妻?...君はその少女ちゃんと夫婦なんだね。いいなぁ、運命の相手がこんな早くに見つかるなんて幸せ者だね。大丈夫、安心して」
男はしゃがみ、少年と目線を同じにする。にっこりと笑顔で少年の頭を撫でる。男は再び立つと剣を握りしめこう言った。
「そこの三人まとめて送ってあげるから」
その直後に少年の身体は二つに分かれる。その場にいた全員は返り血を浴びた。
「ん...少年くんありがとう。新しい事が二つも知れた。そこの二人も後少しだけ協力してね」
もう一つ剣を取り出し二人まとめて斬る。姉は胸を、妹は背中を。
姉妹は薄れゆく意識の中、お互い離さないようにしっかりと抱きしめあった。
そして、気がつけば身体は妹、記憶や意識は姉といった形で目が覚めた。
広場には血だまりが出来たまま。
ーーーー
「.....ヴィシャ、泣くくらいなら言わなくてもよかったのよ...」
話し終わった後、ヴィシャはぼろぼろと涙を流していた。
「ううん、いーの。にんげんってひどいよね。やくそくやぶっちゃうもん隠者もそうおもわない?」
涙を袖で拭いながら必死に笑顔をつくる。
「......そうね.....幸せにするって言ったのに.....守って死んでしまった.....幸せにしなかった...」
「...うん。妹はわたしのからだになってそんざいしているけど、あの子は何にも...」
「.....残ってるじゃない.....記憶に」
「!!.....そうだね、ありがと隠者。ねむくなってきた、ヴィシャねるー」
そう言ってヴィシャは居間から出ていった。テーブルには涙のあとがついていた。
「.....大方狙いは紅影死鬼でしょうね.....剣を使うのはあいつくらいだから.....」
コップを洗い、布で水気を拭き取る。
「...ふぁ.....眠くなってきた…水を飲むだけのつもりだったけれど...しょうがないわね...」
テーブルについた涙のあとを布で拭き取った。
- Re: 逆十字の聖魔戦争 ( No.84 )
- 日時: 2017/05/12 02:55
- 名前: そーれんか (ID: qESkNdgF)
AM 5:25
カーテンから陽が差し込む時間帯。ヒューイはポーッとする頭を頬を叩いて無理やり覚醒させる。
「んぐぇ...痛い...」
ぐっすり眠れた、と言えば嘘になるだろうがそこそこ眠れた。二日酔いで頭痛のしない朝はなかなかにいいものだな、とヒューイはそう思いながら着替える為に服を脱ぐ。
「.....ん...ヒューイちゃんおはよー」
スレイがムクっと起き上がり、ヒューイと似たように頬を思いっきり引っ張る。みょーんと餅のようにのびるスレイの頬をヒューイはじっと見る。
「どうしたの?スレイの顔になにかついてる?」
「いや、何でそんなにのびるのかなって...」
「ほっぺの事?スレイのほっぺは特別だからね!」
スレイはもちもちと頬を触る。どこからか効果音が聞こえてきそうなくらいにもちもちしている。
もちもちもちもちもちもちもち
「...美味しそう」
ヒューイはじゅるりと生唾を飲み込む。そして腹がなる。
「ひ、ヒューイちゃん...いい匂いもしてるね、もうご飯かな?お着替えするぞー」
スレイも服を脱ぎ、着替えを始める
カチャッとドアが開く。聖人がひょっこりと顔を出してきた。
「あ、あの、ごは.....」
そしてヒューイとスレイを見て凍りついた。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!ごごごごごごごめんなさいぃぃぃぃぃ」
ドアを勢いよく閉められた。
と、ここまで十秒。ポカーンとした表情で二人は一部始終を見ていた。
「な、なんだったんだろ?」
「...ご飯が出来たから呼びに来たんだよね...?」
とりあえず二人は着替えを再開した。
着替えが終わり、居間へと行く。朝はパンと野菜スープ。質素だが匂いだけでも十分に腹が満たされそうなほど美味しそうだった。
「おはよう。ささ、出来てるよ!座って座って!」
再興天使はエプロンと三角巾ををつけて母親のように振る舞う。椅子に座ろうと床に目をやると聖人が土下座していた。
「さささささっきはごめんなさい!ぼぼぼぼ僕!そんなつもりじゃなかったんですぅぅぅぅ!!!」
聖人は鼻声で謝り続ける。
「い、いや気にしてないからいいよ」
ヒューイがわたわたしながら起こそうとする。ヴィシャはぷっと笑い聖人を指さす。
「せーと、あやまってもあいてにきをつかわせるだけだからあやまんないほーがいいんだよ、ばーかばーか」
「え、え、え、ききき気を使わせてすみません!誠心誠意謝らさせていただきますぅぅぅぅ...」
