複雑・ファジー小説

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復讐 5年の歳月を経て……
日時: 2011/07/28 17:45
名前: コーダ (ID: n/BgqmGu)

 え〜…皆様初めまして!!コーダと申します!!

 このたびはこちらの小説カキコで私のオリジナル小説を投稿していきたいと思っております。しかし、過度な期待はしないでください。あっ、こんな小説かぁ…程度の期待で良いです。

 小説の内容は刀と魔法のファンタジーだと思います。(私でもジャンルが少々わかっていない。)時にはこれファンタジー?という物もありますがそこは温かい目でスルーしてください。

 小説に登場する人は人間や獣人、巫女などさまざまです。

 それでは、これで長ったらしい挨拶を終了します。小説のほうは編集が終わり次第投稿いたします。

 それではまた〜!!

 なんと参照が400を超えました!なんという出来事……これは、夢?幻?読者様!ありがとうございます!

謎の企画へ→>>91

※お知らせ

 これから、大規模な文章訂正を行います。なので、いつもの書き方から、一気に変わります。
 しかし、更新も同時並行に、行っていきますので、ご安心ください。

※お知らせ2

 そろそろ、溜まっていた小説のコピーが終わりそうになってきました。
 なので、これからは地道に作成作業もしていくので、更新速度は遅くなりますことを、お知らせします。

※お知らせ3
 突然ですが、私小説を掛け持ちしました。なので、こちらの小説はとんでもなく更新が遅くなると思います。

※追記1

 私の小説は戦闘描写が多いので”血”や”死”などの表現が多少ありますのでご報告いたします。

※追記2

 秋原かざや様に私の小説を宣伝していただきました。本当にありがとうございます!!

      宣伝文章を下記に記します。


————————————————————————

 もう、今となっては過去になるが、俺は昔、復讐しか頭になかった男だった。
 これから話すことはウソ、偽りは全くない……復讐のきっかけ、復讐符の終止符、これからについて……隠さずにここに記すとする。

「東牙(とうが)殿!! 今日はお祭りですぞ!!」
「騒がしい爺さんだな……どうせ規模の小さい夏祭りだろ?」
 屋根が全て瓦で覆い尽くされ、玄関の正面には立派な門構え。
 外から見ると、縁側にたくさんの襖が見えた。

 始まりは、その小さな夏祭りでの出会い。

「だーかーらー!! なんでこの商品は、何度撃っても倒れないのよ!? おかしいでしょ!?」
「おかしいたってお嬢ちゃん? 倒れないもんは倒れないんだよ」
「いーや!! 絶対なにか細工しているに違いないよ!!」

「おい……俺は女だからって手加減はしないぞ……」
「そっちこそ覚悟は出来てるの!? 私に逆らったことを深く後悔させてあげるんだから!!」

 そういって、少女は。

「グリモワールオブエレメント・サラマンド、第1章「バーンストーム」!!」
 東牙の足下に現れたのは、六角形の魔法陣。そこから激しい炎が噴き上げた!!


 ————ひとつ、話をしよう。
 ある家に決まりがあった。
 それは、破ってはならぬ厳しい掟。
『他人に振り回されず、自立して生きる』
 その家の者を勝手に振り回すことは、斬られても文句は言えない。
 また、自分から振り回されてしまえば、自分が死刑となる。
 そんな厳しい掟があった。
 そう、俺がいた鞘嘉多家は、そんな厳しい掟があったのだ。


「一体どうしたんですか?」
「それがですね……今日の朝、蓮花お嬢様が誘拐されてしまったんです! 犯人は、確か……“鞘嘉多”と言ってましたね」

 幼い俺が彼女、蓮花(れんか)に振り回されてしまったことがきっかけで……。


「ちょっとそこの爺さん!! 私をどうするつもりなのよ!?」
「おやおや……お嬢ちゃんは、自分がどんな状況か分かっていないようですな。……我々鞘嘉多家後継者、鞘嘉多 東牙殿を引き連れたという罪で、公開処刑ならぬ公開死刑になろうと」
「!!」

