複雑・ファジー小説

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Gray Wolf
日時: 2011/05/19 17:52
名前: yuri ◆F3yWwB7rk6 (ID: DOGZrvXb)

『君みたいなのが弟になってくれて、とっても嬉しかったよ』



ただひたすらに雫を降らす闇の雲。

その雫を受け止めている灰色のレンガで出来た道が紅く染まっていく。

その正体は、荒れた桃色の髪の女性が胸から出している「血」であった。

その女性にまたがる様に四つん這いになり、顔を見つめている金髪の少年の姿も見られる。

女性の身体からは温もりなど感じない。
むしろ雨で冷えた少年の身体よりも冷たかった。

もう、死んでいる。


視界が一瞬霞み、雨粒よりも生暖かい液体が頬を伝っていく。


何故。

何故なんだ。

何故こんなにも冷たい。

何故死んだ。

何故こんなにもこの人は満足な顔を、幸せな顔をしているのだ。



少年は自らの拳を力いっぱい握り締め、それを地面に目掛けて振り下ろす。
鈍い音が少年の耳にも聞こえ、指を見ると擦り傷の跡がはっきり表れている。







「ちくしょお‥‥‥」









はい!どうも!
yuriと申す者です!!!
クリックありがとうございます!!
この小説はとある掲示板で書いたものの、板違いという事に気づき、移させた物です。


《作者コメント》 4月7日
Gray Wolf、引越ししました! イエーイ!!
これからはここ、複雑・ファジーで描いていきたいと思います!!



《※注意※》
1:この小説は多少のパクリはありますが、オリジナル中心です。
2:中傷だけは勘弁してください。 デリケートな作者の心がブレイクします。
3:ファンタジーと恋愛とギャグとを5:3:2の割合で書きます。が、全体的にはシリアスものです。
4:まれに描写が色々な意味でやばかったりします。苦手な人は戻ってください。
5:この小説は長編となっていますがこのわたくしめの精神が頑丈だとおよそ100話以上に到達するものです。それに付いて来られる人だけ読んで下さい。


《キャラ画像》
実はこの作者、知っている方もいると思いですがこの小説は元は作者の暇つぶしに描いていた漫画を原作にしているのです。
前までは出来なかったのですが、アナログでなら投稿が可能になりました
ですが、皆様からキャラ紹介を参考にキャラ画像を募集し続けます。

・作者の描いたキャラクター達 >>13



キャラ紹介
キャラクター紹介・一 >>12
キャラクター紹介・二 >>57


グレウル用語集
基本用語 >>14
魔術用語 >>15

《目次》

〔本編〕
【第1章:闇に舞う獣】 >>5
【第2章:姫守りし騎士】 >>43

Re: Gray Wolf  移りました ( No.31 )
日時: 2011/04/07 19:05
名前: yuri ◆F3yWwB7rk6 (ID: DOGZrvXb)

 第 2
     3
                  協  力  
     話                要   請



無造作に伸ばした白髪の混じる黒い髪。
胸元のはだけた黒いシャツの上にきた三角の連なる模様で縁取られた黄色いジャケット。
橙色の長ズボン。
身長は最早180cmを超えていて、大男としか表現しようのない体格。


「お久ッス、ボス〜」
そんな机越しにある威厳を感じさせる姿を目の前にしても全く動じないレンはスタスタと彼の横へ行く。
そのレンを頭上から脳天に目掛け、鉄建を振りかざす。
まともにヒットし、部屋の隅をフラフラと歩いていくレンはそのまま地面へ倒れた。
「けっ。 てめえ一ヶ月も留守にしやがって。 ソンぐらい掛かったからには相当な逸材は連れてきたんだろうな」
「も、もちろんです〜。 俺でも、敵わない奴、連れてきました〜」
低い声が頭痛のような痛みを感じる頭に響く。
レンはあまりの痛さに途切れ途切れになりながら横倒れの状態で言った。
男は笑いながらユーリに視点を変え、ジロジロと見つめる。
ユーリにはそれがとても不愉快ではあったが、堪えて黙る。
「おいガキ。 もう少しこっちに来な。 そのツラ、もう少し拝んでおきてえ」
言われるがままにユーリは一歩一歩前へ出る。