床にめり込むんじゃないかというくらい力強く土下座をする。
「ヴィシャ様!もう...ほら、聖人様も起きて!こうやって寝てる方が迷惑なんです!」
「うぇぇぇぇぇ...ごべんなざい...」
聖人は泣きながら椅子に座る。ヴィシャはまだクスクスと笑っていたが。
「.....食べましょう.....今日も主のおかけで食べていける...感謝の心をもってしてこの食事をいただきます…」
隠者は祈りを捧げ、皆も続いて捧げていく。皆が終わったあと、各自食事手をつけていく。
そして食べ終わり片付けを終え皆少しくつろいでいる。自室でヒューイとスレイがごろごろしているとドアがノックされ、静かに開かれる。
「.....出るわよ.....準備して...」
「!」
「.....雑魚処理よ...あいつらとは関係のない...唯の魔力に覚醒しただけの元人間...遅れないでね...」
隠者はドアをゆっくり閉める。
最近はあの魔術師達に気を取られすぎていたが、無論雑魚もいる。人間じゃなくなってまだ間もない元人間。少なからず雑魚を殺す事に抵抗を感じている聖戦士は少なくなく、こういったものはこういう別部隊へと流れ込んでくることが多い。
「...スレイ?どうした?」
「...へっ!ううん!何でもないよ。ちょっとぼーっとしちゃっただけ。いこ!ヒューイちゃん!」
スレイは身体に自作の爆弾を巻きつけ、ヒューイの手を引っ張る。毎度毎度この爆弾にヒヤヒヤさせられる。いつもヒューイ達は誤って巻きついている爆発しないか慎重に動いているがスレイは構わず動き回るから尚更だった。
ヒューイは武器の鈍器を改造し斧にした。まだ実戦では使った事はない。実験がてらこの斧を使ってみようと、ヒューイは斧を手に取った。
- Re: 逆十字の聖魔戦争 ( No.85 )
- 日時: 2017/05/13 03:30
- 名前: そーれんか (ID: qESkNdgF)
「描かれていないって...どういう事だ?」
「確かにアンナは聖側として実在している、それだけは言おう。だがその絵は魔術師達を描いたもの。何故アンナがいる?」
ルナテは溜息をつき、じっと絵を見据える。
「.....見えないね。大体そこは空白だろう?君には何が見えてるんだい」
「...俺にもわからない...アンナが実在するなら...いや、いい」
ルナテは無言でアピクの方を数秒見た後、ポケットから紙を取り出し不気味に笑い始める。
「...なんだいきなり」
「フフフ...いや、何でもないよ。...どうやら敵のお出ましのようだよ?どうだ?私も暇つぶしに付き合わせてくれないかい?」
紙をポケットにしまい、魔術を唱え始める。相手もこちらが気がついたのがわかったのか、窓を割って突入してくる。
「チッ...こいつらは窓を割るのが相当好きなのか!?毎度毎度割りやがって!」
アピクは苛立った表情で鎌を取り出す。
「"暗血夜弩弓"!...って、窓を割られて怒りを感じるのか...まぁうるさいという点なら同意するよ」
見た所聖戦士の固まりと一人聖騎士が来ているだけのようで見慣れた輩は見当たらない。聖騎士の身なりをした男が手を上げると聖戦士達は一斉に男の方に跪く。
「フッ...あぁ。窓を割ったのは謝ろう。自己紹介させてくれるかい?私は十人いる聖騎士の一人シェン・ダターチ。シェンとでも呼んでくれると幸いだね」
眼鏡を中指でくいっと上げ、キザな振る舞いを見せる。
「...俺ああいうタイプの奴無理なんだが。吐き気がする」
アピクは心底気分が悪そうにして口元を押さえる。
「...」
シェンは身体を震わせ引きつった笑顔で再び眼鏡を中指でくいっと上げる。
「信仰しててもこういう性格は歪みに歪んでるから修復不可能なんだろうな」
アピクのその一言でルナテは吹き出しシェンの眼鏡にはヒビが入った。
「...フッ...わ、わ、私の性格を侮辱するのはまだ左腕が吹き飛ぶくらいだ...だが神を侮辱した罪...万死に値する!」
シェンはアピク達を指さす。その瞬間に跪いていた聖戦士達も一斉に攻撃を仕掛けてくる。
「あはははは!!この戦争に興味なんて皆無だったけどこういう会話があるなんて!興味が湧いてきたよ!あははははは!!!」
ルナテは笑いを必死に堪え人差し指を突き出し、意識を集中させる。
"弩弓術・幻影矢之戒"
人差し指の魔法陣から無数の矢が飛び出し、聖戦士を無差別に狙っていく。
「フッ...この神に授かりし護りの力を甘く見ると後悔するからな!」
"眠姫のイバラ城"
イバラが聖戦士達を包み、矢を吸収したかと思えばイバラの中から標的を変えた矢が飛んでくる。