「聞け貴様ら!! 俺は鞘嘉多の決まりを反対する!! そして俺は自分の名字を捨てて完全に鞘嘉多の縁を切る事にする!!」

 家との縁を切る事を決意した。

「ああもう!! じれったいわね!! この際、敵か味方かとっとと決めちゃいなさいよ!! せっかく東牙は覚悟決めて、ここに殴り込んでいるのよ!? あんたも覚悟くらい持ったら!?」
「……ふふ……わたくしとしたことが子供に説得されるとは思いもしませんでしたわ」

 ————そして、5年の歳月が経った。
 俺の視力は落ち、眼鏡をかけることとなったが、ここから、俺の復讐が始まる。

「(一体どうなっているんだ……北の都会街と言っていたが……ちっ、早いとこ解決しないとな……)」

「佐々凪(ささなぎ)殿!! 反対関係者が守りの姿勢に入りました!!」

「科門奥義第伍目『円斬刀(えんざんとう)』……!!」

「こんなんじゃぁ、東牙に顔見せられねぇよ……」

「世の中何が起こるか分からない……だから勝つまで絶対油断はするな。良いか?」

「佳恵……さん? もしかして佳恵さんですか!?」

「その声、私が忘れるはずありません……東牙……東牙—!!」

「……ふんっ、さすがだな、鞘嘉多四天王の1人……」

「もう少し違う形で出会っていれば仲良くできたのにな……」

「四天王だから? 四天王だからという理由で、東牙は人を平気で殺すのですか!?」

「おい、指示が出てないのに、長距離狙撃銃を撃つ馬鹿がどこ居る?」

「み、見たのか……私の体を……」

「おっ……これはなかなかの味……」

「だろ? この味を分かってくれる人が居て俺は嬉しい」

「……すまなかった……まさか東牙がその……そういう人だと知らず……そして私を敵としていたなんて……」

「(ちっ……動け……動けよな……)」


「そこにいるのは誰だ……」
 —————————————————————チリリン。


 オリエンタルな東方風世界を舞台に、刀と魔法が彼らの運命を斬り開く!!
 剣戟あふれる復讐劇の先に、辿りつく未来とは……。
    【復讐 5年の歳月を経て……】
 現在、複雑・ファジースレッドにて、好評連載中!

「あ〜あ……自分も警視みたいに綺麗で家庭的な人欲しいですよ〜〜」
「そんなもん俺に相談すんな……自分の花嫁くらい自分で探せ……」

————————————————————————


         宣伝文章終了。


・読者様
 ステッドラーさん(【★】アーマード・フェアリーズ【★】を執筆している方です。)
 琴月さん(*鏡花水月に蝶は舞う*を執筆している方です。)
 龍宮ココロさん(白ずきんちゃんと。〜ワンダーランドの住人童話〜を執筆している方です。)
           (同時に、ゴッド・コードウルフ。という小説も執筆している方です。)
 水瀬 うららさん(Quiet Down!!を執筆している方です。)
 長月さん(神王サマは15歳!を執筆している方です。)

・絵を書いてくれた方々
 しかやんさん(美しい、柊 樅霞さんを描いてくれました!ありがとうございます!)

・評価をしてくれた方々
 緑月華さん(評価ありがとうございます!そして、蓮花を好きと言ってくれて、嬉しいです。)
 水瀬 うららさん(とても詳しい評価、感想をありがとうございます!私からは感謝の2文字しか出てきません!)

・鑑定をしてくれた方々 
 秋原かざやさん(非常に丁寧な鑑定、ありがとうございます!私の弱点を教えてくれて、本当に嬉しいです。)

・宣伝をしてくれた方々
 秋原かざやさん(とてもドキドキするような宣伝、ありがとうございます!そして、楓のことを好きと言ってくれて、嬉しいです!)