そして————————




金属がぶつかり合う高い音が部屋中に響き渡る。
男は机の陰にあった大剣を取り、机の上に立って振り下ろしていた。
対するユーリは、腰に付けていた刀を取り、鞘から抜き放ちながらその一撃を受け止めていた。
シエラも、レンさえも口を開けっ放しにしてしまう。
未だ切っ先のその先にいる人物を見続ける少年の鋭い眼光を持つ瞳。
その目を見て、男は笑いながら剣にかけた力を抜き、机から軽く飛び降りた。
「レン。 お前良い輩を連れて来やがったじゃねえか。 今回は良い仕事をした、と褒めてやっても良いぜ」
大剣を机にまた掛け、ユーリを見た。

「おい、ガキ、小娘。 お前らの名前は」
ユーリは一拍の間を置き、口から無愛想な声を出した。
「ユーリ、ユーリ・ディライバル」
「シ、シエラ・ハーティアです‥‥‥」
シエラも声を震わせながら自分の名前を告げた。

「俺はダンカ・ドゥールだ。 それじゃあ、お前らは傭兵団(ウチ)に入るのは前提で話をしてやってもいいんだよな?」
机に戻り、イスに座って踏ん反り返る。
いつの間にか彼の横に居たレンがその事について話をしようとした。
が、それを言い切るよりも先にユーリが口を開いた。
「残念ながら俺はハナッから此処に入ろうと思ってきたわけじゃないぜ」
「何?」
その言葉を聞き、ダンカは表情を少し険しくする。
それに気づいたレンは少し否そうな顔をし、目線を壁へ逃がす。
「一応俺にも職ってもんがあんだよ。 そっちも此処と同じ肉体労働がたまにあんだが‥‥‥。 ま、こっちは正式な職だし、稼ぎはいいかもな」
「ホウ。 なら何故悩んでんだ? どうせ同じなら稼ぎが良い方にすればいい話だ」
徐々に顔の険しさが酷くなる。
気づいたシエラも段々恐ろしく感じてきた。
だがそれでも話すことをユーリはやめない。
「結論から言わせてもらうと止めさせてもらう。 個人的に思い入れがあるからなんだが俺には自分の街ってもんがある。 この街にはそれよりもいい所がねえ。 つまんねえんだよ。 だから止める」
言いたい事はすべて言い終わったのか、ユーリはそこで話を止める。
ここで溜めていた怒りが爆発すると思っていたが、意外にも潔く残念そうに顔を伏せ、考え込んだ。
「そうか‥‥‥。 なら————————」



そこでシエラの真後ろにあった扉からノック音が聞こえる。
そして、女性らしき高い声がドアの置くから聞こえてきた。
「失礼します。 ヴェルゲンズ国行政会より依頼が来ています。 よろしいでしょうか」
言おうとした矢先に途切れてしまったので不服には思ったが、仕方なく返事をした。
「ちっ。 お取り込み中だったんだが‥‥‥。 まあお偉いさんがいるとなっちゃ仕方がねえ。 入れ」

開いた扉の向こうには凛々しい雰囲気を漂わせる短髪の女性。
シエラを、そしてユーリを通り過ぎ、ダンカの前へ立ち止まる。
「反国家組織「リナータ」へと攻めてほしいとの事です。 軍では動かせる人員が少なく、傭兵団を雇用しないと手に負えないそうです」
「あー。 あの厄介な野郎どもか‥‥‥。 成程、分かった。 下がっていいぞ」
その時、不自然な笑みを見せた。
ユーリにはそれが何を意味するかが分かる。
「おい。 お前の職は何だ?」
「‥‥‥何でも屋。 引越しの手伝いや用心棒とか、色んな仕事が任される」
いやな予感がしつつも、ユーリは取り合えず答える。
そして彼の笑みは更に悪臭が漂った。
「そうか。 なら依頼だ。 お前ら二人今言った任務、レンと一緒に言ってくんねえか?」