「っ...技名まで気持ち悪い...」
アピクはぼそっと呟いたつもりだろうがしっかりと聞こえていたようでまた眼鏡にヒビが入る。
「ククッ...迂闊に遠距離攻撃はできないんだね。ブフッ...」
シェンはプルプルと身体を震わせ胸にかけた十字架をぎゅっと握りしめる。
「神よ...本来怒りに任せて戦ってはいけぬと申されておりましたが...どうか...どうか今一度怒りに身を任せても宜しいでしょうか...」
繋げていた鎖を千切り、十字架を飲み込む。眼鏡を地面に投げ捨て、目を閉じる。
"守神"
- Re: 逆十字の聖魔戦争 ( No.86 )
- 日時: 2017/05/16 03:28
- 名前: そーれんか (ID: qESkNdgF)
守神の力は人を母のように包む。温かく優しいその力は子である人間の力を強くする。
異端達は背筋が寒くなる。その温かさが本当に気持ち悪くて、まるで心臓を直に握られているくらい苦しかった。
「...っ...アピク、そういえば君魔壁をはれるよね?だけど君は今の戦闘で魔壁はおろか魔術を使ってない...フフフッ」
ルナテは狂気に歪んだ笑顔を見せる。アピクは少し汗をかくが、視線をシェンの方に戻す。攻撃しようとすると、ルナテの手で遮られた。
「フフフッ...ここは私に任せてくれるかい?君は賢明な判断をしているから...ね」
答える間もなくルナテは紅い目を光らせ術を叫びながら唱える。
"黒剣ラダンスエニーク"
"黒槍タブーエレイヴ"
「アピクのお陰で大分解読が楽になってたよ。使いこなすには多少時間を要したけどね。どうする?返そうか?」
あの気味の悪い空気を発していた黒い剣と槍だった。その空気は充満することなくルナテの身体の周りにまとわりついている。
「あぁ...解読したのならもう俺には必要ないし使いこなす気にもなれない。お前にやる…ってそもそも俺のでもないんだがな」
「それもそうだったね、ではそっちの聖騎士に問おうか」
シェンは顔を歪ませ二人を睨みつけている。
「どうしてこんな物が教会にあるんだい?しかも魔の力を蓄えに蓄えた素敵な武器を」
剣と槍を指でなぞり、こびりついていた血をぱらぱらと落としていく。
「何故お前達がそれを持っている?そこは武器庫の底に押し込まれたもののはずだが?」
「質問を質問で返すな。お前は知らないのか?俺の屋敷に二人の聖戦士が来たんだよ。そいつらが持ってきただけだ」
そう言うとシェンは心底驚いたような表情をし、チッと舌打ちをする。
「あぁそうか...だから武器庫が...厄介な...」
シェンは眼鏡を拾い、スペアの十字架ネックレスを再び身につける。
「...私無謀に突っ込む程馬鹿ではないからな。だが...その武器を持った事、後悔した時にはもう遅い」
そう言い残し聖戦士達は一度撤収していった。
ルナテは剣と槍をしまうと、口からごぽっと血を吐く。唯でさえ赤い服を更に赤く染めるように。
「あーあ...やっぱりそう頻繁に使えるものでもないね、質問にも答えてくれなかったし」
特に驚く様子もなく腕で血を拭う。
「結局、あの剣と槍はなんだったんだ?」
アピクはガラス片を拾い、塵箱へと投げ捨てる。
「面白いものだったよ。片付けがてら聞くといい」
"その剣は神が創りし剣。神剣として祀られていたが一人の人間の過ちによって黒剣と化し災厄をもたらす剣として恐れられるようになった。その人間が世界で最初の異端とされる。その人間の名を取ってラダンスエニールと名付けた"
"その槍は最初の聖女...即ち最も神に近い人間とされる者が創り出した。だがその聖女は堕ちた。異端に心を壊され、その瞬間に槍も黒く変色し人々を騒がせた。焦った聖女は槍に触れてしまいそのまま消え果てた。その槍は聖女が居なくなった途端暴れ出し、神が無理矢理抑え鎮まらせた。消えた聖女を慰める為、槍には鎮めた神と聖女の名を混ぜたものにした"
「...とまぁ、こんな感じかな。どちらも聖が創り出したはずなのに魔に染まってる」
ブーツでガラス片が残った床を踏みジャリジャリと音をならす。
「最初の異端ねぇ...魔力覚醒する条件をよくクリアしたもんだ」
「違いない。聖に対する反逆心、魔術回路数個記憶。どうやって回路を覚えたんだろうね...あふ。アピク、今日は部屋を借りていいかい?私の屋敷今入れなくてね」
ルナテはけらけらと笑いながら煙草に火をつける。
「好きにしろ」
素っ気なく返事をし、アピクは下唇を噛み、箒を握った手を力強く握りしめた。
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