壱目 出会いと別れ
>>1 >>2 >>3 >>4 >>5 >>6 >>7
>>8 >>9 >>10 >>11

弐目 再開、そして別れ
>>12 >>13 >>14 >>15 >>16 >>17 
>>18 >>19 >>20

参目 新たな仲間と敵
>>21 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26
>>27 >>28

四目 裏切り裏切られ
>>29 >>30 >>31 >>32 >>33 >>34
>>35 >>36

伍目 城内戦争
>>37 >>38 >>39 >>40 >>41 >>42

六目 巫女と鈴と刀と……
>>43 >>44  >>45

七目 衝撃の事実
>>46 >>47 >>48 >>49 >>55

八目 過去よりも今
>>58 >>59 >>60

九目 雪月花解禁
>>64 >>66 >>71 >>72 >>73 >>79
>>80 >>81 >>83 >>84 >>85 >>86
>>87

拾目 活動、反省、計画
>>90 >>94 >>95 >>96 >>97 >>98
>>99 >>106

拾壱目 柊樅霞の呟き
>>107 >>108 >>109 >>112 >>113 >>114
>>115

拾弐目 それぞれの思惑
>>116 >>121 >>124 >>125 >>126

拾参目 城外大戦争
>>128 >>131 >>133 >>137

Re: 復讐 5年の歳月を経て…… ( No.83 )
日時: 2011/06/26 19:24
名前: コーダ (ID: 46ePLi3X)

「あら……もう日が落ちる時間になっているのですね……。」
「綺麗な夕日だな……。」

 地下から、地上に上がってきた2人が、待っていたのは、襖から越しから見える赤い光。
 たまらず佳恵は、襖を開け、縁側に立ち、空を見上げていた、楓も縁側に座り、徐々に落ちる夕陽を見ていた。

「……所で、楓さん?あの時、友達のためにとか、言っていましたけど……友達とは、誰のことでしょうか?」
「えっ……と、友達と言ったら友達……。」

 佳恵は突然、楓に少々イジワルそうに、こんな質問をした。
 すると、思いのほか楓は動揺して、顔を下げ、ただ友達としか言わなかった。

「あら?どうして、そんなに動揺しているのでしょうか?」
「動揺などしていない!そういう佳恵はどうなんだ!?」

 楓も、負けずと佳恵に反撃するが、これも思いのほか「えっ?と、友達ですわよ!」と、動揺して答えたようだ。
 そして、なぜかこの瞬間、2人は顔を下げ、しばらく沈黙が続いたという。

「むっ?どうしたのだ、2人とも。」
「えっ……あ、いえ、なんでもありませんわよ!」
「そ、そうだ!せっかくだから、東牙に刀をみ、見せに行こう!」

 突然、戻ってきた樅霞の一言が、2人を動揺させて、思わずその場から去ってしまった、
 巫女は、ポカンとしながら「なんだ?」と、呟き、階段を隠すために、畳をもとの位置に戻した。


                ○


「あら?用事はもう済んだの?」
「はい……あら?東牙が居ないのですが……。」

 佳恵と楓は、とりあえず、東牙と蓮花を探しに、部屋を探しまわって、やっと台所に居た蓮花だけを、見つけたという。
 昔ながらの、石垣で、できた台所、ご飯を炊くものは釜なのに、この少女は器用に使いこなして、料理を作っていたのだ。

「東牙なら、買い出しに行ったわよ?ちょっと、材料が足りなくてね……。」
「お、美味しそうなにおいだ……。」

 楓が、台所に充満する美味しそうな香りを嗅ぎ、石垣の上に置いてある、焼かれた魚をじっと見つめた途端、空腹が襲ってきたという。
 すると蓮花が「はいはい。もう少しでできるから、待っていなさい!」と、楓の額を、人差し指で押す。