————————やっぱな


いやな予感が的中しつつも、それを文句に出す事無く話す。
「おいおい。 二人って俺はともかくシエラまで行かせるつもりか? 人が悪いな、あんたも」
「ふん。 お前もそれは覚悟の上で此処に着たんだろう?」
まあな、とその言葉を最後に、シエラに振り向いた。

「んで? どうする?」
いきなり質問されたので、シエラは少し驚いた。
先ほどの緊張の空気で、急な出来事に敏感に反応したのか体が跳ねる様に一瞬震えた。
「確認だよ。 早速行く事になっちまったけど、行く?」
だが、ユーリの優しい言葉に、少しだけ気持ちが落ち着いた。
シエラは頷き、ユーリに笑顔を見せる。
「うん。 私は大丈夫。 いつでもいいよ」
「そっか。 それなら良いんだ。 じゃあ俺の後ろから離れるなよ?」
ユーリも笑顔で返したが、シエラは笑顔から疑問の表情へ変わった。
「着かず離れずで。 もしシエラが危険になったら俺が助けるから、シエラは俺がやばいときになったら助けてくれな」
歯を見せて、ユーリは満面の笑みで当然のようにシエラに言う。
それがシエラにとってはとても嬉しいことこの上ない。

自分のような弱い人物でも、背中を預けてくれることが嬉しい。

自分を認めてくれる事がとても嬉しかった。

「うん!」
シエラも満面の笑みでユーリに返した。
ユーリは微笑みながら、顔をダンカに向ける。
「おい。 話はまとまったか?」
ユーリはその低い声とは裏腹に、少し声を上げて言う。
余裕そうにズボンのポケットに手を突っ込み、足を肩幅ほどに開く。


「ああ。 いいぜ。 明日の朝、その「リナータ」とやらに行く」




                協   力


                  要

                  請



                  終



Re: Gray Wolf  移りました ( No.32 )
日時: 2011/04/07 19:05
名前: yuri ◆F3yWwB7rk6 (ID: DOGZrvXb)

    第  2 
         4  話

                   タ ー ナ リ

リレイス山脈
ヴェルゲンズ国北西部にある山の連なり。
高山が連なっているため、自然の豊富なふもとより、草木が少ない。
その場所にユーリ、シエラ、レンは立っていた。

否、彼らだけではない。
少数だが軍人、それに他の傭兵団、ヴェルゲンズ担当の国際警察組織「ガーディアン」すらもいた。
ユーリはリナータという組織の名前は知らないが、この人数で相当な戦力を持っていることは理解できた。
作戦はそれぞれの集まったグループで此処に考えるという事らしい。
既に動いているところもある。 青を貴重とした制服、軍ではない、ガーディアンと呼ばれるものだろう。


「‥‥‥俺たちも早く行ったほうがいいんじゃねえか? このまんまだと手柄取られるぞ」
「まあ、そうなんだが、それなら少し近道した方がいいな」
「近道? お前ここに来たことがあるのか?」
レンがさり気無い口調で言った言葉に疑問を持つ。
そして、それをぶつけたユーリに嫌に微笑んだ。
「あんま舐めんなよ? 確かに此処にきたことはねえが、辺境の土地は慣れてんだよ。 なーに、この山なら大体の構造は勘でわかるさ」
「へえ。 じゃあその御自慢の勘ってやつで絶対につく自信はあるんだなあ」
皮肉っぽくユーリが笑い返した。
その指摘には流石に言い返し切れないのか、そのまま黙り込む。
だが、開き直ってその彼の言う近道へと足を踏み入れんとした。