「すまんな……わざわざ、こんなことさせてしまって……。」

 突然、佳恵と楓の後ろから、ひょこっとでてきたのは、済まなそうな顔をしている樅霞だった。
 すると「良いわよ。こっちだって、勝手に材料とか使ったんだし……。」と、蓮花は石垣の上にある魚を見ながら、言った。

「それは、秋刀魚か……ちゃんと、旬を選んだ焼き魚にするとは……できる。」
「秋と言えば秋刀魚よ!他にも、主な魚としては鮭、鯛とか……微妙な路線で行くなら、ハタハタやキンキね。」

 蓮花は、自信満々に、旬に詳しいという事は樅霞に主張した。
 佳恵と楓は、一部、聴いたことがない魚の名前に、困惑していた。

「蓮花と言ったか?その知識は、どこで手に入れた?」

 メガネを、カチャッと上げ、樅霞は質問する。
 すると蓮花は「別に、ただ、9年間も毎日料理をしていれば、自然と身に付くわ。」と、作成中の味噌汁の味見をしながら、きっぱり言った。

「9年間もですか!?」
「しかも毎日だと……。」
「むっ……これは負けたな。」

 佳恵、楓、さらに樅霞は、とてもびっくりして言葉を言う。
 そして、女性にしか分からない謎の敗北感が、どっしりと乗っかってきたという。
 当の本人は「うん。出汁も良い具合だわ……。」と、無駄のない動きで、調理を続行していた。

「買ってきたぞ……っと、どうした?」

 ガラッと、裏玄関から東牙が水の入った桶を持って、声を出した瞬間、なぜか、全員がこの場所に集まっていたので、違和感を覚え、思わず様子を、訪ねてしまったという。

「あっ、気にしないで東牙!っと、ちゃんと買ってきてくれたかしら?」
「もちろんだ。木綿豆腐、2丁だろ?」

 蓮花は、水の入った桶から、豆腐を1丁取り出すと「うんうん。」と、頷き、そのまま左手に豆腐を乗せ、包丁で上に3回、横2回ずつ、等間隔に切り、そのまま味噌汁に入れ、最後の1丁も、同じ方法で消費する。
 ちなみに、豆腐2丁を、味噌汁の中に入れるまでに、かかった時間は、30秒も経たなかったという。
 料理は、この面子だと、蓮花に敵う者は居ないだろう。
 そう思いながら、東牙、佳恵、楓、樅霞は、邪魔にならない程度に、手伝いをする。

Re: 復讐 5年の歳月を経て…… ( No.84 )
日時: 2011/06/27 20:29
名前: コーダ (ID: 3P/76RIf)

「御馳走さまですわ……。」
「はい、お粗末さま。」

 居間のテーブルを、5人で囲み、ご飯に焼いた秋刀魚と味噌汁、さらには漬けものまであり、最後には、羊羹も出された晩御飯。
 4人は作ってくれた蓮花に、感謝して食べ終えたという。

「やはり蓮花が作ると、魚の焼き加減が丁度良い。」
「それ、私も思った……あれは、ちゃんと料理している人じゃないとできないよ。」
「味噌汁の出汁も良かったですわ……。」
「ふむ……私もこんなに美味しい晩御飯は初めてだ……。」

 それぞれ感想を呟く4人、しかし、作った蓮花は「う〜ん……。」と、腕組をして、いまいち、納得していない様子であった。
 たぶん、料理が上手くいかなかったのだろう。

「やっぱり、この料理にするなら味噌汁の出汁は……あれよね……。」

 ぶつぶつ呟きながら、蓮花は食べ終わった皿や茶碗を、器用に重ね、台所へと持って行った。
 佳恵は「あれでも満足していないのですね……。」と、羨ましそうに蓮花を見つめていたという。