巨大な黄色い腕に出来た黒い斑点の腕の一撃が降りる。
だが当たった地面には既に人の影もない。
そこにもといた人物は既に後ろに回り、死角から斬り下ろす。

二足歩行の豹の最後の一匹を斬り、ユーリは刀を肩に担ぐ。
「おい‥‥‥。 お前の近道とやらは随分危険じゃねえか。 どういうことだ?」
「待てって! 近道イコール安全って考え方かよ! 近道はリスクが大きくてなんぼだろ!!?」
同じく豹のキメラを倒し終わったレンはユーリの小言を指摘する。
その光景を見ていたシエラは他にもキメラが来ないかと辺りを見回す。
だが、幸いにも先ほど倒したのが最後らしく、この辺りにはキメラはいない。


リレイス山脈のような山脈の構造上、山に空洞に似た隙間が出来るらしい。
それを抜けると、崖と崖の隙間の底に行くことができる。
この谷は、色々な場所へ繋がっていることが多く、うまく行けばリナータの場所へ行くことができるそうだ。
そして、今いる場所はそのリナータの拠点の付近であった。
確かに近くへ行くことはできたが、獣道であった為にキメラが多い。
おかげで無駄に体力と覇気を消費したユーリは溜息をつきながらリナータ本拠地へと進む。



それからしばらくして、居た場所である広場の周りの谷から武装した集団が出てくる。
白い上着に身を包み、ライフルを構えている。
それを見て、ユーリは面倒臭そうに頭をかき、刀を構えた。
「ったく。 ホント冗談じゃねえっつの」

斬る体勢になり、突進した。
銃口から火花が出、銃弾が直進する。
それを次々かわし、弾く。
人間の力と動体視力でライフルの弾を防ぐユーリに驚きを隠せないリナータと思しき者が慌てて銃弾を打ち込んでいく。
だが、余裕そうにそれをかわし、ユーリはしゃがむように体勢を低くし、銃身を斬り離した。
それに驚く余地も与えず、蹴りを一人一人に叩き込んだ。
シエラの近くに居た一人が、ライフルから弾を出した。
回転しながらシエラの心臓に進んでいく。
しかし、突如彼女の周りから風が吹き荒れ、弾丸は二つに割れ、勢いを失って地面に滑り込んだ。
そして、彼女の前に現れた緑色の狐から突風が吹き、男を大きく吹き飛ばす。
あまりの強さに、戦意を喪失しつつあるリナータの連中が後ろに下がる。
その肩に、複数のクナイが差し込み、痛みによるショックで悶絶する。
近くには札を右手に持つレンの姿。
「残念。 此処で逃がすとめんどくさくなるから気絶だけでもさせてもらうわ」



扉などない、人が10人並んでも余裕では入れるその入り口の奥は広く、機械類が多く並んでいる。
「ふーん。 此処がリナータの拠点ねぇ。 思ったより普通だな」
ユーリがとぼけた口調で感想を述べる。
それにレンも同調した。
「そうだな。 もっとハイテクなもんがあると思ってたけど—————」

突如、後ろから気配を感じる。
その後ろには巨大なキメラ。
ゴリラに見える体格ながら、ライオンの顔つき、蛇のような尾。
何故ここにキメラがいるのかなど関係ない。
突然の襲撃に、今のところは逃げる選択肢しかないと判断したユーリは、二人に大声で伝える。
「逃げるぞっ!!!!」
固まっていた二人はその声で夢から覚めたように気を取り戻すと、全速力で逃げ出す。
ユーリの考えでは、更に広いところへ出て落ち着いてから臨戦しようと思っていた。
しかし————————



天井近くの足場から人影が見える。
ユーリはそれに気づいたが、しっかり見る間もなく前を見た。
そしてその影の正体は足場から飛び降り、床へ着地する。
右手に構えたナイフから炎を出し、キメラへとぶつける。
紅蓮の炎は後ろを振り向いた三人の視界を赤に染めた。
苦しみ悶え、皮膚を焦がしていくキメラ。
キメラとそれを焼く炎を背景に、その人物はユーリたちを見る。

茶色いショートヘアの可憐な少女。
ガーディアンの青い制服を着たその少女は彼らを驚かせたが、中でもシエラが最も驚いていた。



「レフィちゃん‥‥‥?」





            リ

         ナ  ー  タ



                       終

Re: Gray Wolf  移りました ( No.33 )
日時: 2011/04/07 19:06
名前: yuri ◆F3yWwB7rk6 (ID: DOGZrvXb)

   第        話
                勇  猛  な  少  女
     2    5


前髪を左から分けた柔らかい質の茶色いショートヘアー。
肩の部分だけ肌が露出した袖の青い服。 青く短いスカート。
V字型の刃に柄の埋め込まれた二丁のナイフを両手にそれぞれ持つ。
良く見れば、刃に魔方陣が埋め込まれている。 恐らくそれで炎を出したのだろう。
だが、幼い顔立ちの少女が巨大なキメラを倒したのは、驚嘆に値するものだ。


驚くレン。 静かに彼女を見据えるユーリ。
そして、何より驚くシエラ。
「レフィ‥‥‥ちゃん…?」
「ん? 知り合いなのか?」
思ったことがどうやら口に出てしまったらしい。
ユーリに訊かれ、半ば反射的に答える。
「え、えっと‥‥‥こないだウチのクラスに来た転校生の子だけど…」
それを聞き、ユーリはまた考え込みだした。

無理もない。 シエラと全く同じ年齢の者がガーディアンで不思議に思わない方がおかしい。
だが、ユーリはいち早く納得し、レフィの元へ早足で歩み寄った。
「ああ、ごめんな。 ちょっと驚いたけど、お前シエラの友だちなんだってな? そりゃ——————」
「黙ってください。 今此処は戦場です」
その言葉がユーリの足を制した。
ぼんやりと立ったまま、黙り込むユーリに、更に言葉を重ねる。
「何故貴方のような方が戦場にいるんですか? 戦場には必要ありません」
未だにユーリは黙り続けている。
それに呆れ果てたのか、溜息をついた。
「分かりませんか。 貴方のような浮ついた方は戦場から帰ってくれて構いません。 いえ、帰ってください」
少し厳しい口調。
此処まで言われれば、誰でも言葉を失い、何もいえないだろう。
だがユーリは違い、終に口を開いた。

「ちょっと待てよ。 確かに戦う場所なんて選ぶもんじゃなかったな。 けどその浮ついた考えでも、生き残ることはできたんだぜ」
その開き直りに少し呆れを感じながらも、変わらず言葉を返す。
「生き残ったか否かの話ではありません。 周りに障害が出るといっているんです」
「分からねえのか? 感情を無くしてると開けない活路ってのがあるんだよ」
ユーリの口調も厳しさが増してくる。
いつもは女性に対して優しいユーリだが、真面目なときはしっかり自分の意見を本気で伝えてくる。
女性ばかりに優しいといえば、それは半分以上嘘になる。



「分かりました。 そこまで言うのであれば、このガーディアン第28警護班、レフィ・リホルンが同行の上、進むことを許可します」
少しついた溜息の後に言った言葉だった。
それを聞くと、ユーリは微笑みながらレフィに歩み寄る。
「それなら良かった。 俺もお前みたいな可愛い子なら歓迎するよ」
右手を差し出し、握手の合図を出した。
少しだけ彼女の顔が赤くなったが、すぐに平静に戻り、軽く手を取る。
そしてすぐに奥の廊下へと歩き出し、ズカズカと前へ進む。