「蓮花は、料理だけ現状に満足せず、ひたすら改善していくらしい……だから、どんどん器用になって、作業に無駄がなくなり、さらにはバリエーションも増えるんだ。」

 東牙は、この場に居た女性3人に蓮花が、料理上手の秘密を言う。
 さすが、5年間も食べてきたこともあり、説得力はとてもある。

「あれは将来、良い妻になるな……。」

 樅霞は、メガネをカチャッと上げて言う。
 しかし東牙から「確かに家庭的なんだが……蓮花は、唯一洗濯だけがだめらしい……後、最近知ったんだが、子守りとかも苦手だとさ。」と、メガネをくいっと上げ樅霞に返す。

「うふふ……子守りは、私の得意分野ですわ。」
「あれ?そう考えると私は何もできない……クゥ〜ン……。」

 佳恵は、自分にも勝てる場所があるという事に気が付き、一気にご機嫌になる。
 そして、楓は自分にそういうスキルが備わっていないと気付き、思わず鳴いてしまった。

「佳恵さんは、子守りが得意なのか?」

 東牙は、意外という顔をしながら佳恵に質問をする。
 すると「うふふ……。」と、笑い「私はこう見えても兄が2人、弟が1人、妹が3人の、長女として育ったのですわ。だから、子供の相手とかは大好きですわ。」と、言う。

「ほう、ということは、佳恵の家は父、母を合わせて9人家族なのか?」
「そうですわ、お父さんとお母さんは、とても子供が好きで、結婚する前から何人産むかも計画しているくらいです。」

 もしかすると、そのDNAが佳恵にも引き継がれたのかもしれない、と東牙は心の中で考えていた。
 すると楓は、突然。

「じゃあ、もし佳恵が結婚したら何人、子供欲しい?」
「あら、そうですわね……せめて、家の子供の数より欲しいですわ。」
「それはすごい……お互い、しっかり頑張らないとな。」

 つまり、佳恵が望む子供の数は、8人ということかと、また東牙は心の中で呟く。
 なお、樅霞の意味深すぎる言葉に、あえて深く考えはしなかったという。

「そういう楓さんは、どうなんでしょうか?」
「えっ……私も3〜4人は欲しいけど、まず相手が限定されるんだよな……。」

 確かに楓は獣人だから相手が限られる。
 もしかすると、この質問は、地雷かもなと、東牙は懲りずに心の中で呟いていた。
 すると佳恵が。

「ちょっと気になったのですけど……楓さんは、絶対に相手が獣人じゃないとだめということは、あるんですか?」
「あ〜……そんなことはない。一応、体のつくりは人間と似ているし、相手が人間でも問題ない……ただ、それだと生まれてくる子がさ……。」

 獣人と人間だと、生まれてくる子供は、当然その間のハーフとなり、楓は社会的な意味でそれを恐れている。
 だが、やはりここで佳恵は。

「あらあら……そんなことではいけませんわよ?愛があれば、生まれてくる子供も、きちんと社会から守れるでしょう?むしろ、親としてきちんと守ってあげないとだめですわ……。」

 なぜか、この言葉を言う佳恵はとても説得力があった。
 さすがは、子供のことを大切に思える人だなと心の中で呟き、東牙はその場に立ちあがり、台所まで歩いていった。

Re: 復讐 5年の歳月を経て…… ( No.85 )
日時: 2011/06/27 20:30
名前: コーダ (ID: 3P/76RIf)

「あら?どうしたの?」

 台所で、器用に、そして迅速に皿洗いをする蓮花は、突然、東牙がここに来たのでどうしたのかを尋ねる。
 すると「何、大人の話にちょっとついていけないだけだ……。」と、呟いた。