だが、レンの言葉がレフィを止めるどころか、表情を険しくさせる。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。 お前の名前‥‥‥まさかレイス・リホルンの親族か?」
「レイス・リホルン? 誰だそいつ」
ユーリが素っ頓狂な声で訊いてきた。
レンは意外そうな顔でレフィに向いた顔をユーリに振り向かせる。
「知らねえのか? 第3戦闘班の班長で、ガーディアンの主戦力足りえる男だ。 結構有名なんだがなあ」
レンの説明で一応理解したが、微妙にわけの分からない部分があるのか、ユーリは適当な返事をする。
全員がレフィを見、彼女は口を開く。
「ええ、そうですよ。 確かに私は彼の妹です」
「成程な‥‥‥。 それでそんなお堅いわけな」
その言葉がレフィの顔を更に険しくさせた。


だがそこでユーリが割って入ってきた。
「おい待てって。 この娘がどういう奴の妹だろうが従兄妹だろうが知らないけど、あんまそれだけで固い奴って判断するってのはどうなんだよ」
言葉でレフィを庇い、レンをたしなめる。
彼も流石にひどかったと思ったのか、頭を下げて謝った。

ユーリはレフィに振り向き、微笑む。
庇ってくれた姿に見惚れたのか、レフィは思わず赤面する。



「そんじゃまあ、行こうぜ」



    勇  猛  な

                 終
     少   女

Re: Gray Wolf  移りました ( No.34 )
日時: 2011/04/07 19:06
名前: yuri ◆F3yWwB7rk6 (ID: DOGZrvXb)


      第   2   6   話

            龍
            の
           キ メ ラ
          化 け 物


ライオンと熊が一体化したような5匹のキメラが咆哮しながら走り出す。
低い体勢で睨む先には対抗して走るユーリ達であった。
キメラは口を開け、爪を出し、振り下ろそうとする。
それよりも先にユーリは前方に勢い良く跳躍した。
そして右足を前方に突き出し、腹の真ん中へ命中させた。
弾力のあるそれの中に足が軽くめり込み、そのまま力を入れると、キメラは吹っ飛んだが、同時に自分の体も後ろへ小さく弾かれる。
少し体勢を崩しながらも何とかしゃがむ様に着地し、立ち上がる。

その動作の間に既にレンは一体のキメラと交戦しており、レフィもまた、右手のナイフから魔術を発していた。
何より驚いたのはレフィ。 さっきまで炎を出していたのに、今度は高圧水流—————水属性の魔術を発している。
一つの魔方陣で複数の属性を扱える者は珍しくないが、あの年で、という事は余程魔術に精通しているのだろう。


ユーリも近くに居たキメラの懐へ飛び掛り、両足を斬りおとす。
だが、本能で動いている彼らはユーリを喰らおうと、腕の力で移動し、大きく口を開けてユーリに飛び掛った。
一瞬驚いたが、心配の必要はない。
シエラが使役する幻獣—————コンクが突風を発し、攻撃を止めるどころか、後方に吹き飛ばした。
ユーリは微笑しながら走り、跳躍し、仰向けに倒れたキメラの左胸へ刃を埋め込んだ。
上げた叫び声はいつしか小さくなり、やがて生気と共に止まった。
ユーリは振り向き、ニッと笑う。
「ありがとな、シエラ。 お前がいなきゃ結構やばい怪我してたよ」
「ええ? そんなことないよ。 私そんなに役には立ってないかも‥‥‥」
自分を卑下するシエラにそんなことない、そんなことない、とユーリは優しく慰めた。
そして、既に扉を見つけていた彼らは、そのまま扉の奥へ足を踏み入れんとする。