「ああ〜、そういえばあの3人、よく考えると20歳超えてるもんね。」
「俺もたまに忘れる。」
「そうなの?珍しいわね。」

 2人は、笑いながら会話をしていた。
 やはり、少年少女だと、話が合うみたいである。

「……所で、もし、お前が結婚したら何人子供欲しい?」
「ん?なんで突然、そんな質問を?」
「いや、大人の話で、それが話題になっていてな。」

 東牙は、先程話題になっていた話を蓮花に振ってみた。
 すると「う〜ん……。」と、手を止めながら悩み「相手が、望む限りの数ね。」と、意外な答えが返ってきたという。

「なるほど……。」
「限度はあるけど。」

 東牙は、女性の意見はそれぞれだなと心の中で呟いていた。
 すると「ねぇ、あんたはどうなの?」と、蓮花は逆に質問を返した。

「俺か?そうだな……2〜3人くらいが妥当か?」

 いまいち、ぱっとしなかったが、東牙は悩みながらそう答える。
 すると「ふ〜ん……案外少ないのね。」と、蓮花は少々からかいながら東牙に言う。
 余談だが、この世界の人たちは、平均4〜5人くらいの子供が1家庭に居る。

「何……長い目で見ると、これくらいが丁度良い……いざとなったら大変だろ……。」

 東牙は、突然、顔を下げながら小さくこのセリフを呟いた。
 蓮花は、このちょっとした変化を見逃さず「なんかあったのかしらね……。」と、心の中で呟き黙って皿洗いをして、あまり深く突っ込みはしなかったという。

「生まれてくる子供が、自分の親の顔を知らないなんて、そんな悲しい話は嫌だからな……。」

 東牙の、とても意味深な呟きを最後に、そのまま台所から去っていった。
 蓮花はもちろん、聴き逃さずこのセリフについて分析していた。

「(そういえば、4年前に東牙の両親について聞こうとしたけど、もう他界してるって言われて、その後、どんな親かを聞いた途端、黙ってしまったのよね……あれ……まさか東牙……。)」

 パリン、台所から皿が割れる音が聴こえ「どうした!?」と、樅霞が慌ててこちらにやってきた。
 すると蓮花は「ご、ごめん……ちょっと手を滑らせたみたい……。」と、申し訳なさそうに謝り、割れた皿の撤去を始める。

「そ、そうか……これからは気を付けてくれよ?」

 樅霞はメガネをカチャッと上げ、蓮花に一言言い、居間に戻る。
 割れた皿の回収をしていた蓮花の目は、少々悲しそうに見えた。

Re: 復讐 5年の歳月を経て…… ( No.86 )
日時: 2011/06/27 22:25
名前: コーダ (ID: 3P/76RIf)

「なるほど……そういう事でしたら、歓迎します。」
「うふふ、物分かりのいい人は良いわね〜。」

 時は少し戻り、丁度15時くらい。
 姫狗の説明で、2人はやっとどういう事か、理解できた。

「橋鍍の代わりと思って良いのかぁ?」
「まぁ、そうなるわねぇ……橋鍍が死んだのは正直ビビったけど、後は私に任せて……必ず、東牙達を混乱させるから。」

 姫狗はそう言って、カードを取り出し不気味に笑いだした。
 先から使うカードは、一体どういう意味があるのだろうかと、諺瑚だけは、ただただ疑問に思っていた。

「それは頼もしいですね……。」
「楽しい勝負(ショー)を披露するわよぉ……あっ、もう少ししたら戻ってくるって……あのお方が。」

 姫狗は思い出したかのように、夜尭へ言った。
 あのお方とは、一体誰のことなのか?とりあえず言えるのは、東牙達の敵かもしれないという事だけだ。

「けっ……俺の足を引っ張らない程度にしてくれよ?俺は鉈崎 諺瑚、見たとおり刑事をやっている……じゃぁ、また作戦で会おう……。」

 諺瑚は、ぶっきらぼうに姫狗へそう告げ、そのまま敬礼をして部屋から出て行った。
 姫狗は「あの人、刑事だったの?」と、今更気づき、驚いていたという。


                ○


「鉈崎警視!一通の手紙が届いています。」

 部屋から出ると、数人の隊員が待っていて、そのまま一緒に長い廊下を歩き始めた。
 そして、1人が思い出したかのように、スーツのポケットから手紙を出して、それを諺瑚に渡した。

「ん?……おっ!紗枝からか!」

 諺瑚の手紙は、妻紗枝からのものだった。
 刑事は嬉しそうに、手紙を、歩きながら読む。
 そして「もう少ししたら帰ってくるからな……。」と、呟き、手紙を元の状態に戻し、スーツのポケットに入れた。

「やっぱり、仲が良いですね〜。」
「な、なんだよ……当たり前だ!」

 隊員の言葉に、諺瑚は照れ隠ししながら怒鳴った。
 紗枝という女性は、本当に諺瑚のことを愛していると思われる。
 その証拠に、夫が仕事の支えになる手紙を、何通も届けているからだ。

「早いところ、仕事を終わらせましょう。」
「そうだな。」

 今の目標はただ1つ。
 妻のため、娘のために、仕事を1日でも早く落ち着かせて帰る。
 諺瑚は、この目標で気合いが入り、とりあえずパトロールに向かった。

Re: 復讐 5年の歳月を経て…… ( No.87 )
日時: 2011/06/27 22:28
名前: コーダ (ID: 3P/76RIf)

「ふぅ〜……良いお湯だったわ〜。」

 風呂上がりの蓮花は、襖を開けて佳恵、楓、樅霞が居る居間に入る。
 余談だが、蓮花はどんな場面でも、必ず紅いローブを着る変わり者だったという。
 というか、他の服はあまり好まないみたいである。

「これで全員入ったか?」

 メガネをカチャッと上げ、全員入ったかを確認する樅霞。
 すると「そういえば、東牙はどうしたのでしょうか?」と、佳恵が、晩御飯以後から、見かけない東牙を気にした。

「東牙ならずっと鳥居の下で、何か考えていたぞ?少し声をかけにくいから、そのままにしたんだが……もしかして、まだ居るのか?」

 樅霞は、偶々お賽銭箱を見に来たと同時に、鳥居の傍で、座って考えている東牙をみかけ、そのままにしたらしい。
 ちなみに、それを見たのは約1時間前である。

「はぁ〜……ごめん。あいつ、ちょっと複雑な事情があるんだよね……しばらくそのままにしてくれる?」

 蓮花は溜息をして言う。やけに説得力がある言葉に、3人は黙って了承をした。

「(これは、私が出られる幕ではありませんわね……。)」
「(やっぱり東牙のことを全てわかるのは、この少女だけか……。)」
「(何があったのか聴きたいが、さすがにそれは、まずそうだ……これは、蓮花に賭けてみるしかないか。)」

 3人は心の中でそれぞれの思いを呟いていた。
 蓮花は「う〜ん……。」と、腕組をして悩みながら畳の上に座ったという。

「そういえば、楓さんの尻尾は、とても気持ちが良かったですわね。」
「あっ……もうやめて!」
「そうなのか?さすがは、半分人間、半分犬だな。」
「犬じゃない!私は狼だ!」

 佳恵、楓に樅霞はいつもの調子で会話を始める。
 だけど3人は分かっていた、これは、ただ単にその場しのぎの演技だという事を、沈黙の部屋になるのだけは、なんとしても防ぎたかったからである。

「(はぁ〜……やっぱり、私が居ないと、すぐに思い悩むよねあいつ……だから放っておけないのよ!それを隠すあたりも、あいつの悪い所だし……。)」

 蓮花は「よし……!」と、心の中で決心して、襖を開け、鳥居まで向かったという。
 居間にいた3人は、蓮花が出て行った瞬間、ピタリと静かになった。


                ○


「ここ最近、そういうのは忘れていたけど……今日の何気ない会話で、思い出してしまったな……。」

 空に浮かぶ半月を見ながら、東牙は鳥居に背をかける感じで座っていた。
 特に悲しい表情はしておらず、だからといって、嬉しい表情もしていなかった。
 だが、どちらかというと悲しい表情と言った方が、分かりは良い。
 すると不意に「こんな所で何をしているのよ?」と、明るい声が、右耳に聴こえて来た。
 特に驚きもせず、右を振り向くと、そこには蓮花が腕を組みながら立っていた。