開いた巨大な扉の向こうは、巨大な広間。
と言うほどではないが、80cm×80cmのそれなりに大きい正方形の部屋だった。
そして、その中央付近に統一して白髪が生えた白衣の老人。
服装からして医者か何かかと思ったが、雰囲気から全くその感じからしない。
怪しい、と言うより奇怪な雰囲気がある。
「おやおや、どうやらお客のようだ‥‥‥」
歯を見せながら、老人は笑う。
前歯の一部が抜けているため、口の中が少し見える。
「あんたがリナータとかいうやつの親玉か? 随分老けてんなあ」
「ふぁっはっは‥‥‥。 ウチのボスは既にここにはおらんよ‥‥‥」
「何?」
彼の未だ不愉快に笑う顔を見ながらユーリは訊く。
しかし彼はその疑問に対する答えなど出さず、話を進める。
「じゃが‥‥‥まあ、お前らにふさわしい相手ならおるぞ」
ほれ、と言う言葉と共に懐から小さな機械を取り出す。
そこにある小さな突起を押した直後、轟音が彼の後ろから響く。
それに混じって聞こえる鳴き声らしきものは、ユーリ達の耳をつんざいた。


そして出てきたのは巨大な化け物。
作り話や昔話、そういった現実性のないものならば確かに見たことがある。
だが、写真や絵などで見るものではなく、目で、直接、スクリーンなどなく見ている。
5m以上の体格、巨大な翼、鱗の見える巨大な尻尾、強靭な爪や牙の生えた巨大な腕や口、胴、腕、尻尾、翼、全てを包む硬い皮膚。

龍の、化け物だった。

そんな事があるはずがない。
現実に存在するには不可思議この上ない生物だ。
だが現にその龍と思われる化け物は彼の後ろにで開く巨大なシャッターから出てきている。
ユーリは驚くが、平静を保ちつつ訊く。
「おいおい‥‥‥こんな現実離れした奴は見たことねえよ。 キメラか?」
「そうじゃ! 大蛇、鷹、ライオン、熊の4種類のDNAを合成して作られた、このキメラ! 更に、見てくれだけではないぞ‥‥‥やれいっ!!」
白衣の男は手で指示を示し、それに応じるように、手の平から赤い光をだす。
そしてユーリに向かってその手の平と同じぐらいの大きさの火の玉を飛ばした。

即座に反応し、後ろに大きく跳んだ。
その直後、ユーリの居た場所は炎上し、焼け焦げる。
口を開けっ放しにしていたユーリ達を嘲笑いながら言った。
「こいつの手の平を見てみろ‥‥‥ほら…魔方陣が見えるじゃろう?」
言われた通りに龍の手の平をを見ると、確かに魔方陣が刻まれている。
「獲物を狩る、戦闘本能だけに長けたこやつは!! 魔方陣を操ること、すなわち魔術を使うことが出来る」
狂ったように声を上げ、高笑いする。
厄介なことだが、飲み込まなければならないこの現状に、ユーリは舌打ちする。
「ちっ‥‥‥何処の勇者冒険ゲームだっつーの」

Re: Gray Wolf  移りました ( No.35 )
日時: 2011/04/07 19:07
名前: yuri ◆F3yWwB7rk6 (ID: DOGZrvXb)


「ハハハハハハハ!! このキメラを大量に生み出し、生物兵器としてこの国を潰す!!! さあやれい!!! こやつ等を殺すんじゃっ!!!!」
余りの思い上がりに大声を出し、ユーリ達を指差した。
だが動かない。
決して動けない状況ではないはずだ。 だが動かない。
「何をしとる!!! 早く奴を———————」
後ろを振り向きながら龍をたしなめた。
それで分かった。
龍が、白衣の老人に視点を向け、今にも殺そうとしていることを。


龍は老人の指示に逆らって歩く。
老人は逃げようとしたが、尻餅をつき、腰を抜かしたため逃げられない。
巨大な右腕が振り上げられる。
「待て!! わしじゃ!! 主じゃ!!! 反抗するというのか!!! 止めろ‥‥‥止めろおおおおおおおおああああああああああ!!!!!」
直後、振り上げた腕は老人に向かって下ろされた。
手の平と床に挟まれ、老人の体は一瞬でつぶれ、床につけた指と指の間から血が漏れている。
その光景に脅えざるを得なかったシエラやレン、レフィ。
またこの状況を面倒がっているユーリ。
「おいおいおいおい、しっかり飼育しろよ…。 こんな奴街に出たらヤバイだろ‥‥‥」