「偶には、夜風に当たるのも悪くないと思ってな……。」

 あまりに露骨すぎる言い訳に、蓮花は「もうちょっとマシな言い訳はないわけ?」と、呟き、そのまま東牙の横まで歩き隣に座る。
 風呂上がりのせいか、少女の髪の毛からは、とても心地よい香りがして、東牙の鼻をくすぐったという。

「俺は、お前に合わせた言い訳をしたのだが……もう少し捻った方が良かったか……。」
「軽く、私の知力を馬鹿にしてるような言い方じゃない……でも残念、表情を見れば即わかるわよ?」

 そもそも、そんな言い訳誰でも分かると思う。
 だが、蓮花は東牙の表情で分かったという。
 伊達に5年間、見てきたことはある。

「そうか……。」
「で?本当のことは何なの?」

 自分は、けっこう表情で現れるのか?と考える東牙。
 蓮花はとりあえず真相を聞き出そうとする。
 すると「お前の親はどういう人だ?」と、唐突にこんな質問をしてきた。
 普通の人なら「なんだそれ?」と、言うが、蓮花は何も言わず考えて「簡単に言うと、私のことを大切にしてくれるお母さんとお父さん。」と、答えた。

「どうして、そういう事が分かる?」
「それは……私が病気の時は、看病してくれるし、私の言う事は出来る限り叶えてくれるから……毎日生活していれば、分かるわよ。」

 東牙の、訳が分からない質問。
 だけど蓮花は、真面目に答えながら東牙の言いたいことは何か?と探っていた。

「なるほどな……。」

 腕組みしながら、東牙は色々と納得していた。
 すると「ねぇ……東牙の両親はどんな人だったの?」と、4年前にも、同じこと言って切られてしまった質問を、思い切って言う蓮花。
 なぜ、いきなりこの質問をしたかと言うと、もしかして、東牙がここに座って考えていたのはこれかもしれないと、蓮花は一か八かの賭けに入ったからだ。
 すると案の定、東牙は黙り始めた。

 この瞬間「チェックメイトね……。」と、心の中で呟き「あんた、やっぱり表情に出るタイプね。」と、蓮花は黙っている東牙に言った。

「……なぜ聞こうとする?」
「さぁ?どうしてかしらね〜。」

 いまいち理由がはっきりしない蓮花。
 こういう時は、何か考えている証拠というのはもちろん東牙も分かっている。
 なので「はぁ……分かった。状況が状況だから、今はあまり詳しく話さないけど落ち着いたら全部話す……。」と、腑に落ちない感じで呟いた。

「俺は、自分の両親が、どんな人でどんな顔か全く知らない……大袈裟にいえば、俺には親が居たのか?というくらい知らん……だけど、他界したという話だけは、唯一聞かされている。」

 東牙の言葉を、一言一句、聞き逃さず、蓮花は耳に意識を集中させる。
 だけど、あまりに悲しすぎる内容で、返す言葉は何も思いつかなかった。
 そして、この言葉を境に、東牙は一切口を開かなくなった。
 こんな状況に、蓮花はすっと立ち上がり「ごめん……。」と、小さく呟き、この場を去って行った。

「親が居なくて悲しいのは当たり前だが……俺の場合は、全く知らないから悲しもうにも悲しめないんだよな……だから、あまり気にはしていないが……なぜか心は痛む……。」

 東牙は、それからずっと鳥居の下で座り考えていた。
 いくら考えても、答えは出ないことは分かっている。
 だけど、諦めきれない男だった。


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