龍は翼を使い、一気に天井へ飛び上がった。
その際に生じた風圧は、彼らの体を軽く吹き飛ばしそうな威力だ。
それに怯み、また龍を見るとその天井を炎で突き破った。
天井からコンクリート製の破片が落ち、一つだけユーリ達に向かう。
それを納刀状態の炎牙斬で破壊し、再び龍を見る。
が、すでに外に出ていて、それを理解したユーリ達はすぐに出口へ向かうべく、来た時と反対方向を走り出した。




集まっているは傭兵団、国軍、ガーディアン。
全員リナータを壊滅させるために集まってきた。
だが、目の前にあるリナータの拠点、巨大な建造物の上に立っているそれを見て、全てが驚愕の表情を浮かべていた。
龍は両手から魔術で火の玉を生成し、下にいる者たちに目掛けて飛ばす。
直線状に飛んでいくそれは、彼らの近くで当たり、また当たって爆発する。
そしてまた上空へと飛び、高速で空を駆けた。

その後、ユーリ達は巨大な扉のない出入り口から飛び出し、走ってくる。
ガーディアンがその中からレフィを見つけ出し、声を上げた。
「レフィ!! どうだった!!? 私達の時間稼ぎの成果は、ボスは倒した!?」
「班長! そんな事言っている場合ではありません!! 今すぐあれを追いかけないと———————」
「ユーリ!」
レフィが班長と呼ばれる人物に事の説明を大雑把ながらも説明していると、連歌声を上げる。
直後、レンやシエラと一緒に固まっていたユーリはおらず、彼らが見るその先を見ると、ユーリが全速力で走っている。

しかも、崖に向かって。

ユーリはその地面の縁で跳躍し、宙へと舞った。
見渡す限りの山と森。
その景色が大きく霞み始め、下から吹く風で長い金髪とコートが暴れだす。
全員が驚愕し、レン、シエラ、レフィは勿論、一部の者が崖に駆け寄り、ユーリが落ちたその先を見た。
その時既にユーリは大木の太い枝に足をつけ、立っていた。
「ユーリ! 何やってんだ!!! そんな危ない——————」
「こんな非常時に、道なんてわざわざ選べっかっての。 なーに、俺が追い詰めとくから、お前らはゆっくり追いかけな」
大声を自分に向けたレンにユーリは言い返す。
じゃな、と右手を少しだけ上げ、近くにあった大木の枝に飛び移る。
そうして樹から樹へ飛び移り、ユーリの姿は森の中へ消えていった。

ユーリは上空を飛ぶ龍を見ながら木の枝を足場にして追っている。
その途中にあった崖へ飛び掛り、刀を突き刺し、落ちないように固定する。
そのまま斜面角度が激しい崖を地面の様に走り、頂上まで一気に到達する。
もう一度上空の龍を確認し、今度は草の生い茂った地面を走り出す。
木々を抜け、そしてまた見えた崖の下へ跳び、幾つか著しく突起していた岩壁の一つへ着地する。
目の前には山で囲まれた、山脈特有の盆地と呼ばれる土地。
通常の盆地よりは小さいが、中々見渡せる広さであった。
龍はそこで動きを止め、小さな盆地へと下降する。
ユーリから一番遠い、対称の位置にあった高台へ羽を休ませ、足を着ける。


ユーリの存在に気づいていた龍はこの世の生物では聞いた事のない、鳴き声、雄叫びをあげる。
遠くにいながらも互いを威嚇し合い、睨みあう。
ユーリは岩壁から勢い良く跳び、龍は翼を使って飛び上がる。
その動作の途中にもお互いは睨み合い、そして———————


人間と、人知を超えた生物との戦いが、このリレイス山脈盆地で始まった。





          龍  の
             キ    メ    ラ
            化   け   物


                 終



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